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2章 侍女編
第二十五話
第二十五話
二度寝から目覚めると、外はキレイな青空。そろそろ昼ご飯の時間になろうとするところだった。明け方戻ってきてからずいぶん寝てしまった。
いくら休日とはいえ、このままでは街に行く時間がなくなってしまう。私は急いで準備を始めた。
シンプルな白いシャツと膝丈のスカートはシックな紺色。外出時の服装は決まっていて、侍女は華美にしてはいけないそうだ。ダサい制服が嫌だった学生時代を思い出す格好だった。
淑やかであることと地味な服装をすることはあまり関係がないように思うのは私だけなのだろうか。
昨日ミシェル婦人を見送った裏口から城外に出ると遠くから人々のざわめきが聞こえてくる。
舞踏会に合わせ城下町も祭りのような賑わいだ。
* * *
「お嬢さん、お城の人?」
「かわいいぃ。ちょっとお茶しようよぉ。」
この制服のような格好には難点がある。こうやって見ただけで城の侍女であることがわかってしまうことだ。そして城の侍女は女性にとって憧れの的、男にとっては淑やかな女性の証。つまり大人しくて反抗しない女性ということだ。
「お断りします。行くところがありますので。」
作り笑顔で肩に回されそうになる男の手を避ける。近道しようと裏道に入ったのがよくなかった。人の多い通りまでは少し距離がある。
「お茶くらいイイじゃん。」
「ちょっとだけだからさぁ。」
くたびれた服からのぞく入れ墨と顔の傷跡。まともな男じゃないことだけは確かだ。
「困ります。人を呼びますよ。」
「おぉ、強気な女だ。珍しいな。好きだぜそういうの。」
一人の男が背後に回り込み逃げ道を塞がれた。出掛けると毎回のように絡まれるのはなんでなの?この服装のせいなら改善を要求したいんだけど。
「………だ!」
大声をあげようとした瞬間。後ろからドサっと何かが倒れる音がした。
「なんだテメェ!」
反撃する隙もなく、あっという間に目の前の男も白目を剥いて地面に倒れ込んだ。体術?護身術?スッと首に一撃を入れられただけで、大男が倒されてしまった。
真っ青な髪を一つに結び、色付き眼鏡がものすごく怪しい男が私を助けてくれたらしい。そんな格好で変装のつもりなんだろうか。
「ケイン!なんでこんなとこにいるの?!」
真っ黒なサングラスを外すと青い瞳が覗いた。
「こんな道を通るなよ!危ないだろうが!」
彼の耳には変装用のピアス。明日には大切な仕事があるのに、こんなところで何をしてるの。
「ケイン…どこからついてきたの…?」
「……………結構前から。」
盛大なため息をつく。今日出掛けるなんて言うんじゃなかった。
「なんでついてきたの?」
「………。デ。」
「で?」
国王陛下からは私達の関係を誰にも知られないこと。城内で二人で過ごすのは週に一度と言われている。私達のことを認めてもらえるまでの約束。たった一ヶ月で破ってどうするの。
「ケイン?」
「デートがしたい!」
路地裏の真ん中で私は頭を抱えた。
「ロベルト卿に張り合ってるだけじゃない…。」
「違う!アイツは関係ない。」
「それでそんな格好してきたの?」
髪色を変えるのはいいけど、その目立つサングラスはなに?
「しょうがないだろ。クリスがこれならバレないって!」
ケインはクリスさんに完全に遊ばれてる。そしてクリスさんが知っているのなら、国王陛下にも絶対に知られているはずだ。
「もう…来ちゃったからしょうがないけど…多分来週は会えないと思うよ。」
来週会う分の前借りくらいで済めばいいけど。
「マリアは嫌なのか?俺と出掛けるの。」
「嫌じゃないけど‥、もっと普通な格好でしたいよ。」
しゅんと肩を落とす彼はかわいいけど、こんなんで本当に陛下に認めてもらえるのだろうか。
「もぉ‥ほら行くよ!モタモタしてたらお店閉まっちゃう。」
彼の手を取り歩き出すと、ケインは小さな子どもみたいに嬉しそうに笑った。
「ここだ!良かった、まだやってる!」
可愛らしい店構え。ショーウィンドウには小さな小瓶が並び、若い女性たちが中をのぞいていた。
女性しかいない店内にはは入れないと言うケインを残し、女性たちの間を抜けて中に入る。ミシェル婦人オススメの化粧品店だ。
香水、口紅、ファンデーション。目的のハンドクリームを探しながら、あることに気づいた。
ーーーなんか、シンプルなものばっかり。
化粧品といえば、中身だけでなくそのパッケージが可愛らしいのも選ぶ楽しみのひとつだ。日本にいた頃は給料をもらうたび化粧品を買いに行くのが楽しみだった。パッケージ買いしたこともたくさんある。
でもこの国の化粧品たちは、シンプルというかほとんど飾り気がない。瓶の形や色が少しずつ違うくらいだ。
私としては少し物足りなかった。
周りの女のコたちは楽しそうに選んでるし、これが普通なのだろうか。
「何かお探しですか?」
店員さんに保湿効果の高いハンドクリームを選んでもらい、買い物を終えた。
