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メルキオール②
アシーナは義理の伯父から暴力を受けた際に、右側頭部を殴られており、そのせいで右側の聴力を失って、見た目こそわからないが、右目の視力も悪い。
その事もあって、領地に療養という形で押し込んでしまっていた。
領地にある別邸には、元凶の義理の伯父から不当に解雇された、彼女が生まれた時に仕えていた使用人を、祖父がわざわざ呼び集めていた。
祖父も様子を見てくれていたから、彼女が元気に過ごしていたのは知っているが、女性に接することができなかったから、放置していたようなものだ。
尚且つ、人が行う残酷な行為の結果を見せつけられて、それから目を逸らして逃げたんだ。
そもそも、酷い状態の彼女に療養が必要なのは本当で、そんな彼女が社交界どころではないし、辛い思いもさせたくはない。
でもそれは、半分は言い訳で、彼女に謝った通りに恋人や妻といった存在が面倒だと思っていたんだ。
面倒な事になると。
そのまま三年もの時間が経ったためか、アシーナとは初対面のように思えた。
だからか、初めて会った時の衝撃は、勝手な事だけどどこかへいってしまった。
健康的にふっくらとした彼女は万人が美人だと言う容貌ではないけど、清楚な装いも相まって、可憐な雰囲気を醸し出していた。
肩口で切り揃えられたミルクティーのような髪は、綺麗な艶を出している。
貴婦人が肩よりも髪が短いのは珍しい事だけど、三年前に虐待の過程で切られたと聞いたから、少なくとも今はちゃんと手入れされている証拠だ。
彼女がここでどれだけ大切にされていたか垣間見えて、放置していたのは自分なのに安堵していた。
キティを見つめるヘーゼルの瞳が、黄色に見えたり緑に見えたり茶色に見えたりするからついついじっと見つめてしまう。
アシーナの魅力は見るほどに発見があった。
これ見よがしに胸を強調してくる女性や、香水のきつい匂いに胸焼けを起こしていたから、目の前のアシーナがかすみ草のような愛らしい印象を与えていた。
いやいや、彼女をどんな目で見ているんだ。
いや、でも、彼女は僕の妻なのだから。
いやいや、妻である彼女を三年もの間放っておいたのだから、今さら旦那の顔なんかできない。
そもそもここに何のために来たのか思い出せ。
いくら自動的に離婚となるであろう結婚であっても、僕は誰かのように不貞なんか働きたくないから、彼女に頼み事をしにきたんだ。
あの王女殿下は、いつか僕を押し倒しそうで身震いする。
僕は貧弱な体をしていないが、あの王女は何をしでかすかわからない。
アシーナには誠実に接して、ともかく協力してもらわなければ。
と、ここまでが、領地に滞在していた間の僕の脳内会議の内容だった。
自分でもロクな男じゃないなと思う。
「君をダシに使っているみたいで、ごめんね。君が美人(猫)なのは本当なんだ。僕の言葉に偽りはないよ。僕は君のご主人様に美人だと直接言いたいのに、いつも言葉が出てこなくなる。それに、僕に言われたところで気持ち悪いと思われるかもしれない。君は、こんな僕をどう思う?」
愛らしいキティに話しかけると、ゴロゴロと喉を鳴らして、僕の手にスリスリと顔を寄せてくれる。
馬車の中で夢中になってキティを撫でていた時、アシーナの胸の前に顔を寄せていた事に気付かなくて、僕の前髪が彼女に触れていたりしてとても動揺したものだ。
「自分がこんなに猫好きとは思ってもみなかったよ。こんな下心満載の僕に懐いてくれて、君のことも必ず大切にするから。愛しているよ。君にはこんなにも簡単に素直な気持ちが言えるのに。アシーナは、二十歳になった時に、離婚を選択すると思う?その場合は、結婚無効の申請をされるのかな。僕達の間には、何もないから」
もう間も無く、マナーレッスンからアシーナが戻って来る頃だ。
「僕が好きだと思ったところで、それはきっと家族愛で、庇護欲で守りたいと思っているだけで、僕なんかが今さらアシーナを愛していいわけがないよね」
キティに向けていた緩んだ表情を引き締め、だらしない顔をしていないか鏡で確認し、アシーナがキティを迎えに来るその時を待った。
その事もあって、領地に療養という形で押し込んでしまっていた。
領地にある別邸には、元凶の義理の伯父から不当に解雇された、彼女が生まれた時に仕えていた使用人を、祖父がわざわざ呼び集めていた。
祖父も様子を見てくれていたから、彼女が元気に過ごしていたのは知っているが、女性に接することができなかったから、放置していたようなものだ。
尚且つ、人が行う残酷な行為の結果を見せつけられて、それから目を逸らして逃げたんだ。
そもそも、酷い状態の彼女に療養が必要なのは本当で、そんな彼女が社交界どころではないし、辛い思いもさせたくはない。
でもそれは、半分は言い訳で、彼女に謝った通りに恋人や妻といった存在が面倒だと思っていたんだ。
面倒な事になると。
そのまま三年もの時間が経ったためか、アシーナとは初対面のように思えた。
だからか、初めて会った時の衝撃は、勝手な事だけどどこかへいってしまった。
健康的にふっくらとした彼女は万人が美人だと言う容貌ではないけど、清楚な装いも相まって、可憐な雰囲気を醸し出していた。
肩口で切り揃えられたミルクティーのような髪は、綺麗な艶を出している。
貴婦人が肩よりも髪が短いのは珍しい事だけど、三年前に虐待の過程で切られたと聞いたから、少なくとも今はちゃんと手入れされている証拠だ。
彼女がここでどれだけ大切にされていたか垣間見えて、放置していたのは自分なのに安堵していた。
キティを見つめるヘーゼルの瞳が、黄色に見えたり緑に見えたり茶色に見えたりするからついついじっと見つめてしまう。
アシーナの魅力は見るほどに発見があった。
これ見よがしに胸を強調してくる女性や、香水のきつい匂いに胸焼けを起こしていたから、目の前のアシーナがかすみ草のような愛らしい印象を与えていた。
いやいや、彼女をどんな目で見ているんだ。
いや、でも、彼女は僕の妻なのだから。
いやいや、妻である彼女を三年もの間放っておいたのだから、今さら旦那の顔なんかできない。
そもそもここに何のために来たのか思い出せ。
いくら自動的に離婚となるであろう結婚であっても、僕は誰かのように不貞なんか働きたくないから、彼女に頼み事をしにきたんだ。
あの王女殿下は、いつか僕を押し倒しそうで身震いする。
僕は貧弱な体をしていないが、あの王女は何をしでかすかわからない。
アシーナには誠実に接して、ともかく協力してもらわなければ。
と、ここまでが、領地に滞在していた間の僕の脳内会議の内容だった。
自分でもロクな男じゃないなと思う。
「君をダシに使っているみたいで、ごめんね。君が美人(猫)なのは本当なんだ。僕の言葉に偽りはないよ。僕は君のご主人様に美人だと直接言いたいのに、いつも言葉が出てこなくなる。それに、僕に言われたところで気持ち悪いと思われるかもしれない。君は、こんな僕をどう思う?」
愛らしいキティに話しかけると、ゴロゴロと喉を鳴らして、僕の手にスリスリと顔を寄せてくれる。
馬車の中で夢中になってキティを撫でていた時、アシーナの胸の前に顔を寄せていた事に気付かなくて、僕の前髪が彼女に触れていたりしてとても動揺したものだ。
「自分がこんなに猫好きとは思ってもみなかったよ。こんな下心満載の僕に懐いてくれて、君のことも必ず大切にするから。愛しているよ。君にはこんなにも簡単に素直な気持ちが言えるのに。アシーナは、二十歳になった時に、離婚を選択すると思う?その場合は、結婚無効の申請をされるのかな。僕達の間には、何もないから」
もう間も無く、マナーレッスンからアシーナが戻って来る頃だ。
「僕が好きだと思ったところで、それはきっと家族愛で、庇護欲で守りたいと思っているだけで、僕なんかが今さらアシーナを愛していいわけがないよね」
キティに向けていた緩んだ表情を引き締め、だらしない顔をしていないか鏡で確認し、アシーナがキティを迎えに来るその時を待った。
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