ツンデレ深瀬クンは愛される。

佐藤 ソース

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1章 始まったモノ

【番外編】二人は出会う~如月side~

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___キーンコーンカーンコーン

   緊張で眠れなかった俺は、チャイムを聞いて、気を引き締めた。
だってさ、高校の入学式……。
遅刻したらどうしよう…、意外と怖い所だったら…そんな事ばかり考えてしまう。

   中学卒業のタイミングでこっちに引っ越してきたから、友達なんていないし。
辺りを見回しても、殆どみんな、地元の中学から来たみたいだし……。

どうしようかな…。見掛けで勘違いされるど、結構小心者なんだよ…。俺は…。

「出欠をとるぞー。」
   俺達のクラスの担任は、優しそうな中年のハゲのおじさんだった。
担任が怖かったら地獄だよな。

   どんどんクラスメイトの名前を名前を言っていく先生。
もうすぐ俺だ……。噛まないかな…。

「如月 祐~」
「は、はい」
ほっ… 、ちょっとどもったけど、セーフ。

   みんなやっぱり緊張とかないんだなー。
やっぱり転校なんて猛反対すれば良かった…。
みんな元気かなー。

「おい、恭! 深瀬 恭!」
俺の事じゃないのにボーッとしてたからビクってした。
その“深瀬 恭” 君もビクってして、
「は?え、はいっ」
と変な返事をしたから、クラスの人達に笑われてた。
その人は、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、消しゴムを触って誤魔化していた。

   なんか、俺達似てるかも……

それが第一印象だった。

それから、どうにかして話しかけたくて、きっかけを探していたら、その人がずっと触っていた消しゴムを落とした。

はっ!今だ!その人が拾う前に!

「ほら。消しゴム落としたぞ。」

よし、完璧だ!クールに、そして優しく拾う事が出来た!
それで、これから仲良く……

「別に…取ってなんて頼んでないし…っ!」
   その人はそう言いながら、バシ!と消しゴムを奪い取った。そして、俺から目を逸らした。

   えっ。き、嫌われた?
人見知りしちゃうのかな?
慣れてなくて冷たい的な…?
困って、その人を見続けてたら、少し赤くなってた。

「なんだよ、それ」
と、思わず笑みが漏れた。
しまった、余計な事言ったかな、
と思ったけど、緊張は少し とけたようだった。

   「あ、先生、書類忘れたわ。ちょっと取り入ってくるから、静かに待っとけよ。」
先生が急に立ち上がり、教室を出た。

   これは、仲良くなるチャンスでは…?
クラスの奴らも盛り上がってうるさいし、話しかけよう…。
ん、あの人は、地元の中学出身なのかな?
ちらりと視線を送るけど、
誰とも話していない所を見ると、
俺と一緒で、このタイミングで引っ越してきたっぽい。
もしくは ぼっちか。

   どっちにしろ、仲良くなりたい事に変わりはないので話しかけることにした。
さっきは、言葉遣いが怖かったのかもしれない。
もっと気さくに話しかけた方がいいのか…。
いや、でもカッコイイ、頼りがいのある感じの方がいいのか…。

  悩んだ結果、

「おい。」

になった。悩んだ結果が二文字。

「…何。」

あぁ、ほら怒ってる!睨んでる!
やっぱ、気さくな感じがいいのかな。

   「俺、如月 祐だから。これから、よろしく。」
思わず握手を求める右手を差し出す。
あ、やりすぎたかな?
彼は、握手には答えず、
「俺は、深瀬 恭…。…………よろしく。」
と、たっぷり間をあけて言った。
握手をスルーされたのは、悲しかったけど、
彼から名前を教えてもらって距離が近付いた気がした。

   「深瀬…深瀬 恭くんね。ほら、握手。」
俺は、名前を教えてくれたのが嬉しくてつい、連呼していたのだが、握手まで求めてしまっていた。
「え」
ほら、引いてる!流石に図々しいよな!
謝ろうとした時、プルプル…とした手が俺の右手に触れた。
滑らかで、小さくて、可愛らしくて頼りない手。
美しい…とまで感じた。
対して俺はなー。
手とかごついのに、気はちいさいんだよな…。

   「今日から俺ら友達だからな!」
そんな事を口走ったけれど、もうさっきほど焦ってはいない。

だって嬉しくてしょうがないから。
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