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215 ー改革ー
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「今日お前を呼んだのは、一人会わせたい者がいるからだ」
フォーエンは言いながら軽く顔を上げて扉の前にいるコウユウに合図を送る。本日はいつものフォーエンの広い執務室に呼ばれて来ていたわけだが、サウェ卿とハク大輔はいなかった。
代わりにコウユウが扉の前で待ち構えていて、一瞬引き返そうかと思ったが、扉の番をしているだけで特に会話もしない。そのコウユウが扉を開けると、一人の男性が立っていた。
焦茶色の着物に銀や金の刺繍がされている物を羽織っていたが、落ち着いた色で嫌味がない。頭の上にあるお団子は少し白毛混じりだが、顔はそこまで老けていなかった。鼻の下にある左右に分かれた髭が可愛らしい。
しかし顔に見覚えがあり、つい立ち上がってしまった。フォーエンがすかさず座るよう促す。
ウの内大臣だ。
会っていいのか?その視線を送ると、フォーエンは軽く横目で見るだけで何も言わず、フォーエンから距離をとって平伏するウの内大臣の挨拶を受ける。しかしウの内大臣はなぜかこちらにも平伏した。
「リオン様には初めてお目にかかります」
え?と言う返事をかろうじて堪えた。フォーエンが挨拶を遮ったからだ。
「ここで頭を下げる必要はない。先日の会議の記録を」
フォーエンの言葉にウの大臣が立ち上がり、頭を下げながら折り畳められた紙をフォーエンに渡した。A4の紙などではなく、時代劇に出てくる長い紙だ。それを読むように渡してくる。
内容は、医師の能力の統一、学校の成立、食物の移送についてだった。
「冬を越えたら南に使者を出す。お前の言う留学制度について南国に許可を得るためだ」
それらが会議で決まったらしい。これを一気に行うと言う。
ナラカの言葉はこれのことか。フォーエンは本格的に改革を行うつもりだ。
理音は記された決定事項に首を傾げた。
「食物の移送って、前に言っていた冬の食料不足の件だよね。移送できるような目処はついたの?」
「こちらに届いた分、戻すだけだ」
なるほど、収穫祭で送られた分、本来なら王都、皇帝陛下中心に分けられる供物を、別の食物で返す。それを行うことによって収穫祭での皇帝の仕打ちを緩和する狙いだ。しかし、本来の威厳が損なわれると反対はあったようだ。
足元を見られては困ると言う者たちは多いだろう。だが、豊穣を願う儀式と言いつつ暴利に食料を奪うだけより、感謝として別の物を送った方が相手側からは感謝されると思う。
「そして、今後農民に学びを行うにも、農民の働きに助けになるような案が必要だ」
学校を設立しても学ぶ者がいなければ意味がない。手が欲しい農民の子を学校に取られると思われても困る。だとしたらどうする?と案に問われて、理音もうなる。
こちらで気になったのは農作方法の周知だ。それは土地によってまちまちだろうが、リンネのように独自で研究している者もいる。
「まずは農作物が多く作れるような工夫が必要だよね。農業の方法?促進するための統一?こっちって牛とか使うの?」
「人によるな。牛を飼うだけの財力も必要だ」
生き物を飼う餌代も難しいし場所も必要だ。簡単にはいかない。
「じゃあ、農耕器具の改良。道の整備。肥料の研究。あと病気にならないように、マニュアル、えーと、本を作る」
「本?文字が読めぬ」
「別に文字だけで本を作る必要はないよ。絵があるでしょ。これはやっていい。これはやってはいけない。視覚で捉える本。文字を入れてもいいよ。でも絵で全てが理解できないと意味ない。わたしがこっちで気になったのは、自然物に触れてなる病気に無頓着なことなんだ。水や土、汚れに対して危機感が薄い。病気になったらそれこそ手伝いが必要になるでしょ。病気にならないような、当たり前の知識は知っておいた方がいいと思う」
