神紋が紡ぐ異界録

貝人

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第十話 赤蜂

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晴明と独の修行は毎日体力づくりのロードワーク、右手10キロ左手10キロ右足10キロ左足10キロの系40キロの重り付き。
寝る時も食べる時もトイレの時もだ。
何度かトイレに間に合わなかったのは嫌な思い出だ。
最初は全く動けなかったし正直何も運動してこなかった晴明は吐きまくっていた。
独は吐く事はなかったが訓練中は特に口数が減っていた。
晴明は巫力のコントロールが1番大変だった。
気絶を繰り返し、ギリギリのラインを見極める。

ちなみにこの修行方法を提案したのは爺、朱夏と真里は
遠い目をしながら

「「頑張りなさい」」

とだけ言っていた。
ちはみに少しでもサボると重りと訓練が倍になる。

そんな2人に安らぎの時間はある、小鬼との戦闘時だ。
戦闘時は重りを利き腕と利き足だけ解放されるからだ。

「独今日も勝負だよ!」

「おう!負けたらジュース奢りな!」

あれから2人は2日に一度は小鬼を狩りに行っている、何故なら

「働かざる者食うべからずやで!こちとらボランティアじゃ無いんやで!この穀潰し共!」

2人は楼閣に叱咤され必死に働くのであった。
小鬼達をいつ通り殲滅すると、爺が電話していた。

「ーーーーはい。楼閣様、あれが出ましたか。今のお二人なら問題ないかと、はい。」

爺の運転で次の現場へ行く最中

「ーーーーお二人共、重りを今回は全て外して下さい。それと小鬼と同じ風に考えていると、死にますのでご注意を」

「え?重り外していいの?やったぜ!!」

「あの、そんなに、強い敵何ですか?」

「ーーーー今のお二人ならおごらなければ倒せますよ、さあ着きましたよ」

古びた神社の裏から『ぶぶぶぶぶ』と言う音が断続して聞こえてくる。

「ーーーーさあ、お二人共ご武運を」

赤黒い蜂の巣の様な物がある、その周りには赤い火が明滅している。まるで火の玉の様に。

晴明達に気付き、巣から次々と20センチ程の赤い蜂の様な虫が出てくる。

「は、蜂にしては、でかいよね?」

「あっああ何か火がチラチラ見えてるし」

2人は深呼吸をする。

独は素早く印を結ぶ、独は指で拳銃の様な形を作り

「晴明、とりあえず俺が1発ぶちかます!!!《のうまく さんまんだ ばざら だん せんだ まかろしゃだ そわたや うんたらたかんまん!》火術、焔玉ああああ!」

蒼い炎の玉が、次々と赤い蜂を撃ち落としていく。

「いつも思うけど霊○だよね?それ」

独は踊る様に赤い蜂を撃ち貫く

「破っ!破っ!うるせっ!んな事より晴明も早く印を結んどけよっ!何かでかいのが出そうな気がする!」

「順当に行けば女王蜂かな?やだなあ《ナウマクサマンダボダナンインダラヤソワカ》独巫力結構込めるからね!時間稼ぎ宜しく!」

晴明は巫力を練り上げて行く。

「あいあいさー!任しとけよ、《のうまく さんまんだ ばざら だん せんだ まかろしゃだ そわたや うんたらたかんまん!》火真剣!おりゃあああ!」

独は蒼い火の剣を作り、近付いてくる赤い蜂をどんどん斬り裂いていく。

『何故、我が子を殺す、人間め、人間めええええ!!』

巣から一際でかい赤い蜂が出てくる

「なっ喋った!?」

『頭をもいで内臓を喰い散らかしてやる!!!』

ゴウッと音を立てて独目掛けて飛んでくる

「晴明!?まだか!?」

「いくよ!雷狐狂」

紫色の雷の狐が踊り狂う、それは獲物を見つけた喜びか、呼び出された喜びか。
でかい赤い蜂を見つけ、ニタリと笑い赤い蜂の首に噛み付く。

『ぎいやああああああああ!?』

一際大きく光直ぐに轟音が鳴り響き大量の紫電が走る。

「ふうふう、疲れた・・」

雷の余波で頭が軽く焦げた独が怒っていた。

「明らかにオーバーキルだろ!おい!余波でビリっときたし、頭チリッたじゃねえか!晴明どうしてくれんだよ!感電死したらどうすんだよ」

死んだフリをしていた蜂が独に噛み付こうと牙を伸ばす。

「独!!!」

晴明に呼びかけられ振り返ると独の眼前には獰猛な牙が迫っていた。

「えっ?」

「ーー晴明様、独様油断し過ぎですな」

チンッと鍔鳴りがしたと思ったら爺がデカイ蜂を斬り伏せていた。

「ーーーお二人共、慢心が過ぎますな。帰ってから、戦闘訓練を倍にしましょう」

2人は爺が怒っている事実に赤い蜂よりも恐怖していた。

「ねっねえ、爺あの彼処に居る男の子って誰?」

「ーー?何処ですかな?」

「車の側だよ?あれ?見えないの?」

「晴明何言ってんだ?」

「男の子が居るんだってば!ちょっと見てくるよ!」

車の側へ駆け寄る晴明

「おっおい待てよ!晴明止まれなんか変だ!」

「ーー晴明様なりません!止まりなさい!」

独と爺の掛け声で晴明は止まる

「・・・モウスコシダッタノニ」

「君は一体何もなの?」

「・・・マタアオウ」

男の子はその場から消えていた、文字通り影も形も無く。

「ーーあれはあの者は」

爺の顔は青ざめていた。

「爺あいつが何か知ってるのか?俺達にも教えてくれよ!」

「ーーあれは、いえそんな筈はありません。あの者は、あの子は・・」

「爺大丈夫ですか?あの、顔色も悪いし、震えてるような」

「ーーッすみません。この件は私が責任を持って調べますので、心に秘めておいて下さい、どうかお願いします」

爺に頭を下げられ、2人は困惑していた。こんなに弱り切った爺の姿は初めて見たからだ。

2人はただ頷くしかなかった。
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