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142 ーレイシュンー
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「レイシュン様はこの城の主人であり、この州を治める州侯であられます。レイシュン様は、ひどい怪我をとても心配されておりましたよ」
新しい花を花器に生けながら、目が覚めた時からいてくれる女性が、他愛もなく話をしてくれる。
花弁の多い白と赤の花は鮮やかに美しく、家の庭で咲いている花に似ているなと思った。
天竺牡丹。つまりダリアだ。
開花時期は春や秋だった気がする。大輪の花を咲かせるので、母が好んで球根を植えていた。
ダリアの花言葉は感謝だか華麗だか、あと他にネガティブなものがあったはずだが。何だっただろうか。
母は庭に植えた花で押し花を作るのが趣味で、そう言った花言葉にも詳しい人だった。
最近家のことなんてとんと思い出さないのに、急にそんなことを思い出した。
身体もだが、心も弱っているのかもしれない。さすがに死にかけると眠ってばかりな分、余計なことを考えてしまう。
「綺麗な花ですね」
「ええ。ここは商人も多く入る町ですので、珍しい花も手に入るんですよ。ですので、城の庭園には色々な花が植えられているんです」
王宮にも多種多様な植物が植えられていた。リスが住んでいるような庭である。ここはセントラルパークかと言いたくなるほど広く、植物も植え放題だ。
ここの庭は、母が喜びそうな庭なのかもしれない。
理音は全く花に興味はないが、母の使う押し花用の花は年中必要なので、自宅の庭は万年花が咲くようになっていた。土地があればあるだけ植物を植えることだろう。
理音からすればリンゴや蜜柑など、食べられる実をつける木でも植えてくれた方がいいのだが、植えられて梅とカリンである。生で食べられない植物などいらない。
「城の庭師は、新しく手に入る植物を何でも植えてしまうんですよ。レイシュン様も土地が痩せても強く育つ植物を育てられないかと庭師に協力的なものなので、城の庭園は不思議な植物で溢れているんです」
「へえ…」
痩せても育つ植物。つまり飢えに苦しんだことがあったのだろう。もしくは、そう言った場所があるのかもしれない。
王宮から離れればそれだけフォーエンの目も届かなくなる。この国は広いようだし、末端は飢えに苦しんでいることも有り得た。
女性は理音が問うことに、悩むことなく答えてくれた。
ただ、聞いても聞くだけで、細かい話になるとそんなものがあるのだろうな。と理解することしかできなかった。
ラカンの町と聞いても、理音には一体それがどの辺りにある町で、レイシュンと言う者がフォーエンとどんな繋がりを持っているか、知ることはできなかった。
そんな州のどこかにこの町があって、そんな人が治めているのだと納得するだけだ。
この国のことは何も知らない。それを時折、もどかしく思った。
女性は理音の身の回りの世話はするが、理音が何かを問わない限り特に何かを教えてくれるわけではなく、身の回りの世話にだけ力を入れてくれた。
理音を気遣っているのか、それはわからない。
けれど今は、理音も何も言う気がしなかった。言っても、この怪我では泣くことしかできない。力任せに壁を蹴りつけることも、拳を上げて叩きつけることもできなかったからだ。
何故そんな怪我をしたのか。
今の所、女性も医師も誰も聞いてこない。
知っているのかもしれない。その理由を。
理音が誰なのかはわからないだろうが、賊に襲われて川へ飛び込んで逃げたのは知っているのかもしれない。
部屋には、理音が脱ぎ捨てた着物が折りたたんで長椅子の上に置いてあった。
襲われる前に脱ぎ散らかした着物だ。
川に飛び込む前に、それは地面に脱ぎ捨てた。
それが部屋にあるのだから、何が起きたのか、彼らは知っているのだろう。
彼らは理音に当たり障りなく接し、そして休むように言った。
どの道身体はぼろぼろで、気軽に動ける状態ではなかった。右手足の骨折は中々不便で、身体を動かせば痛みがあちこちに走ると言う凄まじさである。眠っているしかできることはない。傷のせいで身体は熱っぽく、起きていると頭痛やめまいがした。
