43 / 50
27−2 葬儀
「すぐに帰ってくると言っていた割には、遅いわね」
窓の外を見ながら、ラシェルは部屋の中をうろうろと落ち着きなく動いていた。
コンラードもヴァレリアンについていったため、メイドたちと帰りを待っているが、一向に帰ってこない。
「やっぱり、私も行けばよかったかしら」
「何かあったのでしょうか」
メイドたちも、さすがに遅いのではないかと、お互いに顔を見合わせる。もう時間は夕方に近く、誰かと話していたとしても、遅すぎる気がする。
「王が死んだのだから、公爵様がさらに狙われる可能性は高まるのだし」
王の葬儀に欠席するわけにはいかない。伯父が亡くなったのだから、ヴァレリアンが参列するのは当然だ。むしろ、出席を断れば、あることないこと噂されかねない。
王の死亡の理由は、病ということで発表されているが、のちにひっくり返ることだってあるだろう。
なにせ王妃。次点でクリストフ。妙な言いがかりをつけてくることが予想できる。
(ヴァレリアンは、そうなっても大丈夫と言っていたけど、あの自信はどこから来るのかしら)
烏合の衆のような貴族たちを集めても、王妃に対抗できるかわからなない。もっとも力のある貴族は誰かと考えて、身分的にヴァレリアンが一番上に見えるが、ヴァレリアンは社交界から離れていた。人の繋がりは少ないだろうに。
(公爵夫妻の件で、会った人はいるのだろうけれど、どんな人がいるのかしら)
建国記念パーティで誰と会ったか、聞いていなかった。聞いても教えてくれないので、しつこく聞かなかったが。
王宮で会って話せる相手はいるわけだ。
「王妃たちに対抗できるような人なのかしら」
ラシェルが窓の近くを動き回っていると、メイドたちも不安になってくるか、落ち着きがない。
あまり彼女たちを心配させ過ぎてもよろしくないと思い、ソファーに座り直すと、廊下を走る足音が耳に届いた。
「失礼致します。ラシェル様!」
「帰ってこられたの!?」
「違います。今、きし、きゃっ!」
メイドが部屋に入ると、後ろからやってきた、赤のマントの男たちがメイドを押しのけた。
「ボワロー子爵令嬢。ブルダリアス公爵が王暗殺の罪で捕えられました。申し訳ありませんが、あなたを王宮へお連れします」
「なんですって!?」
王宮の騎士たちが、わらわらと部屋に入ってくる。
公爵家の騎士が混じり、ラシェルを守ろうとするが、王宮からの騎士では剣も抜けない。ここで争ってはヴァレリアンの罪を重くされることもあるとわかっていて、公爵家の騎士たちもラシェルをどう守ろうか迷っていた。
しかも、王宮の騎士は屋敷を捜査すると言い、公爵邸の周囲を固めている。ここで抵抗するには、ヴァレリアンが出なければ対抗できない。
「ボワロー子爵令嬢、ご同行願います」
「ラシェル様!」
騎士二人に腕を取られて、部屋から引きずり出される。待っていた馬車の前には、見覚えのある顔がいた。
「アーロン!」
では、この騎士たちは、クリストフの命令か。
アーロンは居心地悪そうにしながらも、ラシェルと同乗した。扉が閉められて、馬車が走り出す。
「ボワロー子爵令嬢。どうか、抵抗なさらないように」
「アーロン。まだ、クリストフの言うことを聞く気? 言うことを聞くに値する主人だと思っているの?」
睨みつけていれば、アーロンは顔を歪める。ここ最近のクリストフの所業を考えれば、抜けているアーロンでも、考えることはあるだろう。お花畑にいるクリストフの面倒を見ていたはずが、別人のようにおかしくなったのだ。それを止められない側近だとしても、アーロンは少なくとも暗殺を良しとする性格ではない。
「橋で、何があったのか、教えていただけないでしょうか?」
「王妃に聞いたらどうなの?」
「ほとんどの者が、死んでしまい。事実がわからず」
「クリストフが殺したのではないの? 最初は王妃が口封じでもしたのかと思っていたわ。クリストフは、事実を公表するのではなく、事実を確認することなく、無関係な者まで殺した。そうでしょう?」
「あなたは、何をしたのですか?」
「何の話」
「クリストフ様が、どうしてあんな風に!」
まるで信じられないと、身を乗り出してくる。そんなこと、こちらが聞きたい。なにがどうして、あそこまで狂ったのか。
「文句を言うのなら、王妃に言ったらどうなの。間違いなく、王妃の影響でしょう、抑圧してきたのも王妃、殺人好きなのも王妃」
「わからないのです。どうして、あそこまでおかしくなってしまったのか。あなたが亡くなったと知って、遺体まで見たのに、信じようとしなかった。そしてあなたは本当に生きていて、けれど、殺されかけたと知り、あなたが今までどのような仕打ちを受けていたのか、端から目に入る者を捕らえて、問い始めて」
「それで、関わりのない者まで殺したって言うの?」
アーロンは口を閉じる。止めることもできず、これからもどうすれば良いのかわからない。とでも言いたげにして。
「ヴァレリアンをどうする気。公爵に、王殺しの罪を被せる気!?」
「私には、クリストフ様は止められません!」
その言葉が耳に入った瞬間、ラシェルは座席を踏み抜く勢いで蹴り付けた。アーロンの股間にぎりぎり当たらないくらいのところに、ラシェルの足が突き刺さる。アーロンが間抜けな惚け顔をするのも束の間、
「卑怯者」
ラシェルのその一言に、アーロンはただ肩を下ろすだけだった。
窓の外を見ながら、ラシェルは部屋の中をうろうろと落ち着きなく動いていた。
コンラードもヴァレリアンについていったため、メイドたちと帰りを待っているが、一向に帰ってこない。
「やっぱり、私も行けばよかったかしら」
「何かあったのでしょうか」
メイドたちも、さすがに遅いのではないかと、お互いに顔を見合わせる。もう時間は夕方に近く、誰かと話していたとしても、遅すぎる気がする。
「王が死んだのだから、公爵様がさらに狙われる可能性は高まるのだし」
王の葬儀に欠席するわけにはいかない。伯父が亡くなったのだから、ヴァレリアンが参列するのは当然だ。むしろ、出席を断れば、あることないこと噂されかねない。
