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「報告致します。内大臣捕らえましてございます」
走りよった甲冑の男が膝をつけて報告すると、背を向けている目の前の男は頷いた。
重厚な紫紺のマントが背中を隠したが、その隙間から見える甲冑は金のこしらえで、線の細い彼の姿に厚みを持たせていた。手にあった剣は既に腰元にしまわれていたが、それを扱った跡は残っている。
後頭部でまとめていた烏羽色の長い髪はいつものように艶がなく、何かに濡れたか一房が固まって首元で折れていた。
それが何に濡れていたかは想像に難くない。
どうしていつも自分で戦うのだろう。
それがこちらの常識なのかはわからないが、彼が王宮の奥深くで大人しくしている性格ではないことをよく知っている。
足元に転がっているものから漂う匂いは慣れたもののはずだったが、あまりに濃い匂いに酔いそうになる。流れているそのものには、しっかりと目を向けることはできなかった。彼がここに留まっていることによって、男たちがそのものとなった体を庭の端へと運んだ。
この庭をまじまじと見ることはあまりなかった。いつも屋敷の内廊下を歩んでいたから、格子のはまった窓からじっくり見たことはない。けれど、きっと今ある様相とは全く違った景色が見られたのだろう。
続々と人が集まってきて、遠くから知っている顔が見えて顔がほころんだ。ヘキ卿だ。
「関係者の捕縛と鎮圧を終えましてございます。現在残党を追い、残った者は町の鎮火へ尽力しております」
ヘキ卿は髪を後ろで一つにまとめていたがまとまりなく乱れたままで、着ていた白銀の鎧の所々に血糊がついていた。鎧の反射のせいか、片膝をついたまま報告するヘキ卿の顔色は少なからず青ざめている。
彼も前戦へ進み、内大臣の協力者を捕らえたのだろう。
妻や、多分子供も。子供は内大臣の血を引いている。妻の所業を考えればその後も想像できた。ヘキ卿の働きにより彼自身は罰も軽くなるだろう。それでも妻の子は助けることはできない。それがどうなるか問うのは理音もできなかった。
「皇帝の花にお返しする物が」
ヘキ卿は胸元から何かを取り出すと、両手の平の上にそれを乗せて理音の前に差し出した。理音が渡した小瓶の入った布袋だ。
その手で返してと言ったことを覚えていたのだ。
理音は駆け寄ってそれを握りしめた。ヘキ卿が生きて戻ってきたことの証である。
「無事でよかったです」
「ご心配おかけしました」
ヘキ卿はやけに敬うような言葉を紡いで、頭を下げた。なぜそんな言葉を使うのか、考える前にヘキ卿は理音を仰いだ。
「なぜにこちらへ。あの場に迎えがありましたでしょうか」
迎えはない。料亭で大人していろと言われたのに飛び出してきただけだ。
理音は気まずい気持ちで目線を逸らした。
「放火犯がいたからー、そっち追っかけちゃってー。ちょっと色々やってー。知っている人がいたからここまで連れてきてもらっちゃいました」
「は?」
「あ、そー言えば荷物置きっぱなしだ。大変、あれなくなったら困る。取りに戻らなきゃ…」
制服とノートパソコンを料亭の部屋に置きっぱなしである。あれを失うのはまずい。急いで戻ろうと走り出したら首元がぎゅっと締まって、喉に着物が引っかかった。
うぐ、と声を出して、咳き込みそうになった。息ができないほどしっかり喉に入ったからだ。後ろから襟元を引っ張られ、走るのを止められたせいで、かなり喉にきつく入った。
「引き続き、残党の捕縛と鎮火を進めよ。被害状況の確認も速やかに行い、報告を」
耳に慣れた響く声音。低くも高くもないが、染み入るように内耳に入り込む。甘い声でもないのに、まるで蜂蜜のようにとろけるようだ。
