現代文ドラッグ

書房すけ

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心を育む物

知の巨人

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比喩は始まる。


 今から述べるのは、何も不思議なことではなく、恐ろしいことでもない。そして、何かを暗示しているわけでもなく、何かの比喩でもない。それらは、単なる知覚可能な自然現象の例示に過ぎない。

 人の顔を握り潰すと、大豆が指の隙間からこぼれ落ちていく。

 人の顔を捻ると、麦の束になって、手を離すとパラパラと落ちていく。

 人は、新しい知識を得るときに、沢山の喜びを感じるという。


 今述べたこれらが、何かの比喩であると感じたか。──もしかして君は、先程「比喩ではない」と述べたから、今の発言を信じないのか。それは安直である。──比喩が何処から始まっているか、について君は考えたことがあるのか。そして、どこでそれが終わるかを考えたことがあるのか。──それを気にしないで一々矛盾だの支離滅裂だの言うのは間違いではないか。

 人の顔の皮を剥くと、熟れた果実から汁がこぼれる。

 人は知識を得て、怪力を持つ巨人となるのである。


比喩は終わる。
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