怪しさに遠巻きにされているケインのもとに戻り、デートを再開する。
「つぎはどこに行こうか?」
二度寝から目覚めると、外はキレイな青空。そろそろ昼ご飯の時間になろうとするところだった。明け方戻ってきてからずいぶん寝てしまった。
いくら休日とはいえ、このままでは街に行く時間がなくなってしまう。私は急いで準備を始めた。
シンプルな白いシャツと膝丈のスカートはシックな紺色。外出時の服装は決まっていて、侍女は華美にしてはいけないそうだ。ダサい制服が嫌だった学生時代を思い出す格好だった。
淑やかであることと地味な服装をすることはあまり関係がないように思うのは私だけなのだろうか。
昨日ミシェル婦人を見送った裏口から城外に出ると遠くから人々のざわめきが聞こえてくる。
舞踏会に合わせ城下町も祭りのような賑わいだ。
* * *
「お嬢さん、お城の人?」
「かわいいぃ。ちょっとお茶しようよぉ。」
この制服のような格好には難点がある。こうやって見ただけで城の侍女であることがわかってしまうことだ。そして城の侍女は女性にとって憧れの的、男にとっては淑やかな女性の証。つまり大人しくて反抗しない女性ということだ。
「お断りします。行くところがありますので。」
作り笑顔で肩に回されそうになる男の手を避ける。近道しようと裏道に入ったのがよくなかった。人の多い通りまでは少し距離がある。
「お茶くらいイイじゃん。」
「ちょっとだけだからさぁ。」
くたびれた服からのぞく入れ墨と顔の傷跡。まともな男じゃないことだけは確かだ。
「困ります。人を呼びますよ。」
「おぉ、強気な女だ。珍しいな。好きだぜそういうの。」
一人の男が背後に回り込み逃げ道を塞がれた。出掛けると毎回のように絡まれるのはなんでなの?この服装のせいなら改善を要求したいんだけど。
「………だ!」
大声をあげようとした瞬間。後ろからドサっと何かが倒れる音がした。
「なんだテメェ!」
反撃する隙もなく、あっという間に目の前の男も白目を剥いて地面に倒れ込んだ。体術?護身術?スッと首に一撃を入れられただけで、大男が倒されてしまった。
真っ青な髪を一つに結び、色付き眼鏡がものすごく怪しい男が私を助けてくれたらしい。そんな格好で変装のつもりなんだろうか。
「ケイン!なんでこんなとこにいるの?!」
真っ黒なサングラスを外すと青い瞳が覗いた。
「こんな道を通るなよ!危ないだろうが!」
彼の耳には変装用のピアス。明日には大切な仕事があるのに、こんなところで何をしてるの。
「ケイン…どこからついてきたの…?」
「……………結構前から。」
盛大なため息をつく。今日出掛けるなんて言うんじゃなかった。
「なんでついてきたの?」
「………。デ。」
「で?」
国王陛下からは私達の関係を誰にも知られないこと。城内で二人で過ごすのは週に一度と言われている。私達のことを認めてもらえるまでの約束。たった一ヶ月で破ってどうするの。
「ケイン?」
「デートがしたい!」
路地裏の真ん中で私は頭を抱えた。
「ロベルト卿に張り合ってるだけじゃない…。」
「違う!アイツは関係ない。」
「それでそんな格好してきたの?」
髪色を変えるのはいいけど、その目立つサングラスはなに?
「しょうがないだろ。クリスがこれならバレないって!」
ケインはクリスさんに完全に遊ばれてる。そしてクリスさんが知っているのなら、国王陛下にも絶対に知られているはずだ。
「もう…来ちゃったからしょうがないけど…多分来週は会えないと思うよ。」
来週会う分の前借りくらいで済めばいいけど。
「マリアは嫌なのか?俺と出掛けるの。」
「嫌じゃないけど‥、もっと普通な格好でしたいよ。」
しゅんと肩を落とす彼はかわいいけど、こんなんで本当に陛下に認めてもらえるのだろうか。
「もぉ‥ほら行くよ!モタモタしてたらお店閉まっちゃう。」
彼の手を取り歩き出すと、ケインは小さな子どもみたいに嬉しそうに笑った。
「ここだ!良かった、まだやってる!」
可愛らしい店構え。ショーウィンドウには小さな小瓶が並び、若い女性たちが中をのぞいていた。
女性しかいない店内にはは入れないと言うケインを残し、女性たちの間を抜けて中に入る。ミシェル婦人オススメの化粧品店だ。
香水、口紅、ファンデーション。目的のハンドクリームを探しながら、あることに気づいた。
ーーーなんか、シンプルなものばっかり。
化粧品といえば、中身だけでなくそのパッケージが可愛らしいのも選ぶ楽しみのひとつだ。日本にいた頃は給料をもらうたび化粧品を買いに行くのが楽しみだった。パッケージ買いしたこともたくさんある。
でもこの国の化粧品たちは、シンプルというかほとんど飾り気がない。瓶の形や色が少しずつ違うくらいだ。
私としては少し物足りなかった。
周りの女のコたちは楽しそうに選んでるし、これが普通なのだろうか。
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