39 / 41
2章 侍女編
第三十六話*
第三十六話*
冬の寒さが緩み春一番の風が吹く良き日。晴れ渡る青空の下、このトリスト王国で国民たちの待ち望んだ結婚式が執り行われる。
主役は次期国王となる王太子アルセインとアルバ公国公爵令嬢ララ・ステラファード。首都はお祭り騒ぎ。三日三晩に渡り国民たちは次期国王の結婚を祝った。
「ここにアルセイン・トリストとララ・ステラファードの婚姻を宣言する!」
誓いのキスを交わす二人を温かい拍手が包み込んだ。まさか王族の結婚式に最前列で参列できるとは思ってもいなかった。
今日のララさんは本当に綺麗。その幸せ溢れる笑顔をアルセイン様が嬉しそうに見つめている。
彼女のウェディングドレス、実は私がデザインしたものだ。肩を出したデザインと長く伸びる裾とベール。日本での流行をなんとか形にしたものたが、ミシェル婦人はこれからこのドレスが流行るわよと意気込んでいた。
「マリアさん!」
差し出されたそれは新婦のためのブーケだ。
「次はマリアさんです。受け取ってくれますか?」
白いかすみ草の中に淡いピンクやむらさきの花々。ララさんのアメジスト色の髪と瞳に合わせた可愛いらしい花束を受け取ると彼女の手を握る。
「ありがとうございます。今日からはマリアと呼んでください。」
「!……はい、マリア!」
その笑顔は私が今まで見たなかで誰よりも美しい微笑みだった。
* * *
「ケイン!ちょっと、待って……。」
結婚式が終わると王城では盛大な披露宴が始まった。しかし挨拶もそこそこに私は会場から連れ出され、手を引くのはもちろんケインだ。
結婚式の余韻に浸る間もなく、ひとけのない城の中を進む。到着したのはいつも逢引に使っていたあの部屋。使い慣れたベッドに腰掛け、彼の顔色を窺う。
「ねぇなんで怒ってるの?」
結婚式が終わってから、なぜかケインの機嫌は悪くなるばかり。貴族や他国からの来賓への挨拶もそこそこに会場から離れた。
「まず!そのドレス!なんなんだよ、胸が見えすぎだろ!」
今日のために用意した試作品のドレス。肩から胸元にかけて大きく開いたデザインとそれを覆うレース。結構自信作だったんだけど。
「そんな言うほど見えてないと思うけど……。」
「挨拶する男、全員マリアの胸ばっか見てたからな!?もう二度と着るな!」
留学から戻ってすぐケイニアスと私の婚約が発表された。公爵令嬢としてお茶会や夜会に出ることが増えていく中で、社交界では私の経歴が噂されるようになった。
マクミラン公爵家に対してあからさまな非難もあったし、陰口を言われることもある。ミシェル婦人は笑い飛ばしていたし、私も今さらという感じで気にもしていなかった。
何より社交界の女性たちが私の味方になってくれた。それは私の商品のファンの人たちだ。貴族の女性たちは流行に敏感で、次はどんな商品が出るのかと聞かれることが多い。そうしているうちにだんだんと私への非難は少なくなっていった。
それでも男性たちからは今だに好奇の目で見られることが多い。
「そうやってすぐ怒る……似合ってない?」
「似合ってるとか似合ってないとかの問題じゃない。」
やっと婚約できて堂々と一緒にいられるようになったのに、ケインは眉間にシワを寄せていることが増えた。
「じゃあ…脱がせて?」
緩く結んだ髪をほどいて、彼に背中を向ける。コルセットに合わせて、背中のリボンを解かないと脱げないデザインのドレスだ。
「ケイン、早く。」
「……そうやって俺がすぐ誤魔化されると思うなよ。」
そんなことを言いながらもスルスルとリボンをほどく。ドレスの下のコルセットも外され、開いた背中に彼の唇が触れた。
「ん、汗かいてるよ……。」
舌が背中をなぞり首筋に上がってくる。そのまま後ろから抱きしめられた。
「他のやつに見せるな。」
「アッ、んん…。」
あらわになった胸を鷲掴みにされ、先をクリクリと指でイジられると自然と声が出てしまう。
「ケインだけだよ、ずっと…。」
私が触れてほしいと思うのはケインだけ。これからずっとずっと変わらない。
「愛してる、マリア。」
* * *
目覚めると外はもう日が昇り始めていた。カーテンの隙間から明るくなる空を眺めながら、彼と一緒に朝を迎えられる喜びを噛みしめる。
ケインと朝を迎えられるようになるなんて。恋人になることさえ叶わないと思っていたのに、嬉しくて涙が出そうになる。
ベッドで体を重ねるのは愛してる貴方だけ。これからはあなただけを愛して生きていく。そう言えることがこんなにも幸せだなんて。
「ケイン、愛してる。」
唇を重ねた瞬間、彼の腕が私を優しく抱きしめた。
「暖かくなったら一緒に海を見に行こう。約束だからな。」
頷いた私の頬を涙がつたう。それを彼の指が優しく拭った。
