30 / 41
2章 侍女編
第二十七話
第二十七話
「かわいい!」
オシャレなカフェのテラス席。そこは隠れ家のような知る人ぞ知るという場所にあった。テーブルには様々な柄のコスメケースが並び、カラフルな香水瓶にはクリスタルがはめ込まれている。
「マリアさんのお話を聞いて、すぐに作らせてみたの。どうかしら?」
「とっても可愛いです!部屋に置くだけで嬉しくなっちゃいます!」
そこへ店員が豪華なアフタヌーンティーセットを運んできた。サンドウィッチ、ケーキにマカロン。今日は女子力が高い一日になりそう。
* * *
「実はあのお店、私の店なの。」
ミシェル婦人にそう告げられ、私は驚きで返事ができなかった。
婦人が何をしている人なのかというより、この国で女性が事業をしていることに私は驚いてしまった。
「亡くなった主人は私のやりたいことをやらせてくれる人だったの。女だからダメだなんて言われなかったわ。」
可愛いらしい店構え、女性客たちの楽しそうな雰囲気。なるほど、女性がやっているからこそあんなお店ができるんだ。
「それでマリアさんにぜひお願いがあるの。」
そうして今日、こんな素敵なカフェに連れてきてもらってしまった。
「マリアさんの話を聞いてびっくりしたわ。こんなに素敵なものを思いつくなんて。」
私は恐縮するしかない。これは私が思いついたわけじゃないもの。日本で見たものを伝えただけでこんなに喜んでもらえるなんて話して良かった。
「私はただお話しただけです。それを形にできる婦人が素晴らしいんです。」
花柄の口紅ケースを手に取る。カラフルな小花柄がかわいい。
「この真ん中のところにリボンとかレースを付けても可愛いですね。」
「マリアさん!それすっごくいいわ。」
美味しいお茶とケーキを楽しみながら、たくさんの案を話し合った。楽しくて楽しくてあっという間に時間が過ぎていた。
「おかげで素晴らしいものが出来そう。本当にありがとう。」
「こちらこそ、本当に楽しくて時間を忘れちゃいました。」
この世界にきてこんな話ができたのは初めてだった。
「マリアさん、少しは元気になったかしら?」
「え‥‥‥‥?」
ミシェル婦人は心配そうな顔でこちらを見つめていた。
「ここ最近、なにか悩んでいるように見えたから。余計なお節介だったかしらね。」
「嬉しいです。そんなふうに言ってもらえるだけで。」
私は恵まれている。いろんな人に良くしてもらって、そう思っていても気持ちは止められない。
「もうひとつマリアさんにお話があるの。」
日が傾き、テーブルに置かれた香水瓶に夕陽がキラキラと輝いていた。
「マリアさん、私と一緒に仕事をしてみない?」
驚きで言葉が出てこない。
「今日確信したわ。マリアさん、この商品は絶対に売れる。この国で淑やかさを求められる女性たちの自宅での楽しみになるわ。」
鏡台に並ぶ美しい化粧品。それを見るだけで一日あった嫌なことも忘れられるかもしれない。
「私はそんな女性たちの力になりたいの。そのためにマリアさんに手伝ってもらえないかしら?」
私の提案したものが形になり、女性たちに買ってもらえたら。それを手にとることで明日への喜びになったら。
考えただけで心が踊った。そんな仕事ができたらどんなに楽しいだろう。
「でも私なんて‥‥。」
「マリアさんが春嬢だったことは知っています。でもそんなこと関係ないわ。あなたは素敵な女性よ。それが一番大切なこと。」
婦人の笑顔は自信に溢れていた。私もそんな女性になりたい。でも‥私は。
「大切な人がいるのね。」
ケインの顔が浮かんだ。今、私が城を出たら彼の努力を無駄にすることになる。
「ミシェル婦人‥‥私らしいって何なんでしょうか。」
最近そのことばかり考えている。どうしても頭から離れない。
「好きな人がいて、その人のために頑張ろうって。そう思って働いているのに、私らしくないって言われたんです。何よりも自分自身で納得してない自分がいるんです。このままでいいのかって。」
ケインが認められるのをただ待っている。そんなの全然私らしくない。
「マリアさん。この国で女性がやりたいことをやるのはとても難しいわ。でもきっとこれから変わっていく。」
まっすぐ背筋を伸ばす婦人はカッコよかった。
「女性は欲張りになるべきだわ。マリアさんも。」
「少しだけ、考えさせてもらえますか?」
「もちろんよ。たくさん考えて。」
自分のこと、彼のこと。もっと欲張ってもいいのだろうか。
「かわいい!」
