~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭

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新たなる道

しょうもない交渉

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 「交渉……ですか?」

 アローラは頭にハテナマークを浮かばせながら聞く。

 「ああ、そうだ」

 俺は状態を起こし、あぐらを組む。

 「交渉って何ですか?」

 「相手と話し合って物事の取り決めをすることだよ」

 「い、意味ぐらい知ってます! 何を交渉するのですか? と聞いているのです!」

 頬を赤めながら言うアローラ。

 「俺はお前の脱出を助ける。だけど、その代わり俺の迷宮ダンジョン探索を手伝って欲しい。まあ、期間は1週間程度だ。俺はその間に、お前にスキルの使い方を教える。まあ簡単に言えば料理が上手く生成出来る方法を教えるってことだ」

 魔法というのはすごく単純で、魔力量と手順を間違えなければ、必ず上手く出来る。

 「……ここから出れるのは嬉しいですが……待たせてる人もいますし、迷宮探索に付き合うのはちょっと……」

 こばむアローラに俺はグイグイ攻める。

 「俺がいなきゃ、一生このままだぞ。一生が俺の用事に付き合えば1週間になる。それに、また今度同じ事が起きた時、お前は上手い飯を自分で作れる様になるんだぞ」

 「確かにそうですけど……」

 アローラは中々折れない。顔を見る限り、「待ってる人」の事を気にしている。多分、恋人か何かだろう。し~かしそれは俺の知った事ではない。むしろ、1週間ほっつき歩いてただけで、怒るなら捜しに来いと言ってやる。

 「大丈夫だよ。俺と契約するからには、絶対君は守るし、ちゃんと目的地まで送り届ける」

 「う~ん……」

 アローラは考えている。眉間にしわを寄せて。

 「帰ったら彼氏に上手い料理がご馳走出来るんだぞ」

 「…………」

 当てずっぽうの一言だったが――

 「分かりました♪ 1週間だけ付き合ってあげます♪」

 それがドストライクだったらしい。素晴らしい決定打だ。

 「よし! じゃあ、準備するから少し待ってくれ」

 一瞬ガッツポーズをとり俺は準備に取りかかる。

 この場に置いて最優先なのは彼女を守る事だ。つまり、俺がアローラの騎士になるのだ。

 騎士とはどういう物かあのクズどもがいたら、見せてやりたい。

 
 アローラは俺の準備宣言を聞いた後、せっせと片付けをしている。俺はその間に無属性魔法で小さな投げナイフを何本も作る。

 「瓦礫の向こうには複数のモンスター。その先の道は分からないから、そこはアローラに頼もう」

 しかし、不思議だ。アローラはどうして俺の強さを疑わないんだ? 迷宮85階層。並みの強さじゃ到達出来ない場所だ。上から落ちてきたなら、上の階層から落ちてきたと考えるのが妥当だが……ん? おかしいぞ。

 1つの矛盾点に気づいた。

 最初、周りを見た時、天井に穴が空いてる所なんてなかった。……俺は一体どっから出てきたんだ?

 「あなたが、落ちてきた穴はもう塞がってしまいましたよ」

 「え!?」

 心を読まれた!?

 その唐突過ぎる言葉に俺は驚いた。目を見開いて驚いた。しかし――

 「声に出ていましたよ」

 「まじか……」

 その言葉に一瞬ホッとし、自分に呆れる。

 「マジです♪」

 その言葉の後だった。

 「あなたが落ちてきた時、大きな穴が天井に空きました。そしてその穴の先には天災であるライジングドランの姿がありあなたを見ていました。その事から考えると、あなたはライジングドラゴンと戦っていた」

アローラは流れる様に口を開く。しかし、その言葉は、前の言葉と違い真面目な声だった。声のトーンを下げている。優しそうな目が少しだけ鋭くなってもいた。

 おい、おい、ここは85階層だろう。どこのマサイゾクだよ。

 その視力良さに流石に驚いた。因にアローラが真面目雰囲気を出しているのを俺は気にしない。気にするのが面倒だし、気にする必要がないから。

 「穴はあなたが落ちてきた後、自動的に直ってしまいました」

 自動的って……一体どいう事だ? カスニールが自爆で焼いた草花や抉った地面は元通りにはならなかった。

 頭の中に無数の疑問が浮かぶ中、アローラは話を続ける。

 「落ちてきたあなたを見るとマナ欠乏症になっていました。そこから考えるにライジングドラゴンに瞬殺されたのではなく、あなたは戦いの途中で魔力切れになって負けた、と推測出来ました。ライジングドラゴンと戦える人間はそういません」

 全然あってないが凄い洞察力だ。これを洞察力と言うのか知らんが。

 「ここまでが、わたしがあなたを信じる理由です♪」

 声のトーンが戻る。彼女が言う戦うとは、ちゃんと相手になる敵との戦いを言っている。数撃程度で殺られるなら、それは戦いじゃない。とまで言った。

 なんとまぁ惜しい人材だ。どこのギルドに所属してるのか知りたくなる。

 よく観察している。

 「有り難い説明だ。これで、安心して俺もあんたを信用出来る」

 心の底からではなく表面上で。

 「はい! わたしもです♪」

 「じゃあ、行くか」

 「行きましょう♪」

 こうして俺たちのダンジョン探索が始まるのであった。
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