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17−2 混乱
わかることは、アンリエットがお金を貯める施策を行っていたこと。時間が経てば成立しないものが出てくるため、常にその施策を行なっていたこと。税金以外に常に入ってくる定期的な金銭もあるが、それでは今の財源では減る一方ということ。とにもかくにも、その原因がセシーリアにあるということだった。
(冗談でしょ。何で私のせいになるのよ。王が勝手にやってるだけじゃない)
これではセシーリアが無駄遣いをして借金をさせたようではないか。
「セシーリアはどうしている。マルスランの娘だぞ。アンリエットが王太子代理を行えていたのだから、セシーリアには簡単なことだろう」
「王女様は、」
男は言葉を濁す。
セシーリアは背筋が凍りそうになった。最近、政治関係の書類を確認しなければならないと言われて、家庭教師と共に書類を確認するようになった。文字は読めるとはいえ、そんな専門的な文章なんて読むだけで時間がかかる。だから、書類を読まずに押しているレベルだ。執務の人間が気にせず押すのを見て、しつこくちゃんと読んで判断しろ。なんて言ってくるが、気にしていない。あんなものを渡す方が悪いのだから。
だが、政治の施策となれば話は違う。ただ判を書類に叩くだけではないのだから。
(バカじゃないの? まだ何人も家庭教師がついてるのよ?)
家庭教師からの学びもうんざりだ。今日だってお腹が痛いと言って、家庭教師を帰したばかりだった。
「税金を増やせばいいだろう!」
「現状でそのような真似はできません。やっと税金を減らせたと言うのに」
「戻せばいいだろう!」
不毛な会話だ。セシーリアもこの国の税金が民に重くのしかかっていることを知っている。セシーリアの家は税金など払ったことはないが、町ではよく話を聞いていた。家を持てば金を取られる。買い物をすれば取られる。道を使えば取られる。魔物を倒して死体を金に変えてもそこから取られる。金金金。なんでも取られて生きていけないとぼやいていた人もいた。
最近になってそれは聞かなくなったのは、アンリエットが借金を返したからなのか?
(嘘でしょ? 私とそんなに年が変わらない女の子よ? そんなこと考えられる?)
どうせエダンや、他の者たちが考えたことを、さも自分が行ったように言いふらしていただけだろう。
「ですが!」
男が大声を出した。
「アンリエット様の功績で魔法使いになれた者たちが仕事を放棄し、都に近寄らなくなりました。外からの情報は得られず、取りまとめていた者も去り、育成も止まったままです。商会はアンリエット様の指導で行っていたため、混乱が続いています。まとめる者が皆去ったからです。全て、アンリエット様が始めたことだからです。エダン様も手伝ってはいましたが、アンリエット様が個人的に行っていた事業です。責任者がいなければ、下は回りません。いえ、回っていますが、それらもアンリエット様がいたから進められていたこと。アンリエット様は責任者というだけでなく、歯車の一人だったのです。しかも中枢の。全てを引き寄せる磁石のような立場です。あの方の奇抜なアイデアや先進的な発想で、多くが進められていて。ーーあれだけの方を、なぜ手放したのですか!!」
「ええい、うるさい! お前がなんとかしろ! 出て行け。さっさと出て行け!」
「王、」
相手の男は何か言おうとして、諦めたように言葉を止めた。その後も王はさっさと出て行けと男を追い出しにかかる。もう返答もしない男が部屋から出てきた。宰相だ。セシーリアを横目で見て、挨拶もせずに行ってしまう。
(なによ、あの態度。まるで全部私のせいみたいな目して)
王は物を投げているのか、部屋の中で何かが割れる音が続いた。かなり怒っているが、それを放置するわけにはいかなかった。今の話を聞いて、王が考えを変えたらどうなるのか。王太子代理が戻ってくるのか? 戻ってきたら、エダンの婚約も、あの女に替わるのか?
