女と女

中頭[etc垢]

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メランコリーレゾナンス

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 燃え上がる機体から抜け出した。脚は負傷していて、うまく動かない。
 私は痛む体を動かし、なんとかエエリの機体へ向かった。
 今にも爆発しそうな奇妙な音を奏でる彼女の機体は、チリチリと火花を上げている。
 操縦席から放り出されたエエリは、頭から血を流しながら虚ろな瞳でこちらを見つめていた。震える唇が緩やかに動き、何かを伝えている。胸が激しく上下し、呼吸さえままならないであろう彼女は、遠くで聴こえる爆発音にかき消されそうになりながら言葉を紡いだ。
「リー......また、同じ……っぱいを……くりかえ……」
 エエリは眉を顰めた。何を言っているか、分からない。
 「エエリ」。彼女の名を呼び、手を伸ばす。エエリは再度、喉を振るわせて、言葉を空気に溶かした。火花が飛び、頬へ熱が弾き、私は目を強く瞑った。エエリの機体から、炎が立ち上がる。
「……同じ、失敗......を、」
 瞬間、エエリの機体が爆発する。炎と煙に彼女の姿が掻き消される。エエリへ手を伸ばした途端、弾けた機体の一部が、頭にめり込んだ。



「リージェ! なんで同じ失敗を繰り返すの!? あぁいう場合は、貴方だけでも逃げるの! 何回言えば分かるのよ!」
 エエリはカプセルから起き上がるや否や、すぐさま私のカプセルへ駆け寄り怒鳴りつけた。
 突き破るのではないかという力でカプセルを叩く彼女を、強化ガラス越しに眺める。
 ヘラリと軽く笑い、顔の前で手を合わせて「ごめん」と謝ると彼女は更に激怒し「出てこい」と声を張り上げる。
「リージェ・ノロー。カプセルから出なさい。エエリ・小野崎、落ち着きなさい。暴れない。リージェ・ノロー、早く出なさい」
「マザー。エエリが邪魔で出られません」
「エエリ・小野崎、退きなさい」
 エエリは唇を尖らせ、咎められたことに不貞腐れながらもカプセルから一歩、後ろへ退いた。
 カプセルが開き、私はようやく外の新鮮な空気を肺へ取り込めた。上半身を起こしエエリを見ると彼女は腕を組み、真白い天井を見上げ、声を張った。
「マザー! 今の見ました? 先日のオペレーションテストでもリージェは同じミスをしました。例えバディが倒れようとも、自分の命を優先することが当たり前。なのに、彼女はまた同じミスを繰り返しています。こんな失態、実戦でされたらたまったもんじゃない!」
「……その前に、お前が敵に落とされなければ良いだけの話」
「今日はアンタも、機体を落とされてた! 先に敵軍に攻撃され、地へ落ちた私を助けようとして余所見してたせいでね!」
 今にも噛み付いてきそうな勢いで私へ怒鳴った彼女はルーム内を歩き回り、額に手を当て呼吸を整える。
 ルーム内に、無機質な声が響いた。
「エエリ・小野崎。君の言い分は正しいです。リージェ・ノロー。先日も言いましたが、あの場合は君だけでも逃げなさい」
「分かってるンすけど、ねぇ。いくらテストって言っても、目の前でコイツが死にそうになってたら、放っておけなくて」
 その声にエエリは眉間に皺を寄せ、悲痛な声を張り上げた。
「私が、私が弱いからって……何よ……そう言う優しさはいらないの! 分かる!? 馬鹿にするのも大概にしてよね!」
 今にも泣きそうな顔を歪め、エエリがルームから出ていく。
 私はカプセルの淵に腰をかけ、天井を見上げた。
「すみません、マザー。同じ間違いを繰り返して」
「……いや。君たち、人間特有の感情の揺めきを観察できて嬉しいです。けれど、やはりバディであるエエリ・小野崎の機嫌を損ねると、シンクロ率が下がります。なるべく、仲睦まじくしてくれませんか」
 好きで、損ねているわけじゃない。私はそう言いかけて、飲み込む。バディである彼女の心配をして、何が悪いのだろうか。
 深々とため息をつき、ぐるりと首を回した。
「……マザー」
「なんでしょう」
「バディ、変えてみてもいい?」


────


加筆+既存の作品が修正されたバージョンがKindleにて電子書籍で出ています。
読み放題でしたら無料となりますので、もしよろしければお暇つぶし程度に読んでいただけますと嬉しいです。
プロフィールのリンクから、もしくはAmazonで「女と女」で検索していただけますと幸いです。
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