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「この星はもうすでに私たちの手の中にある。私がアイドルとして活躍し続けて、人間たちを支配していた……それなのに……」
ぎろりと睨まれ、思わず後ろに反った。
「……アンタみたいな小娘に……」
ストローを齧りながら、あまゆゥがひとりごちた。ペッと唾でも吐きそうに顔を歪めている。
「アンタ、私の悪口を散々言ってくれたらしいじゃん? いい度胸してんね」
「私より、あの大橋さやの方がいい、とか言ってたみたいだし。本当、ムカつく」。そう言われ、ドキリと胸が跳ねた。
あの会話は、友達同士でのものだ。なぜ彼女がそれを知っているのだろうか。
私の雰囲気を察したのか、あまゆゥが意地悪げに口角を歪める。
「我々は、すべての事柄が手に取るように分かる。アンタが私の悪評を検索してたことも、掲示板に書き込んでたことも──」
「すぐ火消ししたのに、アンタ、食らいつくんだもん。鬱陶しいったらありゃしない」。彼女は肩を竦め、わざとらしく嫌な表情を浮かべた。
──だから、メッセージを送ることができたのか。
彼女から届いたメッセージの謎が解け、腑に落ちた。
「あ、ちなみになんでここにいる連中が私に反応しないか、分かる? ここの空間だけ、洗脳を解いてるの。だから、私はただの一般市民として認識されてる」
「どう? 私の力、すごくない?」。自慢げに語る彼女に、背筋が凍る。
──怖い。
私は恐怖心を孕んでいた。
この地球の人間を洗脳できる能力を持つ宇宙人だ。人間の一人や二人、簡単に殺すことだってできる。
──私は、消される。
額に滲んだ汗もそのままに、口を開いた。
「私は、殺されますか?」
「はぁ?」
強張った声音に、あまゆゥが鋭い声を上げる。
「殺す? アンタを? なんで?」
あっけらかんとそう言われ、拍子抜けした。
彼女はストローをクルクルと回し、溶けた氷をカフェオレと馴染ませている。
「そんなめんどくさいことするわけないでしょ? 人間を殺すとかキショすぎるし、手を汚すのとかダルい」
あまゆゥが立ち上がり、ぐんと背伸びをした。「もう……何十年も洗脳成功してたのに、なんでこうなっちゃうかなぁ」。ため息を漏らしながら、店を出ようとする。
「じゃあね。私はまた別の星を洗脳しに行くわ」
こちらを見ずに手を振る彼女はあっけらかんと告げる。
私は彼女の手を掴み、引き留めた。
「え!? 何!? なんで!? 終わり!? これで!?」
「そうだけど? 私の洗脳が解けた人間がいるとか萎えるから、別の星に行く。もう地球に興味ない」
「なにっ、それ!?」
「私がこの星からいなくなったその瞬間から、この国のトップアイドルはあんたが大好きな大橋さやになるよ。私の存在は綺麗さっぱり消え失せる」
「じゃ、じゃあ、私もあんたのこと忘れるってこと?」
「そう。忘れる。私の存在は無かったことになる。はぁ~こんな可愛い私の存在を忘れるなんて、人は愚かなもの……特にお前……」
憐れむような表情を浮かべ、息を吐いたあまゆゥを見て、沸々と怒りが湧く。
「私、あんたのファンだったんだけど!? バイトして、CD買って、ライブも楽しみにしてたのに……! 地球を引っ掻き回して、最後がこれ? ……こんな幕引き、させないから!」
「は……はぁ? なに言ってんの……」
あまゆゥの表情が徐々に強張る。握った腕に力がこもり、グイと引き寄せる。
「わ、私も、私も連れて行きなさいよ!」
「はぁ!? 何言ってんのよ、この小娘! 離せッ!」
「だいたい、あんたねぇ! ダンスもそこまで上手くないし、演技もビミョーだし、歌も時々音外してるんだけど!?」
あまゆゥは面と向かってそんな言葉を浴びた経験がないのか、一瞬顔を赤く染め、やがて眉間に皺を寄せた。鋭い眼光でギロリと睨む。
怯むことなく暴言を吐く。
「今までチヤホヤされて、気が付かなかったの? マジで実力はさやぴに劣るんだけど?」
「……!」
襟首を掴まれ、グイと引き寄せられた。鼻先が触れ合うほど近づく。漂う甘い匂いにドキリと胸を弾ませたが、そんな感情さえ吹き飛ぶほど、あまゆゥの瞳は怒りに満ちていた。
「私はねぇアンタなんかよりずっとずっと長生きなんだよ、このクソガキ」
「舐めた口、きいてんじゃないよ」。体の底から冷える声音が鼓膜に刺さる。顎を引き、鼻を鳴らした。
「悔しいなら、連れてけへなちょこアイドル」
どうして彼女について行きたいのか、分からない。地球に侵略し、人々を洗脳していた宇宙人なんて、正直なところ怖くて仕方がない。現に足は微かに震えている。
けれど、引けなかった。今まで騙されてきた恨みと、このままどこかへ消える宇宙人を許すことができないのだ。
ふっと息を吸う音が聞こえる。彼女からの回答が怖くてたまらない。私は唇を舐めた。
「一生、地球に帰ってこれないようにしてやる」
売り言葉に買い言葉だ。私は店内に響くほどの大声で叫んだ。
「上等だ、クソ宇宙人!」
ぎろりと睨まれ、思わず後ろに反った。
「……アンタみたいな小娘に……」
ストローを齧りながら、あまゆゥがひとりごちた。ペッと唾でも吐きそうに顔を歪めている。
「アンタ、私の悪口を散々言ってくれたらしいじゃん? いい度胸してんね」
「私より、あの大橋さやの方がいい、とか言ってたみたいだし。本当、ムカつく」。そう言われ、ドキリと胸が跳ねた。
あの会話は、友達同士でのものだ。なぜ彼女がそれを知っているのだろうか。
私の雰囲気を察したのか、あまゆゥが意地悪げに口角を歪める。
「我々は、すべての事柄が手に取るように分かる。アンタが私の悪評を検索してたことも、掲示板に書き込んでたことも──」
「すぐ火消ししたのに、アンタ、食らいつくんだもん。鬱陶しいったらありゃしない」。彼女は肩を竦め、わざとらしく嫌な表情を浮かべた。
──だから、メッセージを送ることができたのか。
彼女から届いたメッセージの謎が解け、腑に落ちた。
「あ、ちなみになんでここにいる連中が私に反応しないか、分かる? ここの空間だけ、洗脳を解いてるの。だから、私はただの一般市民として認識されてる」
「どう? 私の力、すごくない?」。自慢げに語る彼女に、背筋が凍る。
──怖い。
私は恐怖心を孕んでいた。
この地球の人間を洗脳できる能力を持つ宇宙人だ。人間の一人や二人、簡単に殺すことだってできる。
──私は、消される。
額に滲んだ汗もそのままに、口を開いた。
「私は、殺されますか?」
「はぁ?」
強張った声音に、あまゆゥが鋭い声を上げる。
「殺す? アンタを? なんで?」
あっけらかんとそう言われ、拍子抜けした。
彼女はストローをクルクルと回し、溶けた氷をカフェオレと馴染ませている。
「そんなめんどくさいことするわけないでしょ? 人間を殺すとかキショすぎるし、手を汚すのとかダルい」
あまゆゥが立ち上がり、ぐんと背伸びをした。「もう……何十年も洗脳成功してたのに、なんでこうなっちゃうかなぁ」。ため息を漏らしながら、店を出ようとする。
「じゃあね。私はまた別の星を洗脳しに行くわ」
こちらを見ずに手を振る彼女はあっけらかんと告げる。
私は彼女の手を掴み、引き留めた。
「え!? 何!? なんで!? 終わり!? これで!?」
「そうだけど? 私の洗脳が解けた人間がいるとか萎えるから、別の星に行く。もう地球に興味ない」
「なにっ、それ!?」
「私がこの星からいなくなったその瞬間から、この国のトップアイドルはあんたが大好きな大橋さやになるよ。私の存在は綺麗さっぱり消え失せる」
「じゃ、じゃあ、私もあんたのこと忘れるってこと?」
「そう。忘れる。私の存在は無かったことになる。はぁ~こんな可愛い私の存在を忘れるなんて、人は愚かなもの……特にお前……」
憐れむような表情を浮かべ、息を吐いたあまゆゥを見て、沸々と怒りが湧く。
「私、あんたのファンだったんだけど!? バイトして、CD買って、ライブも楽しみにしてたのに……! 地球を引っ掻き回して、最後がこれ? ……こんな幕引き、させないから!」
「は……はぁ? なに言ってんの……」
あまゆゥの表情が徐々に強張る。握った腕に力がこもり、グイと引き寄せる。
「わ、私も、私も連れて行きなさいよ!」
「はぁ!? 何言ってんのよ、この小娘! 離せッ!」
「だいたい、あんたねぇ! ダンスもそこまで上手くないし、演技もビミョーだし、歌も時々音外してるんだけど!?」
あまゆゥは面と向かってそんな言葉を浴びた経験がないのか、一瞬顔を赤く染め、やがて眉間に皺を寄せた。鋭い眼光でギロリと睨む。
怯むことなく暴言を吐く。
「今までチヤホヤされて、気が付かなかったの? マジで実力はさやぴに劣るんだけど?」
「……!」
襟首を掴まれ、グイと引き寄せられた。鼻先が触れ合うほど近づく。漂う甘い匂いにドキリと胸を弾ませたが、そんな感情さえ吹き飛ぶほど、あまゆゥの瞳は怒りに満ちていた。
「私はねぇアンタなんかよりずっとずっと長生きなんだよ、このクソガキ」
「舐めた口、きいてんじゃないよ」。体の底から冷える声音が鼓膜に刺さる。顎を引き、鼻を鳴らした。
「悔しいなら、連れてけへなちょこアイドル」
どうして彼女について行きたいのか、分からない。地球に侵略し、人々を洗脳していた宇宙人なんて、正直なところ怖くて仕方がない。現に足は微かに震えている。
けれど、引けなかった。今まで騙されてきた恨みと、このままどこかへ消える宇宙人を許すことができないのだ。
ふっと息を吸う音が聞こえる。彼女からの回答が怖くてたまらない。私は唇を舐めた。
「一生、地球に帰ってこれないようにしてやる」
売り言葉に買い言葉だ。私は店内に響くほどの大声で叫んだ。
「上等だ、クソ宇宙人!」
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