そうして眠りに入ると、虚ろな感覚が襲ってくる。
眠っているのか、目覚めているのか、横になっているとどちらなのかわからなくなってくるのだ。
波に揺れるような感覚は川に流れたからだろうか。揺れる身体があの時の光景を思い出させる。
自分が何者なのかも知らない人々に、命をかけてまで逃亡を助けられる。
皆倒れたのに、裏切り者だけが残っている。
そうしてまた、自分も。
フォーエンにこのことは届くのだろうか。
自分が襲われ、犠牲者が出たことを、彼の耳まで誰が届けてくれるだろうか。
それを聞いたフォーエンはひどく悔やむのだろうか。
ただ犠牲を出しただけで、犯人が誰なのかもわからない。囮役は役に立たなかった。フォーエンを狙う者たちをあぶり出すための囮なのに。
内通者が一体誰と通じているのか、裏切り者がいたことをフォーエンに伝えなければならない。
けれど、ここからどうやってフォーエンに伝えればいいのだろう。
この場所が彼にとって敵陣でないことがわからない。何よりも、自分の存在をどう説明すればいいのかわからない。
怪我が治るには時間がかかる。治る前には自分の世界に戻れる可能性もあった。
どうすればいいのだろう。
フォーエンにとって何が最良となるのか、ただそればかり考えては、夢を見た。
「思ったより、幼いな。だからこそ、あの川に飛び込めたか」
「熱はもうなく、あとは怪我の治り具合ですが、足は当分難しいでしょう。歩けるようになるまで時間がかかります。細かな傷は治りかけておりますが、背中の傷は痕が残るかと」
「女の子には、辛いことだな。顔に傷がないのがせめてもの…か。しばらくは彼女の様子を定期的に見てくれ」
「承知致しました」
扉を開く音と、足音が遠のくのが耳に届いて、うつらとした意識の中で、数人の気配を感じた。
「いずこかの姫でしょうか」
「そうだな。だが、そのような姫がどこぞへ行く気だったのか」
「千客万来ですね。次から次へと」
声は届いていた。けれどそれが誰の声なのか、何の話をしていたのか、よくわからなかった。
ずっと眠っているのに、ずっと疲れている。
眠り続けているから、疲れているのかもしれない。
気配はまだ部屋の中だ。それだけは感じて、気配の近さに、うつつの中から何とか出ようと瞼を動かした。
ちらちらと瞼にうつる、朱色の煌めき。まるで、祖父から聞いた星のように瞬いては消えて現れる。
「…かの、ぷす…?」
目に入る、朱玉。まるで血のような、濃い赤い色。
「かのぷす…?」
つぶやきがおうむ返しにされる。男の声だ。聞いたことのない声音は低くも高くもなく、ただ耳に静かに響く通った声だった。
「やあ、起きた?うるさかったかな」
片耳に飾られた、真紅の玉。ルビーのような美しさは、先ほど見えた赤ではない。
驚く程美しい、赤色の瞳。
鼻と鼻がつきそうなくらい近づいて、上から見下ろしていた。その声の主が目の前にいることにやっと気付いた。
ぼごん!
「いっった!」
勢いよく飛んだ理音の右手は、添え木ごと男の頰にヒットした。
条件反射としか言いようがない。
掛け布団を捲り上げて、顔に、いや、頭に、まるでシーソーで重石を乗せられたかのように、理音の腕は男に勢いよくすっ飛んだのだ。
「ひどいな。よりによって、怪我している腕を振り回すなんて。近く見すぎていたのは私だけれど」
言葉にしないでも顔が近かったことは自覚しているらしい。男はゆらりと仰け反って頰を抑えながら身体を戻す。殴られた頭を軽く撫でると、腰掛けていた寝台から腰を浮かせた。
見知らぬ男が寝起きで覗いていれば悲鳴を上げるのが先だろうが、腕が先に出るのが理音だ。顔にも不審がありあり出ているのだろう。男は困った様に頭をかいた。
「自業自得かと。若い女性の寝所で顔を近づけているあなたが悪いと存じますが」
その声は男の後ろから聞こえた。目の前の男の他にもう一人男がいる。部屋には二人の男がいた。二人とも兵士ではないようだ。前に見た兵士らしき男とは違う服を着ている。 その服も何枚か重ね着されており、装飾品も見られたので、兵士より身分は高そうだった。
「起きられる?手伝おうか?」
左手だけで体を起こそうとする理音に懲りずに近づこうとする男は、にっこりと笑顔で手を伸ばしてくる。袖からは指しか見えない。その指と一緒に、腰元の帯に目がいった。