冗談ではない。この生活を手放す気などない。エダンも同じ。
「おじい様、一体何事でしょう。まあ、お怪我をしてしまいますわ! 誰か! 部屋を片付けて」
「おお、セシーリア。お前は優しいな。さすが、マルスランの娘だ」
また、マルスランの娘。王はセシーリアが何かをするたびに、マルスランの娘。という言葉を使う。だが、それが王にとって最も必要なものだということもわかっていた。
(そうよ。このブローチを持っている限り、私は王太子の娘なんだから)
「お話が聞こえてしまったのですが、今まで王太子代理が行なっていたと言っていましたけれど、一人でなんてできるはずありませんわ。王太子代理は周囲に支えられてきたのでしょう。きっと追い出される時に、皆に仕事をするなと脅したに決まっています。だから仕事が滞っているのでは?」
「そうだ。そうだな。あいつはマルスランではないのだから、そうに違いない」
「ええ、そうですよ。すぐに去った者たちを連れてきて、仕事に就かせればいいだけです。お金ももらっているのかもしれません。収賄ですよ。引っ立てて、働かせればいいのです」
「その通りだ! おい、誰か!」
王は人を呼んで、仕事を辞めていった者たちを連れ戻せと怒鳴りつけた。
アンリエットが行っていたことを、セシーリアに丸ごと引き継げと言われたらたまったものではない。セシーリアに押し付けられないように、周りの者を使わなければならなかった。
(冗談でしょ。何で私のせいになるのよ。王が勝手にやってるだけじゃない)
これではセシーリアが無駄遣いをして借金をさせたようではないか。
「セシーリアはどうしている。マルスランの娘だぞ。アンリエットが王太子代理を行えていたのだから、セシーリアには簡単なことだろう」
「王女様は、」
男は言葉を濁す。
セシーリアは背筋が凍りそうになった。最近、政治関係の書類を確認しなければならないと言われて、家庭教師と共に書類を確認するようになった。文字は読めるとはいえ、そんな専門的な文章なんて読むだけで時間がかかる。だから、書類を読まずに押しているレベルだ。執務の人間が気にせず押すのを見て、しつこくちゃんと読んで判断しろ。なんて言ってくるが、気にしていない。あんなものを渡す方が悪いのだから。
だが、政治の施策となれば話は違う。ただ判を書類に叩くだけではないのだから。
(バカじゃないの? まだ何人も家庭教師がついてるのよ?)
家庭教師からの学びもうんざりだ。今日だってお腹が痛いと言って、家庭教師を帰したばかりだった。
「税金を増やせばいいだろう!」
「現状でそのような真似はできません。やっと税金を減らせたと言うのに」
「戻せばいいだろう!」
不毛な会話だ。セシーリアもこの国の税金が民に重くのしかかっていることを知っている。セシーリアの家は税金など払ったことはないが、町ではよく話を聞いていた。家を持てば金を取られる。買い物をすれば取られる。道を使えば取られる。魔物を倒して死体を金に変えてもそこから取られる。金金金。なんでも取られて生きていけないとぼやいていた人もいた。
最近になってそれは聞かなくなったのは、アンリエットが借金を返したからなのか?
(嘘でしょ? 私とそんなに年が変わらない女の子よ? そんなこと考えられる?)
どうせエダンや、他の者たちが考えたことを、さも自分が行ったように言いふらしていただけだろう。
「ですが!」
男が大声を出した。
「アンリエット様の功績で魔法使いになれた者たちが仕事を放棄し、都に近寄らなくなりました。外からの情報は得られず、取りまとめていた者も去り、育成も止まったままです。商会はアンリエット様の指導で行っていたため、混乱が続いています。まとめる者が皆去ったからです。全て、アンリエット様が始めたことだからです。エダン様も手伝ってはいましたが、アンリエット様が個人的に行っていた事業です。責任者がいなければ、下は回りません。いえ、回っていますが、それらもアンリエット様がいたから進められていたこと。アンリエット様は責任者というだけでなく、歯車の一人だったのです。しかも中枢の。全てを引き寄せる磁石のような立場です。あの方の奇抜なアイデアや先進的な発想で、多くが進められていて。ーーあれだけの方を、なぜ手放したのですか!!」
「ええい、うるさい! お前がなんとかしろ! 出て行け。さっさと出て行け!」
「王、」
相手の男は何か言おうとして、諦めたように言葉を止めた。その後も王はさっさと出て行けと男を追い出しにかかる。もう返答もしない男が部屋から出てきた。宰相だ。セシーリアを横目で見て、挨拶もせずに行ってしまう。
(なによ、あの態度。まるで全部私のせいみたいな目して)
王は物を投げているのか、部屋の中で何かが割れる音が続いた。かなり怒っているが、それを放置するわけにはいかなかった。今の話を聞いて、王が考えを変えたらどうなるのか。王太子代理が戻ってくるのか? 戻ってきたら、エダンの婚約も、あの女に替わるのか?
冗談ではない。この生活を手放す気などない。エダンも同じ。
「おじい様、一体何事でしょう。まあ、お怪我をしてしまいますわ! 誰か! 部屋を片付けて」
「おお、セシーリア。お前は優しいな。さすが、マルスランの娘だ」
また、マルスランの娘。王はセシーリアが何かをするたびに、マルスランの娘。という言葉を使う。だが、それが王にとって最も必要なものだということもわかっていた。
(そうよ。このブローチを持っている限り、私は王太子の娘なんだから)
「お話が聞こえてしまったのですが、今まで王太子代理が行なっていたと言っていましたけれど、一人でなんてできるはずありませんわ。王太子代理は周囲に支えられてきたのでしょう。きっと追い出される時に、皆に仕事をするなと脅したに決まっています。だから仕事が滞っているのでは?」
「そうだ。そうだな。あいつはマルスランではないのだから、そうに違いない」
「ええ、そうですよ。すぐに去った者たちを連れてきて、仕事に就かせればいいだけです。お金ももらっているのかもしれません。収賄ですよ。引っ立てて、働かせればいいのです」
「その通りだ! おい、誰か!」
王は人を呼んで、仕事を辞めていった者たちを連れ戻せと怒鳴りつけた。
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