頭脳派脳筋の異世界転生

気まぐれ八咫烏

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転生者

第66話

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 そういえば、王都のデメリットがもう一つあった。都会だけあって物価が高いのだ。
 というわけでちょくちょくと資金稼ぎにギルドに行って適当なクエストを熟している。

 そんな中、俺達への指名クエストがあるということで話を聞くことになった。厳密に言えば俺達に対しての指名ではなく、ある程度高ランクのパーティー限定クエストというべきか。

 「では、こちらが周辺地図です。ではお気をつけて行ってらっしゃいませ」

 冒険者ギルド受付でクエストを受注して早速出発。
 道中もクエスト対象モンスター討伐も俺達にとっては問題ない相手だった。まぁ普通のモンスターよりもデカかったので 俺とサラで殴る蹴るで物理的にボコボコにしてやった。


「それにしても最近いろいろあったから久しぶりにスッキリできたわ」

別に俺とサラの仲で何かあったわけじゃないぞ。そういう意味じゃないからな。たぶん。

「いろいろって……?」

「あら~? そこでゲンスイ君が弱気に質問するということは~サラちゃんと何かもめてるのかしら~?」

「え? 違うわよ。ゲンスイさんとはその……」
 
 あれ?なんで言い淀むんですか? 
 順調ですよ。ね!順調だよね!
 いや、こういう時こそ俺の頭脳で考えてみよう。

 サラの強化靴パワーブーツが進化したことにより戦力としてはよくなったのだが、見た目的に絶対領域が少なくなった。これは非常に由々しき事態だと考えながら凝視していたら冷たい目で見られた件か?
 いや、それはその時だけでその後は普通に接してくれたから違うはずだ。

 それとも、こっそり屋敷のメイド服を拝借してサラに着てほしいと頼んだ件か?
 いや、それはサラもちょっと乗り気だったし違う、よね?
 次は治療院で使われている制服をお借りできないか計画を練っていたわけだが、一応念のために保留にしておこう。

 他には……

「そうじゃなくて。ほら、人魚くんを故郷に届けた時もアダマンタイマイの時も魔族が出て来てたじゃない。撃退できたけど何か引っかかるじゃない?」

「たしかに。魔族と遭遇するなんて一生に一度あるかないかレベルだもんね」
 ちなみに、普通に生活している村人Aだと魔族と遭遇なんてしない。冒険者であっても魔族を見る機会があるのは極々一部である。

「それにせっかく手に入れたアダマンタイトを全部じゃなかったけど盗まれたし。結局盗賊団との事も決着がついた訳じゃないし……あっ!」

「ん? どうした?」

「いえ、なんでもないわ。つまり私が言いたかったのは魔族にしても盗賊にして完全に解決したわけじゃないからモヤモヤしてたのよね。でも今日はすっきり出来たって話」

「そうだな。俺も久々に動き回れて楽しかったぜ」

「僕もシェリーさんも手出しすることなく二人で倒しちゃったもんね」
「ね~。私達見てるだけだったわね~」

 などと言っている外野の声はこの際スルーだ。



 こうしてたまにある指定クエスト依頼を達成すると手に入るのは通常よりも多めの報酬だ。これを元手に研究素材を買うか。いや待て。


 ……治療院制服を買うというのもアリか?




「ここは敢えて長めにするべきじゃないか?」

「でもそうすると当初の目標から遠ざかってしまうでござる」

「そんなことはない。何も見えるだけがすべてじゃないんだよ」

 そう、男にはどうしてもやらなくてはならない時があるのだよ。

 え? 何の話かって?
 そりゃもちろん。あれだ。ファッションの話だよ。


 前回、指名クエスト報酬で懐が潤っていた時の事だ。

 夜、サラに着てもらう用で治療院制服を買おうと決心したまではよかった。
だがなぜかそのタイミングでサラから釘を刺されたのだ。無駄遣いするなと。そしてそのまま一緒に行動していたので買いに行くことが出来なかった。

 決して無駄遣いではないと声を大にして言いたい。

 なんであんなに鋭かったのか今でも謎だ。きっと観葉植物が近くにあったからエルフ特性が発揮されたかなんかだろうけど。
 エルフ特性が観葉植物があるくらいで発揮できるのかは知らないが。

 そんな訳で買えないならば自作すればいいじゃない。


 という結論に至るあたり流石俺だ。頭脳派は伊達じゃない!