帯色の美しさは赤色の着物に似合う、鮮やかな橙。着物には葉や花、鳥の刺繍がしてあるか、差し色が艶やかで、帯とともに飾られた宝石はやはりルビーのような輝く赤だった。その宝石のサイズは博物館にでも飾られていそうな大きさがある。何カラットと表現するなら、六十とか七十とか異次元のカラット数かもしれない。
男の焦げ茶色の髪は結ばれていたが、耳元に一房が垂れている。こちらの身分の高い人は皆髪が背中くらいまで長いのかと思っていたが、この男は肩くらいまでしか伸ばしていない。格好が高位に見えたが、髪の長さがそうではなさそうだった。けれど、先ほどの話し方からすれば身分はあるのだろう。
ここ最近フォーエンやらヘキ卿やら美麗な男を見すぎているせいか、目が肥えてきているかもしれない。茶髪の男は彼らに比べたら目立つ容姿はしていなかったが、整った顔をしていた。多分、フォーエンなどを見ていなければ、普通にかっこいいな、と思うくらいには整っている。
瞳の色は陽の光によって色が変わるのか、顔が遠のけば濃い緋色に見えた。
人を覗き込んでいた男は、黒緋の瞳と赤色の耳飾りをして、満面の笑みを浮かべる。
誰かに似ているなと思ったが、それが誰なのかわからなかった。友人たちが好むモデルや俳優に似ているのかもしれない。何故なら何となく女性好きのする顔だったからだ。次いで全体的にチャラそうに見えた。茶髪で衣装が派手なせいだろうか。
対して後ろにいる男は黒を基調にした服を着ていたが、髪も目も色素の薄い青を含んだ銀色のものだった。切れ長の目は鋭いが右目元にホクロがあるので色っぽい。肌も透き通るような白である。陽に当たったことなさそうだな、と勝手に想像する。フォーエンとは違った肌の白さだ。青白いと言った方がいいだろうか。冷たい感じがするのはそのせいなのかどうか。
とりあえずこちらで見るのは初めての、珍しい色を纏っていた。こちらの男は髪を結んで背に流していた。背中真ん中辺りまであるので、本来なら普通の長さである。
「ほら、お前の顔が怖いから怯えるだろうが。怖がらなくていいよ。これは私の部下だからね」
怯えたわけではないが、青灰色の瞳を持った男をつい凝視してしまった。ぽかんと口を開けていたので、すぐに閉じる。
男も言われ慣れているのか、理音の視線をため息混じりに逸らした。失礼な真似をしたようだ。
その男も重ね着をしていたが、こげ茶の毛色の男よりずっと地味な装いだった。特に刺繍もない布だったが、黒にも色があり、布の明暗で模様を描いている。地味でも黒は銀色の髪を際立てており、質の良さを感じた。
身長が高いようで、茶髪の男が隣に立つと茶髪の男の身長が少し低く感じる。しかし扉の高さと比較すれば銀髪の男の身長が高すぎるのだろう。理音が隣に立ったら肘置きに丁度いいかもしれない。
青灰色の瞳の男は無言のまま逸らした瞳を戻すと、理音を射抜くように見た。それは茶色の男のように笑顔ではなく、観察するような視線だ。
「体調は、どう?熱はないって聞いたけれどね。ずっと眠っているのも疲れるだろう」
「…大丈夫、です」
理音は体をずらしながら何とか起き上がる。茶髪の男は側の椅子に座り込んだ。後ろで立ち尽くしている男はそのままだ。部下と言っていたので椅子に座るつもりはないようだ。その割にその部下は口が達者のように聞こえたが気のせいだろうか。
もぞもぞと起き上がり、何とかベッドの上で座ることに成功する。しかし、背もたれをもらわないと座っていられないのが実情である。
それに気付いているか、侍女に聞いているのか、茶髪の男は微かに目を眇めると、長椅子に置いてあった大きめなクッションを銀髪の男に持って来させ、理音の背に置いてくれた。
「…立つのは難しそうだね。背中の痛みはどう?」
茶髪の男は遠慮がちにそれを口にした。
背中の痛み。言われて気付く。気付かなかったのは全身が痛かったからだ。どこが痛いとか考えていられない。あちこち痛いし、どこが一番痛いとかはない。
けれど、背中は確かに痛かった。傷が残るほどの傷があるとは思わなかったが。
目覚める前に聞こえた会話は、医師との会話なのだろう。医師は背中の傷が残ると言っていた。そうなのだろうなと一人納得する。
