5 / 50
3−2 公爵領
「王太子殿下は無害かもしれませんが、調査の中に王妃の手が入っているやもしれません」
ヴァレリアンの横に控えていたコンラードは、王子の騎士を見送ってから、ヴァレリアンに向き直る。
ヴァレリアンは書類に目を通したまま、コンラードの声は届いていると、眉間に皺を寄せて目をすがめた。
「この城にも王妃のスパイは多いからな。やつらの監視と、殺された女の身元は調べておけ」
同じことを考えているヴァレリアンは、騎士たちの監視を命じる。行方不明となった令嬢の行方も、再確認が必要だ。
王は関わりないが、王妃は何をしてくるか分からない。
コンラードは頭を下げると、執務室を出る。
(かつての事件を思い出されているのだろうか)
扉を閉めてから、コンラードはヴァレリアンの両親を思い浮かべた。
前ブルダリアス公爵。フリューデン王国の王の弟であるヴァレリアンの父親は、夫人と共にフリューデン王国の王宮へ移動中、事故に遭い、死亡した。
フリューデン国王は、前公爵夫妻と幼い頃から仲が良く、前公爵が公爵夫人と結婚する前は、公爵夫人に恋慕しているという噂があった。仲睦まじい三人だったが、結婚したのは王弟と公爵夫人。王は王妃と結婚した。
王は王弟結婚後、二人の幸せを願い、子供が産まれれば、二人の子供であるヴァレリアンを、我が子のように可愛がった。
実の子であるクリストフ王子よりも気にしていたほどだ。
その王の愛情を、王妃がよく思うはずがなかった。表立ってその感情は出してはいなかったが、王不在の時のヴァレリアンを見る目は鋭く、公爵夫妻のことも歓迎していなかったのは確かだ。
そして、公爵夫妻は王宮への道途中、事故に遭う。
当時、事故とされた公爵夫妻の死亡には事件性はなかったが、その後、賊に襲われたことにより馬が暴れ、事故になった可能性が出てきたのだ。
それが王妃の仕業ではないかと分かったのは、ずっと後だ。
その頃、ヴァレリアンは十四歳になったばかり。公爵を引き継ぐには若く、後ろ盾になる者がおらず、公爵領をまとめるにも苦労があった。優しげな声を掛けてくる王妃の裏の声は、公爵領をどうにかしようという思惑が見え隠れしていた。
王妃の命令で賊に襲われた証拠はない。だが、公爵家を乗っ取ろうとする者たちや、陥れようとする者たちが、王妃に繋がっている可能性は、消すことができなかった。
王がいれば、しっかりと調査されただろう。しかし、ちょうどその頃、王が病に伏し、事件はうやむやになってしまった。
今でも王は病に伏しており、その病も本当なのか、怪しむところだ。ヴァレリアンは王宮にスパイを放っているが、事故の決定的な証拠は出ていない。
それでも、公爵夫妻を殺そうとしたのは王妃だと、ヴァレリアンは確信していた。
そして、今度はクリストフ王子の婚約者候補が、馬車ごと川へ落ちた。何の証拠もないが、それも王妃の仕業かもしれない。
王妃に目を付けられたのが、子爵令嬢の不幸の始まりだろう。
(先程の騎士たちの中に、王妃の手下も混じっているかもしれない。警備を厳重にした方が良いだろうな)
調査隊は滞在中、街にも訪れる。妙な動きをしないか、確認する必要があった。
公爵領にやってきた、クリストフ王子の騎士たち。
国の者たちは、ヴァレリアンを若くして公爵になったため、社交界に馴染めず、領土に引きこもった陰鬱な公爵だと勘違いしているが、ヴァレリアンはそんな気弱な男ではない。
クリストフ王子の騎士も、それに気付いただろう。
王宮との確執を勘違いしたまま、行方不明の婚約者候補を探しに、この公爵領までやってきた。
指揮をしているのは、人の良さそうな顔をした騎士だった。赤い髪をしていてよく目立つ男である。本当に婚約者を探しにきたのだろう。こちらは警戒を露わにし威嚇したのだから、あの騎士も部下に注意はするはずだ。
「客間を用意させたんだが、必要なかったな」
コンラードは白髪の混じった金髪を軽くなでる。季節の変わり目は雨が多い。冬から春にかけて雨が続き、先日も大雨が降って、髪が湿気でぼさついた。
騎士たちが探す川は、最近また大雨が降ったせいで、水量も増し、今も荒れている。一ヶ月ほど前も同じように大雨が降っていた。馬車は、確かに村の近くに流木などのゴミと一緒に流れ着いたが、人は乗っていなかった。遺体は上がっておらず、今頃、海まで流されているに違いない。
しばらく騎士たちが滞在することになると思うと、コンラードは面倒を感じて、小さく息を吐く。
(当分、ヴァレリアン様は不機嫌だろうな)
そう思いながら廊下を歩いていると、お茶を運びながら、きょろきょろと辺りを見回しているメイドが目に入った。
「おい、そちらはお前のような者が入る場所ではないぞ」
「申し訳ありません。こちらに入ったばかりで、迷子になってしまったようで。お茶を、冬の間に持っていけと言われたのですが」
メイドは軽く結んだ焦茶色の髪を背中に流し、長い前髪で、大きな黒縁の丸いメガネを掛けていた。スパイなら逆に目立つ風体だ。だが、見るのは初めての顔である。
「冬の間は、あちらを右に曲がった、奥の部屋だ」
「ありがとうございます。失礼します」
「待て、お前、名は?」
「ミシェルと申します」
「客間はもう使わなくなったから、それは必要ないと思うぞ」
「そうなんですか? あ、でも、一応確認してきます」
騎士を待たせるつもりで、客間をゆっくり整えるように伝えたが、すぐに執務室に通すように言われ、客間の使用が必要なくなった。それを伝えるように言うと、ミシェルはぎこちなく頭を下げて、冬の間へと歩いていく。
あんなに目立つメガネをして、堂々と屋敷の中をうろつくようなスパイはさすがにいないか。新しいメイドが入ったとは聞いているから、問題はないだろう。
コンラードはもう一度ため息をついて、メイドを背にし、歩き始めた。
ヴァレリアンの横に控えていたコンラードは、王子の騎士を見送ってから、ヴァレリアンに向き直る。
ヴァレリアンは書類に目を通したまま、コンラードの声は届いていると、眉間に皺を寄せて目をすがめた。
「この城にも王妃のスパイは多いからな。やつらの監視と、殺された女の身元は調べておけ」
同じことを考えているヴァレリアンは、騎士たちの監視を命じる。行方不明となった令嬢の行方も、再確認が必要だ。
王は関わりないが、王妃は何をしてくるか分からない。
コンラードは頭を下げると、執務室を出る。
(かつての事件を思い出されているのだろうか)
扉を閉めてから、コンラードはヴァレリアンの両親を思い浮かべた。
前ブルダリアス公爵。フリューデン王国の王の弟であるヴァレリアンの父親は、夫人と共にフリューデン王国の王宮へ移動中、事故に遭い、死亡した。
フリューデン国王は、前公爵夫妻と幼い頃から仲が良く、前公爵が公爵夫人と結婚する前は、公爵夫人に恋慕しているという噂があった。仲睦まじい三人だったが、結婚したのは王弟と公爵夫人。王は王妃と結婚した。
王は王弟結婚後、二人の幸せを願い、子供が産まれれば、二人の子供であるヴァレリアンを、我が子のように可愛がった。
実の子であるクリストフ王子よりも気にしていたほどだ。
その王の愛情を、王妃がよく思うはずがなかった。表立ってその感情は出してはいなかったが、王不在の時のヴァレリアンを見る目は鋭く、公爵夫妻のことも歓迎していなかったのは確かだ。
そして、公爵夫妻は王宮への道途中、事故に遭う。
当時、事故とされた公爵夫妻の死亡には事件性はなかったが、その後、賊に襲われたことにより馬が暴れ、事故になった可能性が出てきたのだ。
それが王妃の仕業ではないかと分かったのは、ずっと後だ。
その頃、ヴァレリアンは十四歳になったばかり。公爵を引き継ぐには若く、後ろ盾になる者がおらず、公爵領をまとめるにも苦労があった。優しげな声を掛けてくる王妃の裏の声は、公爵領をどうにかしようという思惑が見え隠れしていた。
王妃の命令で賊に襲われた証拠はない。だが、公爵家を乗っ取ろうとする者たちや、陥れようとする者たちが、王妃に繋がっている可能性は、消すことができなかった。
王がいれば、しっかりと調査されただろう。しかし、ちょうどその頃、王が病に伏し、事件はうやむやになってしまった。
今でも王は病に伏しており、その病も本当なのか、怪しむところだ。ヴァレリアンは王宮にスパイを放っているが、事故の決定的な証拠は出ていない。
それでも、公爵夫妻を殺そうとしたのは王妃だと、ヴァレリアンは確信していた。
そして、今度はクリストフ王子の婚約者候補が、馬車ごと川へ落ちた。何の証拠もないが、それも王妃の仕業かもしれない。
王妃に目を付けられたのが、子爵令嬢の不幸の始まりだろう。
(先程の騎士たちの中に、王妃の手下も混じっているかもしれない。警備を厳重にした方が良いだろうな)
調査隊は滞在中、街にも訪れる。妙な動きをしないか、確認する必要があった。
公爵領にやってきた、クリストフ王子の騎士たち。
国の者たちは、ヴァレリアンを若くして公爵になったため、社交界に馴染めず、領土に引きこもった陰鬱な公爵だと勘違いしているが、ヴァレリアンはそんな気弱な男ではない。
クリストフ王子の騎士も、それに気付いただろう。
王宮との確執を勘違いしたまま、行方不明の婚約者候補を探しに、この公爵領までやってきた。
指揮をしているのは、人の良さそうな顔をした騎士だった。赤い髪をしていてよく目立つ男である。本当に婚約者を探しにきたのだろう。こちらは警戒を露わにし威嚇したのだから、あの騎士も部下に注意はするはずだ。
「客間を用意させたんだが、必要なかったな」
コンラードは白髪の混じった金髪を軽くなでる。季節の変わり目は雨が多い。冬から春にかけて雨が続き、先日も大雨が降って、髪が湿気でぼさついた。
騎士たちが探す川は、最近また大雨が降ったせいで、水量も増し、今も荒れている。一ヶ月ほど前も同じように大雨が降っていた。馬車は、確かに村の近くに流木などのゴミと一緒に流れ着いたが、人は乗っていなかった。遺体は上がっておらず、今頃、海まで流されているに違いない。
しばらく騎士たちが滞在することになると思うと、コンラードは面倒を感じて、小さく息を吐く。
(当分、ヴァレリアン様は不機嫌だろうな)
そう思いながら廊下を歩いていると、お茶を運びながら、きょろきょろと辺りを見回しているメイドが目に入った。
「おい、そちらはお前のような者が入る場所ではないぞ」
「申し訳ありません。こちらに入ったばかりで、迷子になってしまったようで。お茶を、冬の間に持っていけと言われたのですが」
メイドは軽く結んだ焦茶色の髪を背中に流し、長い前髪で、大きな黒縁の丸いメガネを掛けていた。スパイなら逆に目立つ風体だ。だが、見るのは初めての顔である。
「冬の間は、あちらを右に曲がった、奥の部屋だ」
「ありがとうございます。失礼します」
「待て、お前、名は?」
「ミシェルと申します」
「客間はもう使わなくなったから、それは必要ないと思うぞ」
「そうなんですか? あ、でも、一応確認してきます」
騎士を待たせるつもりで、客間をゆっくり整えるように伝えたが、すぐに執務室に通すように言われ、客間の使用が必要なくなった。それを伝えるように言うと、ミシェルはぎこちなく頭を下げて、冬の間へと歩いていく。
あんなに目立つメガネをして、堂々と屋敷の中をうろつくようなスパイはさすがにいないか。新しいメイドが入ったとは聞いているから、問題はないだろう。
コンラードはもう一度ため息をついて、メイドを背にし、歩き始めた。
あなたにおすすめの小説
【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。
彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。
さて、どうなりますでしょうか……
別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。
突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか?
