現代文ドラッグ

書房すけ

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狂気の日記

ルーシーの見る夢

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 ルーシーという少女は、よく夢の中で迷っていた。──それは、現実が上手くいかないことによる、逃避だったといえなくもない。

─────────────────────

 真っ黒なカラスは口をパクパクさせながら、紫色の空を飛んでいる。──辺りを見回してみると、その数は一羽ではない。黒い円環を描いたり、空の彼方まで列をなしたりする様子は、「無数」という言葉が相応しい。

 彼らの極めて奇妙な特徴は、口をパクパクさせるだけで何の声も発していないことだ。羽も殆ど動いていないし、目はどこかを向いているが、死んだようにただ一直線を見ている。──否、「見ている」のではなく、ただ、オモチャの目がカラスにくっついているだけのようにも見える。

 空にはそんな、「死」を模したような光景が広がっているが、私の今歩いているところの光景はその対極にあるもののように思える。

 ──地面は灰色のレンガで出来ていて、その脇には薄い紫色の草むらが広がっている。その草むらからは、黄緑色のサボテンが生えていて、サボテンたちはゆらゆらと左右に波打っていた。

 ──よく見ると、サボテンたち一人一人には顔がついているようだ。目は勿論のこと、ちゃんと口もついている。あの変なカラスと違って、目は生き生きと動いている。更に、口はヒトが話すように自然に動いていて、何か話している様子が窺える。──声は囁くように小さいので、何を話しているかは定かではない。それでも、楽しいことを話していることはなんとなく分かる。



 
 
 ビュウウウ...──そのとき、強い風が吹いた。





 無数のカラスは、風が吹いた一瞬の内に、サボテンの上に止まった。沢山あったサボテンは、一瞬の内に無数のカラスでうめつくされた。──それと同時に、全てのサボテンの目はオモチャのようになり、口は一定の周期でパクパクし始めた。──全てのカラスとサボテンは、二つの目を乗せた顔をこちらに向けて、全く同じ周期で口をパクパクさせていた。
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