【R18】閨の指導を異世界で~風俗嬢は王子様の教育係(夜)になりました~

塔野明里

文字の大きさ
9 / 41
1章 春嬢編

第八話~ケイン~

 第八話~ケイン~

 「勝手なことばっかり言いやがって。」

 王城の裏口から厩舎に出る。馬たちの世話係を無視して愛馬に飛び乗った。城の裏手に広がる草原に走り出る。
 嫌なことがあるとすぐ馬と逃げると兄貴からよく言われていた。

「誰も世話係なんて頼んでないだろ!」

 マリアの笑顔が浮かんだ。たしかにもう一度会いたいとは思った。でもこんな形を望んだわけじゃない。

 * * *

 女性は淑やかであれ。母親がまさにそんな人だった。国王である親父を支え、決してでしゃばらず、いつも微笑みを絶やさない。
 そんな母を父は愛していたし、俺たち兄弟もなに不自由なく育てられた。

 しかし、幸せは続かなかった。十年前に母が病気で死んでから、なにかが確実に変わってしまったことは確かだ。

 皇后である母が死んだことで、父の元にはその後釜を狙う縁談が山のように舞い込んだ。
 母の喪が明けると、今まで一緒に悲しんでいるように見えたやつらが手のひらを返して、後妻を勧めてくる。貴族令嬢から、果ては息子である俺たちと変わらない年齢の娘まで担ぎ出された。

 辟易した親父は全ての縁談を断り、次いで俺たちへの縁談も全て断った。
 国王がダメなら王子にと娘を差し出す貴族たち。娘を道具のように扱うやつらに、当時十歳だった俺も嫌気が差していた。

 なにより、道具のように扱われても何も反抗しない女たちが嫌いだった。
 昨日まで父親の後妻になるためヘラヘラしていた女が、今日は俺や兄貴に取り入ろうと作り笑いを浮かべている。その頃から、極力女と関わるのをやめた。

 12歳になった俺は騎士学校に入った。幼い頃から剣術は好きだったし、騎士学校は女人禁制だ。俺には都合が良かった。

 自分のやりたいことだけができる生活は楽しかった。訓練は厳しかったが、やめたいと思ったことはない。王子だからと特別扱いされることもなく、仲間もできた。それが何よりも心地良かった。

 18歳で学校を卒業し、そのまま騎士として騎士団に派遣された。俺は次男だし、兄貴のほうが有能なことは誰でも知っている。このまま騎士として過ごせると思っていた。

 事件が起きたのは去年の春、ちょうど一年前だ。
 兄貴が突然、真実の愛を探すために留学に行くと言い出した。

 まったく意味がわからない。俺と同じで兄貴も女には辟易していると思っていたし、女の気配もなかった。
 しかも真実の愛を探すって何なんだよ。結婚相手を探すにしても留学する必要があるのか?

 しかしそんな俺たちの疑問には答えないまま、兄貴は隣国であるアルバ公国に留学に出た。言い出してから本当にあっという間の出来事で、これには親父も俺も貴族たちも驚いた。

 兄貴は俺より四歳年上で結婚適齢期だった。貴族たちは娘を次期皇后にしようと虎視眈々と狙っていたのに、兄貴がいなくなったことでその慌てようは酷いものだった。

 困ったのはおれも同じだった。このまま騎士として生きていこうと思っていたのに、すぐに王城に戻され帝王学から外交まで兄貴が受けていた教育を受けさせられた。

 ただ留学に行くだけ、兄貴はいずれ戻ってくる。しかし、万が一に備えるのは当然のことだと俺の自由はなくなった。

 それと同時に兄貴に向かうはずだった縁談が俺にやってくるようになったことが、さらに俺を苛立たせた。
 母が死んだときと同じだ。結婚相手は誰でもいいんじゃないか。兄貴が帰ってくれば、また兄貴に媚を売るんだろう。

 3ヶ月前に成人の儀を終えてから、貴族からの縁談の申し込みはさらに増えていた。

 マリアの噂を初めて聞いたのはちょうどその頃だった。

 * * *

「すげー可愛いらしいんだよ。しかもサービスが良いって気になるだろ?」

 その頃は帝王学の講義、外交のための面会、縁談相手との見合い、全てを無視して城下町に出ていた。
 その日は騎士の仲間たちと会い、早く騎士団に戻りたいと愚痴をこぼしていた。

「なんの話だ?」

「春嬢だよ!すげー可愛いうえに積極的で、淑やかさなんてお構い無しなんだってよ!」

 女の話題に顔をしかめた。連日の見合い、淑やかさなのか知らないが自分の本心もしゃべらない女たち。金を出して女を買うなんて信じられない。

「だから!そこらへん女とは全然違うんだって!話も面白いらしいし、こういう下品な話もしてくれるって聞いたぞ。」

「女がか?そんなのただの噂だろ?」

「一晩金貨10枚だぞ?簡単に会って確かめられるわけないだろ。」

 一晩で金貨10枚。たった一人の女にずいぶん強気な値段だ。それでも客は後を絶たないらしい。

「お前はいいよ。女なんて選び放題だろ?羨ましい。」

 俺は女と付き合ったことも、コイツらのいうような経験もまったくない。興味がないと言えば嘘になるが、女への拒否感のほうが強かった。

「顔色窺ってばかりの女なんて興味ない。」

 もしその女が噂通りなら面白いかもな。最初はそんな興味だった。

 * * *

 兄貴が帰都する日が決まった。どうやら真実の愛は見つからなかったらしい。
 やっと帰ってくる第一王子のため、首都では祭りが行われることになった。

「アルセインが帰ってきたら、すぐに婚約者を決める。その次はお前だ。」

 親父の決定に、貴族たちは歓喜の声をあげた。

「俺は関係ないだろ!兄貴が戻れば後継者は兄貴だ!俺は騎士団に戻る。」

「騎士団に戻るのはかまわん。しかし、婚約者は決めてもらう。アルセインのように突然いなくなられては堪らないからな。」

 婚約者は人質か?俺たちが勝手に国を出たりしないための道具なのか?

「見損なった。親父も結局アイツらと同じなのかよ。」

 そのまま城を飛び出し歓楽街に向かった。道具のような女を抱くくらいなら、噂の女に会ってみようと思った。

 実際に会った彼女は噂以上の女だった。飾り気のない笑顔が心地よくて、ずっと話していたかった。

 まさかその初めての夜を、父親に知られているとは思ってもみなかった。
感想 10

あなたにおすすめの小説

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!