その後ろからの声は、声質をそのままにして、どこか怒っていたようにも思えた。
見上げた相手はやはり眉を潜めていて、それどころか明らかに不機嫌さを出していた。目つきが悪すぎる。
きっぱりとした指示に、皆が首を垂れたまま応じた。各自持ち場に戻るのだと立ち上がって去ってしまう。
「あ、私も」
荷物を取りに行かねば。と進もうとしたが、襟元はまだ引っ張られた状態で、前に進まない。襟元を握っている手を離す気がないらしい。引っ張って離れようとしても、引いているその手は動かない。
「ヘキ卿、これの荷物を持ってこさせよ」
「え、いいよ。自分で取り行くから」
自分の荷物がどれだかわからぬだろうに。自分で取りに行った方が早いと思うのだが、後ろの男は襟元を離す気はないと握りしめた。
「お前は、ここにいろ」
久しぶりに会った、フォーエンはなぜかおかんむりである。
久々でも相変わらず麗しい顔をしているが、まとめた髪と鎧のせいでいつもの女っぽさが全く抜けてしまっている。こう見るとやはり男性なのだな。と失礼なことを思う。
内乱は終わりそうなのにまだぴりぴりしているのか、戦いの緊張で顔が強張っているのかと感じたがどうやら違うらしい。理音を見たきり威嚇するように目を眇めた。
「機嫌悪いの?」
なのでちょっと聞いてみた。悪いのはわかっているのだが聞いてみたかった。いつまでも無言で襟元を持ったままだからだ。
もちろん、それがまた気に食わなかったらしい。
「お前は、」
呟くと途端、襟元から離れた手が伸びて、理音の両頬に触れた。
「いだっ!」
冷えた指先に触れられた頰を染めそうになったが、いきなりつねられた痛みに声を上げた。
フォーエンは何が気にくわないのか、理音の両頬を触れるどころかつまんだのだ。
しかも、容赦なく頬の肉を満遍なくつねって、ねじり上げた。
「いだい、いだいっ!」
「戻ってくるならば、なぜこちらに戻って来ない!戻ってくるならば、私の元だろうが!」
「ふえぇ?」
頰をつねる力がぎゅっと強まる。
「いだだだだっ!」
「こちらに戻ってから、四月は経っているだろうが。なぜ、別の場所へ降りた!こちらにはお前を探す術はないと言うのに!」
理音がこちらに戻ってきた正確な日付を知っている。フォーエンはなぜかそれを知り得ているようだ。だが、場所まではわからなかったらしい。
しかし、別の場所とはどう言う意味だろうか。何だかよくわからないが、フォーエンはどこかに理音がやってくると想定していたようだ。
それで違った場所にいたのが許せないのだと、手に力を込める。痛みに悲鳴を上げても、その力を緩めることをしない。
「こっちもろって来た時知らない町らったんだも。それにりかんがおかしいから、ろこのりらいだがわかんらくれ」
「何を言っているかわからん」
不機嫌な顔を隠しもせず、フォーエンは相変わらず偉そうに理音を見下してくる。
お前がつねっているから、はっきり話せないんだろうが。
「らったらはらせっ!」
言うと同時に右手が飛んだ。
ばちり、といいところにヒットしたおかげで頬の手が緩んだが、目の前の男の機嫌が急降下するのがわかった。
周りの男たちの空気が一瞬で冷える。
「暴力禁止、暴力禁止!」
「お前が言うな…」
両手でバツを作って次の攻撃を阻止する構えをとると、フォーエンは殴られた頰をさすりながら静かな声を出した。
この人キレると怖いんだ。殴ってから思い出す。
周りの男たちはその挙動を、困惑と恐れの表情で見つめていた。緊張した彼らの面持ちが、理音を後ずさりさせる。
「噛み付くのも禁止!」
首元を噛み切られんほど噛まれたのは、衝撃的な記憶として残っている。あの後しばらく傷が残っていたのだから、笑えない話だ。
しかしフォーエンはお怒りである。当然のように手を伸ばしてきたのを、理音は避けようとクロスした両手でカバーしようとした。けれど伸びた腕は腰に周り、そのまま理音の体を浮かせると肩に乗せたのだ。
「うわっ!」
バランスが悪いのはフォーエンが抱きかかえているからで、バランスを保つには持つ場所がなく、空を掴むかフォーエンの背を掴むかしかない。
「ちょ、こわ、高い!怖い!」
フォーエンは理音の悲鳴に耳を貸さず、そのまま歩み始めた。その歩みに男たちが一斉に道を開ける。
こうべを垂れたままの彼らは、理音を助けようともしない。
見てはいけないもののように目線を下げて、通り過ぎるフォーエンを待った。
歩み始めたフォーエンの肩の上では、高さが馬に乗ったようにある。それが揺れて掴むところもないものだから、そのまま背中を通り越して地面に落ちそうになる気がした。
細身のくせによく肩に人を乗せて歩けるものだ。思ったより力があって、思ったより鍛えているのだろう。
せめて背中でも掴もうかと思ったその鎧は、よく見れば血が染みていた。首元や腰や足元まで。
皇帝でもやはり彼は戦ったのだろう。守られているのではなく、自らが剣を持って自身が戦うのだ。
それがなぜかつらかった。フォーエンなら自ら戦いに行くのだとわかっていても、皇帝という重い地位にいるのならば、もう少し安全な所にいてもいいのではないかと、思わずにはいられない。
理音を抱えたまま、フォーエンは宮殿の中へと進んで行く。
見たことのある廊下は戦いの跡がなかった。敵はそこまで奥まった場所に入り込んでこなかったのだろう。普段通りの着物を着ている男たちもいる。従者たちはフォーエンの行く道を促すように行く先を開いた。
いつもの風景。戦いがなかったような、普段の宮殿の中だった。
「早く、平和になればいいね」
「…そうだな」
フォーエンの静かな返事に、理音は泣きそうになった。
彼の道が開ければいい。
そのために成せることがあれば、進んで成すだろう。
走りよった甲冑の男が膝をつけて報告すると、背を向けている目の前の男は頷いた。
重厚な紫紺のマントが背中を隠したが、その隙間から見える甲冑は金のこしらえで、線の細い彼の姿に厚みを持たせていた。手にあった剣は既に腰元にしまわれていたが、それを扱った跡は残っている。
後頭部でまとめていた烏羽色の長い髪はいつものように艶がなく、何かに濡れたか一房が固まって首元で折れていた。
それが何に濡れていたかは想像に難くない。
どうしていつも自分で戦うのだろう。
それがこちらの常識なのかはわからないが、彼が王宮の奥深くで大人しくしている性格ではないことをよく知っている。
足元に転がっているものから漂う匂いは慣れたもののはずだったが、あまりに濃い匂いに酔いそうになる。流れているそのものには、しっかりと目を向けることはできなかった。彼がここに留まっていることによって、男たちがそのものとなった体を庭の端へと運んだ。
この庭をまじまじと見ることはあまりなかった。いつも屋敷の内廊下を歩んでいたから、格子のはまった窓からじっくり見たことはない。けれど、きっと今ある様相とは全く違った景色が見られたのだろう。
続々と人が集まってきて、遠くから知っている顔が見えて顔がほころんだ。ヘキ卿だ。
「関係者の捕縛と鎮圧を終えましてございます。現在残党を追い、残った者は町の鎮火へ尽力しております」
ヘキ卿は髪を後ろで一つにまとめていたがまとまりなく乱れたままで、着ていた白銀の鎧の所々に血糊がついていた。鎧の反射のせいか、片膝をついたまま報告するヘキ卿の顔色は少なからず青ざめている。
彼も前戦へ進み、内大臣の協力者を捕らえたのだろう。
妻や、多分子供も。子供は内大臣の血を引いている。妻の所業を考えればその後も想像できた。ヘキ卿の働きにより彼自身は罰も軽くなるだろう。それでも妻の子は助けることはできない。それがどうなるか問うのは理音もできなかった。
