4 / 46
日曜日
「あたしは魔法少女」(4)
しおりを挟む
「意外と綺麗にしてるんですねー」
俺の部屋を見たウィークの第一声がそれだった。二週間殆ど掃除をしていなかった筈だが、少なくとも嘘をついているようではない。まあ、悪い印象をもたれていないなら良しとする。
「というか、物が少ないですね。いかがわしい本とか見当たらないですし」
「……ねえよ、そんなもん」
有ったとしても、目の見えるところに置くわけないだろう。いや、本当にあるかどうかは別として。
「いやいや、魔法少女ちゃん。いまの時代はパソコンにあるんじゃないかい?」
「それもそうですね」
ふうむ。原付は知らなかったくせに、パソコンは知っているのか魔法少女。異界出身なら知らないかもと邪推していた。こいつの中でどんな設定なのか是非聞きたいところだ。しかし、今はもう眠い。俺は台所のコップに水を注ぐと、胡坐をかいて座っている白雪先輩の前に差し出す。
「さんきゅー」
「それ飲んだら寝てくださいよ。俺もう寝るんで」
ベッドに倒れこんで毛布を一枚、二人の下に蹴り飛ばす。学校が始まるまで二、三時間は眠れる。目が覚める頃には自分の身に降りかかっている全ての厄介事が解決していたらいいのに。
勿論そんな都合の良いことなんて俺の人生に起きる筈もなく。平日も休日も毎朝八時に俺を起こしてくれる律儀な目覚まし時計は、脳を直接揺さぶっているのではと錯覚するほどやかましい音を奏でている。本気でやかましいので買い換えようと思っているが、和やかな音というのも何だか目覚ましとして機能しないのではないのかと思うと、中々買い換えようという気が起こらない。
「おー起きたか、彰彦ちゃん。」
「あ、お茶貰ってますよー」
面倒事は無くなってはいなくて、闖入者もそのままだった。目元を力いっぱいこするが、目の前のお茶を飲んで寛いでる二人(一人はメイド服)はどうやら現実らしく、居なくなったりはしない。いっそ夢だったらよかったのに。
「彰彦さんの分のお茶も淹れますねー」
勝手なことをしている。というか、さん付けで呼ぶことにしたのか。
ウィークは台所へ歩くといつ使ったんだか分からない薬缶と、これまたいつ買ったか分からない茶葉を用いてお茶を入れる。大丈夫な筈。お茶はそう簡単には腐らない。それにこの二人がすでに飲んでいて毒見は済んでいる。よし、問題ない。
「はい、どうぞ」
「どうも。……すげえ。茶柱が立ちまくってる」
ひい、ふう……七本か。こんなの見たことない。
「ねぇー凄いでしょ。アタシに淹れた時もそうなってたよ。魔法少女ちゃん、運良いのかなー」
「へへへ。運には自信がありますから」
そういってお茶を啜る。いやいや和やかだけども。
「もう出る時間なんで学校行きますけど、白雪先輩はどうします?」
学校指定の制服に急いで着替えながら今日の科目を思い出す。なにせ二週間ぶりだ。あっている自信がない。
「うーん。アタシは適当に帰ろうかな。今日のバイトは出るから安心してねー」
「ええー。白雪姉さん帰っちゃったら、あたしどうするんですか」
そうか、それは考えてなかった。でも今考えるべきはそれではなく、今日の科目についてだ。確か体育は無かったが……もう、いいか。適当に教科書突っ込んでおこう。さっきまで着ていた服を脱ぎ散らかして本棚まで移動する。横目で、にやにやしながらウィークに耳打ちする白雪先輩が見えた。
「わかりました。あたしは部屋で大人しくしておきます」
何でそうなった?