 さぁ問題はここからだ。

 俺は研究の為に獣人にしては器用な方だと自負している。だが、裁縫とかそういうのは苦手なんだよね。
 自作したいのに自分で作れない。自慢じゃないが前世で家庭科の成績は酷いものだった。いや、それはいいんだ。自ら黒歴史を紐解く事はしない。


 しかしここで諦めないのが俺の良いところ。


 自分で作れないとなると助っ人を探すのみだ。そしてこのミッションに最適な人物に心当たりがある。

 という訳で、ヤマト氏をこちら側へと引きずり込んだ訳だ。


「しかしゲンスイ氏ぃ、そこまで裾を長くすると露出部分が減って目標とするムフフコスチュームから遠ざかるでござる」

「いや、まてまて。見えないエロさというものがあるんだ。これは大人の男の嗜みだからヤマトもそういう感性を養う必要がある」

 という訳でオタクモードのヤマトとデザインを絶賛考案中なのである。予想通りヤマトはこういうのが大好きだったから俺の目に狂いはなかったという事だ。
 普段からかわいいコスチュームを考え、自ら着こなしているヤマト君こそだ。

 もちろんこれは極秘ミッションなので外部には一切バレないように細心の注意を払っているがな。

コンコン、ガチャ。

「ヤマト様、夕食の用意ができました」

 俺には一切目もくれずヤマトの方にだけ向けられたその視線は恭しくかつ上品な振る舞いで一礼した。

 そうなのだ、極秘ミッションなのにこいつは普通に入ってくる。ヤマトはヤマトでそれを当たり前みたいに思っているし。

 でも、サラにだけはバレないようにしてるんだ。

「ヤマト、どうやら今日はここまでだ。続きはまた明日!」

「わ、わかりました」

 ヴァングルの声に我に返ったヤマトがオタクモードを解除したようだ。最近はこの切り替えを一芸だと認識している。


 最近、なぜかサラとシェリーさんが二人で出かけることが増えている。少し寂しい気持ちも無いわけではないのだが、そのおかげでヤマトと禁断のミッションを遂行できるので好都合だと思う事にしている。
 そのおかげで苦節1か月。研究の合間に時間を作り、サラとシェリーさんにバレないようにした極秘ミッションも最終phaseへと移行した。


 そうなのだ。遂に今日完成するのだ。


 夜のサラ専用、ミニスカポリス風騎士服のコスチュームだ!!

 以前治療院制服を考えた時もあった。あの時はまだ若かったんだ。よく考えてみたらサラは癒しの天使というキャラじゃない。普段の戦いでも俺と一緒に前線に出るようなタイプの女だ。
 ちょっと気の強いサラにはこっちだろ。

 まぁこの世界にミニスカポリスなんて概念自体がないから、この世界のポリス的役割を担っている城の衛兵や騎士が着ている鎧のデザインを取り入れた。ただ、基本デザインはミニスカポリスだ。これが通用するのは転生者である俺達だけだろうな。
 今回こだわった裾の長さだが、当初お腹丸出しになるような上着を想定していた。そこを敢えて長めの裾にした。そしてミニスカは極限までミニにした。
 これを合わせるとどういう事が起きるか……。

 そう!

 スカート履いているのに、パッと見た感じでは履いてないように見えるのだ!!!

 それだけでもムフフな状態なのに、そのことに気付いたサラが「こ、これ恥ずかしぃ……」なんて照れながら言ってみろ!
 もう俺はそれだけでこの世に生まれてきてありがとうございますいただきますごちそうさま状態だ!

 ここまで想像できてしまう俺の頭脳が怖い。

 さて、ついに完成のその時が……


「ゲンスイさん、ヤマトくん。ちょっと来てください」

 ビクゥ!!

 突如、サラが部屋の外から声を掛けて来た。

 なぜサラがいる?
 今日もシェリーさんと出かけると言っていたのに。油断して周囲の気配を探ったりなんかしてなかったからとても驚いたんだからねっ!

 




 俺は今、話があるというサラに呼ばれて屋敷の一室に来ていた。俺達のパーティー英国の鈴ロンドンベルの4人だけだ。

 部屋にいたシェリーさんは何故か部屋の中を入念にチェックしているようだったが、俺達が到着したのを確認すると椅子に座った。

「今日は~今まで調査をしてきた事の報告と~、今後の方針ね~」

 ん?
 調査ってなんだ?

 ま……まさか。
 俺の極秘ミッションがスパイされていたというのか!?

 だとすると犯人は分かっている。ヤマトは口止めしていたし本人も極秘ミッションを理解していたからまず白だ。となると、俺達の極秘ミッションを知っているのは。

「ヴァングルか」

 俺がそう口にするとサラとシェリーさんは驚いていた。

「すごいわね。なんで分かったのかしら」
「獣人族の勘かしら~?」

「そんな訳ないだろう。状況を分析して筋道立てて考えれば分かる事だ」

 あくまでも冷静に。そう、大事なのはここからなのだ。
 夜のサラ専用コスチューム計画をどうやって正当化しつつ二人に納得してもらった上でこの場を切り抜けるか。
 
 俺の頭脳がフル回転するぜ!
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