【R18】閨の指導を異世界で~風俗嬢は王子様の教育係(夜)になりました~

塔野明里

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1章 春嬢編

第十五話

 第十五話

 第一王子帰都の祭りまであと二週間。祭りの主役であるアルセイン・トリストが王城に到着した。
 王子の到着に城下町もいよいよ盛り上がり、祭りの準備が着々と進んでいる。

 王城では使用人や護衛騎士が総出で王子を出迎え、城内も明るい雰囲気に包まれていた。


 「アルセイン・トリストただいま帰城致しました。」

 国王の執務室。母親に似た茶色い髪を短く刈り上げ、一年前よりも精悍な顔つきになって帰ってきた息子を国王陛下は満足そうに見つめていた。その横には第二王子であるケイニアスが立つ。

「よく戻った。予定より早かったな。」

「天気に恵まれ、予定よりだいぶ早く着くことができました。父上、お元気そうで何よりです。」

 明るい緑色の瞳、国王や第二王子であるケイニアスよりも頭ひとつ背の高いアルセイン。その姿にはすでに次期国王の風格が備わっているように見える。

「ケイニアスも、健勝で何よりだ。」

「馬鹿な兄貴のせいでこっちはいい迷惑だ。黙って出ていきやがって。」

「お前は相変わらずだな。」

 憎まれ口を叩きながら第二王子も、兄の帰還を喜んでいた。

「それで?真実の愛とやらは見つかったのか?」

 からかうような国王の口調。それとは対照的にアルセインの表情は暗い。

「父上、私はこの留学で様々なことを学びました。その中でも一番驚いたのは私自身のことです。」

「ふむ?どういう意味だ?」

「ずっと疑問に思っていました。自分は他人とは違うのではないかと、その疑問の答えがようやく分かってきたのです。」

 アルセインの告白に、国王も第二王子も首を傾げた。

「すまないが、もう少し分かるように話してくれないか。イマイチ理解できないのだが。」

 唇を噛み締めるアルセインは、言葉を探すように黙りこんだ。

「いま…この城下町に男性たちにとても人気のある女性がいると噂を聞きました。美しくこの国の女性とは違い、とても積極的な方だと。」

 思いがけない兄の言葉に息を飲んだのは、第二王子のケイニアスだった。

「その方にぜひとも一度お会いしたいのです。そうすればきっと私の悩みも……。」

「ダメだ!」

 声を荒らげたのはもちろんケイニアスだ。

「ケイニアス、もう少しアルセインの話を聞け。お前は…。」

「マリアは俺の教育係だろ!たとえ兄貴でも駄目なものはダメだ!」

 二人のやり取りに驚いたのはアルセインの方だ。

「たしかにその人の名はマリアだと聞いています。しかし、教育係とはどういうことですか父上?」

「はぁ…ややこしくなってきたな。説明する前にひとつ確認したい。お前は彼女に会ってどうするつもりなんだ?」

 するとアルセインの顔がポッと赤くなる。

「いえ…その…できれば、あの…閨の指導を…。」

「ダメに決まってるだろう!なんだよ、真実の愛を探すとか言いながら帰ってくるなり何だそれ!絶対ダメだ!」

 思いもよらない展開に国王は頭を抱えた。

「アルセイン。そのマリアという女性は今この城内にいる。ケイニアスの教育係という形で私が雇ったのだ。」

 思いがけなかったのはアルセインも同じだったようだ。国王の言葉に目を白黒させている。

「まさか…そんなことが…。彼女にならどうにかしてもらえるかと思ったのですが。」

「まず、そのお前の悩みとやらを聞かせて貰えないか?それが分からないと判断ができないだろう。」

「判断ってなんだよ?!どんな理由でもダメに決まってる!」

 しかしアルセインは口をつぐんだまま、話す気はないようだ。

「分かった…。とりあえず彼女に会って話してみればいい。話すだけだ。それならお前もいいだろう?」

「…話をするだけだからな!たとえ兄貴でもアイツに触ったら容赦しない。」

 昨日まで彼女と喧嘩していた奴がよく言う。国王は呆れ顔だ。

「アルセイン、その悩みが解決すればお前はもう留学など言い出さないんだな?」

「はい、この国で後継者としての責務を全うするつもりです。」

 その言葉に国王はため息を吐いた。

「彼女は昨日まで体調が優れずに寝込んでいたんだ。だからお前が彼女に会うのは明日にしよう。わかったな?」

「はい!」

 彼女との面会が認められたアルセインは嬉しそうに頷き、反対にケイニアスは複雑な表情で兄を見つめていた。

 * * *

 「アルセイン様と面会ですか?」

 アゼルさんから伝えられたのは明日またあの温室でアルセイン様とお茶を共にするという話だった。今回はお誘いではなく、決定事項のようだ。

「あの、それはケイニアス様の教育係ですと挨拶するということでいいんでしょうか?」

「そうだと思います。とくに陛下から伺ってはおりませんが…。」

 弟であるケインの教育係です。夜のほうの。言いづらい、ものすごく言いづらい。

「アルセイン様はお優しい方ですから、心配されなくても大丈夫ですよ。」

 目を赤く腫らして戻ってきた私を、アゼルさんは何も聞かずに迎えてくれた。どれだけ感謝してもしたりない。

「わかりました。心配するのはやめます!アゼルさん一緒に食べませんか?」

 昼間、ケインから可愛らしいマカロンを受け取った。城下で人気の菓子店からわざわざ取り寄せてくれたそうだ。

「それはダメです。ケイニアス様がマリア様のために送られたものですから。」

 この世界にきて初めて食べたマカロンは柔らかくとても甘かった。

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