「大丈夫です。ただ不便なだけで」
「ゆっくり、治すといいよ。ここにいるのは問題ない」
茶髪の男にそう優しく言われて、理音は静かに頷いた。
ただ、心にあるものは口にしない。安堵はしたが、それで安心しきってはまずいようだ。後ろの銀髪の男は口を挟まず、ただ見つめるだけだったからだ。見た感じ歓迎しているようには思えない。茶髪の男の方が高位のようなので、今は傍観するつもりなのだろう。
だからだろうか、銀髪の男の視線は気になった。
怪我をしているとは言え理音は招かれざる客だろう。理音の正体を見定めているのかもしれない。
歓迎されていないのは当然だ。命を狙われた身元不明の女なぞ、問題しかついてこない。
「名前を聞いていなかったね。私の名は、レイシュン」
「レイシュンって」
侍女から聞いた名だ。この州をまとめる州侯で、城の主人である。
この若さで州侯とは。レイシュンはどう見ても三十代には見えない。いっても二十代後半に見えた。悪くしたら二十代前半である。そんな若さで州侯とは、規模はわからないが若すぎるだろう。
フォーエンが皇帝であることを考えれば、大した話ではないかもしれないが、世襲で継いでいるのだろうか。
「だから、ここにいて大丈夫だよ」
レイシュンは人好きのする笑みをする。若干タレ目のせいか、にこやかな笑顔は随分と甘そうな雰囲気を醸し出していた。そこに理音も少なからず安堵する。
この男の城なのだから、ここにいて良いということだ。主人がいていいと言うのだから、いていいのだろう。
レイシュンは人の良さそうな笑みを向け、無言でいる銀髪の男をギョウエンと紹介してくれた。
茶色の髪の男が州候ならば、銀髪の男はその補佐役であろうか。
ならばこそ、不安に思う。
この男は、フォーエンの敵なのか、味方なのか。
「君の名前は?」
「…東雲理音です」
「何て呼べばいい?しののめりおんちゃん?長いね」
「…理音です」
聞き慣れない名前だと、どこが苗字でどこが名前なのかわからないのだろう。繋げられて、理音は軽く苦笑いをした。
しかし、レイシュンは微かに眉を潜める。後ろにいるギョウエンも瞼をぴくりと動かした。
「シノノメは家名なの?名を与えられているんだね」
変なことを言っただろうか。名を与えるとは、苗字のことを指しているのだろうけれど、それが何の意味を持っているのかわからなかった。
そう言えばフォーエンたちに苗字の話をしたことはない。苗字に特別な意味でもあるのだろうか。
レイシュンは答えない理音に質問を続けた。
「君が流れていた場所より上流で男たちが死んでいた。そこに脱ぎ捨ててあった衣装があったけれど、あれは君が着ていたものだよね」
指差された着物に理音は押し黙る。
「身分が高いようだけれど、賊に心当たりは?」
「…わかりません」
心当たりはある。けれど、何者なのかわからない。この目の前の男であるかも。
「そう。死体は、結構な人数だったね。けれど、皆君の兵士たちのようだった。犠牲になったのは君を護る者たちだけ。賊が何者のなのかわからないけれど、不審な者たちがいないかは調べさせている」
「…そうですか」
理音は胸をギュッとつかむ。
やはり、皆死んだのだ。
「君は、どこから来て、どこへ行くつもりだったの?」
その質問はいつか来ると思っていた。それにどう答えるのか、ずっと迷っていた。
相手が犯人ではなくともフォーエンの敵か味方かで、自分の今の状況がフォーエンに伝わるのか伝わらないかが変わる。
けれど、このことをフォーエンに何とか伝えなければならない。
囮として成功したが、相手を見つけることができていないこと。フォーエンに仇なす者が彼の近くにいること。それをフォーエンに知らせなければならないのだ。
だから迷った。自分の説明をどうやってすべきかを。
「王都より、キ州シジュウの町へ行く途中でした」
「キ州?ここからは反対の方向だよ?」
「え?」
「ここは、ジ州、ラカンの町。王都より西になる。キ州は王都より東となる。全くの逆方向だ」
レイシュンの言葉に自分の耳を疑った。
そんなはずはない。
どこへ行くかはフォーエンから聞いたのだ。キ州のシジュウへ行く。そう言ったのは彼自身である。
では、誰が方向を変えたのだ。
