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異世界転生
クラス召喚ですか
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壮大に広がる草原。燦々と照らす太陽とそれに付け加えられるように吹く、弱すぎず、強すぎない風。そしてそんな穏やかな天気の先に見える街。
「うぉぉ異世界転生キタァァ!!」
「まじもんだぁぁぁ!!」
「スッゲー!! まじパネェ!!」
そして目の前には異世界転生にはしゃぐ馬鹿共。
俺たちがどうしてこうなったかと言うと……それは数十分前に遡る。
修学旅行の帰り道。俺たちは4泊5日の旅で疲れきって寝ていた。その静寂が包むバスで事件が起きた。寝ているところに強い衝撃が数回響いたのだ。初撃で起き、2撃目で意識が危機感によって覚醒し3撃目で意識が朦朧とし4撃目で意識を完全に失った。
そして次、目を覚ました時には全く別の場所にいた。真っ白な先が見えない空間。そこにはバスに乗っていた生徒だけが居たのだ。先生や運転手の姿はそこにはなかった。俺以外誰もその事に気づける奴はいなかった。しかしそれは仕方のない事だ。急すぎる出来事で理解が追いついていなく、自分以外の事を気に掛ける余裕なんてないのだ。
俺はこの経験を何度もしている。それはもう慣れるを通り越して飽きる位に。
俺たちが今いる場所を俺は転生の場と呼んでいる。名の通り転生する場所だから。
そしてパニックになった数分後に俺達を転生させる者が現れたのだ。背中に翼を生やし、頭の上には光る輪が浮かんでいる。その神々しい姿を見て誰もが言葉を一瞬失った。そして次々とこう口にした。
――天使
俺はその言葉に頷いた。確かにそいつは天使だ。天の使いだ。
「貴様等は死んだのだ」
誰もが注目する中、天使は口を開く。皆はおそらく初めて聞く言葉だろう。だけど俺は違う。それはもう壊れたラジカセの様に何回も聞いた。
その言葉を聞いても馬鹿共は理解出来ていない様子だった。まあ、それは無理もない。初回だとそんな物だ。いきなり死んだと言われても理解出来ないだろう。俺だって最初はそうだった。天使が何を言ってるのか全く理解出来なかった。
天使がその言い終わった直後、天使の後ろに大きな画面が出てきた。その画面には俺たちが死ぬ様が映し出されていた。バスの運転手が運転中に寝落ちし、カーブ時にガードレールにそのまま突っ込む。ガードレールの先には何もなく、崖だった。バスは岩や途中生えている木に何度もぶつかりながら転げ落ちていくをしていく。その様はまさに滑稽だった。滑稽すぎてつい俺の頬はつい緩んでしまった。
バスが地面にたどり着いた時には既に原型を留めていなかった。落下中に何人もの人を外に放り出していた。そして地面についた数十秒後には血がバスから漏れてあたり一面に広がっていた。
これは確かに全員死んでもおかしくない。
そう思った。ただ疑問なのが運転手や先生がこの場にいない事だ。どう考えてもあの落下で生き残る訳がない。
「死んだ経緯は分かってもらえただろうか?」
その天使の一言に映像に釘付けになっていた奴が次々と正気に戻る。そして泣き出したり、映像のグロさを思い出して汚物を口から吐き出す奴もいた。また、衝撃的すぎる現実が理解出来なくて笑い出す精神が弱すぎる馬鹿もいた。
天使はそれを少し困った表情で見ていた。仕方ない事だ。天使的には早く話しを進めたいのだろうけど、馬鹿が沢山いてそれが出来ない。この状態で正気を保ててるのはクラスの約1/3だけ。それ以外は全員、足を折り曲げ地面に顔を付けている。
うるせぇ……普段いばってる奴も膝をついてやがる。カス過ぎるなぁ。
「……仕方ない、か。これはあまり使いたくなかったのだが」
天使は1度大きなため息をつき、次に指パッチンをしたのだった。
「これで少しはましになっただろう。お前らの負の感情を取り除いてやった」
天使が指を鳴らした後、次々と正気に戻る奴が現れる。そして僅か数十秒で全員が正気に戻ったのだ。しかも現状が完璧に理解出来ているような落ち着きようだ。
「さて、続きを話すとしよう」
天使は全員が自分のほうを向いているの確認して再度口を開いた。
「貴様等にチャンスをやる。生き返るチャンスだ」
その言葉を聞いても誰も動揺しない。やはりさっきの指パッチンで必要な情報を頭に直接埋め込んだのだろう。つまり、これから起こる事を誰もが知ってる。