王の死亡の理由は、病ということで発表されているが、のちにひっくり返ることだってあるだろう。
なにせ王妃。次点でクリストフ。妙な言いがかりをつけてくることが予想できる。
(ヴァレリアンは、そうなっても大丈夫と言っていたけど、あの自信はどこから来るのかしら)
烏合の衆のような貴族たちを集めても、王妃に対抗できるかわからなない。もっとも力のある貴族は誰かと考えて、身分的にヴァレリアンが一番上に見えるが、ヴァレリアンは社交界から離れていた。人の繋がりは少ないだろうに。
(公爵夫妻の件で、会った人はいるのだろうけれど、どんな人がいるのかしら)
建国記念パーティで誰と会ったか、聞いていなかった。聞いても教えてくれないので、しつこく聞かなかったが。
王宮で会って話せる相手はいるわけだ。
「王妃たちに対抗できるような人なのかしら」
ラシェルが窓の近くを動き回っていると、メイドたちも不安になってくるか、落ち着きがない。
あまり彼女たちを心配させ過ぎてもよろしくないと思い、ソファーに座り直すと、廊下を走る足音が耳に届いた。
「失礼致します。ラシェル様!」
「帰ってこられたの!?」
「違います。今、きし、きゃっ!」
メイドが部屋に入ると、後ろからやってきた、赤のマントの男たちがメイドを押しのけた。
「ボワロー子爵令嬢。ブルダリアス公爵が王暗殺の罪で捕えられました。申し訳ありませんが、あなたを王宮へお連れします」
「なんですって!?」
王宮の騎士たちが、わらわらと部屋に入ってくる。
公爵家の騎士が混じり、ラシェルを守ろうとするが、王宮からの騎士では剣も抜けない。ここで争ってはヴァレリアンの罪を重くされることもあるとわかっていて、公爵家の騎士たちもラシェルをどう守ろうか迷っていた。
しかも、王宮の騎士は屋敷を捜査すると言い、公爵邸の周囲を固めている。ここで抵抗するには、ヴァレリアンが出なければ対抗できない。
「ボワロー子爵令嬢、ご同行願います」
「ラシェル様!」
騎士二人に腕を取られて、部屋から引きずり出される。待っていた馬車の前には、見覚えのある顔がいた。
「アーロン!」
では、この騎士たちは、クリストフの命令か。
アーロンは居心地悪そうにしながらも、ラシェルと同乗した。扉が閉められて、馬車が走り出す。
「ボワロー子爵令嬢。どうか、抵抗なさらないように」
「アーロン。まだ、クリストフの言うことを聞く気? 言うことを聞くに値する主人だと思っているの?」
睨みつけていれば、アーロンは顔を歪める。ここ最近のクリストフの所業を考えれば、抜けているアーロンでも、考えることはあるだろう。お花畑にいるクリストフの面倒を見ていたはずが、別人のようにおかしくなったのだ。それを止められない側近だとしても、アーロンは少なくとも暗殺を良しとする性格ではない。
「橋で、何があったのか、教えていただけないでしょうか?」
「王妃に聞いたらどうなの?」
「ほとんどの者が、死んでしまい。事実がわからず」
「クリストフが殺したのではないの? 最初は王妃が口封じでもしたのかと思っていたわ。クリストフは、事実を公表するのではなく、事実を確認することなく、無関係な者まで殺した。そうでしょう?」
「あなたは、何をしたのですか?」
「何の話」
「クリストフ様が、どうしてあんな風に!」
まるで信じられないと、身を乗り出してくる。そんなこと、こちらが聞きたい。なにがどうして、あそこまで狂ったのか。
「文句を言うのなら、王妃に言ったらどうなの。間違いなく、王妃の影響でしょう、抑圧してきたのも王妃、殺人好きなのも王妃」
「わからないのです。どうして、あそこまでおかしくなってしまったのか。あなたが亡くなったと知って、遺体まで見たのに、信じようとしなかった。そしてあなたは本当に生きていて、けれど、殺されかけたと知り、あなたが今までどのような仕打ちを受けていたのか、端から目に入る者を捕らえて、問い始めて」
「それで、関わりのない者まで殺したって言うの?」
アーロンは口を閉じる。止めることもできず、これからもどうすれば良いのかわからない。とでも言いたげにして。
「ヴァレリアンをどうする気。公爵に、王殺しの罪を被せる気!?」
「私には、クリストフ様は止められません!」
その言葉が耳に入った瞬間、ラシェルは座席を踏み抜く勢いで蹴り付けた。アーロンの股間にぎりぎり当たらないくらいのところに、ラシェルの足が突き刺さる。アーロンが間抜けな惚け顔をするのも束の間、
「卑怯者」
ラシェルのその一言に、アーロンはただ肩を下ろすだけだった。
あなたにおすすめの小説
【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。
彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。
さて、どうなりますでしょうか……
別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。
突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか?
自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。
私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。
7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」連載版
まほりろ
恋愛
公爵令嬢のアデリナ・ブラウフォードの人生は実母の死後大きく変わった。
公爵は妻の葬儀が終わって間をあけず再婚。公爵と後妻の間には、再婚前に作った子供までいた。
アデリナは継母と異母妹に私物を奪われ、「離れ」と名ばかりの小屋に押し込められる。
腹違いの妹はアデリナを悪者に仕立て、周囲はそれを信じた。