フォーエンがいる場所で、指示を出すのは。
まさかと言う思いが、本当に?と言う疑問に変わった。
コウユウは、本当に、自分を殺す気だったのか。
新しい花を花器に生けながら、目が覚めた時からいてくれる女性が、他愛もなく話をしてくれる。
花弁の多い白と赤の花は鮮やかに美しく、家の庭で咲いている花に似ているなと思った。
天竺牡丹。つまりダリアだ。
開花時期は春や秋だった気がする。大輪の花を咲かせるので、母が好んで球根を植えていた。
ダリアの花言葉は感謝だか華麗だか、あと他にネガティブなものがあったはずだが。何だっただろうか。
母は庭に植えた花で押し花を作るのが趣味で、そう言った花言葉にも詳しい人だった。
最近家のことなんてとんと思い出さないのに、急にそんなことを思い出した。
身体もだが、心も弱っているのかもしれない。さすがに死にかけると眠ってばかりな分、余計なことを考えてしまう。
「綺麗な花ですね」
「ええ。ここは商人も多く入る町ですので、珍しい花も手に入るんですよ。ですので、城の庭園には色々な花が植えられているんです」
王宮にも多種多様な植物が植えられていた。リスが住んでいるような庭である。ここはセントラルパークかと言いたくなるほど広く、植物も植え放題だ。
ここの庭は、母が喜びそうな庭なのかもしれない。
理音は全く花に興味はないが、母の使う押し花用の花は年中必要なので、自宅の庭は万年花が咲くようになっていた。土地があればあるだけ植物を植えることだろう。
理音からすればリンゴや蜜柑など、食べられる実をつける木でも植えてくれた方がいいのだが、植えられて梅とカリンである。生で食べられない植物などいらない。
「城の庭師は、新しく手に入る植物を何でも植えてしまうんですよ。レイシュン様も土地が痩せても強く育つ植物を育てられないかと庭師に協力的なものなので、城の庭園は不思議な植物で溢れているんです」
「へえ…」
痩せても育つ植物。つまり飢えに苦しんだことがあったのだろう。もしくは、そう言った場所があるのかもしれない。
王宮から離れればそれだけフォーエンの目も届かなくなる。この国は広いようだし、末端は飢えに苦しんでいることも有り得た。
女性は理音が問うことに、悩むことなく答えてくれた。
ただ、聞いても聞くだけで、細かい話になるとそんなものがあるのだろうな。と理解することしかできなかった。
ラカンの町と聞いても、理音には一体それがどの辺りにある町で、レイシュンと言う者がフォーエンとどんな繋がりを持っているか、知ることはできなかった。
そんな州のどこかにこの町があって、そんな人が治めているのだと納得するだけだ。
この国のことは何も知らない。それを時折、もどかしく思った。
女性は理音の身の回りの世話はするが、理音が何かを問わない限り特に何かを教えてくれるわけではなく、身の回りの世話にだけ力を入れてくれた。
理音を気遣っているのか、それはわからない。
けれど今は、理音も何も言う気がしなかった。言っても、この怪我では泣くことしかできない。力任せに壁を蹴りつけることも、拳を上げて叩きつけることもできなかったからだ。
何故そんな怪我をしたのか。
今の所、女性も医師も誰も聞いてこない。
知っているのかもしれない。その理由を。
理音が誰なのかはわからないだろうが、賊に襲われて川へ飛び込んで逃げたのは知っているのかもしれない。
部屋には、理音が脱ぎ捨てた着物が折りたたんで長椅子の上に置いてあった。
襲われる前に脱ぎ散らかした着物だ。
川に飛び込む前に、それは地面に脱ぎ捨てた。
それが部屋にあるのだから、何が起きたのか、彼らは知っているのだろう。
彼らは理音に当たり障りなく接し、そして休むように言った。
どの道身体はぼろぼろで、気軽に動ける状態ではなかった。右手足の骨折は中々不便で、身体を動かせば痛みがあちこちに走ると言う凄まじさである。眠っているしかできることはない。傷のせいで身体は熱っぽく、起きていると頭痛やめまいがした。
そうして眠りに入ると、虚ろな感覚が襲ってくる。
眠っているのか、目覚めているのか、横になっているとどちらなのかわからなくなってくるのだ。
波に揺れるような感覚は川に流れたからだろうか。揺れる身体があの時の光景を思い出させる。
