【R18】閨の指導を異世界で~風俗嬢は王子様の教育係(夜)になりました~

塔野明里

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2章 侍女編

第二十九話

 第二十九話

 その日私は王城の隣に建つ離宮に初めて足を踏み入れた。離宮は別名白亜宮と呼ばれ、床や壁、天井まで全てが白い壁で覆われている。
 侍女である私は美しいシャンデリアのある正面玄関ではなく、使用人用の裏口から中に入った。しかし、その格好は使用人のものではなくキッチンに続く裏口には大分場違いだ。

 ペールブルーのドレスを着せられた私は、離宮で待つ未来の皇后の元へ向かっていた。最近こういうパターンが多すぎて、もうさほど緊張もしなくなった。

「私の噂ってどこまで広まってるんだろう。」

 前を歩くアゼルさんに聞こえないように小さく呟いた。今回の件でアルバ公国まで伝わっていることは確定だ。
 春嬢を辞めても、噂はまだ私を追いかけてくる。


 白亜宮は外壁だけでなく、室内まで白い壁で覆われていた。ずっと壁を見つめていると目がチカチカしてくる。

「こちらです。」

「アゼルさん‥その言葉遣いやめてください。」

 いまこの離宮には私とアゼルさん、そして私をここへ呼んだララ・ステラファード様しかいない。誰も聞いていないのだから、敬語なんて使わないでほしい。

「それはできません。マリア様。」

「アゼルさんちょっとからかってますね。」

 悪戯っぽく微笑むアゼルさんに促され、彫刻の施された重厚な扉を叩いた。

 * * *

 案の定、城下町でのデートのことは国王陛下に知られていた。ロベルト卿にも見られてしまったし、言い逃れはできない。来週までケインと会うことはできなくなってしまった。

 ミシェル婦人からの提案を考えながら、舞踏会の準備もあり忙しくて忙しくて、私は正直彼と会えないことも忘れるくらいだった。
 しかしどうやらケインは違ったらしい。アゼルさん曰く、見るからに元気がなく落ち込んでいるようだとのこと。

 そんな彼に私の願いを伝えたらどうなってしまうんだろう。

 そんなとき私のもとに一通の招待状が届いた。

 差出人はアルバ公国公爵令嬢ララ様。この度の舞踏会のあと正式にアルセイン様との婚約が決まった未来の皇后様。そんな人がどうして私を離宮に招いてくれるのだろう。

 婚約が決まったララ様は、来月アルバ公国に戻り婚姻の準備を整えたのち正式に王国にお戻りになる。それまでは離宮で客人として過ごされることとなった。
 そんなご令嬢が母国に帰る前にぜひ一度私に会いたいと言っているそうだ。

 アルセイン様が想い人と結ばれたことを嬉しく思いながら、私は嫌な予感がしていた。
 案の定、手紙には私の噂を聞いてずっとお会いしたいと思っていたと書いてあった。

 いつか噂の出どころを突き止めてやると心に誓った。

 * * *

「マリアさんですね!ずっとずっとお会いしたかった!」

 私の手を取り、嬉しそうに飛び跳ねるララ様は思っていたよりずっと可愛らしい人だった。
 アメジスト色の髪と瞳。ぱっちりとした二重は少し垂れ目でぷっくりした唇と合わせ、ものすごく男性にモテそうな顔立ちだ。私と同い年の24歳だと聞いていたが、もっと年下に見える。

「初めまして。マリアと申します。この度はご婚約おめでとうございます。」

「ありがとうございます。でも、そんな堅苦しいのはやめてください。今日が本当に楽しみで私全然眠れなくて‥。」

 公爵令嬢とは思えないほど気さくで、なるほどアルセイン様が好きになってしまう理由がよくわかった。

「今日は女性同士たくさんお話しましょう!私のことはララと呼んでくださいね。」

 こうして未来の皇后様とのお茶会が始まった。


「アルセイン様とはアルバ公国の舞踏会で初めてお会いしました。背が高くて優しそうで本当にカッコよかったです。」

 嬉しそうに頬を染めるララ様は本当に幸せそうだった。

「ダンスにお誘い頂いたときは天にも昇る気持ちでした。そのあともたくさんお話をして、手紙のやり取りもしていたんです。」

 なるほど、アルセイン様は女性への気遣いもマメでケインとは大違いだ。

「プロポーズの言葉はなんだったのですか?」

「えっ!ぷ、プロポーズですか?そんな、ふふそれは秘密です。」

 照れた顔も可愛らしい。すぐに私はララ様が好きになってしまった。だからこそ疑問だった。

「ララ様は本当に可愛らしい方で、アルセイン様も幸せですね。それで、そのどうして今日は私を‥‥?」

 すると今まで対面で座っていたララ様が私の隣に座り直した。

「マリアさん、実はずっと前から私はマリアさんの噂を聞いていたのです。」

「ずっと前から?」

 トロンスという人をご存知ですか?そうララ様に聞かれ、私はあるお客様を思い出した。

「春嬢をしていた時、一ヶ月に一度私を指名してくれていた方がトロンスというお名前でした。」

「そのトロンス、実は我が家の庭師なのです。」

 アルバ公国から両親の暮らすトリスト王国まで、トロンスさんは毎月里帰りしてきていたそうだ。その度に私に会いに来てくれていたらしい。

「偶然、トロンスが庭師仲間と話しているのを聞いてしまったんです。マリアさんがいかに素晴らしい女性か、その閨のテクニックも‥‥。」

 思っていたより早く噂の出どころが判明した。

「トリスト王国だけではなく他の国でも特に貴族令嬢はベッドの中では大人しくあるのが普通です。そういう教育を受けますし、疑ったこともありませんでした。でも、マリアさんのお話を聞いて‥‥。」

 頬染めるのは恥ずかしさではなさそうだった。アメジスト色の瞳が好奇心でキラキラと輝いている。

「両親に隠れて、禁止されているロマンス小説を読んでみたのです。女性は淑やかにと言われますが、平民の間ではずっと憧れがあるのだと思いますわ。」

 そこでララ様はいろんな知識を得たらしい。私達の後ろに控えているアゼルさんが何やら顔を赤くしている。

「アゼルさんも読んだことが?」

「恥ずかしながら、ございます。」

 やっぱり淑やかさが求められていても興味はあるのか。

「私には想像もつかないことばかりで最初は驚きましたが、もう止まらなくなってしまって。それで、マリアさんとお話したくてしたくて。」

 なんだろう、この流れ。ケインと初めて合ったときもこんな感じだった気がする。

「私にも閨の指導をお願いしたいのです!アルセイン様との初めてのため、私の知らないことをあれもこれも教えてくださいませ!」

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