自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。
私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。
7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」連載版
まほりろ
恋愛
公爵令嬢のアデリナ・ブラウフォードの人生は実母の死後大きく変わった。
公爵は妻の葬儀が終わって間をあけず再婚。公爵と後妻の間には、再婚前に作った子供までいた。
アデリナは継母と異母妹に私物を奪われ、「離れ」と名ばかりの小屋に押し込められる。
腹違いの妹はアデリナを悪者に仕立て、周囲はそれを信じた。
本来ならアデリナの味方にならなくてはならない婚約者の王太子も、異母妹の魅力に骨抜きにされ全く頼りにならない。
学園の教師も、生徒も、生徒の保護者も王太子と異母妹の味方だ。
そんなアデリナにも唯一の味方がいる。それはトカゲのクヴェル。クヴェルは美少年に変身し、家事も炊事も裁縫も完璧にこなす不思議な存在だ。
実はクヴェルはこの国の建国に携わる水竜で、アデリナは三百年前に水竜を救った初代女王の生まれ変わりだったのだ。
アデリナを蔑ろにする国に嫌気がさしたクヴェルは、アデリナを連れて旅に出る。
神に去られた国は徐々に荒廃していき……。
一方その頃、祖国の荒廃を知らないアデリナはクヴェルとのグルメ旅を満喫していた。
「ん~~! このアップルパイは絶品! 紅茶も美味しい!!」
・人外×人間、竜×人間。
・短編版は小説家になろう、pixivにもアップしています。
・長編版を小説家になろうにも投稿しています。小説家になろう先行投稿。
「Copyright(C)2025-まほりろ」
※タイトル変更しました(2025/05/06)
✕「卒業パーティーで王太子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る〜私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」
✕「嫌われ者の公爵令嬢は国外追放を言い渡される。私が神の祝福持ちだと王家が気付いた時には国の崩壊が始まっていました」
◯新タイトル「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」
・2025年5月16日HOTランキング2位!
ありがとうございます!
※表紙イラストは猫様からお借りしています。
悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!
naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』
シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。
そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─
「うふふ、計画通りですわ♪」
いなかった。
これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である!
最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。
「僕が望んだのは、あなたではありません」と婚約破棄をされたのに、どうしてそんなに大切にするのでしょう。【短編集】
長岡更紗
恋愛
異世界恋愛短編詰め合わせです。
気になったものだけでもおつまみください!
『君を買いたいと言われましたが、私は売り物ではありません』
『悪役令嬢は、友の多幸を望むのか』
『わたくしでは、お姉様の身代わりになりませんか?』
『婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。 』
『婚約破棄された悪役令嬢だけど、騎士団長に溺愛されるルートは可能ですか?』
他多数。
他サイトにも重複投稿しています。
婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!
山田 バルス
恋愛
この屋敷は、わたしの居場所じゃない。
薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。
かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。
「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」
「ごめんなさい、すぐに……」
「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」
「……すみません」
トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。
この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。
彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。
「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」
「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」
「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」
三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。
夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。
それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。
「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」
声が震える。けれど、涙は流さなかった。
屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。
だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。
いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。
そう、小さく、けれど確かに誓った。