自分が何者なのかも知らない人々に、命をかけてまで逃亡を助けられる。
皆倒れたのに、裏切り者だけが残っている。
そうしてまた、自分も。
フォーエンにこのことは届くのだろうか。
自分が襲われ、犠牲者が出たことを、彼の耳まで誰が届けてくれるだろうか。
それを聞いたフォーエンはひどく悔やむのだろうか。
ただ犠牲を出しただけで、犯人が誰なのかもわからない。囮役は役に立たなかった。フォーエンを狙う者たちをあぶり出すための囮なのに。
内通者が一体誰と通じているのか、裏切り者がいたことをフォーエンに伝えなければならない。
けれど、ここからどうやってフォーエンに伝えればいいのだろう。
この場所が彼にとって敵陣でないことがわからない。何よりも、自分の存在をどう説明すればいいのかわからない。
怪我が治るには時間がかかる。治る前には自分の世界に戻れる可能性もあった。
どうすればいいのだろう。
フォーエンにとって何が最良となるのか、ただそればかり考えては、夢を見た。
「思ったより、幼いな。だからこそ、あの川に飛び込めたか」
「熱はもうなく、あとは怪我の治り具合ですが、足は当分難しいでしょう。歩けるようになるまで時間がかかります。細かな傷は治りかけておりますが、背中の傷は痕が残るかと」
「女の子には、辛いことだな。顔に傷がないのがせめてもの…か。しばらくは彼女の様子を定期的に見てくれ」
「承知致しました」
扉を開く音と、足音が遠のくのが耳に届いて、うつらとした意識の中で、数人の気配を感じた。
「いずこかの姫でしょうか」
「そうだな。だが、そのような姫がどこぞへ行く気だったのか」
「千客万来ですね。次から次へと」
声は届いていた。けれどそれが誰の声なのか、何の話をしていたのか、よくわからなかった。
ずっと眠っているのに、ずっと疲れている。
眠り続けているから、疲れているのかもしれない。
気配はまだ部屋の中だ。それだけは感じて、気配の近さに、うつつの中から何とか出ようと瞼を動かした。
ちらちらと瞼にうつる、朱色の煌めき。まるで、祖父から聞いた星のように瞬いては消えて現れる。
「…かの、ぷす…?」
目に入る、朱玉。まるで血のような、濃い赤い色。
「かのぷす…?」
つぶやきがおうむ返しにされる。男の声だ。聞いたことのない声音は低くも高くもなく、ただ耳に静かに響く通った声だった。
「やあ、起きた?うるさかったかな」
片耳に飾られた、真紅の玉。ルビーのような美しさは、先ほど見えた赤ではない。
驚く程美しい、赤色の瞳。
鼻と鼻がつきそうなくらい近づいて、上から見下ろしていた。その声の主が目の前にいることにやっと気付いた。
ぼごん!
「いっった!」
勢いよく飛んだ理音の右手は、添え木ごと男の頰にヒットした。
条件反射としか言いようがない。
掛け布団を捲り上げて、顔に、いや、頭に、まるでシーソーで重石を乗せられたかのように、理音の腕は男に勢いよくすっ飛んだのだ。
「ひどいな。よりによって、怪我している腕を振り回すなんて。近く見すぎていたのは私だけれど」
言葉にしないでも顔が近かったことは自覚しているらしい。男はゆらりと仰け反って頰を抑えながら身体を戻す。殴られた頭を軽く撫でると、腰掛けていた寝台から腰を浮かせた。
見知らぬ男が寝起きで覗いていれば悲鳴を上げるのが先だろうが、腕が先に出るのが理音だ。顔にも不審がありあり出ているのだろう。男は困った様に頭をかいた。
「自業自得かと。若い女性の寝所で顔を近づけているあなたが悪いと存じますが」
その声は男の後ろから聞こえた。目の前の男の他にもう一人男がいる。部屋には二人の男がいた。二人とも兵士ではないようだ。前に見た兵士らしき男とは違う服を着ている。 その服も何枚か重ね着されており、装飾品も見られたので、兵士より身分は高そうだった。
「起きられる?手伝おうか?」
左手だけで体を起こそうとする理音に懲りずに近づこうとする男は、にっこりと笑顔で手を伸ばしてくる。袖からは指しか見えない。その指と一緒に、腰元の帯に目がいった。
