クズ勇者が伝説の英雄になるまで

パチ朗斗

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1章 クズ勇者の目標!?

クズ勇者、自分語りをする 2

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「そうだなぁ……まず俺は元奴隷身分だ」

  リョーマは目を細め、ゆっくりと懐かしむようにポツリポツリと語り出した。

 「俺は五年間ずっと奴隷商と過ごした。不憫だとは思わなかった。この生活が普通だと思ってたからな」

「飯は一週間に二回。一回の時もあった。そのくせしてクソまずいんだ。腹が減りすぎて何度も死ぬかと思った」

  リョーマは視線をファニから外し、上を向いた。

「ずっと売れ残る俺が鬱陶しかったのか、奴隷商の野郎は辺境の村に俺を引き渡したんだ。もちろん、格安でだ」

「その村での生活も今思えば異常だった」

  少し険しい顔つきになったリョーマはファニの髪を撫でるのをやめた。

「飯は二日に一回だ。風呂は一ヶ月に一回入れるかどうか。飯もまずいし、一日の半分以上は働かさせる」

  フィールはただ静かに隣に座り聞いていた。

「奴隷商のもとを離れればマシな生活が送れると思っていた。だが、俺を買ったゴミクズは感謝しろと言うばかりだ。最初は従ったさ。だがさすがの俺もその生活が辛くなって一度だけ反抗したことがあった」

  リョーマは土を手で強く握りしめた。

「そしたら、家から追い出された。その日は雨が降っていた。俺は風邪を引いたがクズ共はそれでも今までと同じように……いや、更にこき使うようになった。なんなら一週間飯を出されない時もあった。幼かった俺は素直に従ったさ」

「悔しかった。だが、あの頃はそんな事を言える暇も考える余裕も無かった」

  一息ついたリョーマの顔は少し明るくなり、先程までの険しい雰囲気も無くなった。

「ある日、冒険者が村に来た。Sランク冒険者だった。後ろ腰辺りに剣を下げていて白色のマントを羽織っていたのを覚えている」

 でも、顔は思い出せない。俺はあの時から既に人間をゴミだと認識していたのだろうな。

「そいつはなんでか俺の家に泊まりたいと言ってきた。母親クズは二つ返事で了承していた」

  リョーマは再びファニの髪の方へ手を伸ばした。そして、そっと添えて、髪を撫ではじめた。

「そいつは村のために色んなことをしていた。すぐに馴染んでいた。だが、そいつが来て一週間が経とうとしていた時、魔族の群れゴミ共がきやがった」

  言葉とは裏腹にそこまで気にしてるような憤りを感じている雰囲気は無かった。

「ゴブリンの群れだ。俺の村は戦闘できる人間なんて居なかったからすぐに全滅すると思ったし、俺は心からそれを願った」

「だが、冒険者が居た。そいつは百を軽く超える魔族の大群を涼しい顔で斬り伏せていった」

「ハッキリと言って邪魔だと思った。俺は生きたいなんて思って無かった。俺は別に死んでも良かったと思ってた」

「だが、そんなに強ぇ冒険者が居ても人間は死んだ。目の前で俺を買った人間も死んだ。心から歓喜した。俺はあの時笑っていただろうな。これでやっと俺も死ねる、そう思った」

「でも、結局冒険者に助けられた。そいつはなんの感情も込めないで、ごめんって謝ってきやがった」

「でもそいつは俺の顔を見て笑ってたんだ」

  リョーマはフィールの方を見た。その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいた。

「そいつもよ、人間が大嫌いなんだって。その言葉を聞いてよ、そいつの言う言葉一つ一つが俺の胸にストンと収まるようになった」

 俺の思想も信念も全てその冒険者……いや、師匠のおかげだ。

「おかしなことに、村に建ってた家々はだいたい無事なんだ。なのに、村人だけが死んでた。気付いた時にはその冒険者も居なくなってた」

「俺は魔族が来た森に向かった。なんでか今でも分からない。それで、俺は森でだいたい10年ほど過ごした。村では二年ほど過ごしていたから、俺の人生の半分以上は森だったな……」

「村で過ごしていた時に色んな感覚が無くなっていた。ただ同じことを繰り返すだけだ。そこに違和感も疑問も無かったし持たなかった。だからだろうな。
自由を手に入れた俺は、自分の意思で何かをしたかったから、森の中に入ったんだろうと思ってる」

  リョーマの話はとりとめのないものだったが、当の本人であるリョーマは、なぜかスッキリしたかのような顔をした。

「俺が森を出るキッカケは人間だった。Sランク冒険者と名乗っていたかな……まぁ、その冒険者パーティーが魔族一体にすげぇ時間掛けてるから、横取りしてやったんだ。そしたら、なんか色々言われて、その上に着る服も貰って……それで森を出ることになったんだ」

  リョーマは無表情だった。まるで何とも思っていないようだった。

「それで、なんか勇者になって人間を助けてやってたって訳だ」

「リョーマって今何歳なの?」

  フィールはずっと疑問だった。口は悪いが落ち着いてる。何よりもとてつもなく強い。

  今の話を聞いてフィールの中ではほぼ確信していた。

  沈黙が流れる間、フィールは心の中で何歳かを予想していた。

(二十歳ぐらいかな?もう少しいってるかな?でも、私とそんなに変わらないとは思うけど……)

  フィールが勝手に悩んでいると、リョーマの怒鳴り声が森に響いた。

「んなもん関係ねぇだろ?その口、引き裂いてやろうか?」

「ちなみに、私は十八だよ」

「はっ?」

  リョーマは少し呆気にとられていたが、だんだん顔が緩み、壮大に笑い始めた。

「アハハハハ!!マジかよ!お前、まさかの年上かよ」

「え?ちょっ……ホントに?」

「これ見ろよ」

  目尻に涙を浮かべながらリョーマはズボンのポケットからあるカードを取り出した。

「なにこれ?」

「はぁ?ギルドカードに決まってんだろ?テメェ知らねぇのか?」

「ぎるどかーど?初めて聞くけど……」

「冒険者が持ってるカードだよ」

「そ、そうなの?わたしは初めて見たけど……」

「まぁ良い。ここ見ろ」

「ん?」

  カードを端から端まで見ていくとそこには、リョーマ、Fランク、十七歳、と書かれていた。
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