「皇帝の花にお返しする物が」
ヘキ卿は胸元から何かを取り出すと、両手の平の上にそれを乗せて理音の前に差し出した。理音が渡した小瓶の入った布袋だ。
その手で返してと言ったことを覚えていたのだ。
理音は駆け寄ってそれを握りしめた。ヘキ卿が生きて戻ってきたことの証である。
「無事でよかったです」
「ご心配おかけしました」
ヘキ卿はやけに敬うような言葉を紡いで、頭を下げた。なぜそんな言葉を使うのか、考える前にヘキ卿は理音を仰いだ。
「なぜにこちらへ。あの場に迎えがありましたでしょうか」
迎えはない。料亭で大人していろと言われたのに飛び出してきただけだ。
理音は気まずい気持ちで目線を逸らした。
「放火犯がいたからー、そっち追っかけちゃってー。ちょっと色々やってー。知っている人がいたからここまで連れてきてもらっちゃいました」
「は?」
「あ、そー言えば荷物置きっぱなしだ。大変、あれなくなったら困る。取りに戻らなきゃ…」
制服とノートパソコンを料亭の部屋に置きっぱなしである。あれを失うのはまずい。急いで戻ろうと走り出したら首元がぎゅっと締まって、喉に着物が引っかかった。
うぐ、と声を出して、咳き込みそうになった。息ができないほどしっかり喉に入ったからだ。後ろから襟元を引っ張られ、走るのを止められたせいで、かなり喉にきつく入った。
「引き続き、残党の捕縛と鎮火を進めよ。被害状況の確認も速やかに行い、報告を」
耳に慣れた響く声音。低くも高くもないが、染み入るように内耳に入り込む。甘い声でもないのに、まるで蜂蜜のようにとろけるようだ。
その後ろからの声は、声質をそのままにして、どこか怒っていたようにも思えた。
見上げた相手はやはり眉を潜めていて、それどころか明らかに不機嫌さを出していた。目つきが悪すぎる。
きっぱりとした指示に、皆が首を垂れたまま応じた。各自持ち場に戻るのだと立ち上がって去ってしまう。
「あ、私も」
荷物を取りに行かねば。と進もうとしたが、襟元はまだ引っ張られた状態で、前に進まない。襟元を握っている手を離す気がないらしい。引っ張って離れようとしても、引いているその手は動かない。
「ヘキ卿、これの荷物を持ってこさせよ」
「え、いいよ。自分で取り行くから」
自分の荷物がどれだかわからぬだろうに。自分で取りに行った方が早いと思うのだが、後ろの男は襟元を離す気はないと握りしめた。
「お前は、ここにいろ」
久しぶりに会った、フォーエンはなぜかおかんむりである。
久々でも相変わらず麗しい顔をしているが、まとめた髪と鎧のせいでいつもの女っぽさが全く抜けてしまっている。こう見るとやはり男性なのだな。と失礼なことを思う。
内乱は終わりそうなのにまだぴりぴりしているのか、戦いの緊張で顔が強張っているのかと感じたがどうやら違うらしい。理音を見たきり威嚇するように目を眇めた。
「機嫌悪いの?」
なのでちょっと聞いてみた。悪いのはわかっているのだが聞いてみたかった。いつまでも無言で襟元を持ったままだからだ。
もちろん、それがまた気に食わなかったらしい。
「お前は、」
呟くと途端、襟元から離れた手が伸びて、理音の両頬に触れた。
「いだっ!」
冷えた指先に触れられた頰を染めそうになったが、いきなりつねられた痛みに声を上げた。
フォーエンは何が気にくわないのか、理音の両頬を触れるどころかつまんだのだ。
しかも、容赦なく頬の肉を満遍なくつねって、ねじり上げた。
「いだい、いだいっ!」
「戻ってくるならば、なぜこちらに戻って来ない!戻ってくるならば、私の元だろうが!」
「ふえぇ?」
頰をつねる力がぎゅっと強まる。