「風邪のような?」
「それもあるけど、農業をする人になりやすい病気があると思う。あとは風土病かな。こっちって土地病ないの?この土地ではおかしな病気が流行りやすいとか」
フォーエンは無言になるとウの内大臣を見やる。静かに頷いて、フォーエンも頷いた。
「浮腫を持つ病や、熱病など耳にしたことはある」
「そう言う病気の原因究明は難しいと思うけど、そうならないための、単純な衛生観念を教えた方がいいと思う」
「お前が言う衛生観念は、我々にも必要なものだろうな」
至極真面目な顔で言われて、前回の風邪事件に懲りているのがわかる。それは否定できないが、しかし土をいじる人たちの病気はもっと多かろう。リンネがほとんど裸足のような状態で土を踏んでいたことを思うと、病気はあるはずだ。
「土地病については理由は色々あるだろうから、原因を調べるのは時間がかかると思う。ただ、肥料によっては寄生虫がいるし、実は水も土も危険な場合があるから、ある程度の知識は持っておかないと。王都は綺麗な街だけど、農村もそうであるわけじゃないでしょ?」
「同じには語れないな」
フォーエンの若干の渋面に、また仕事を増やしただろう。当然のように手元の筆を取って書き記した。優先順位を作ってもらうしかない。
「農工具や肥料の改良は今度も必要になるだろう。道はこの国事態の問題だな。検討させる。病の本を作る話は進んでいるからな。農民に多い病もまとめさせよう」
「お医者さんの意見交換やってるんだもんね。試験とか作ってお医者さん登録した方がいいと思う」
「それは検討中だ。それよりも医療の向上を進めたい」
フォーエンは単純な助言を広く捉えているようだ。言われたことだけを行うわけではない。そして優先順位をつけ、今行えることに手を出していた。それにホッと安堵する。
「あとは識字率だ。お前も他国の言語を学んでいただろう。学びについて行うべき方法はあるか?」
全く言語の読み書きができないレベルの勉強法となると、幼児に学ばせると考えるべきだろうか。国民の識字率の上げ方は大人も入るので、理音は腕を組んでうなってみせた。
「一番簡単なのは、絵札なんだよね。絵と一緒に文字を書くとかして、誰でも見られるようにする。呼び方を知っていたら、読めはするわけだし」
「個人個人に絵札を渡すなど無理がある」
「私が他言語学んだ時は、教室内にある物に貼ってあったよ。机には机、椅子には椅子とか文字が貼ってある。子供の頃にそれを見てたから、文字に対しての慣れはできたかな。感情とかも絵に描いて表示してたし。目に触れる場所に文字がないことには、興味も持てないと思う」
「王都で、試すべきか」
「基本文字で遊べる何かがあればいいんだけどね。子供はとにかくおもちゃで覚えさせるのが一番だし。あとは歌かな。基礎文字の歌とかね」
こちらには公園がないので、子供の遊び場にそんな作りをすることができない。ましてや大人相手ではどう助言すればいいのか考えてしまう。やはり絵で見せて文字を記すのが一番早い気がする。
ただ、こちらで絵の看板は見たことがない。看板にあるのは文字だが、読めなくとも店は入られる。
「インフォグラフィックがあればいいのかな」
「いんふぉ?」
「絵の案内板で、記号みたいな。あれ、記号ってこっち見たことないや。ないのか?」
何と、この国で記号を見たことがない。丸もバツも見たことがなかった。チェックを行う時は線を引く。記号がないことに、さっと不安を覚える。視覚的な学びを素直に受け止められるのだろうか。
フォーエンにインフォグラフィックの説明をし、トイレや矢印など国で共通に使われている記号なども理解してもらう。地図記号などの説明から、王都の地図を場所場所に作り、記号を使った案内で試すと言う案も出た。
ちなみに音楽で清掃時間や帰りの時間をわかりやすくさせることも伝えておく。曲によっては帰らなければならぬと思う心理があることを、フォーエンは興味深げに聞いていた。
