少女の声

すみの

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一章 傍観者

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彼女は言った

「少女のままひっそり死んでいくのが夢だったの。綺麗なまま死にたいの」

と。高校3年生の夏。彼女は消えそうな声で呟いた。


教室の片隅に彼女はいる。いつも殴られて蹴られて、罵られている。僕は傍観者だった。わざわざ関わる方が無駄だと思った。それでも関わらざるを得なくなる出来事があった。
体育でペア活動があった日。
「上杉!佐々倉とペア組んでくれ」
「え」
余り物同士だったから仕方ないか…めんどくさいから何も言わずにやった。放課後、佐々倉さんに声をかけられた。
「ありがとう」
「は?」
「体育の時、普通にしてくれたでしょ」
「当たり前だろ…」
「でも、この高校で初めて」
どうやら一年生の頃からいじめられていたようだ。可哀想だと思った。急にいじめられている原因がわかった。
綺麗だからだ。長くカールしたまつ毛。艶やかな髪。大きな目。綺麗な口。小さな鼻。とても美しかった。僕は見て見ぬ振りをする傍観者どころか見てすらいなかったようだ…
「何を見ているの?」
「あっなんでもない」
幻のように綺麗な彼女に惹かれた。もっと話したいと思った。
「じゃあ私帰るね」
「あ、うんまた明日」
あっけらかんに終わってしまった…
土間はうちのクラスのすぐ隣だからもう外にいるはずだった。でも三分経ってもこなかった。何か怖くなった。
走って屋上に行った。走るなー!という岡田先生の声。それでも走った。ドアを開けると、やはりいた。
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