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第二章 極寒の王国~ハイランド王国編~
第十九話 ハイランドの采配
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——宣戦布告後。
「『テンジョウ』、『コクジョウ』、ご苦労。陰に戻っていいぞ。」
「御意。」
2人はオべリスの足元にすっと身を隠した。
「さてと、今後の方針だが、ルーデン、当初の予定通りハイランドを攻める。ハイランドがどんな場所か説明できるかい?」
「はい、オべリス様。ハイランド王国は山岳地帯を開拓しており、厳しい冬の寒さに包まれており万年雪が降る土地です。荒涼とした岩山と深い谷が連なっており、臘雪峡谷と呼ばれております。その岩壁に村や街が点在し、石造りのハイランド城がございます。」
「なるほど。冬の土地か……。ヤマ、どうやって人間を裁く?」
「はっ!それには考えがございます。私の力で善人と悪人の判別ができる力がございます。まずはその力を実行してから行動に移した方がよいかと。」
「うむ……。そうするとしようか。その後の捕虜の解放や保護は、ヤゴリ率いる雷狸族、ナコビ率いる狐火族、メザカモ率いる雹狼族に任せる。いいかな?」
「御意。」
——ハイランド 上空。
「それではいいですかな?」
「うん、任せるよ。」
さて。ヤマの善人と悪人の判別ができる力とやら、見せてもらうとしようか。
「黒烏、獬豸、準備はいいかい?」
「いつでもいいですよ。」
「ヤマさん、久々で気合入ってません?」
「そりゃ君たちもでしょ!」
黒烏と獬豸もやる気十分といったところだ。そして、ヤマは唱えた。
『曼荼羅の陣 千手千眼自在!!』
獬豸が天空の端を持ち、黒烏が紙をめくるように天空をめくると、そこにはヤマ御殿の床の曼荼羅陣が現れた。そして、その曼荼羅陣から無数の輝く手が地上にめがけて差し伸べている。
曼荼羅陣から差し伸べられた無数の手。そのひとつひとつが、薄く輝く金と黒の織り糸でできていた。
その掌はゆっくりと回転しながら、臘雪峡谷に点在する村々へと降下し、まるで夜空に広がる蜘蛛の糸のように地を撫でていく。
ヤマの額に三つ目が開き、そこから漏れる光が曼荼羅の陣へと注がれた。
すると、ヤマ御殿自体が天空へと現れた。
四方の柱に設置されている檀荼幢がコソコソブツブツとヤマに伝えている。
浄玻璃鏡と静澄盤の上に乗せられた業秤も現れ、ハイランド一帯の村や街や城など逃げ場などないほどその無数の手は地を這う。
「おまえの命の重さは、善か、悪か。」
ヤマが一人一人に問いかけるようにして、短く詠唱を重ねると、魂は静かに左右に揺れ、やがて均衡を崩す。
「……南の村『シルハル』。子を庇い、村人を守った母、アレッタ。善人、保護対象。」
「東の岩壁集落『ゾルマ』。人を餓死させた領主とその従者。悪人、処刑対象。」
「峡谷の吊り橋付近、逃亡中の兵士。過去に略奪行為あり。業、重し──ただし悔いの兆しあり。審問保留。」
次々と、地上の者たちの運命が曼荼羅の手によって分けられていく。
「これが……ヤマの采配か……」
どうやら、悪人、処刑対象の者と審問保留の者がヤマ御殿へとあの手によって掴み取られている。
数分ののち、無数の手やヤマ御殿は天空の陣へと帰り、元の空へと戻った。
「これで裁定は終わりました。オベリス殿。」
「今までこんな仕事をしてたのヤマ?」
「はい!何か不手際がありましたでしょうか!?」
なんとも末恐ろしい奴だな。
「いや、よくやった。あとの始末は頼むぞ。」
「承知。」
——地下8階層 環中宮。
「ヤマによって裁定は終わった。ヤゴリ率いる雷狸族、ナコビ率いる狐火族、メザカモ率いる雹狼族はこれより捕虜の解放や保護を開始。ヤマの判定を受けて救済された人間たちも保護対象だ。それでも牙を向いてくる奴は容赦なく殺せ。ルーデンは一緒に来い、ヤマ御殿を見に行くぞ。」
