超不人気職【治療術師】になってしまったので、パーティから追放されないようになんとか頑張ります

玄米

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第一章 出会いと始まり

幕間 踏み外した者と歩み出す者

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 ――冗談じゃねえ……あの駆け出し冒険者のガキの強さ、尋常じゃねえぞ……

 俺は命からがら逃げだす最中、心の中で何度もその言葉を呟いていた。
 同時に、何故このような事態になってしまったのかという後悔と、怒りの念も沸き上がってくる……

 思えば、分岐点はあの時だったのかもしれない。







「パルテム・アールス、そなたの天職は……ウォーロックだ!」

 10年前、教会で告げられた言葉に、俺は歓喜していた。
 なんせウォーロックと言えば、こと攻撃魔術に於いては他の追随を許さぬ強力な天職なのだから。

 それからは職技クラス・スキルの修行も必死に行い、冒険者として旅立つ頃には相当な実力になっていたと思う。

 実際にパーティを組んでみても、俺は攻撃の要だったし、冒険者生活は順風満帆に思えた。


 ――あの日までは…………


「……ソル! 一体、どういう事だ……! この借金、”100万フーツ”も……とても返せる額じゃねえぞ!?」

 ある町の宿で、俺はリーダーである勇者・ソルに怒号を飛ばしていた。

 100万フーツともなれば、小さな家が一軒建つレベルの大金である。
 にも拘らず、ソルに悪びれる気配は全く無い。

「ははっ、悪い悪い……ちょっと賭けに負けちまってな」

「ちょっと……だと!? お前、状況がわかっているのか――――」

「まあまあ、落ち着けよ? 返せる手段ならもうあるんだからさ、いや……返すどころかもっと増えるかもな」

「……どういう事だよ?」

 この時、少し乗り気になった俺の心へ付け入るように、ソルは「実はな……」と説明を始めた。


 そう、それこそが駆け出し狩りビギナー・キラーとしての……最初の仕事だったんだ。



 駆け出し狩りビギナー・キラーは所謂、カツアゲと同列視される事が多いのだけど……実際は全く異なる。
 通常の依頼と同じようにある人物からの要請を受け、言われた通りに駆け出し冒険者を狩るのがこの仕事の流れだ。

 そんな事をして何になるのか?
 疑問は湧いてきたけど、出された報酬の前には全て小さなことだった。

「これ一回で……5万フーツ……!?」

「ああ、そうだ。簡単だろう? それにしてもあの駆け出し共、チョービビッてたなあ……」

「うふふっ、ホントね。いいストレス発散になったわ!」

 ホント、驚く程に簡単な仕事。
 しかも弱い奴を甚振るのが存外気持ちよい事だとも思ってしまったのだから、もう俺たちは抜け出せなかったんだ。

 そして、あれから2年の月日が経って今に至る……

 駆け出しとは思えない程に強い、謎の冒険者。
 自称を我とし、異常に尊大な態度で向かってくるムカつく男……


 気づくと、俺の中では後悔よりも怒りと憎悪の感情が育っていた。

「……あいつ、絶対に復讐してやる……!」

 まだ足元も覚束ないというのに、その言葉だけははっきりと……確実に発していた。



◇◆◇



 ここ最近は、不思議と時間の流れが早いって感じる。
 これもきっと、冒険者としての生活を始めたせいなのかな……

「……なんて、何ガラでも無い事思ってんだろう。俺……」

 本当、ガラじゃないな。
 でも……”森”で暮らしていた頃には無かった感情なんだ。

「楽しい……か」

 あの時は、こんな生活が訪れるなんて思いもしなかった。


 ――ハク・プラジノール、そなたに……勇者の天職を授ける。


 今でもはっきりと思い起こせる……いや、今でこそ身に染みるあの時の言葉。

「ばあちゃん……ありがと……」

 ……と、またガラにも無く感傷に浸っちゃったな。
 いかんいかん! 昔の事は、胸にしまっておくって決めたんだから……



「それよりも……」

 初めて体験するベッドの上で寝がえりを打ってから、俺はここ最近の事を思い返し始めた。

 冒険者として旅立つ日がやって来たその日、俺はまず、近場に居たパラディンのシーラと合流する事にした。
 なんだか慌てた様子で「早くこの場を離れましょ!」とか言ってきたのは気になったけど、他の部分は良識的で、出会ったばかりだというのに案外話が盛り上がった。