しかし話中、ウの内大臣はただ耳を傾けているだけだった。しかも立ったまま、会話を聞いているだけだ。
大体の話を終えた頃、フォーエンはウの内大臣に視線をやると、ウの内大臣は静かに頷いて、フォーエンに去り際の礼をすると、そのまま部屋を出て行ってしまった。
会わせたいと言いながら、全く会話をしなかったのだが、良いのだろうか。しかも話に熱中して長時間立たせっぱなしだった。今更ながら心配になる。
「ウの内大臣さんと、話さなくて良かったの?」
「会わせたかっただけだ。それと医師の話だが」
フォーエンはそっけなく答えて別の話題に入る。本当に良かったのかと疑問に思ったが、フォーエンはエンシの技術を復活させるため、関わりのあった医師たちを集めるだけでなく、薬草に詳しい者たちも王都に集めるつもりだと伝えてきた。
ならばリンネなども集められるのだろうか。
そういった話は大抵男性なので、理音はふとフォーエンに問うた。
「女性でも詳しい人いるのかな?女官さんとか」
「妃が病であれば、詳しくなった者もいるかもしれないが。なぜだ?」
聞いていいことかわからないが、聞いておきたいことがある。理音は意を決して、口にした。
「ルファン様についてる女官のスミアさん。多分薬草に詳しい」
ルファンの名を出した瞬間、フォーエンは表情を無に変えた。しかし、もう口に出してしまったので、その続きを付け加える。
「スミアさんって、ルファン様に仕える前、誰に仕えてたのかな。ずっと後宮にいるって聞いてるから、他の妃さんとかについてたかもしれないんだけど」
「…必要な情報か?」
「気になることがあって。薬草には詳しいけど、いい意味で使ってなかったんじゃないかなって」
そこまで言うと、フォーエンは目を眇めた。
「調べさせる」
静かな声音で少しだけ寒気を感じたが、もう一つ問いたいことを口にする。
「あとさ、月桂樹って木があるんだけど、どこに植わってるか調べられる?」
「月桂樹?」
「エンシさんが亡くなる前に送られたんだって。ちょっと気になるんだ」
「…わかった」
その静かな声で、その日の会話は終えることになった。
フォーエンは言いながら軽く顔を上げて扉の前にいるコウユウに合図を送る。本日はいつものフォーエンの広い執務室に呼ばれて来ていたわけだが、サウェ卿とハク大輔はいなかった。
代わりにコウユウが扉の前で待ち構えていて、一瞬引き返そうかと思ったが、扉の番をしているだけで特に会話もしない。そのコウユウが扉を開けると、一人の男性が立っていた。
焦茶色の着物に銀や金の刺繍がされている物を羽織っていたが、落ち着いた色で嫌味がない。頭の上にあるお団子は少し白毛混じりだが、顔はそこまで老けていなかった。鼻の下にある左右に分かれた髭が可愛らしい。
しかし顔に見覚えがあり、つい立ち上がってしまった。フォーエンがすかさず座るよう促す。
ウの内大臣だ。
会っていいのか?その視線を送ると、フォーエンは軽く横目で見るだけで何も言わず、フォーエンから距離をとって平伏するウの内大臣の挨拶を受ける。しかしウの内大臣はなぜかこちらにも平伏した。
「リオン様には初めてお目にかかります」
え?と言う返事をかろうじて堪えた。フォーエンが挨拶を遮ったからだ。
「ここで頭を下げる必要はない。先日の会議の記録を」
フォーエンの言葉にウの大臣が立ち上がり、頭を下げながら折り畳められた紙をフォーエンに渡した。A4の紙などではなく、時代劇に出てくる長い紙だ。それを読むように渡してくる。
内容は、医師の能力の統一、学校の成立、食物の移送についてだった。
「冬を越えたら南に使者を出す。お前の言う留学制度について南国に許可を得るためだ」
それらが会議で決まったらしい。これを一気に行うと言う。
ナラカの言葉はこれのことか。フォーエンは本格的に改革を行うつもりだ。
理音は記された決定事項に首を傾げた。
「食物の移送って、前に言っていた冬の食料不足の件だよね。移送できるような目処はついたの?」
「こちらに届いた分、戻すだけだ」
