【R18】閨の指導を異世界で~風俗嬢は王子様の教育係(夜)になりました~

塔野明里

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2章 侍女編

第三十六話*

 第三十六話*

 冬の寒さが緩み春一番の風が吹く良き日。晴れ渡る青空の下、このトリスト王国で国民たちの待ち望んだ結婚式が執り行われる。

 主役は次期国王となる王太子アルセインとアルバ公国公爵令嬢ララ・ステラファード。首都はお祭り騒ぎ。三日三晩に渡り国民たちは次期国王の結婚を祝った。


「ここにアルセイン・トリストとララ・ステラファードの婚姻を宣言する!」


 誓いのキスを交わす二人を温かい拍手が包み込んだ。まさか王族の結婚式に最前列で参列できるとは思ってもいなかった。

 今日のララさんは本当に綺麗。その幸せ溢れる笑顔をアルセイン様が嬉しそうに見つめている。

 彼女のウェディングドレス、実は私がデザインしたものだ。肩を出したデザインと長く伸びる裾とベール。日本での流行をなんとか形にしたものたが、ミシェル婦人はこれからこのドレスが流行るわよと意気込んでいた。

「マリアさん!」

 差し出されたそれは新婦のためのブーケだ。

「次はマリアさんです。受け取ってくれますか?」

 白いかすみ草の中に淡いピンクやむらさきの花々。ララさんのアメジスト色の髪と瞳に合わせた可愛いらしい花束を受け取ると彼女の手を握る。

「ありがとうございます。今日からはマリアと呼んでください。」

「!……はい、マリア!」

 その笑顔は私が今まで見たなかで誰よりも美しい微笑みだった。

 * * *

「ケイン!ちょっと、待って……。」

 結婚式が終わると王城では盛大な披露宴が始まった。しかし挨拶もそこそこに私は会場から連れ出され、手を引くのはもちろんケインだ。

 結婚式の余韻に浸る間もなく、ひとけのない城の中を進む。到着したのはいつも逢引に使っていたあの部屋。使い慣れたベッドに腰掛け、彼の顔色を窺う。

「ねぇなんで怒ってるの?」

 結婚式が終わってから、なぜかケインの機嫌は悪くなるばかり。貴族や他国からの来賓への挨拶もそこそこに会場から離れた。

「まず!そのドレス!なんなんだよ、胸が見えすぎだろ!」

 今日のために用意した試作品のドレス。肩から胸元にかけて大きく開いたデザインとそれを覆うレース。結構自信作だったんだけど。

「そんな言うほど見えてないと思うけど……。」

「挨拶する男、全員マリアの胸ばっか見てたからな!?もう二度と着るな!」

 留学から戻ってすぐケイニアスと私の婚約が発表された。公爵令嬢としてお茶会や夜会に出ることが増えていく中で、社交界では私の経歴が噂されるようになった。
 マクミラン公爵家に対してあからさまな非難もあったし、陰口を言われることもある。ミシェル婦人は笑い飛ばしていたし、私も今さらという感じで気にもしていなかった。

 何より社交界の女性たちが私の味方になってくれた。それは私の商品のファンの人たちだ。貴族の女性たちは流行に敏感で、次はどんな商品が出るのかと聞かれることが多い。そうしているうちにだんだんと私への非難は少なくなっていった。

 それでも男性たちからは今だに好奇の目で見られることが多い。

「そうやってすぐ怒る……似合ってない?」

「似合ってるとか似合ってないとかの問題じゃない。」

 やっと婚約できて堂々と一緒にいられるようになったのに、ケインは眉間にシワを寄せていることが増えた。

「じゃあ…脱がせて?」

 緩く結んだ髪をほどいて、彼に背中を向ける。コルセットに合わせて、背中のリボンを解かないと脱げないデザインのドレスだ。

「ケイン、早く。」

「……そうやって俺がすぐ誤魔化されると思うなよ。」

 そんなことを言いながらもスルスルとリボンをほどく。ドレスの下のコルセットも外され、開いた背中に彼の唇が触れた。

「ん、汗かいてるよ……。」

 舌が背中をなぞり首筋に上がってくる。そのまま後ろから抱きしめられた。

「他のやつに見せるな。」

「アッ、んん…。」

 あらわになった胸を鷲掴みにされ、先をクリクリと指でイジられると自然と声が出てしまう。

「ケインだけだよ、ずっと…。」

 私が触れてほしいと思うのはケインだけ。これからずっとずっと変わらない。

「愛してる、マリア。」

 * * *

 目覚めると外はもう日が昇り始めていた。カーテンの隙間から明るくなる空を眺めながら、彼と一緒に朝を迎えられる喜びを噛みしめる。

 ケインと朝を迎えられるようになるなんて。恋人になることさえ叶わないと思っていたのに、嬉しくて涙が出そうになる。

 ベッドで体を重ねるのは愛してる貴方だけ。これからはあなただけを愛して生きていく。そう言えることがこんなにも幸せだなんて。

「ケイン、愛してる。」

 唇を重ねた瞬間、彼の腕が私を優しく抱きしめた。

「暖かくなったら一緒に海を見に行こう。約束だからな。」

 頷いた私の頬を涙がつたう。それを彼の指が優しく拭った。


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