本来ならアデリナの味方にならなくてはならない婚約者の王太子も、異母妹の魅力に骨抜きにされ全く頼りにならない。
学園の教師も、生徒も、生徒の保護者も王太子と異母妹の味方だ。
そんなアデリナにも唯一の味方がいる。それはトカゲのクヴェル。クヴェルは美少年に変身し、家事も炊事も裁縫も完璧にこなす不思議な存在だ。
実はクヴェルはこの国の建国に携わる水竜で、アデリナは三百年前に水竜を救った初代女王の生まれ変わりだったのだ。
アデリナを蔑ろにする国に嫌気がさしたクヴェルは、アデリナを連れて旅に出る。
神に去られた国は徐々に荒廃していき……。
一方その頃、祖国の荒廃を知らないアデリナはクヴェルとのグルメ旅を満喫していた。
「ん~~! このアップルパイは絶品! 紅茶も美味しい!!」
・人外×人間、竜×人間。
・短編版は小説家になろう、pixivにもアップしています。
・長編版を小説家になろうにも投稿しています。小説家になろう先行投稿。
「Copyright(C)2025-まほりろ」
※タイトル変更しました(2025/05/06)
✕「卒業パーティーで王太子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る〜私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」
✕「嫌われ者の公爵令嬢は国外追放を言い渡される。私が神の祝福持ちだと王家が気付いた時には国の崩壊が始まっていました」
◯新タイトル「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」
・2025年5月16日HOTランキング2位!
ありがとうございます!
※表紙イラストは猫様からお借りしています。
悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!
naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』
シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。
そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─
「うふふ、計画通りですわ♪」
いなかった。
これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である!
最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。
「僕が望んだのは、あなたではありません」と婚約破棄をされたのに、どうしてそんなに大切にするのでしょう。【短編集】
長岡更紗
恋愛
異世界恋愛短編詰め合わせです。
気になったものだけでもおつまみください!
『君を買いたいと言われましたが、私は売り物ではありません』
『悪役令嬢は、友の多幸を望むのか』
『わたくしでは、お姉様の身代わりになりませんか?』
『婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。 』
『婚約破棄された悪役令嬢だけど、騎士団長に溺愛されるルートは可能ですか?』
他多数。
他サイトにも重複投稿しています。
婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!
山田 バルス
恋愛
この屋敷は、わたしの居場所じゃない。
薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。
かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。
「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」
「ごめんなさい、すぐに……」
「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」
「……すみません」
トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。
この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。
彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。
「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」
「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」
「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」
三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。
夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。
それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。
「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」
声が震える。けれど、涙は流さなかった。
屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。
だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。
いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。
そう、小さく、けれど確かに誓った。