「いだだだだっ!」
「こちらに戻ってから、四月は経っているだろうが。なぜ、別の場所へ降りた!こちらにはお前を探す術はないと言うのに!」
理音がこちらに戻ってきた正確な日付を知っている。フォーエンはなぜかそれを知り得ているようだ。だが、場所まではわからなかったらしい。
しかし、別の場所とはどう言う意味だろうか。何だかよくわからないが、フォーエンはどこかに理音がやってくると想定していたようだ。
それで違った場所にいたのが許せないのだと、手に力を込める。痛みに悲鳴を上げても、その力を緩めることをしない。
「こっちもろって来た時知らない町らったんだも。それにりかんがおかしいから、ろこのりらいだがわかんらくれ」
「何を言っているかわからん」
不機嫌な顔を隠しもせず、フォーエンは相変わらず偉そうに理音を見下してくる。
お前がつねっているから、はっきり話せないんだろうが。
「らったらはらせっ!」
言うと同時に右手が飛んだ。
ばちり、といいところにヒットしたおかげで頬の手が緩んだが、目の前の男の機嫌が急降下するのがわかった。
周りの男たちの空気が一瞬で冷える。
「暴力禁止、暴力禁止!」
「お前が言うな…」
両手でバツを作って次の攻撃を阻止する構えをとると、フォーエンは殴られた頰をさすりながら静かな声を出した。
この人キレると怖いんだ。殴ってから思い出す。
周りの男たちはその挙動を、困惑と恐れの表情で見つめていた。緊張した彼らの面持ちが、理音を後ずさりさせる。
「噛み付くのも禁止!」
首元を噛み切られんほど噛まれたのは、衝撃的な記憶として残っている。あの後しばらく傷が残っていたのだから、笑えない話だ。
しかしフォーエンはお怒りである。当然のように手を伸ばしてきたのを、理音は避けようとクロスした両手でカバーしようとした。けれど伸びた腕は腰に周り、そのまま理音の体を浮かせると肩に乗せたのだ。
「うわっ!」
バランスが悪いのはフォーエンが抱きかかえているからで、バランスを保つには持つ場所がなく、空を掴むかフォーエンの背を掴むかしかない。
「ちょ、こわ、高い!怖い!」
フォーエンは理音の悲鳴に耳を貸さず、そのまま歩み始めた。その歩みに男たちが一斉に道を開ける。
こうべを垂れたままの彼らは、理音を助けようともしない。
見てはいけないもののように目線を下げて、通り過ぎるフォーエンを待った。
歩み始めたフォーエンの肩の上では、高さが馬に乗ったようにある。それが揺れて掴むところもないものだから、そのまま背中を通り越して地面に落ちそうになる気がした。
細身のくせによく肩に人を乗せて歩けるものだ。思ったより力があって、思ったより鍛えているのだろう。
せめて背中でも掴もうかと思ったその鎧は、よく見れば血が染みていた。首元や腰や足元まで。
皇帝でもやはり彼は戦ったのだろう。守られているのではなく、自らが剣を持って自身が戦うのだ。
それがなぜかつらかった。フォーエンなら自ら戦いに行くのだとわかっていても、皇帝という重い地位にいるのならば、もう少し安全な所にいてもいいのではないかと、思わずにはいられない。
理音を抱えたまま、フォーエンは宮殿の中へと進んで行く。
見たことのある廊下は戦いの跡がなかった。敵はそこまで奥まった場所に入り込んでこなかったのだろう。普段通りの着物を着ている男たちもいる。従者たちはフォーエンの行く道を促すように行く先を開いた。
いつもの風景。戦いがなかったような、普段の宮殿の中だった。
「早く、平和になればいいね」
「…そうだな」
フォーエンの静かな返事に、理音は泣きそうになった。
彼の道が開ければいい。
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