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1章 クズ勇者の目標!?

クズ勇者、ドラゴン討伐に挑む

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「なぁ。その短剣、くれよ」

「まぁ、なんて図々しい人。あなた、戦えるの?」

「それなりにな」

 声からして女か。ドラゴンと戦うなんてアタマ大丈夫か?

「にしても、初めて見たわ、ドラゴンなんて」

「ホントに?」

「あぁ」

「あなた、ド田舎出身?」

「死にてぇのか、このクソ野郎?」

「あら、怖い怖い」

 こいつと居ると何か狂うな。今までの奴らとは全然違ぇし。

「お前、何者なにもんだ?」

「うぅん……勝てたら教えてあげるよ」

  正直なところ、リョーマは一人で戦いたかった。一人でもドラゴンに勝てるということを証明したかった。

  だが、それ以前にこの重装備の女っぽい人が気になるのだ。

「五分くれよ。あいつを殺してやる」

「えぇ?それ自分の仕事なんだけど?」

 仕事……依頼の事か。他人の依頼には特別な場合を除いて関与してはないけないらしいが、関係無いな。

 俺は勇者だ。そんな下民の作ったルールなんぞに従う理由がねぇ。

  直感的なものだった。漠然とした何かが、リョーマに告げていた。ドラゴンに勝てる、と。

  リョーマが地面に力強く踏み込み、ドラゴンの真ん前に移動した。

「まずは目ん玉からだ!」

  神話の竜と言えど、目ん玉は急所だった。

  しかし、目を狙う事に集中しすぎたためか、油断を見せたリョーマにドラゴンの爪が襲いかかった。

  だが、さすがは元勇者であった。ドラゴンの爪攻撃をギリギリのところで短剣で抑えることができた。

「なに……すんだよっ!」

 安っちぃ短剣だな。装備に金掛けすぎだろ。なんでこんな簡単に刃が折れるんだよ。

  爪を跳ね返したあと、ドラゴンの鼻先を蹴り、ドラゴンとの距離を取りながら地面に向かって降りた。降りた場所には重装備が居た。

「弁償してね」

「はぁ?今のは俺じゃなかったら死んでたぞ?調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

 こいつ、どっかで見たような気がするんだよな。

「……逃げよ」

「急にか?まさか、ドラゴンに怖気付いたのか?」

 はっ!こんな装備着てても、中身がそんなんじゃ宝の持ち腐れだな。

 その装備も可哀想なこった。こんな腑抜けに使われるとはな。

「亜魔人が来る」

「亜魔人?あのカスが来ようとも関係ねぇよ」

「何を言ってるの?亜魔人は宮廷騎士団が束になってやっと倒せるような相手よ。私だって一体で限界」

 言い過ぎだろ。宮廷騎士団って言ったら俺が勇者を超越し、強さを超越する前よりは強いぞ。

「そんな化け物が五体も居るんだよ?ドラゴンも居たら死んじゃうよ」

「その聖剣を貸せ」

「聖剣を?あなたでは使えないと思うけど……」

「良いから貸せ。時間をかけるな。女は下がってろ」

「!!!!!」

  観念したかのように、静かに聖剣をリョーマへと渡した。

 やっぱ、聖剣だよな。最近は使ってなかったら少し違和感があるが、良く手に馴染む。

「えっ?なんで持てるの?」

「俺も勇者だからに決まってんだろ、その脳ミソは見せかけか?」

「容姿だけなら……でも性格は魔王の方がマシね」

「捻り潰してやろうか?」

「私は何もないから見学させてもらうわ」

「まだけんがあるだろ?」

  自分の手をさしながら重装備を嘲笑うかのように見つめた。

「はぁ……乙女にそんなことできないわ」

 こいつ……!いちいちムカつくなぁ……!

 よし。亜魔人もドラゴンも潰したら、今度はこいつだな。

「俺の狙いはドラゴンだけだ。亜魔人どもは消え失せろ」

 今度は一撃で楽に死なせてやるよ。

  リョーマの一太刀で起きた風は、鋭利の刃となりて、亜魔人の首を狙った。

「切り刻めば、再生も出来ねぇだろ」

  再生しようとする亜魔人にリョーマは接近し細かく切り刻んだ、再生出来ぬ程細かく。

  そして、なんと一体に掛けた時間はたったの二秒。つまり、十秒で全ての亜魔人を倒したことになる。

「はぁ……なんか前に戦った奴よりも弱いんだが」

 なんだろう……こいつらが弱すぎて逆にイラついてきたわ。手応え無さすぎだろ。

「ハハッ!まぁいいか。本命はテメェだからな!」

  その狂気に満ちた笑みを見たファブニは心無しか、怯えてるように見えたのであった。
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