なるほど、収穫祭で送られた分、本来なら王都、皇帝陛下中心に分けられる供物を、別の食物で返す。それを行うことによって収穫祭での皇帝の仕打ちを緩和する狙いだ。しかし、本来の威厳が損なわれると反対はあったようだ。
足元を見られては困ると言う者たちは多いだろう。だが、豊穣を願う儀式と言いつつ暴利に食料を奪うだけより、感謝として別の物を送った方が相手側からは感謝されると思う。
「そして、今後農民に学びを行うにも、農民の働きに助けになるような案が必要だ」
学校を設立しても学ぶ者がいなければ意味がない。手が欲しい農民の子を学校に取られると思われても困る。だとしたらどうする?と案に問われて、理音もうなる。
こちらで気になったのは農作方法の周知だ。それは土地によってまちまちだろうが、リンネのように独自で研究している者もいる。
「まずは農作物が多く作れるような工夫が必要だよね。農業の方法?促進するための統一?こっちって牛とか使うの?」
「人によるな。牛を飼うだけの財力も必要だ」
生き物を飼う餌代も難しいし場所も必要だ。簡単にはいかない。
「じゃあ、農耕器具の改良。道の整備。肥料の研究。あと病気にならないように、マニュアル、えーと、本を作る」
「本?文字が読めぬ」
「別に文字だけで本を作る必要はないよ。絵があるでしょ。これはやっていい。これはやってはいけない。視覚で捉える本。文字を入れてもいいよ。でも絵で全てが理解できないと意味ない。わたしがこっちで気になったのは、自然物に触れてなる病気に無頓着なことなんだ。水や土、汚れに対して危機感が薄い。病気になったらそれこそ手伝いが必要になるでしょ。病気にならないような、当たり前の知識は知っておいた方がいいと思う」
「風邪のような?」
「それもあるけど、農業をする人になりやすい病気があると思う。あとは風土病かな。こっちって土地病ないの?この土地ではおかしな病気が流行りやすいとか」
フォーエンは無言になるとウの内大臣を見やる。静かに頷いて、フォーエンも頷いた。
「浮腫を持つ病や、熱病など耳にしたことはある」
「そう言う病気の原因究明は難しいと思うけど、そうならないための、単純な衛生観念を教えた方がいいと思う」
「お前が言う衛生観念は、我々にも必要なものだろうな」
至極真面目な顔で言われて、前回の風邪事件に懲りているのがわかる。それは否定できないが、しかし土をいじる人たちの病気はもっと多かろう。リンネがほとんど裸足のような状態で土を踏んでいたことを思うと、病気はあるはずだ。
「土地病については理由は色々あるだろうから、原因を調べるのは時間がかかると思う。ただ、肥料によっては寄生虫がいるし、実は水も土も危険な場合があるから、ある程度の知識は持っておかないと。王都は綺麗な街だけど、農村もそうであるわけじゃないでしょ?」
「同じには語れないな」
フォーエンの若干の渋面に、また仕事を増やしただろう。当然のように手元の筆を取って書き記した。優先順位を作ってもらうしかない。
「農工具や肥料の改良は今度も必要になるだろう。道はこの国事態の問題だな。検討させる。病の本を作る話は進んでいるからな。農民に多い病もまとめさせよう」
「お医者さんの意見交換やってるんだもんね。試験とか作ってお医者さん登録した方がいいと思う」
「それは検討中だ。それよりも医療の向上を進めたい」
フォーエンは単純な助言を広く捉えているようだ。言われたことだけを行うわけではない。そして優先順位をつけ、今行えることに手を出していた。それにホッと安堵する。
「あとは識字率だ。お前も他国の言語を学んでいただろう。学びについて行うべき方法はあるか?」
全く言語の読み書きができないレベルの勉強法となると、幼児に学ばせると考えるべきだろうか。国民の識字率の上げ方は大人も入るので、理音は腕を組んでうなってみせた。
「一番簡単なのは、絵札なんだよね。絵と一緒に文字を書くとかして、誰でも見られるようにする。呼び方を知っていたら、読めはするわけだし」