「次の世界で魔王討伐を条件に生き返らせてやる」
……すげー色々はしょってる。
個人的に言えばいろいろツッコミたい事がある。だけど今はそんな空気じゃないし、俺以外の奴がツッコまないのを見る限り全員分かってるらしい。転生する理由とか、どんな世界に転生するのかとか……。
「色々説明しなければいけない事があるのだが、さっきの感情を抜き取る動作でそれが全て言葉を使わず伝わってしまってる。だから次の行動に移行しよう」
ああ、思い出した! あの指パッチンそうだよ。相手の考えと自分の考えを取り替える奴だ。だから皆はあんなに落ち着いてるんだ。だから天使の説明がいらないんだ。
思考を入れ替える便利な技だ。そう、前にも1回あった。集団で死んだ時にあまりにも死に方が酷過ぎてぎて精神崩壊した奴がやられたんだ。そいつ、確か指パッチンされた後、急に冷静になって……変にリーダーシップをとってたな。・・・・・・しかしそうなると、今天使の頭の一部には馬鹿共の負の感情が凝縮されてる事になるのか。天使もバカだぁ。そんな弱い奴が異世界行ったって無駄死にするだけなのに……自分が傷つく必要なんてないのにな。
「お前らに魔王を倒すための能力を授ける。この箱から1人ずつ能力を取るがいい」
天使はどこからともなく取り出した箱を俺たちに向ける。みんな順番にそれを引いていく。いわゆるくじ引きだ。今回は人数が多いからな。1人ずつ自分の好みのを選んでたら時間が掛かりすぎる。
残り物には福がある。
その言葉を信じて最後にくじを引いたのだが……フードコーディネーターって何? 魔王とどうやって戦えって言うの?パイでも投げればいいのかな? まじありえへん。
完全にハズレスキルだった。まあ、でもこいう系のスキルは初めてだから反面嬉しい気持ちもなくもない。
ちなみにバカ共は自分の能力を自慢しあっていた。ホントバカだよな。生命線である能力を他人にばらすなんて。
「では、全員が能力を受け取ったところで転生の儀式を行う」
天使の言葉と同時に床が光り始める。しかし、そんな事はどうでもいい。問題は天使が少し疲れた表情をしている事だ。
こう言う時なんて言ってやればいいだろうか? そうだな。こう言おう。
「お疲れ様。ありがとう」
満面の笑みで言ってあげた。そして直後俺たちは光に包まれ消えた。
その時、俺は天使が頬を染めているのに気づかなかった。
「うぉぉ異世界転生キタァァ!!」
「まじもんだぁぁぁ!!」
「スッゲー!! まじパネェ!!」
そして目の前には異世界転生にはしゃぐ馬鹿共。
俺たちがどうしてこうなったかと言うと……それは数十分前に遡る。
修学旅行の帰り道。俺たちは4泊5日の旅で疲れきって寝ていた。その静寂が包むバスで事件が起きた。寝ているところに強い衝撃が数回響いたのだ。初撃で起き、2撃目で意識が危機感によって覚醒し3撃目で意識が朦朧とし4撃目で意識を完全に失った。
そして次、目を覚ました時には全く別の場所にいた。真っ白な先が見えない空間。そこにはバスに乗っていた生徒だけが居たのだ。先生や運転手の姿はそこにはなかった。俺以外誰もその事に気づける奴はいなかった。しかしそれは仕方のない事だ。急すぎる出来事で理解が追いついていなく、自分以外の事を気に掛ける余裕なんてないのだ。
俺はこの経験を何度もしている。それはもう慣れるを通り越して飽きる位に。
俺たちが今いる場所を俺は転生の場と呼んでいる。名の通り転生する場所だから。
そしてパニックになった数分後に俺達を転生させる者が現れたのだ。背中に翼を生やし、頭の上には光る輪が浮かんでいる。その神々しい姿を見て誰もが言葉を一瞬失った。そして次々とこう口にした。
――天使
俺はその言葉に頷いた。確かにそいつは天使だ。天の使いだ。
「貴様等は死んだのだ」
誰もが注目する中、天使は口を開く。皆はおそらく初めて聞く言葉だろう。だけど俺は違う。それはもう壊れたラジカセの様に何回も聞いた。
その言葉を聞いても馬鹿共は理解出来ていない様子だった。まあ、それは無理もない。初回だとそんな物だ。いきなり死んだと言われても理解出来ないだろう。俺だって最初はそうだった。天使が何を言ってるのか全く理解出来なかった。
天使がその言い終わった直後、天使の後ろに大きな画面が出てきた。その画面には俺たちが死ぬ様が映し出されていた。バスの運転手が運転中に寝落ちし、カーブ時にガードレールにそのまま突っ込む。ガードレールの先には何もなく、崖だった。バスは岩や途中生えている木に何度もぶつかりながら転げ落ちていくをしていく。その様はまさに滑稽だった。滑稽すぎてつい俺の頬はつい緩んでしまった。