だが、今は余計なことに気を回してる暇はない。お茶を一気に飲み干して、鞄を肩にかけて玄関まで駆け抜ける。
「じゃあ、それで」
「うぃ。行ってらー」
「行ってらっしゃいませー」
その格好だとご主人様って続きそうだなとか考えながら自宅を後にする。思えば行ってらっしゃい、なんて久しく耳にしていなかった。俺の普段の生活を鑑みれば当たり前のことだし、そもそも状況がよく分からないことになっているので別に感動的ってわけでもないが、妙に引っ掛った。
なんだろう。人との交流に飢えてんのかな。バイト先で面倒な輩(主に白雪先輩)と絡んだりしてるのに。
俺の部屋を見たウィークの第一声がそれだった。二週間殆ど掃除をしていなかった筈だが、少なくとも嘘をついているようではない。まあ、悪い印象をもたれていないなら良しとする。
「というか、物が少ないですね。いかがわしい本とか見当たらないですし」
「……ねえよ、そんなもん」
有ったとしても、目の見えるところに置くわけないだろう。いや、本当にあるかどうかは別として。
「いやいや、魔法少女ちゃん。いまの時代はパソコンにあるんじゃないかい?」
「それもそうですね」
ふうむ。原付は知らなかったくせに、パソコンは知っているのか魔法少女。異界出身なら知らないかもと邪推していた。こいつの中でどんな設定なのか是非聞きたいところだ。しかし、今はもう眠い。俺は台所のコップに水を注ぐと、胡坐をかいて座っている白雪先輩の前に差し出す。
「さんきゅー」
「それ飲んだら寝てくださいよ。俺もう寝るんで」
ベッドに倒れこんで毛布を一枚、二人の下に蹴り飛ばす。学校が始まるまで二、三時間は眠れる。目が覚める頃には自分の身に降りかかっている全ての厄介事が解決していたらいいのに。
勿論そんな都合の良いことなんて俺の人生に起きる筈もなく。平日も休日も毎朝八時に俺を起こしてくれる律儀な目覚まし時計は、脳を直接揺さぶっているのではと錯覚するほどやかましい音を奏でている。本気でやかましいので買い換えようと思っているが、和やかな音というのも何だか目覚ましとして機能しないのではないのかと思うと、中々買い換えようという気が起こらない。
「おー起きたか、彰彦ちゃん。」
「あ、お茶貰ってますよー」
面倒事は無くなってはいなくて、闖入者もそのままだった。目元を力いっぱいこするが、目の前のお茶を飲んで寛いでる二人(一人はメイド服)はどうやら現実らしく、居なくなったりはしない。いっそ夢だったらよかったのに。
「彰彦さんの分のお茶も淹れますねー」
勝手なことをしている。というか、さん付けで呼ぶことにしたのか。
ウィークは台所へ歩くといつ使ったんだか分からない薬缶と、これまたいつ買ったか分からない茶葉を用いてお茶を入れる。大丈夫な筈。お茶はそう簡単には腐らない。それにこの二人がすでに飲んでいて毒見は済んでいる。よし、問題ない。
「はい、どうぞ」
「どうも。……すげえ。茶柱が立ちまくってる」
ひい、ふう……七本か。こんなの見たことない。
「ねぇー凄いでしょ。アタシに淹れた時もそうなってたよ。魔法少女ちゃん、運良いのかなー」
「へへへ。運には自信がありますから」
そういってお茶を啜る。いやいや和やかだけども。
「もう出る時間なんで学校行きますけど、白雪先輩はどうします?」
学校指定の制服に急いで着替えながら今日の科目を思い出す。なにせ二週間ぶりだ。あっている自信がない。
「うーん。アタシは適当に帰ろうかな。今日のバイトは出るから安心してねー」
「ええー。白雪姉さん帰っちゃったら、あたしどうするんですか」
そうか、それは考えてなかった。でも今考えるべきはそれではなく、今日の科目についてだ。確か体育は無かったが……もう、いいか。適当に教科書突っ込んでおこう。さっきまで着ていた服を脱ぎ散らかして本棚まで移動する。横目で、にやにやしながらウィークに耳打ちする白雪先輩が見えた。
「わかりました。あたしは部屋で大人しくしておきます」
何でそうなった?
だが、今は余計なことに気を回してる暇はない。お茶を一気に飲み干して、鞄を肩にかけて玄関まで駆け抜ける。
「じゃあ、それで」
「うぃ。行ってらー」
「行ってらっしゃいませー」
その格好だとご主人様って続きそうだなとか考えながら自宅を後にする。思えば行ってらっしゃい、なんて久しく耳にしていなかった。俺の普段の生活を鑑みれば当たり前のことだし、そもそも状況がよく分からないことになっているので別に感動的ってわけでもないが、妙に引っ掛った。
なんだろう。人との交流に飢えてんのかな。バイト先で面倒な輩(主に白雪先輩)と絡んだりしてるのに。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる