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伯爵家タウンハウスにて
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ツェリェ伯爵家のタウンハウスに滞在中の伯爵夫妻から、『至急来るように』と、学院の寮にいるエレオノーラとアルヌルフに、知らせが来た。二人はあわてて迎えの馬車に乗り込む。
馬車の中で、
「エル、何か良いことあった?」
明らかに浮ついているエレオノーラにアルヌルフが尋ねると、
「ええ。」
「それはフレデリクとのこと?」
「はい。」
「おめでとう、エル。幸せそうだね。」
アルヌルフが、エレオノーラの大好きな優しい微笑みをエレオノーラに向けているというのに、エレオノーラの頭の中は、フレデリクのデレデレ顔や真剣な眼差しでいっぱいだ。出会った時のヘンテコな服装のフレデリクもうっかり思い出したが、それは一瞬で消去した。
馬車がタウンハウスに到着し、また伯爵家家族四人が揃った。
「公爵様が、明日ここに挨拶に来られると連絡があったのよ。」
と母のマリアが言い、父ハインリヒが聞く。
「エル、公爵様とはどうなった?」
「ご報告が遅くなってすみません。先日は再度はっきりお断りするつもりでした。しかしながら、その後公爵様はとても素晴らしい方だとわかりまして、私は気が変わり、公爵様と結婚することに決めました。」
エレオノーラが嬉しそうに伝えると、父親は、
「トンデモ公爵と噂があるが、大丈夫なのか?」
と心配そうにしている。
「父さん、母さん、フレデリクとエレオノーラは、相性ぴったりみたいだよ。フレデリクの友だちのカールが、自分のこと完全に忘れて二人だけの世界に居るって、ぼやくくらいなんだ。育った環境は違うけど、そこは愛情でじゅうぶんカバーできるみたいだよ。」
とアルヌルフが保証する。
「エル、良かったわね、おめでとう。」
と母がエレオノーラを抱きしめる。
「エル、寂しいけれど仕方ない。おめでとう。」
と父も言う。母も心配そうに、
「今から公爵夫人としての立ち居振る舞い、言葉遣いを特訓するわ。公爵夫人の行儀見習いはいつからかしら?」
と聞くと、エレオノーラは、
「聞いていません。普通はあるの?」
と尋ね返した。
「あるに決まってるでしょう。筆頭公爵家よ。公爵様は、王位継承第三位よ。国王陛下の妹君がお住まいにになっている家に嫁ぐのよ。」
と母親に言われて、
「そんな!」
と、エレオノーラは息をのんだ。昨日フレデリクが言った、『うちは幸いにも公爵家の筆頭、上は王家だけ。王家は、国王陛下、王妃殿下、王太子殿下。王弟殿下、王弟妃殿下。王弟殿下にお子様はいらっしゃらないので、以上です。』を思い出した。『覚える名前が少なくて済むと、喜んでいた自分、なんてバカ!フレデリク様がどれだけこの国のトップに近いかっていうことなのだわ。無理だ。私にはやっぱり公爵夫人は無理だ。』と呆然とする。エレオノーラは、エレオノーラがふざけて抱きしめた時の、フレデリクの嬉しそうな顔を思い出す。『今から断ったら、悲しむわよね。承諾しなきゃ良かった。なんでOKしちゃったんだろう。いくらでも実家のために働いて良し、とか、ベルク先生の講義聞き放題って言われちゃ、OKしちゃうのも仕方ないわよね。私のこと妻にしたいけど、それが無理なら生涯の友にしたいとか、私からしか触っちゃだめって。そこまで言われたら私の心もそりゃ動くわよ。』エレオノーラが顔を上げると、父も母も兄も、心配そうに自分を見ていた。『アル兄様の顔、やっぱりフレデリク様より綺麗。私がずっと好きな顔。でも私がもしフレデリク様にキスでもしたら、フレデリク様は昨日の顔よりもっとトロトロな顔になるのかしら。それは絶対見てみたい。』エレオノーラは腹を決め、
「私、立派な公爵夫人目指して頑張ります。」
と宣言した。
エレオノーラが決心した後は、家族四人とタウンハウスにいるスタッフ全員で、明日公爵閣下を迎えるためのフォーメーションを考えた。ツェリェ伯爵家には、元々使用人が極端に少ない。
「明日だけ、他家から侍女や従者をお借りしますか?」
アルヌルフが、学院入学後に見た、他家の洗練された侍女や従者たちを思い浮かべて両親に尋ねると、父親が、
「そうだな。こんな事態になることも考えに入れるべきだった。すまない、親戚や知り合いに聞いてみよう。」
母親も、
「そうね、私の実家の侯爵家に、事情を話してみましょう。私が勘当されて17年、そろそろ許される頃かもしれないわ。それに公爵様とのご縁談ともなれば、両親も兄も飛びついてくるはず。」
と言ったが、エレオノーラは、
「待って、お父様、お母様。明日だけ見栄を張っても続かないわ。そもそも私がバカなんだから、全てお見せして、あちらがもし『いくらなんでもこの娘は公爵夫人に不適切』と判断されるなら、それは早い方が良いと思うの。私は、明日、今のこの家のまま、できる限りのおもてなしをしたいです。」
と言った。
「エル、やっぱりかっこいい。」
とアルヌルフが笑った。母のマリアは、
「エレオノーラ、公爵家での行儀見習いの前に、私がみっちり仕込みますからね。」
とエレオノーラに言うと、
「はい、お母様、よろしくお願いします。」
と、娘はやる気をみなぎらせて答えた。
馬車の中で、
「エル、何か良いことあった?」
明らかに浮ついているエレオノーラにアルヌルフが尋ねると、
「ええ。」
「それはフレデリクとのこと?」
「はい。」
「おめでとう、エル。幸せそうだね。」
アルヌルフが、エレオノーラの大好きな優しい微笑みをエレオノーラに向けているというのに、エレオノーラの頭の中は、フレデリクのデレデレ顔や真剣な眼差しでいっぱいだ。出会った時のヘンテコな服装のフレデリクもうっかり思い出したが、それは一瞬で消去した。
馬車がタウンハウスに到着し、また伯爵家家族四人が揃った。
「公爵様が、明日ここに挨拶に来られると連絡があったのよ。」
と母のマリアが言い、父ハインリヒが聞く。
「エル、公爵様とはどうなった?」
「ご報告が遅くなってすみません。先日は再度はっきりお断りするつもりでした。しかしながら、その後公爵様はとても素晴らしい方だとわかりまして、私は気が変わり、公爵様と結婚することに決めました。」
エレオノーラが嬉しそうに伝えると、父親は、
「トンデモ公爵と噂があるが、大丈夫なのか?」
と心配そうにしている。
「父さん、母さん、フレデリクとエレオノーラは、相性ぴったりみたいだよ。フレデリクの友だちのカールが、自分のこと完全に忘れて二人だけの世界に居るって、ぼやくくらいなんだ。育った環境は違うけど、そこは愛情でじゅうぶんカバーできるみたいだよ。」
とアルヌルフが保証する。
「エル、良かったわね、おめでとう。」
と母がエレオノーラを抱きしめる。
「エル、寂しいけれど仕方ない。おめでとう。」
と父も言う。母も心配そうに、
「今から公爵夫人としての立ち居振る舞い、言葉遣いを特訓するわ。公爵夫人の行儀見習いはいつからかしら?」
と聞くと、エレオノーラは、
「聞いていません。普通はあるの?」
と尋ね返した。
「あるに決まってるでしょう。筆頭公爵家よ。公爵様は、王位継承第三位よ。国王陛下の妹君がお住まいにになっている家に嫁ぐのよ。」
と母親に言われて、
「そんな!」
と、エレオノーラは息をのんだ。昨日フレデリクが言った、『うちは幸いにも公爵家の筆頭、上は王家だけ。王家は、国王陛下、王妃殿下、王太子殿下。王弟殿下、王弟妃殿下。王弟殿下にお子様はいらっしゃらないので、以上です。』を思い出した。『覚える名前が少なくて済むと、喜んでいた自分、なんてバカ!フレデリク様がどれだけこの国のトップに近いかっていうことなのだわ。無理だ。私にはやっぱり公爵夫人は無理だ。』と呆然とする。エレオノーラは、エレオノーラがふざけて抱きしめた時の、フレデリクの嬉しそうな顔を思い出す。『今から断ったら、悲しむわよね。承諾しなきゃ良かった。なんでOKしちゃったんだろう。いくらでも実家のために働いて良し、とか、ベルク先生の講義聞き放題って言われちゃ、OKしちゃうのも仕方ないわよね。私のこと妻にしたいけど、それが無理なら生涯の友にしたいとか、私からしか触っちゃだめって。そこまで言われたら私の心もそりゃ動くわよ。』エレオノーラが顔を上げると、父も母も兄も、心配そうに自分を見ていた。『アル兄様の顔、やっぱりフレデリク様より綺麗。私がずっと好きな顔。でも私がもしフレデリク様にキスでもしたら、フレデリク様は昨日の顔よりもっとトロトロな顔になるのかしら。それは絶対見てみたい。』エレオノーラは腹を決め、
「私、立派な公爵夫人目指して頑張ります。」
と宣言した。
エレオノーラが決心した後は、家族四人とタウンハウスにいるスタッフ全員で、明日公爵閣下を迎えるためのフォーメーションを考えた。ツェリェ伯爵家には、元々使用人が極端に少ない。
「明日だけ、他家から侍女や従者をお借りしますか?」
アルヌルフが、学院入学後に見た、他家の洗練された侍女や従者たちを思い浮かべて両親に尋ねると、父親が、
「そうだな。こんな事態になることも考えに入れるべきだった。すまない、親戚や知り合いに聞いてみよう。」
母親も、
「そうね、私の実家の侯爵家に、事情を話してみましょう。私が勘当されて17年、そろそろ許される頃かもしれないわ。それに公爵様とのご縁談ともなれば、両親も兄も飛びついてくるはず。」
と言ったが、エレオノーラは、
「待って、お父様、お母様。明日だけ見栄を張っても続かないわ。そもそも私がバカなんだから、全てお見せして、あちらがもし『いくらなんでもこの娘は公爵夫人に不適切』と判断されるなら、それは早い方が良いと思うの。私は、明日、今のこの家のまま、できる限りのおもてなしをしたいです。」
と言った。
「エル、やっぱりかっこいい。」
とアルヌルフが笑った。母のマリアは、
「エレオノーラ、公爵家での行儀見習いの前に、私がみっちり仕込みますからね。」
とエレオノーラに言うと、
「はい、お母様、よろしくお願いします。」
と、娘はやる気をみなぎらせて答えた。
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