オシャレなカフェのテラス席。そこは隠れ家のような知る人ぞ知るという場所にあった。テーブルには様々な柄のコスメケースが並び、カラフルな香水瓶にはクリスタルがはめ込まれている。
「マリアさんのお話を聞いて、すぐに作らせてみたの。どうかしら?」
「とっても可愛いです!部屋に置くだけで嬉しくなっちゃいます!」
そこへ店員が豪華なアフタヌーンティーセットを運んできた。サンドウィッチ、ケーキにマカロン。今日は女子力が高い一日になりそう。
* * *
「実はあのお店、私の店なの。」
ミシェル婦人にそう告げられ、私は驚きで返事ができなかった。
婦人が何をしている人なのかというより、この国で女性が事業をしていることに私は驚いてしまった。
「亡くなった主人は私のやりたいことをやらせてくれる人だったの。女だからダメだなんて言われなかったわ。」
可愛いらしい店構え、女性客たちの楽しそうな雰囲気。なるほど、女性がやっているからこそあんなお店ができるんだ。
「それでマリアさんにぜひお願いがあるの。」
そうして今日、こんな素敵なカフェに連れてきてもらってしまった。
「マリアさんの話を聞いてびっくりしたわ。こんなに素敵なものを思いつくなんて。」
私は恐縮するしかない。これは私が思いついたわけじゃないもの。日本で見たものを伝えただけでこんなに喜んでもらえるなんて話して良かった。
「私はただお話しただけです。それを形にできる婦人が素晴らしいんです。」
花柄の口紅ケースを手に取る。カラフルな小花柄がかわいい。
「この真ん中のところにリボンとかレースを付けても可愛いですね。」
「マリアさん!それすっごくいいわ。」
美味しいお茶とケーキを楽しみながら、たくさんの案を話し合った。楽しくて楽しくてあっという間に時間が過ぎていた。
「おかげで素晴らしいものが出来そう。本当にありがとう。」
「こちらこそ、本当に楽しくて時間を忘れちゃいました。」
この世界にきてこんな話ができたのは初めてだった。
「マリアさん、少しは元気になったかしら?」
「え‥‥‥‥?」
ミシェル婦人は心配そうな顔でこちらを見つめていた。
「ここ最近、なにか悩んでいるように見えたから。余計なお節介だったかしらね。」
「嬉しいです。そんなふうに言ってもらえるだけで。」
私は恵まれている。いろんな人に良くしてもらって、そう思っていても気持ちは止められない。
「もうひとつマリアさんにお話があるの。」
日が傾き、テーブルに置かれた香水瓶に夕陽がキラキラと輝いていた。
「マリアさん、私と一緒に仕事をしてみない?」
驚きで言葉が出てこない。
「今日確信したわ。マリアさん、この商品は絶対に売れる。この国で淑やかさを求められる女性たちの自宅での楽しみになるわ。」
鏡台に並ぶ美しい化粧品。それを見るだけで一日あった嫌なことも忘れられるかもしれない。
「私はそんな女性たちの力になりたいの。そのためにマリアさんに手伝ってもらえないかしら?」
私の提案したものが形になり、女性たちに買ってもらえたら。それを手にとることで明日への喜びになったら。
考えただけで心が踊った。そんな仕事ができたらどんなに楽しいだろう。
「でも私なんて‥‥。」
「マリアさんが春嬢だったことは知っています。でもそんなこと関係ないわ。あなたは素敵な女性よ。それが一番大切なこと。」
婦人の笑顔は自信に溢れていた。私もそんな女性になりたい。でも‥私は。
「大切な人がいるのね。」
ケインの顔が浮かんだ。今、私が城を出たら彼の努力を無駄にすることになる。
「ミシェル婦人‥‥私らしいって何なんでしょうか。」
最近そのことばかり考えている。どうしても頭から離れない。
「好きな人がいて、その人のために頑張ろうって。そう思って働いているのに、私らしくないって言われたんです。何よりも自分自身で納得してない自分がいるんです。このままでいいのかって。」
ケインが認められるのをただ待っている。そんなの全然私らしくない。
「マリアさん。この国で女性がやりたいことをやるのはとても難しいわ。でもきっとこれから変わっていく。」
まっすぐ背筋を伸ばす婦人はカッコよかった。
「女性は欲張りになるべきだわ。マリアさんも。」
「少しだけ、考えさせてもらえますか?」
「もちろんよ。たくさん考えて。」
自分のこと、彼のこと。もっと欲張ってもいいのだろうか。
あなたにおすすめの小説
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。