彼女が死んだ理由は、誰も知らない

MIRICO

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 クロディーヌ様が付き添って散歩をするなど、シャルリーヌ様が外に出ることはありましたが、熱を出したり、食事ができずに寝込んだりすることが続き、吐くことも増えました。顔色は悪く、痩せたようにも見え、その度クロディーヌ様が食べられる物はないかと、色々な物を作らせていました。シャルリーヌ様が少しでもなにかを口にできるように、懸命に努力されていたのです。

 そしてそれが続いていたある日、クロディーヌ様は提案をされました。シャルリーヌ様の療養のために領地に戻り、それを手伝いたいと。

 シャルリーヌ様の病の原因はわかりませんでした。気の病ではないかということですが、婚約破棄になることはありません。ならば、せめて街より自然が近い場所にいた方が良いのではないか。クロディーヌ様はそう考えたようです。

 吐くことが続いていましたが、落ち着いた時になんとか領地に戻れないかと医者に相談し、その了承を得ると、旦那様と奥様に説得をなさいました。旦那様も心配だったのでしょう。医師が同行するならばと、お許しになったのです。

 出発の日、エヴァリスト様も見送りにいらっしゃいました。
 シャルリーヌ様は申し訳なさそうに謝っていました。病はエヴァリスト様のせいではありませんが、シャルリーヌ様の病の原因でもあります。エヴァリスト様もわかっているのか、謝る必要はないと何度も言ってシャルリーヌ様を励ましていました。

「どうか、気を付けて。僕もすぐに向かいます」

 エヴァリスト様が領地に訪れることを約束して、シャルリーヌ様と別れました。旦那様と奥様も、落ち着いたらすぐに連絡しろと、何度もおっしゃって見送っていらっしゃいました。

 領地に着くまでに体調を崩すのではと心配していましたが、何度も休憩を繰り返したおかげか、そんなにひどい状態にはならず、やっと領地に辿り着きました。

「久しぶりだなあ」

 コンラッドが感慨深げに周囲を見回していました。コンラッドはこの領地の出身です。元は平民で、馬番の手伝いをしていたそうです。私はその頃のコンラッドを知りません。

 領地を管理している方とも久しぶりだと挨拶を交わしていました。コンラッドはあちこちを見て回っていました。それに付き合うようにクロディーヌ様もコンラッドと出かけます。
 シャルリーヌ様の療養のためでしたが、クロディーヌ様とコンラッドにとっても、この土地は懐かしく、良い思い出のある場所なのでしょう。二人にとってもこの土地に来たことは心機一転となったようです。

 シャルリーヌ様はというと、領地に来てから少しずつ体調を戻していったのです。やはり都より寒冷地ではあっても、喧騒のない静かな場所での療養は体に良かったのでしょう。

「少し散歩もできるし、運動不足も解消しないとね」
 頬がこけていた頃に比べて、若干ふっくらしはじめた顔に、私は安堵していました。
 動けるようになり、シャルリーヌ様の衣装も増やすことにしました。体調を考えて、ゆったりした衣装が必要でもありました。

 私は楽観視していました。元気になっているようなシャルリーヌ様を見ながら、クロディーヌ様は顔色を悪くしていたのです。

「アビー。あの子の世話は、私がやるわ」
「クロディーヌ様がですか? なにか、気になることでも?」
「なんの病気かわからないのだもの。その方がいいでしょ」
「そんな、お嬢様」
「いいのよ。私がやりたいの」

 どうしてそんなことを言うのだろう。私は不信感を持ちました。治ってきているのに、どうして今さらそんなことを言うのだろうと。しかし、クロディーヌ様は言いにくそうにしながらも打ち明けてくれました。そのことに、私は驚きを隠せませんでした。

「体に、吹き出物、ですか?」
「何かに感染してたんじゃないかって、お医者様がおっしゃっているの」
「そんな。ですが、なおさら、クロディーヌ様がお世話をするのは」

 もしもクロディーヌ様に感染したら。そう言えば、クロディーヌ様は大きく首を振りました。

「いいのよ。私は行き遅れること間違いないんだし。だから、他の子たちにそれとなく言っておいてくれる? 両親には秘密にしておいて。これ以上心配かけたくないの。私のこともあるし。お医者様も原因を探してくれているから。ね」

 だから、クロディーヌ様にも触れない方がいい。そう言われて、私はなにも言い返せませんでした。もしも自分が感染したら。そんな気持ちがあったからです。

 姉妹の仲の良さは、言葉にできないほどでした。
 好きな人が妹の婚約者になったのに、あれほど優しくできるなんて、どうしてあの方が幸せになれないのか。旦那様が婚約者を勝手に決めなければ、世間体など気にせず、クロディーヌ様を大切にしていれば、エヴァリスト様をクロディーヌ様の婚約者にしていれば。
 ずっとそう思っていました。

 しかし、エヴァリスト様の父親がシャルリーヌ様を選んだのは、クロディーヌ様が気に食わなかったからだと知ったのは、この領地に来てからでした。
 エヴァリスト様の父親がこの領地に遊びに来た時に、クロディーヌ様のお転婆ぶりに、もし婚約するならばシャルリーヌにしてくれと冗談めかして言っていたそうです。
 当時からいたこの土地を管理する者が口にしました。

「将来は結婚させようという話があったんだよ。おとなしめなシャルリーヌ様がいいという話でね」
「そんな昔から、お約束があったのですか」
「その時に決めたわけではないだろうけれど、向こうの父親が反対していたのならば、クロディーヌ様とエヴァリスト様が婚約することはないだろう?」

 そんな幼い頃から言われていたのならば、クロディーヌ様の片想いは、片想いのまま。最初から二人が結ばれることはないと、決まっていたのです。

 私は虚しくなりました。どうしてなにもうまくいかないのだろうと。
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