バスが地面にたどり着いた時には既に原型を留めていなかった。落下中に何人もの人を外に放り出していた。そして地面についた数十秒後には血がバスから漏れてあたり一面に広がっていた。
これは確かに全員死んでもおかしくない。
そう思った。ただ疑問なのが運転手や先生がこの場にいない事だ。どう考えてもあの落下で生き残る訳がない。
「死んだ経緯は分かってもらえただろうか?」
その天使の一言に映像に釘付けになっていた奴が次々と正気に戻る。そして泣き出したり、映像のグロさを思い出して汚物を口から吐き出す奴もいた。また、衝撃的すぎる現実が理解出来なくて笑い出す精神が弱すぎる馬鹿もいた。
天使はそれを少し困った表情で見ていた。仕方ない事だ。天使的には早く話しを進めたいのだろうけど、馬鹿が沢山いてそれが出来ない。この状態で正気を保ててるのはクラスの約1/3だけ。それ以外は全員、足を折り曲げ地面に顔を付けている。
うるせぇ……普段いばってる奴も膝をついてやがる。カス過ぎるなぁ。
「……仕方ない、か。これはあまり使いたくなかったのだが」
天使は1度大きなため息をつき、次に指パッチンをしたのだった。
「これで少しはましになっただろう。お前らの負の感情を取り除いてやった」
天使が指を鳴らした後、次々と正気に戻る奴が現れる。そして僅か数十秒で全員が正気に戻ったのだ。しかも現状が完璧に理解出来ているような落ち着きようだ。
「さて、続きを話すとしよう」
天使は全員が自分のほうを向いているの確認して再度口を開いた。
「貴様等にチャンスをやる。生き返るチャンスだ」
その言葉を聞いても誰も動揺しない。やはりさっきの指パッチンで必要な情報を頭に直接埋め込んだのだろう。つまり、これから起こる事を誰もが知ってる。
「次の世界で魔王討伐を条件に生き返らせてやる」
……すげー色々はしょってる。
個人的に言えばいろいろツッコミたい事がある。だけど今はそんな空気じゃないし、俺以外の奴がツッコまないのを見る限り全員分かってるらしい。転生する理由とか、どんな世界に転生するのかとか……。
「色々説明しなければいけない事があるのだが、さっきの感情を抜き取る動作でそれが全て言葉を使わず伝わってしまってる。だから次の行動に移行しよう」
ああ、思い出した! あの指パッチンそうだよ。相手の考えと自分の考えを取り替える奴だ。だから皆はあんなに落ち着いてるんだ。だから天使の説明がいらないんだ。
思考を入れ替える便利な技だ。そう、前にも1回あった。集団で死んだ時にあまりにも死に方が酷過ぎてぎて精神崩壊した奴がやられたんだ。そいつ、確か指パッチンされた後、急に冷静になって……変にリーダーシップをとってたな。・・・・・・しかしそうなると、今天使の頭の一部には馬鹿共の負の感情が凝縮されてる事になるのか。天使もバカだぁ。そんな弱い奴が異世界行ったって無駄死にするだけなのに……自分が傷つく必要なんてないのにな。
「お前らに魔王を倒すための能力を授ける。この箱から1人ずつ能力を取るがいい」
天使はどこからともなく取り出した箱を俺たちに向ける。みんな順番にそれを引いていく。いわゆるくじ引きだ。今回は人数が多いからな。1人ずつ自分の好みのを選んでたら時間が掛かりすぎる。
残り物には福がある。
その言葉を信じて最後にくじを引いたのだが……フードコーディネーターって何? 魔王とどうやって戦えって言うの?パイでも投げればいいのかな? まじありえへん。
完全にハズレスキルだった。まあ、でもこいう系のスキルは初めてだから反面嬉しい気持ちもなくもない。
ちなみにバカ共は自分の能力を自慢しあっていた。ホントバカだよな。生命線である能力を他人にばらすなんて。
「では、全員が能力を受け取ったところで転生の儀式を行う」
天使の言葉と同時に床が光り始める。しかし、そんな事はどうでもいい。問題は天使が少し疲れた表情をしている事だ。
こう言う時なんて言ってやればいいだろうか? そうだな。こう言おう。
「お疲れ様。ありがとう」
満面の笑みで言ってあげた。そして直後俺たちは光に包まれ消えた。
その時、俺は天使が頬を染めているのに気づかなかった。
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