4 / 6
蛇
1
しおりを挟む
そこに、私と似たような形をした生き物が立っていた。
風に靡く艶やかなグレーの髪が、空の青に溶けて太陽の光を反射させる。
逆光になっていて表情が読み取りにくいが、唇が弧を描いている。かろうじてこちらを見つめている、ということだけは分かった。
私は口に溜まった唾液を嚥下し、太陽の眩しさに眼を細めた。
木々が揺れる音と共に、彼の声が聞こえる。
「イブ。どうしたの」
「アダム。あそこ……あそこに誰かがいる」
「どこ?」
彼へ振り返った。私と同様の金髪を靡かせた彼は汗を拭き、前髪を掻き上げる。背後に立った彼は目を細め、私の見ていた先へ視線を移した。
彼は怪訝そうに眉を歪め、こちらを見下ろす。
「……蛇」
「え?」
「蛇しかいないじゃないか。誰かって、あの蛇のこと?」
私は再度、目を彼女へ向けた。彼女は変わらず、その場でこちらを────主に私を見つめていた。
「いるじゃない。あそこに」
「だから、蛇が」
「蛇じゃなくて、誰かがいるの。こっちを見て、微笑んでいる」
その声に、呆れたみたいに鼻で笑われる。嫌々といいたげに腰を曲げ、私の目線に合わせた。
彼は「うーん」と小さく唸り、体を起こす。
「見えない」
「……」
「ただの蛇じゃないか。僕を揶揄ってるの? もう、行こう」
彼は不機嫌そうにそう呟き、私の手首を掴んだ。引き摺られるように、彼の後を追う。
振り返ると、もう既に彼女はいなかった。
太陽の眩しさにやられて、変な幻覚を見てしまったのかもしれない。私はジリジリと肌を焼く光に顔を背け、青々しい草原を歩いた。
────
加筆+既存の作品が修正されたバージョンがKindleにて電子書籍で出ています。
読み放題でしたら無料となりますので、もしよろしければお暇つぶし程度に読んでいただけますと嬉しいです。
プロフィールのリンクから、もしくはAmazonで「女と女」で検索していただけますと幸いです。
風に靡く艶やかなグレーの髪が、空の青に溶けて太陽の光を反射させる。
逆光になっていて表情が読み取りにくいが、唇が弧を描いている。かろうじてこちらを見つめている、ということだけは分かった。
私は口に溜まった唾液を嚥下し、太陽の眩しさに眼を細めた。
木々が揺れる音と共に、彼の声が聞こえる。
「イブ。どうしたの」
「アダム。あそこ……あそこに誰かがいる」
「どこ?」
彼へ振り返った。私と同様の金髪を靡かせた彼は汗を拭き、前髪を掻き上げる。背後に立った彼は目を細め、私の見ていた先へ視線を移した。
彼は怪訝そうに眉を歪め、こちらを見下ろす。
「……蛇」
「え?」
「蛇しかいないじゃないか。誰かって、あの蛇のこと?」
私は再度、目を彼女へ向けた。彼女は変わらず、その場でこちらを────主に私を見つめていた。
「いるじゃない。あそこに」
「だから、蛇が」
「蛇じゃなくて、誰かがいるの。こっちを見て、微笑んでいる」
その声に、呆れたみたいに鼻で笑われる。嫌々といいたげに腰を曲げ、私の目線に合わせた。
彼は「うーん」と小さく唸り、体を起こす。
「見えない」
「……」
「ただの蛇じゃないか。僕を揶揄ってるの? もう、行こう」
彼は不機嫌そうにそう呟き、私の手首を掴んだ。引き摺られるように、彼の後を追う。
振り返ると、もう既に彼女はいなかった。
太陽の眩しさにやられて、変な幻覚を見てしまったのかもしれない。私はジリジリと肌を焼く光に顔を背け、青々しい草原を歩いた。
────
加筆+既存の作品が修正されたバージョンがKindleにて電子書籍で出ています。
読み放題でしたら無料となりますので、もしよろしければお暇つぶし程度に読んでいただけますと嬉しいです。
プロフィールのリンクから、もしくはAmazonで「女と女」で検索していただけますと幸いです。
0
あなたにおすすめの小説
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
ダメな君のそばには私
蓮水千夜
恋愛
ダメ男より私と付き合えばいいじゃない!
友人はダメ男ばかり引き寄せるダメ男ホイホイだった!?
職場の同僚で友人の陽奈と一緒にカフェに来ていた雪乃は、恋愛経験ゼロなのに何故か恋愛相談を持ちかけられて──!?
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる