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侯爵家にて
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話は二日戻り、談話室でベルグ先生の講義があった日、カールの家では、カールの兄ニコラウスが、帰宅するなり父親であるリーニュ侯爵に、熱く話しかけた。
「父上、ようやく、私の理想の令嬢に巡り会いました。」
「それは朗報、どこのご令嬢だ?」
「ツェリェ伯爵のご長女エレオノーラ・コンライン嬢です。美しく、真面目で控えめな方です。まさに私の理想です。」
「ああ、ツェリェ伯の。ツェリェ伯は穏やかで賢い方だ。ご令嬢も真面目で魅力的なのだな。」
「はい。今日初めてお会いして、共に勉強会で学びましたが、熱心に聞いておられる様子がなんとも健気で愛らしくて。すぐにでも婚姻の申し入れをしたいのですが。」
「なんと、伯爵家のご令嬢と勉強会で知り合ったのか。お茶会や夜会で知り合うより、上手く運びそうな気がする。よし、善は急げ。お前がやっとその気になったご令嬢だ。」
翌日、カールが久々に家に帰って来た。
「父上、しばらくぶりです。」
「お、カール、フレデリク様と上手くやっておるか?」
「はい。」
「実はニコラウスが昨日、意中のご令嬢ができたと言ってな。」
「え!まさか、ツェリェ伯ご令嬢のエレオノーラ殿ではないですよね?」
「なんだ、知っておったのか。真面目で魅力的なご令嬢なんだろう?」
「はい。エレオノーラ殿は真面目な方です。実は、フレデリクもエレオノーラ殿を気に入っていまして。」
「なんと、公爵様もエレオノーラ嬢を。ニコラウスの婚姻の申込みを、今朝方伯爵家に送ったところなのだが。」
「フレデリクも今、ツェリェ伯爵様へ婚姻の申込みの準備を整えているところです。」
「そうか。公爵家と申込みが重なると、侯爵家のうちに勝ち目は無いか。しかしフレデリク様はトンデモ公爵と言われて、どこからも敬遠されておるから、もしかしたら先方はうちのニコラウスを選んでくださるかもしれない。ただ、長年の付き合いの公爵様に恨まれても困りもの。が、やっとニコラウスがその気になったのだ。今回の伯爵令嬢をのがしたら、次にニコラウスがその気になるのは、いつになることやら。」
あれこれ悩んで侯爵様はため息をつく。
「フレデリクは自分が選ばれなくても恨んだりはしないでしょう。しかしフレデリクにとっても初恋です。フレデリクはエレオノーラ殿に直接求婚し、面と向かってはっきり断られていましたが、諦めないようです。」
「なんだ、公爵様はもう断られたのか。では、うちのニコラウスが申し込めるということだ。」
「それでもフレデリクは、ツェリェ伯に手紙でお願いするそうです。」
「そうか、それなら公爵様が伯爵様から正式に断られてから、我が息子の申し出を受けてもらえるのが一番丸く収まる。カールはフレデリク様に対して肩身が狭くなるかもしれんが、ニコラウスのために堪えてくれよ?」
今度はカールがため息をつく番だった。『兄上と我が家のためには、エレオノーラ殿と兄上が結ばれて欲しい。しかし、フレデリクは大事な友。自分から見て兄上の方がまだ他に相性の良いご令嬢が見つかりそうだが、フレデリクはエレオノーラ殿以外にうまくいきそうな女性はいない気がするし。』カールもあれこれ悩み、父親に、
「兄上は、エレオノーラ殿のことを、どのように言ってましたか?」
と聞いてみた。父親は、
「美しく真面目で控えめな、理想の相手がやっと見つかったと浮かれていたよ。自分が娶って、美しく着飾らせて侍女を何人もつけたいと言ってたけど、そんなに質素なご令嬢なのか。装飾品の類は一つもつけていなかったとニコラウスが言っていたが。」
カールはそれを聞くと、
「私から見て、エレオノーラ殿は美しくて真面目ですが、控えめとは言いがたいと思います。むしろハキハキとご自分の意見を言われる方ですし、豪華なドレスや宝飾品はあまり喜ばれないご令嬢のように思います。」
「そうか。お前の方がニコラウスよりも人を見る目はありそうだな。ニコラウスは理想の相手にこだわるあまり、少しこじらせているかもしれない。自分の理想にぴったり一致する人物でなくても、自分と関わることで、相手も自分も変わっていくものなのに。」
「父上、深いお考えですね。」
「私と母さんだってそうだし、お前とフレデリク様もそうじゃないか?」
「確かにそうです。出会った頃の、フレデリクの国への忠誠心には、子供心に驚きましたが、今では私も同じくらい、この国のために尽くしたいと考えています。フレデリクも、私の意見を頼りにしてくれます。」
「カール、お前はいつもまわりの皆の事を考えているからな。フレデリク様にもさぞ頼りにされているだろう。」
「父上、ありがとうございます。父上が思っている私になれるよう精進してまいります。」
「カールは、気になる令嬢はいないのか?」
「はい、今のところは。探してはいるのですが、気になる女性はいません。私も、こじらせているようです。」
「早く見つかると良いな。まわりの幸せばかり考えていないで、自分の幸せも考えなさい。」
「はい。」
