神紋が紡ぐ異界録

貝人

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第二十一話 剣

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  亜空で独はひたすら、筋トレと剣の修行を繰り返していた。剣の修行では、何度も斬られ殺されかけていた。

「はあ、はあ、はあ、死ぬまじで死んじゃう・・・」

「大丈夫だ!  私が出来たんだから、弟子の独にもできる! 」

  空島華の修行は感覚的な部分が多く、独は必死に頭を使っていた。

「そこは!  シュッパだ!  わかるだろ?  わかるよな? シュッパだ、シュッパ! 」

  シュッパズバッなどの擬音も多く、常人には理解不能な説明ばかりだった。

「はあ、はあ、もっと具体的になりませんか・・・・」

「ならん!  私はこう教わったのだから、お前にもわかるはずだ! 」

  ニカッと笑う鬼教官、笑顔はとても綺麗だが汗ひとつかかずに独の倍は動いて喋っていた。

「俺普通の人間何です・・・・だからあの休憩を・・・・」

「ムッ?  もう休憩か。仕方ないな少し話をしようか」

「お前は昇や悠や私が、自分より強く秀でていると思っているだろ?  だが違う。私は無力だった、転移先では力が及ばず何度も悔し涙を流した。悠は強かっただが、悠は転移した時何歳だったと思う?  」

「普通に15、16位ですか? 」

「違う、11歳だ。子供が魔物を倒し、私達に害をなそうとする人間も殺していたのだ。わかるか?  私達は当時17歳だった、これがどれ程異常で残酷な事か。無力故に悠一人に罪を背負わせ、悠の庇護の下暮らしていたんだ」

  空島華は遠い目をしながら儚げに笑った

「人を殺したんですか? 」

  独は思わず聞かずにはいられなかった。日本ではあり得ない状況に戸惑ったからだ。

「ああ、私や昇も悠程ではないが殺している。日本なら死刑確実だな、だがあの世界では命の価値が違う。殺し殺されが日常な世界、幼子でも魔法を使えば人を殺せる世界だ。誰かを護り自分を護る為に殺人に戸惑ってはならない世界だ。」

「そんな世界が・・・・まるで戦国時代だ」

「そうだな、戦国時代と言っても良い世界だ。飢饉もあったしな。今でも夢に見るよ、私達が殺した人の顔や救えなかった人の顔がな・・・」

「それは・・・・」

「甘い世界じゃないって事だよ。私も物語の勇者に憧れていたんだがな、異世界と言うのは平和な日本に暮らす私達には地獄でしかない。君の友達は何と言うか諦めるしかないかもしれん」

「そんな! 」

「独の友達が誘われようとしている世界は、私達が居る世界より更に厳しい世界だ。独覚悟はあるか? 」

「覚悟ですか? 」

「護り戦い抜く覚悟だよ、私は君を鍛える弟子だからな。だがそれを超えて戦う意思が必要何だよ。その意思はあるかい? 」

  真っ直ぐに強い瞳で独を見つめる

「俺は・・・俺は晴明の友達何です、初めてできた同年代の友達何です、だから戦います」

  決意を込めた瞳で空島華を見る。そんな独を見てニヤっと笑う。

「良く言った!  スキルアシストが無くても、何処までやれるか私に見せてみろ! 」

「はい! あっあのスキルアシストって・・・・」

「スキルアシストはスキルアシストだ!  地球人には無いがな!  私にはある!  だが大丈夫だ! 為せば成る!  戦わなければ生き残れないぞ! 」

「スキルアシストについては・・・・」

「わからん!  昇に今度聞いてみろ! 」

「わかりました、空島さんは向こうでは冒険者だったんですか? 」

「・・・・・・言いたく無い」

「すっすみません、聞いちゃまずかったですよね」

「・・・・・・剣聖」

「あっあの聞き取れなくて」

「剛力の剣聖よ!!!  何でこんなに線が細い私が剛力なのよ!  おかしいでしょ! 」

  鼻息をあげながら怒鳴り散らし、地面に鞘を叩きつける。叩きつけられた地面はヒビが入っていた。
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