 続いてはフラムウィッチのフウ。
 雨が降る中、一切動くこと無く街中に立っていたのが印象的だったなあ。

 それに、その事に関して全く気にする様子が無かったのも……
 まあ、結構変わってる奴だとは思ったけど……

 次に遭う奴に比べたら、そんなのどうでも良かったんだ。

「ふふ……! ふはははははははっ!」

 最後の仲間は長身で銀髪の男――レギだった。
 奴は第一声から意味不明な雄たけびを上げてきて、正直……誰一人としてその意図を理解できた者はいなかったと思う。

 しかも、天職を明かすとか明かさないとか……下らない喧嘩をシーラと始めてしまったものだから、これからの行き先に大きな不安を抱えてた気がする。

 とはいえ、これはまだまだ序の口だったんだなあ……


 この後俺たちは、一角獣の討伐依頼を見事果たした訳だけど……レギは何もしなかったんだ。
 まあ、戦闘に参加できなかったのはタイミングの関係もあるし仕方が無いとは言え……その後の始末や野宿の準備も何一つやらないと来たものだから、流石にリーダーとして見過ごせなかった。

 けれど……

「ふっ、ざっとこんなものだな」

「……ありがとう」

 俺の見ていないところで、レギは薪割りをしていたフウの手伝いをしていたんだ。
 それだけじゃない。

 料理に失敗したシーラを強く責める事も無く、一際美味しいご飯を作ってくれたり、俺の代わりに洗濯係を担ってくれたり……

 ともかく、雑用という雑用は全部引き受けてくれたのだ。

「……今思うと、あいつが居なかったら俺たちはどうなっていたか分からないな……」

 もしも、の世界を思い浮かべると、少し冷や汗が出てくる。
 ――と、本題に戻るが……俺は今までよりも一層、レギの本当の実力というものに興味を持っていた。

 当然それは、シーラとフウも同じようであり……
 次、何かの戦闘があれば、俺たちは全員やられたフリをしようと決めていた。

 そして、絶好の機会がやってくる。

 依頼の帰り道で俺たちが出遭ったのは、報酬を横取りしようとする悪質な冒険者たちだった。
 俺が奴らの提案にノーと答えた瞬間、戦闘は始まる……

 正直、悪質冒険者――ことリーダーの勇者に関しては、中堅程度の実力で、俺の敵じゃないと言っても過言じゃなかった。
 けれど、今はレギの実力が知りたい……

 そこで、シーラとフウにアイコンタクトを送り、一斉にやられた振りをする事に決めた。
 もしも本当に、レギが弱かったとしたら……その時は咄嗟に介入しよう、と思いながら、戦闘を眺める。



 ……が、俺たちが介入する事無く、戦闘は終わった。
 結論から言うと、レギは強かったんだ。

 尊大な口調とは裏腹に、言葉の端々に感じていた弱気な本音……そんなものを一つも感じさせる事無く、彼は、見たことも無いスキルを駆使して余裕の勝利を収めた。

 しかも、こっちの目論見は当然のように見抜かれていて……
 許してはもらったものの、未だに罪悪感が抜けない。

 けど、これも自業自得かもな。
 仲間を信じなかった、俺の……

 とにかく、だ!
 これから俺は、全面的にレギを信用するって決めた。
 未だに天職が明かされないのは気になるところだけど、きっと……同じ時間を重ねれば、向こうから言ってくれるときが来るだろう。

 また明日も早い事を思い出し、俺は急いで目を閉じた。
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