神紋が紡ぐ異界録

貝人

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第八話 独

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晴明は自室に戻り荷解きを終え、庭を眺めていた。
コンコン、ドアを叩く音がする。

「はい!今開けます!」

そこには黒髪細身、眼はオッドアイ、耳にはピアスをしたジャージの男が立っていた。

「あの?どっどちら様ですか?」

「俺は蘆屋独(あしやどく)って言うんだ、真里さんが挨拶して来いって煩くてさ」

頭をぽりぽりと痒く独

「あっ蘆屋さんのお知り合いの方ですか?玄関じゃなんだし上がりますか?」

「良いのか?」

「はい。あとは服をしまうだけですから」

「ほいじゃ、遠慮なくお邪魔しまー。昨日真里さんにあったんだろ?何か言われなかったか?真里さん朱夏さんとライバル関係だからさ、朱夏さんの事になると異常に張り合うんだよ。面倒くさい事にさ」

「はは。大丈夫です、特に何もなかったので」

独は不思議そうに晴明を眺めている。

「何で敬語なんだ?敬語がデフォって訳じゃないんだろ?敬語なんてむず痒くなるし面倒くさいから辞めようぜ!俺さ真里さんに他所から半ば無理やり連れて来られたんだよ。だから正直いづらいんだわ。爺はおっかねえし、真里さんは阿保程スパルタだし、楼閣様は怖えし、朱夏さんも熱血だしさ。同年代らしい同年代ってここじゃ神宮寺が初めてなんだよ」

独は頬を掻きながら恥ずかしそうに言った。

「神宮寺いや、晴明友達になってくれよ!俺こっちに来てから訓練ばっかで友達いねーんだよ。訓練以外じゃ皆んな任務があるから基本的にボッチなんだよ。爺は居るけど、暇なら訓練しましょうとか言われるしさ!頼むよ!お願い!ダメか?」

頭を下げ晴明に懇願する独

「僕で良いなら、友達になって!僕は来たばかりだし、知り合いも居ないし、学校ではあのその、ボッチだったからさ、友達とかよく分からないから迷惑かけるかもだけど、それでも大丈夫?」

「むしろ俺が迷惑かけるかもな!改めて宜しくだぜ!」

シシシと笑う独

「独は何歳なの?何処出身とか聞いても良い?」

「何かお見合いみたいだな、獅子座のA型埼玉産まれの埼玉育ち!孤児院ってわかるか?そこから半年くらい前に真里さんの任務絡みで会って蘆屋家に拾われたんだよ」

「それは何て言えば良いか」

孤児院と聞いて、晴明は単純に辛かったのではないかと考えた。自分は両親もいるから独の心情を察する事ができなかった。

「あー悪い悪い気を使っちゃうよな。俺両親の記憶無いから孤児院の園長が俺にとって親父何だよ。だから孤児院とは言ったけど、あそこは俺の実家だな!置いてきた兄弟達も心配だけど、俺がここで働いて仕送りしたらさ、親父の助けに何だろ?今はまだ任務も出来ないペーペーだけどな!」

最後は締まらないが、晴明には独が物凄くかっこよく見えた。

「独はすごいね、僕何てやっと出来た思いが強くなりたいだからなあ。独はカッコいいよ!」

「ばっか!やめろよ、そんな熱のこもった視線を向けてカッコいいとかやめろよ!恥ずいだろ!それでよ、晴明って魔物退治した事ある?」

「あるよ凄く怖かったけど、一回だけ。確か小鬼だったかな?緑色の奴」

「かー!もう魔物退治してるのかよ!俺実践まだでさ、緑色のどんな奴よ」

「何か茶色の腰布付けた、緑色の小人みたいな奴だよ!何か嚙みつこうとしてきたんだ」

「緑色の小人?それってさゲームとかで良くあるゴブリンみたいな奴?」

「そう!それだ!僕もどっかで見た事あるなあって感じてたんだよ、ゴブリンそうだゴブリンが1番しっくりくるよ!」

「おっおう、じゃ俺らの中ではゴブリンって呼ぼうぜ。ゴブリン強かったか?」

「朱夏さんはあっという間に斬り捨てたけど、僕はゴブリンが襲ってきてびびって腰を抜かしちゃってそれで、不思議な雷が腕から出て倒せたみたいなんだけど。あの雷が出なかったら多分死んでたかな」

「不思議な雷?どんなのよ!ちょっとやって見せろよ」

「えっ?出来るかな?あれから怖くて出してなかったけど、うーんえい!」

「そりゃ!」

「とりゃ!」

2人の間で気まずい沈黙が流れる。

「出ないな・・・」

「出ないね、何かごめん」

「まっまあ一回できたならその内出来んだろ!俺は火が相性良くてさ、部屋じゃ危ねえから今度修練場で見せてやるよ!」

「火!?凄い!魔法のメラとかファイアみたいな!?」

「まっ魔法と巫術は違うんだけどな。ほら俺らにMP何てないだろ?それよりゴブリンだよ。仮にガチでゴブリンならこの国にはゴブリンみたいな魔物が昔からいたって事だろ?」

「そうなるよね?ゴブリンだけじゃ無いみたいだし、怖いよね」

ドンドン、急に力強くドアが叩かれ、2人の返事を待たずにバンッと音と共に強引に開けられる。

「独!あんた此処に居たのね、あーあんた晴明じゃない、ちょうどいいわ。任務に行くわよ、2人共私に着いて来なさい!」

真里に耳を引っ張られながら2人は部屋から出される

「痛えー!離せよ!真里さん!」

「真里さんじゃない!真里お姉様!全く」

「行きますからお願い耳、離してええ」

真里は2人の言うことを聞かず、進んで行く。

「爺!車の用意は出来てるわね?」

「ーーーーはい。真里様出来ております、ですが今回の任務少々2人には厳しいのでは?」

「爺が居るんだから平気よ、平気!ほらっささっとあんたらは乗りな!」

尻を蹴飛ばされ、車に詰め込まれる。

「ーーーーでは行きますぞ」

2人はシートベルトもさせて貰えなかった。
後ろの席の晴明と独はジェットコースターのベルト無しバージョンを体験するハメになる。

「助けてえええ!!」

「寮にもどしてええええ」
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