帯色の美しさは赤色の着物に似合う、鮮やかな橙。着物には葉や花、鳥の刺繍がしてあるか、差し色が艶やかで、帯とともに飾られた宝石はやはりルビーのような輝く赤だった。その宝石のサイズは博物館にでも飾られていそうな大きさがある。何カラットと表現するなら、六十とか七十とか異次元のカラット数かもしれない。
男の焦げ茶色の髪は結ばれていたが、耳元に一房が垂れている。こちらの身分の高い人は皆髪が背中くらいまで長いのかと思っていたが、この男は肩くらいまでしか伸ばしていない。格好が高位に見えたが、髪の長さがそうではなさそうだった。けれど、先ほどの話し方からすれば身分はあるのだろう。
ここ最近フォーエンやらヘキ卿やら美麗な男を見すぎているせいか、目が肥えてきているかもしれない。茶髪の男は彼らに比べたら目立つ容姿はしていなかったが、整った顔をしていた。多分、フォーエンなどを見ていなければ、普通にかっこいいな、と思うくらいには整っている。
瞳の色は陽の光によって色が変わるのか、顔が遠のけば濃い緋色に見えた。
人を覗き込んでいた男は、黒緋の瞳と赤色の耳飾りをして、満面の笑みを浮かべる。
誰かに似ているなと思ったが、それが誰なのかわからなかった。友人たちが好むモデルや俳優に似ているのかもしれない。何故なら何となく女性好きのする顔だったからだ。次いで全体的にチャラそうに見えた。茶髪で衣装が派手なせいだろうか。
対して後ろにいる男は黒を基調にした服を着ていたが、髪も目も色素の薄い青を含んだ銀色のものだった。切れ長の目は鋭いが右目元にホクロがあるので色っぽい。肌も透き通るような白である。陽に当たったことなさそうだな、と勝手に想像する。フォーエンとは違った肌の白さだ。青白いと言った方がいいだろうか。冷たい感じがするのはそのせいなのかどうか。
とりあえずこちらで見るのは初めての、珍しい色を纏っていた。こちらの男は髪を結んで背に流していた。背中真ん中辺りまであるので、本来なら普通の長さである。
「ほら、お前の顔が怖いから怯えるだろうが。怖がらなくていいよ。これは私の部下だからね」
怯えたわけではないが、青灰色の瞳を持った男をつい凝視してしまった。ぽかんと口を開けていたので、すぐに閉じる。
男も言われ慣れているのか、理音の視線をため息混じりに逸らした。失礼な真似をしたようだ。
その男も重ね着をしていたが、こげ茶の毛色の男よりずっと地味な装いだった。特に刺繍もない布だったが、黒にも色があり、布の明暗で模様を描いている。地味でも黒は銀色の髪を際立てており、質の良さを感じた。
身長が高いようで、茶髪の男が隣に立つと茶髪の男の身長が少し低く感じる。しかし扉の高さと比較すれば銀髪の男の身長が高すぎるのだろう。理音が隣に立ったら肘置きに丁度いいかもしれない。
青灰色の瞳の男は無言のまま逸らした瞳を戻すと、理音を射抜くように見た。それは茶色の男のように笑顔ではなく、観察するような視線だ。
「体調は、どう?熱はないって聞いたけれどね。ずっと眠っているのも疲れるだろう」
「…大丈夫、です」
理音は体をずらしながら何とか起き上がる。茶髪の男は側の椅子に座り込んだ。後ろで立ち尽くしている男はそのままだ。部下と言っていたので椅子に座るつもりはないようだ。その割にその部下は口が達者のように聞こえたが気のせいだろうか。
もぞもぞと起き上がり、何とかベッドの上で座ることに成功する。しかし、背もたれをもらわないと座っていられないのが実情である。
それに気付いているか、侍女に聞いているのか、茶髪の男は微かに目を眇めると、長椅子に置いてあった大きめなクッションを銀髪の男に持って来させ、理音の背に置いてくれた。
「…立つのは難しそうだね。背中の痛みはどう?」
茶髪の男は遠慮がちにそれを口にした。
背中の痛み。言われて気付く。気付かなかったのは全身が痛かったからだ。どこが痛いとか考えていられない。あちこち痛いし、どこが一番痛いとかはない。
けれど、背中は確かに痛かった。傷が残るほどの傷があるとは思わなかったが。
目覚める前に聞こえた会話は、医師との会話なのだろう。医師は背中の傷が残ると言っていた。そうなのだろうなと一人納得する。
「大丈夫です。ただ不便なだけで」
「ゆっくり、治すといいよ。ここにいるのは問題ない」
茶髪の男にそう優しく言われて、理音は静かに頷いた。
