ひとりぼっちの神様とたったひとりの雪の精

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 長い長いときの中、冬の神様アノヒトはひとりぼっちで泣いていた。周りから放たれる鋭い言の葉に、己の纏う冷気に、独りで在ることに、全てに、絶望していた。だからワタシボク冬の神様アノヒトに寄り添う為にしょうじた。

 冬の神様の流す涙は雪になり、ゆっくりと時間をかけて水晶に変わる。その様を、その生命は静かに見つめていた。自分を生み出した美しい冬の神様を見つめていた。
 冬の神様だけを、見つめていた。冬に生まれ、春に消え、夏には目覚める事もなく、秋にその身を震わせ、そしてまた、冬にそのを開く。幾度となく生まれ消えゆく時の中で確固たる自我を持ち始めたその生命。

 独りきりで永い刻を過ごす、冬の神様アノヒトの為に。
 大切な冬の神様ヒトの傍に在る為に。
 愛する冬の神様ヒトの傍に在る為に。

 ただその想いを胸に、その生命は自我を芽生えさせた。共に生まれた仲間は沢山居たけれど、自我を持ったのはその生命だけだった。その生命は、消えゆく仲間には目もくれず唯々冬の神様だけを見つめていた。

 冬の神様アノヒトは、ボクワタシの大切なヒト。
 独りにしちゃいけないの。
 冬の神様アノヒトは、この世界でたったひとりのワタシボクの家族。

 小さな生命は冬の神様にそっと寄り添う。冬の神様が寄り添う生命に今は気付かなくても、いつかは気付いてくれると信じて傍にはべる。何も告げず、寄り添うのだ。そうして、小さな生命に自我が芽生えてどれだけの時が経ったのだろうか。冬の神様に寄り添い始めてどれだけの時が経ったのだろうか。冬の神様が涙を流さなくなって、どれだけの時が過ぎたのだろうか。
 何度季節が廻ったのかもわかない。そしてある時、冬の神様に寄り添う生命は彼のヒトのに涙が浮かぶのを見た。自分を見つめて、涙を浮かべるを見た。

 あぁ。
 冬の神様アナタワタシボクを見つけてくれた。
 冬の神様アナタボクワタシに気付いてくれた。

 冬の神様の為に生まれた生命は、自分を見つめるその冬の神様ヒトの視線を感じながらただ幸せそうに微笑わらう。
 
 ワタシボク冬の神様アナタの為に在るの。
 ボクワタシ冬の神様アナタの為に生まれたの。
 もうサミシクないでしょ?
 ヒトリじゃないでしょ?
 ねぇ。
 だからお願い。
 微笑わらって?ボクワタシ冬の神様カミサマ

 その生命は冬の神様を見上げ、自分よりもずっとずっと大きな冬の神様を抱きしめようとするかのように両腕を広げる。

 ワタシ達ボクら冬の神様アナタの涙から生じた。
 冬の神様アナタが独りで泣いていたから。

 慰めたかったのだと、その生命は告げる。冬の神様に泣いてほしくなかったのだと告げる。

 願ったコトはただ一つ。
 のぞんだモノはただ一つ。
 冬の神様アナタの笑顔。

 ただ、微笑っていてほしいのだと、告げる。

 冬の神様アナタが、
 誰もが、
 微笑って過ごせる世界こそ、
 この世界の在るべき姿。
 
 冬の神様の周りをくるくると舞いながら、小さな生命は言の葉を紡ぐ。


 涙から生まれた、たったひとりの雪の精。独り生きる冬の神様ただ一人の為だけに生まれた小さな小さな雪の精。

 春の神様には桜の精が。
 夏の神様には風の踊り子が。
 秋の神様には林檎の乙女が。
 そして。
 冬の神様には雪の精が。

 それぞれの神様にそれぞれの眷属が付き従っているように、雪の精は彼のヒトに寄り添い、冬の神様への愛をうたう。


 これから先、ずっと一緒だよ
 独りになんてしないから
 もう、泣かないで
 微笑ってて
 ボクワタシ冬の神様愛しいヒト
 冬の神様大切なヒト
 永遠とわ冬の神様アナタに誓います
 優しくて繊細な、ボクらワタシ達の愛しい冬の神様


 長い長い時間ときを独りで生きてきた冬の神様。その凍てついた心を慰めたのは、涙から生まれた雪の精だった。冬の神様と冬の神様に寄り添う小さな生命は、穏やかな時間ときを共に過ごしていく―――
 
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