カールは『自分はどんな女性に心を動かされるのだろう。これから先、フレデリクの側に仕えるなら、結婚しない方が身軽で良いんだよな。』と人ごとのように考えた。
「父上、ようやく、私の理想の令嬢に巡り会いました。」
「それは朗報、どこのご令嬢だ?」
「ツェリェ伯爵のご長女エレオノーラ・コンライン嬢です。美しく、真面目で控えめな方です。まさに私の理想です。」
「ああ、ツェリェ伯の。ツェリェ伯は穏やかで賢い方だ。ご令嬢も真面目で魅力的なのだな。」
「はい。今日初めてお会いして、共に勉強会で学びましたが、熱心に聞いておられる様子がなんとも健気で愛らしくて。すぐにでも婚姻の申し入れをしたいのですが。」
「なんと、伯爵家のご令嬢と勉強会で知り合ったのか。お茶会や夜会で知り合うより、上手く運びそうな気がする。よし、善は急げ。お前がやっとその気になったご令嬢だ。」
翌日、カールが久々に家に帰って来た。
「父上、しばらくぶりです。」
「お、カール、フレデリク様と上手くやっておるか?」
「はい。」
「実はニコラウスが昨日、意中のご令嬢ができたと言ってな。」
「え!まさか、ツェリェ伯ご令嬢のエレオノーラ殿ではないですよね?」
「なんだ、知っておったのか。真面目で魅力的なご令嬢なんだろう?」
「はい。エレオノーラ殿は真面目な方です。実は、フレデリクもエレオノーラ殿を気に入っていまして。」
「なんと、公爵様もエレオノーラ嬢を。ニコラウスの婚姻の申込みを、今朝方伯爵家に送ったところなのだが。」
「フレデリクも今、ツェリェ伯爵様へ婚姻の申込みの準備を整えているところです。」
「そうか。公爵家と申込みが重なると、侯爵家のうちに勝ち目は無いか。しかしフレデリク様はトンデモ公爵と言われて、どこからも敬遠されておるから、もしかしたら先方はうちのニコラウスを選んでくださるかもしれない。ただ、長年の付き合いの公爵様に恨まれても困りもの。が、やっとニコラウスがその気になったのだ。今回の伯爵令嬢をのがしたら、次にニコラウスがその気になるのは、いつになることやら。」
あれこれ悩んで侯爵様はため息をつく。
「フレデリクは自分が選ばれなくても恨んだりはしないでしょう。しかしフレデリクにとっても初恋です。フレデリクはエレオノーラ殿に直接求婚し、面と向かってはっきり断られていましたが、諦めないようです。」
「なんだ、公爵様はもう断られたのか。では、うちのニコラウスが申し込めるということだ。」
「それでもフレデリクは、ツェリェ伯に手紙でお願いするそうです。」
「そうか、それなら公爵様が伯爵様から正式に断られてから、我が息子の申し出を受けてもらえるのが一番丸く収まる。カールはフレデリク様に対して肩身が狭くなるかもしれんが、ニコラウスのために堪えてくれよ?」
今度はカールがため息をつく番だった。『兄上と我が家のためには、エレオノーラ殿と兄上が結ばれて欲しい。しかし、フレデリクは大事な友。自分から見て兄上の方がまだ他に相性の良いご令嬢が見つかりそうだが、フレデリクはエレオノーラ殿以外にうまくいきそうな女性はいない気がするし。』カールもあれこれ悩み、父親に、
「兄上は、エレオノーラ殿のことを、どのように言ってましたか?」
と聞いてみた。父親は、
「美しく真面目で控えめな、理想の相手がやっと見つかったと浮かれていたよ。自分が娶って、美しく着飾らせて侍女を何人もつけたいと言ってたけど、そんなに質素なご令嬢なのか。装飾品の類は一つもつけていなかったとニコラウスが言っていたが。」
カールはそれを聞くと、
「私から見て、エレオノーラ殿は美しくて真面目ですが、控えめとは言いがたいと思います。むしろハキハキとご自分の意見を言われる方ですし、豪華なドレスや宝飾品はあまり喜ばれないご令嬢のように思います。」
「そうか。お前の方がニコラウスよりも人を見る目はありそうだな。ニコラウスは理想の相手にこだわるあまり、少しこじらせているかもしれない。自分の理想にぴったり一致する人物でなくても、自分と関わることで、相手も自分も変わっていくものなのに。」
「父上、深いお考えですね。」
「私と母さんだってそうだし、お前とフレデリク様もそうじゃないか?」
「確かにそうです。出会った頃の、フレデリクの国への忠誠心には、子供心に驚きましたが、今では私も同じくらい、この国のために尽くしたいと考えています。フレデリクも、私の意見を頼りにしてくれます。」
「カール、お前はいつもまわりの皆の事を考えているからな。フレデリク様にもさぞ頼りにされているだろう。」
「父上、ありがとうございます。父上が思っている私になれるよう精進してまいります。」
「カールは、気になる令嬢はいないのか?」
「はい、今のところは。探してはいるのですが、気になる女性はいません。私も、こじらせているようです。」
「早く見つかると良いな。まわりの幸せばかり考えていないで、自分の幸せも考えなさい。」
「はい。」
カールは『自分はどんな女性に心を動かされるのだろう。これから先、フレデリクの側に仕えるなら、結婚しない方が身軽で良いんだよな。』と人ごとのように考えた。
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