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2章 侍女編
おまけ
「ケイン早く早く!」
彼の手を引いて森の中を早足で駆ける。光の先森を抜けた瞬間、目の前の景色が青一色に染まった。
「海ー!」
トリスト王国から馬車に乗って五日。ナグリダ共和国は海のすぐそばに都をもつ美しい街だ。
私の見慣れた日本海の海の色とは違う真っ青な海と空は境界線すらも曖昧だった。
「綺麗……。」
春の海は波も穏やかで真っ白な砂浜が眩しい。
「泳げないのが残念。」
「ダメだ。水着なんて絶対ダメだからな。」
* * *
「新婚旅行?聞いたことないですわ。」
アルセイン様とのララさんの結婚式から一ヶ月が経った。
王城で暮らし始めたララと共に、今日はあの温室でお茶を楽しんでいた。
マクミラン家で暮らし始めた私は、週4日王城に通い王族になるためのレッスンを受けている。国の歴史から王族の歩み、マナー、ダンスのレッスン。今までの人生で一番忙しいかもしれない。
今日はマナーの練習を兼ねたお茶会だ。私の後ろにはアゼルさんが控え、何かミスがあればすぐに教えてくれる。
「そうなのか、ちょっと残念。」
新婚旅行についてララに説明しているとアルセイン様と一緒にケインが温室にやってきた。
「楽しそうですね。」
私のアドバイスのおかげかは分からないが、アルセイン様との初めての夜は上手くいったらしい。頬を赤らめて報告してくれたララは幸せそうだった。
「マリアの世界では、新婚旅行というものがあるそうです。」
婚約にあたり私の過去について全てを話すことにした。国王陛下、ミシェルお母様、アルセイン様とララ、そしてアゼルさん。
心配していたよりあっさりと受け入れられ、私のほうが戸惑ってしまった。
「あんまりこの国では旅行はしないからな。」
「そもそも国を出ることが少ないですからね。」
旅行にはそもそもお金がかかる。他国に行くのは商人かお金のある貴族くらい。他国との交流が盛んになったのもここ数十年のトリスト王国では当たり前かもしれない。
「マリアが初めての新婚旅行に行けばいいんですわ。いまマリアは女性の憧れですもの。」
春嬢から実業家、公爵令嬢になり王子様と婚約。城下では私の話が美談として語られているらしい。そのせいで恥ずかしくて街を歩けない。
「行きたいところがあるんですか?」
ケインと視線を合わせ自然と微笑みあった。
* * *
「ちょ、お前、それ……!?」
ナグリダ共和国で一番のホテルの最上階。今回はお忍び旅行なので、ケインと二人きり。まだ結婚しているわけじゃないので婚前旅行だけど。
「どうかな?可愛い?」
この世界ではまだまだ珍しい水着。体のラインを出すのは下品だと言われるし、肌を出すなんてもってのほか。
なので形はワンピースタイプだし、腰にはパレオを巻く。それでも抵抗がある人は多い。いつか流行るといいなぁ。
「それで泳ぐつもりなのか?」
「まだ水が冷たいからそれは無理だよ。今日はケインの反応を見ようと思って。」
生地選びから防水加工までまだまだ改良することがたくさんある。でも一番は……。
「胸…見すぎじゃない?」
「いや…見るなっていうほうが無理だ。」
ぎゅっとわざと胸がを寄せてみる。グラビアポーズを取ってみると、久しぶりにケインの顔が真っ赤に染まった。
「それで外に出て、他の男に見られるなんて絶対ダメだからな。」
「どうしても?」
やっぱり異性の目は気になる。売るにはまだまだ難しそうだ。
ソファに腰掛ける彼の上に跨がる。最近ケインは顔を赤くしたり、狼狽えたりあんまりしなくなった。正直ちょっとつまらない。
「からかってるだろ。」
「うん、ちょっとだけ。」
二人だけで過ごす一週間。私たちの旅行は始まったばかりだ。
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