ただ、心にあるものは口にしない。安堵はしたが、それで安心しきってはまずいようだ。後ろの銀髪の男は口を挟まず、ただ見つめるだけだったからだ。見た感じ歓迎しているようには思えない。茶髪の男の方が高位のようなので、今は傍観するつもりなのだろう。
だからだろうか、銀髪の男の視線は気になった。
怪我をしているとは言え理音は招かれざる客だろう。理音の正体を見定めているのかもしれない。
歓迎されていないのは当然だ。命を狙われた身元不明の女なぞ、問題しかついてこない。
「名前を聞いていなかったね。私の名は、レイシュン」
「レイシュンって」
侍女から聞いた名だ。この州をまとめる州侯で、城の主人である。
この若さで州侯とは。レイシュンはどう見ても三十代には見えない。いっても二十代後半に見えた。悪くしたら二十代前半である。そんな若さで州侯とは、規模はわからないが若すぎるだろう。
フォーエンが皇帝であることを考えれば、大した話ではないかもしれないが、世襲で継いでいるのだろうか。
「だから、ここにいて大丈夫だよ」
レイシュンは人好きのする笑みをする。若干タレ目のせいか、にこやかな笑顔は随分と甘そうな雰囲気を醸し出していた。そこに理音も少なからず安堵する。
この男の城なのだから、ここにいて良いということだ。主人がいていいと言うのだから、いていいのだろう。
レイシュンは人の良さそうな笑みを向け、無言でいる銀髪の男をギョウエンと紹介してくれた。
茶色の髪の男が州候ならば、銀髪の男はその補佐役であろうか。
ならばこそ、不安に思う。
この男は、フォーエンの敵なのか、味方なのか。
「君の名前は?」
「…東雲理音です」
「何て呼べばいい?しののめりおんちゃん?長いね」
「…理音です」
聞き慣れない名前だと、どこが苗字でどこが名前なのかわからないのだろう。繋げられて、理音は軽く苦笑いをした。
しかし、レイシュンは微かに眉を潜める。後ろにいるギョウエンも瞼をぴくりと動かした。
「シノノメは家名なの?名を与えられているんだね」
変なことを言っただろうか。名を与えるとは、苗字のことを指しているのだろうけれど、それが何の意味を持っているのかわからなかった。
そう言えばフォーエンたちに苗字の話をしたことはない。苗字に特別な意味でもあるのだろうか。
レイシュンは答えない理音に質問を続けた。
「君が流れていた場所より上流で男たちが死んでいた。そこに脱ぎ捨ててあった衣装があったけれど、あれは君が着ていたものだよね」
指差された着物に理音は押し黙る。
「身分が高いようだけれど、賊に心当たりは?」
「…わかりません」
心当たりはある。けれど、何者なのかわからない。この目の前の男であるかも。
「そう。死体は、結構な人数だったね。けれど、皆君の兵士たちのようだった。犠牲になったのは君を護る者たちだけ。賊が何者のなのかわからないけれど、不審な者たちがいないかは調べさせている」
「…そうですか」
理音は胸をギュッとつかむ。
やはり、皆死んだのだ。
「君は、どこから来て、どこへ行くつもりだったの?」
その質問はいつか来ると思っていた。それにどう答えるのか、ずっと迷っていた。
相手が犯人ではなくともフォーエンの敵か味方かで、自分の今の状況がフォーエンに伝わるのか伝わらないかが変わる。
けれど、このことをフォーエンに何とか伝えなければならない。
囮として成功したが、相手を見つけることができていないこと。フォーエンに仇なす者が彼の近くにいること。それをフォーエンに知らせなければならないのだ。
だから迷った。自分の説明をどうやってすべきかを。
「王都より、キ州シジュウの町へ行く途中でした」
「キ州?ここからは反対の方向だよ?」
「え?」
「ここは、ジ州、ラカンの町。王都より西になる。キ州は王都より東となる。全くの逆方向だ」
レイシュンの言葉に自分の耳を疑った。
そんなはずはない。
どこへ行くかはフォーエンから聞いたのだ。キ州のシジュウへ行く。そう言ったのは彼自身である。
では、誰が方向を変えたのだ。
フォーエンがいる場所で、指示を出すのは。
まさかと言う思いが、本当に?と言う疑問に変わった。
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