「個人個人に絵札を渡すなど無理がある」
「私が他言語学んだ時は、教室内にある物に貼ってあったよ。机には机、椅子には椅子とか文字が貼ってある。子供の頃にそれを見てたから、文字に対しての慣れはできたかな。感情とかも絵に描いて表示してたし。目に触れる場所に文字がないことには、興味も持てないと思う」
「王都で、試すべきか」
「基本文字で遊べる何かがあればいいんだけどね。子供はとにかくおもちゃで覚えさせるのが一番だし。あとは歌かな。基礎文字の歌とかね」
こちらには公園がないので、子供の遊び場にそんな作りをすることができない。ましてや大人相手ではどう助言すればいいのか考えてしまう。やはり絵で見せて文字を記すのが一番早い気がする。
ただ、こちらで絵の看板は見たことがない。看板にあるのは文字だが、読めなくとも店は入られる。
「インフォグラフィックがあればいいのかな」
「いんふぉ?」
「絵の案内板で、記号みたいな。あれ、記号ってこっち見たことないや。ないのか?」
何と、この国で記号を見たことがない。丸もバツも見たことがなかった。チェックを行う時は線を引く。記号がないことに、さっと不安を覚える。視覚的な学びを素直に受け止められるのだろうか。
フォーエンにインフォグラフィックの説明をし、トイレや矢印など国で共通に使われている記号なども理解してもらう。地図記号などの説明から、王都の地図を場所場所に作り、記号を使った案内で試すと言う案も出た。
ちなみに音楽で清掃時間や帰りの時間をわかりやすくさせることも伝えておく。曲によっては帰らなければならぬと思う心理があることを、フォーエンは興味深げに聞いていた。
しかし話中、ウの内大臣はただ耳を傾けているだけだった。しかも立ったまま、会話を聞いているだけだ。
大体の話を終えた頃、フォーエンはウの内大臣に視線をやると、ウの内大臣は静かに頷いて、フォーエンに去り際の礼をすると、そのまま部屋を出て行ってしまった。
会わせたいと言いながら、全く会話をしなかったのだが、良いのだろうか。しかも話に熱中して長時間立たせっぱなしだった。今更ながら心配になる。
「ウの内大臣さんと、話さなくて良かったの?」
「会わせたかっただけだ。それと医師の話だが」
フォーエンはそっけなく答えて別の話題に入る。本当に良かったのかと疑問に思ったが、フォーエンはエンシの技術を復活させるため、関わりのあった医師たちを集めるだけでなく、薬草に詳しい者たちも王都に集めるつもりだと伝えてきた。
ならばリンネなども集められるのだろうか。
そういった話は大抵男性なので、理音はふとフォーエンに問うた。
「女性でも詳しい人いるのかな?女官さんとか」
「妃が病であれば、詳しくなった者もいるかもしれないが。なぜだ?」
聞いていいことかわからないが、聞いておきたいことがある。理音は意を決して、口にした。
「ルファン様についてる女官のスミアさん。多分薬草に詳しい」
ルファンの名を出した瞬間、フォーエンは表情を無に変えた。しかし、もう口に出してしまったので、その続きを付け加える。
「スミアさんって、ルファン様に仕える前、誰に仕えてたのかな。ずっと後宮にいるって聞いてるから、他の妃さんとかについてたかもしれないんだけど」
「…必要な情報か?」
「気になることがあって。薬草には詳しいけど、いい意味で使ってなかったんじゃないかなって」
そこまで言うと、フォーエンは目を眇めた。
「調べさせる」
静かな声音で少しだけ寒気を感じたが、もう一つ問いたいことを口にする。
「あとさ、月桂樹って木があるんだけど、どこに植わってるか調べられる?」
「月桂樹?」
「エンシさんが亡くなる前に送られたんだって。ちょっと気になるんだ」
「…わかった」
その静かな声で、その日の会話は終えることになった。
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