人生ひっそり長生きが目標です 〜異世界人てバレたら処刑? バレずにスローライフする!〜

MIRICO

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第一章

21−3 お出かけ

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「じゃあ、これ一つだと、お代、いくらくらいなんですか?」
「こちらのノコギリでしたら、四十ドレですよ。ハサミは六十ドレします」

 百二十ドレで、ダチョウもどきと中型の鳥を売っていた。百ドレは十万円くらいだと思っていたが、ノコギリとハサミで十万円はかなり高い。
 鳥三羽で、一万二千円ほどだったのだろうか。

 百ドレと十ドレのお金は持ってきている。問題はないのだが、金額を聞いて、正直迷った。しかし、購入しなければ、今後の作業が進みにくくなる。先行投資とすれば、仕方がないだろう。
 複雑な形だからか、ハサミは高めだ。
 百ドレはかなり持ってきているので購入はできるが、持って帰れるだろうか。直近で使うものだけにした方がいいかもしれない。だが、どれも直近で使う気がする。

「はっ! 大きいシャベルもあるう!」
 これは必要だ。絶対に必要だ。農作業にシャベルは必須だ。今まで石で掘っていたのだから。それに、木をくり抜くような、大きめの木彫りノミがあった。あれも買いだ。

「じゃあ、これと、ノコギリと、こっちの小さいノコギリと、ハサミ布用と、ノミと、キリと。枝切れるハサミってありますか?」
「え、あ、え、あ、あ。こ、これはいかがですか! 枝ではないですが、固いものも切れるハサミです」

 男は転びそうになりながら、刃の部分が短い、重厚なハサミを持ってくる。焦り具合が激しい。やはりフェルナンが怖いのだろうか。早めに店を出た方が良さそうだ。

「これで大丈夫です。全部ください」
「あ、ありがとうございます!!」
「かばんに入るかなあ」
「包みますので! お待ちください!!」

 男は布を取り出して包み、紐で結んでくれた。これは助かる。いくつかはトートバッグに入るようにまとめてもらい、お代を払った。全部で二百八十五ドレ。二十八万五千円だったら、かなりの高額だ。そんな買い物したことがない。
 だがしかし、致し方ない。必要経費だ。これがないと、今後何でも購入する必要が出てくる。

 金属が高いのは当然と思いたい。かまどを使う時代だと思えば、それくらいするかもしれない。
 どれもピカピカで、すごく切れそうな新品だ。布用ハサミなんて、持つのが怖いくらいである。日本でだって、厚い布を切るしっかりした断裁バサミを買えば、一万円を超える。
 こちらに百均などないのだから、安いはずがない。職人の作る工芸品だと考えれば、そのくらいするかもしれない。

 商品をトートバッグに入れて、お釣りを確認する。ショルダーバッグの中にある小さな袋にお金を入れていた。その中にはまだ、白っぽいコインが入っている。これも数枚入れてきたが、いくらなのかわからない。そのうちお釣りとして出てくるだろうか。

 家にはまだ、別のコインもある。それらはなんとなく高価な気がして、持ってこなかった。百ドレを何枚も持って来ていれば、間に合うと思っているからだ。ダチョウもどき一匹するものは、そこまで購入しないと思う。

「ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ! ありがとうございます!!」

 ものすごく感謝されたので、さっさと店を出る。フェルナンはいつの間にか外にいて、待っていてくれた。
 嬉しい買い物をしてしまった。これは助かる。

「フェルナンさん、ありがとうございました。ここまでついてきてくださって、助かりました」
 これ以上、彼を拘束するのもなんなので、もう大丈夫だと礼を言う。しかし、なぜかフェルナンは微かながら片眉を上げた。

「木材を買いに行くんじゃないのか?」
「行きますけど、付き合ってもらえるんですか?」
「行くぞ」

 答えはせず、フェルナンは歩きはじめる。なんと、付き合ってくれるようだ。ありがたい。店を教えてもらってなんだが、不安があった。聞いた店が複雑な道筋だったのだ。

 場所は知っているのか、フェルナンは大通りを進み、城壁の方へ逸れ、何度か分岐した道を進んだ。この辺りは浅草の問屋街のように、小物などが多く売っている店が多いようだ。布屋さんもある。

「は、樽屋さん。え、鍋屋さんもある」
 樽も鍋もほしい。そのうち染色もしたい。糸に色を付けるのだ。つい足を止めると、フェルナンが戻って、隣で足を止めた。

「買うのか?」
「あ、いえ。そのうちに」

 そのうち、買いにこよう。鍋くらいなら担げる。お風呂用の桶サイズがあるのか気になるが、フェルナンがいるので、また今度だ。
 そうして、材木屋に到着した。広く階高のある店で、倉庫が隣接されている。中に何種類もの木が並んでいた。店の中では木の加工をする職人たちが何人も働いている。

「なんか、用か」
 中にいた男が声をかけてきた。腰巻きエプロンをしている、体格の良い男だ。腕がプロレスラーのように太い。職人ではなく、木こりだろうか。喧嘩を売るような、横柄な態度をしてくる。接客する気がないような態度だ。

「こちらで、木の加工ができるって聞いて、来たんですけれど」
「できるが、どっかの店の子か? 見たことない面だな」
「どっかの店の子?」
 どういう意味だろうか。よくわからずまごついていると、男の視線が後ろに向いた。すぐにさっと顔色が悪くなる。

「ど、どういった、ご用でしょうか」
 急に体を丸めて、出していたお腹を引っ込めると、手揉みでもするかのように、両手を重ねて擦りはじめる。腰が低くなったので、声も小さくなった。

「織り機を作りたくて、そのための木がほしいんです」
「織り機ですか? 新しく作ると、かなり金額がいきますが」
「単純なものを自分で組むので、木だけで大丈夫です」
「自分で、組む、ですか。単純なもの?」
「手織り機を作るので、薄めの板と、直線の円型の棒と、回転させるためのノズルと」
「ちょ、ちょっと、待って下さい。どんなものか、しっかり教えてもらわないと」

 男はコルクボードのような板を何枚か持ってくる。竹串のような棒を渡されて、説明を求められた。
 コルクボードのような板は、コルクの部分が滑りのある蝋のようなもので固められていた。削るとその溝が残り、メモがわりにできる。そんなことより、蝋を使っていることが気になった。
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