「御意。」
「『テンジョウ』、『コクジョウ』、ご苦労。陰に戻っていいぞ。」
「御意。」
2人はオべリスの足元にすっと身を隠した。
「さてと、今後の方針だが、ルーデン、当初の予定通りハイランドを攻める。ハイランドがどんな場所か説明できるかい?」
「はい、オべリス様。ハイランド王国は山岳地帯を開拓しており、厳しい冬の寒さに包まれており万年雪が降る土地です。荒涼とした岩山と深い谷が連なっており、臘雪峡谷と呼ばれております。その岩壁に村や街が点在し、石造りのハイランド城がございます。」
「なるほど。冬の土地か……。ヤマ、どうやって人間を裁く?」
「はっ!それには考えがございます。私の力で善人と悪人の判別ができる力がございます。まずはその力を実行してから行動に移した方がよいかと。」
「うむ……。そうするとしようか。その後の捕虜の解放や保護は、ヤゴリ率いる雷狸族、ナコビ率いる狐火族、メザカモ率いる雹狼族に任せる。いいかな?」
「御意。」
——ハイランド 上空。
「それではいいですかな?」
「うん、任せるよ。」
さて。ヤマの善人と悪人の判別ができる力とやら、見せてもらうとしようか。
「黒烏、獬豸、準備はいいかい?」
「いつでもいいですよ。」
「ヤマさん、久々で気合入ってません?」
「そりゃ君たちもでしょ!」
黒烏と獬豸もやる気十分といったところだ。そして、ヤマは唱えた。
『曼荼羅の陣 千手千眼自在!!』
獬豸が天空の端を持ち、黒烏が紙をめくるように天空をめくると、そこにはヤマ御殿の床の曼荼羅陣が現れた。そして、その曼荼羅陣から無数の輝く手が地上にめがけて差し伸べている。
曼荼羅陣から差し伸べられた無数の手。そのひとつひとつが、薄く輝く金と黒の織り糸でできていた。
その掌はゆっくりと回転しながら、臘雪峡谷に点在する村々へと降下し、まるで夜空に広がる蜘蛛の糸のように地を撫でていく。
ヤマの額に三つ目が開き、そこから漏れる光が曼荼羅の陣へと注がれた。
すると、ヤマ御殿自体が天空へと現れた。
四方の柱に設置されている檀荼幢がコソコソブツブツとヤマに伝えている。
浄玻璃鏡と静澄盤の上に乗せられた業秤も現れ、ハイランド一帯の村や街や城など逃げ場などないほどその無数の手は地を這う。
「おまえの命の重さは、善か、悪か。」
ヤマが一人一人に問いかけるようにして、短く詠唱を重ねると、魂は静かに左右に揺れ、やがて均衡を崩す。
「……南の村『シルハル』。子を庇い、村人を守った母、アレッタ。善人、保護対象。」
「東の岩壁集落『ゾルマ』。人を餓死させた領主とその従者。悪人、処刑対象。」
「峡谷の吊り橋付近、逃亡中の兵士。過去に略奪行為あり。業、重し──ただし悔いの兆しあり。審問保留。」
次々と、地上の者たちの運命が曼荼羅の手によって分けられていく。
「これが……ヤマの采配か……」
どうやら、悪人、処刑対象の者と審問保留の者がヤマ御殿へとあの手によって掴み取られている。
数分ののち、無数の手やヤマ御殿は天空の陣へと帰り、元の空へと戻った。
「これで裁定は終わりました。オベリス殿。」
「今までこんな仕事をしてたのヤマ?」
「はい!何か不手際がありましたでしょうか!?」
なんとも末恐ろしい奴だな。
「いや、よくやった。あとの始末は頼むぞ。」
「承知。」
——地下8階層 環中宮。
「ヤマによって裁定は終わった。ヤゴリ率いる雷狸族、ナコビ率いる狐火族、メザカモ率いる雹狼族はこれより捕虜の解放や保護を開始。ヤマの判定を受けて救済された人間たちも保護対象だ。それでも牙を向いてくる奴は容赦なく殺せ。ルーデンは一緒に来い、ヤマ御殿を見に行くぞ。」
「御意。」
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