冬の寒さが緩み春一番の風が吹く良き日。晴れ渡る青空の下、このトリスト王国で国民たちの待ち望んだ結婚式が執り行われる。
主役は次期国王となる王太子アルセインとアルバ公国公爵令嬢ララ・ステラファード。首都はお祭り騒ぎ。三日三晩に渡り国民たちは次期国王の結婚を祝った。
「ここにアルセイン・トリストとララ・ステラファードの婚姻を宣言する!」
誓いのキスを交わす二人を温かい拍手が包み込んだ。まさか王族の結婚式に最前列で参列できるとは思ってもいなかった。
今日のララさんは本当に綺麗。その幸せ溢れる笑顔をアルセイン様が嬉しそうに見つめている。
彼女のウェディングドレス、実は私がデザインしたものだ。肩を出したデザインと長く伸びる裾とベール。日本での流行をなんとか形にしたものたが、ミシェル婦人はこれからこのドレスが流行るわよと意気込んでいた。
「マリアさん!」
差し出されたそれは新婦のためのブーケだ。
「次はマリアさんです。受け取ってくれますか?」
白いかすみ草の中に淡いピンクやむらさきの花々。ララさんのアメジスト色の髪と瞳に合わせた可愛いらしい花束を受け取ると彼女の手を握る。
「ありがとうございます。今日からはマリアと呼んでください。」
「!……はい、マリア!」
その笑顔は私が今まで見たなかで誰よりも美しい微笑みだった。
* * *
「ケイン!ちょっと、待って……。」
結婚式が終わると王城では盛大な披露宴が始まった。しかし挨拶もそこそこに私は会場から連れ出され、手を引くのはもちろんケインだ。
結婚式の余韻に浸る間もなく、ひとけのない城の中を進む。到着したのはいつも逢引に使っていたあの部屋。使い慣れたベッドに腰掛け、彼の顔色を窺う。
「ねぇなんで怒ってるの?」
結婚式が終わってから、なぜかケインの機嫌は悪くなるばかり。貴族や他国からの来賓への挨拶もそこそこに会場から離れた。
「まず!そのドレス!なんなんだよ、胸が見えすぎだろ!」
今日のために用意した試作品のドレス。肩から胸元にかけて大きく開いたデザインとそれを覆うレース。結構自信作だったんだけど。
「そんな言うほど見えてないと思うけど……。」
「挨拶する男、全員マリアの胸ばっか見てたからな!?もう二度と着るな!」
留学から戻ってすぐケイニアスと私の婚約が発表された。公爵令嬢としてお茶会や夜会に出ることが増えていく中で、社交界では私の経歴が噂されるようになった。
マクミラン公爵家に対してあからさまな非難もあったし、陰口を言われることもある。ミシェル婦人は笑い飛ばしていたし、私も今さらという感じで気にもしていなかった。
何より社交界の女性たちが私の味方になってくれた。それは私の商品のファンの人たちだ。貴族の女性たちは流行に敏感で、次はどんな商品が出るのかと聞かれることが多い。そうしているうちにだんだんと私への非難は少なくなっていった。
それでも男性たちからは今だに好奇の目で見られることが多い。
「そうやってすぐ怒る……似合ってない?」
「似合ってるとか似合ってないとかの問題じゃない。」
やっと婚約できて堂々と一緒にいられるようになったのに、ケインは眉間にシワを寄せていることが増えた。
「じゃあ…脱がせて?」
緩く結んだ髪をほどいて、彼に背中を向ける。コルセットに合わせて、背中のリボンを解かないと脱げないデザインのドレスだ。
「ケイン、早く。」
「……そうやって俺がすぐ誤魔化されると思うなよ。」
そんなことを言いながらもスルスルとリボンをほどく。ドレスの下のコルセットも外され、開いた背中に彼の唇が触れた。
「ん、汗かいてるよ……。」
舌が背中をなぞり首筋に上がってくる。そのまま後ろから抱きしめられた。
「他のやつに見せるな。」
「アッ、んん…。」
あらわになった胸を鷲掴みにされ、先をクリクリと指でイジられると自然と声が出てしまう。
「ケインだけだよ、ずっと…。」
私が触れてほしいと思うのはケインだけ。これからずっとずっと変わらない。
「愛してる、マリア。」
* * *
目覚めると外はもう日が昇り始めていた。カーテンの隙間から明るくなる空を眺めながら、彼と一緒に朝を迎えられる喜びを噛みしめる。
ケインと朝を迎えられるようになるなんて。恋人になることさえ叶わないと思っていたのに、嬉しくて涙が出そうになる。
ベッドで体を重ねるのは愛してる貴方だけ。これからはあなただけを愛して生きていく。そう言えることがこんなにも幸せだなんて。
「ケイン、愛してる。」
唇を重ねた瞬間、彼の腕が私を優しく抱きしめた。
「暖かくなったら一緒に海を見に行こう。約束だからな。」
頷いた私の頬を涙がつたう。それを彼の指が優しく拭った。
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。