20 / 37
第二章 極寒の王国~ハイランド王国編~
第二十話 裁かれし極寒の地にて
しおりを挟む
魔王オべリスの命により、ヤゴリ、ナコビ、メザカモの3人のあとに続いて3種族がハイランド王国へと向かっていた。
「なあ、あれ全部、ヤマ様がやったのか? あの光、あの音、糸のような手が幾つも……。
わい、夢でも見てるのかと思ったよ。」
ナコビは扇子をそっと閉じ、気品高い微笑をわずかに滲ませる。
だがその瞳は揺るぎなく、どこか凛とした強さを宿していた。
「うらも夢ならもっと雅なものを見るわ。あれは人間の終わりだった。
けれども、裁きのあとの慈しみがあった。まるで、火に包まれてなお、消えぬ灯のよう……。」
彼女の言葉に応えるように、メザカモが静かに口を開いた。
彼の声は低く、誠実さと真っ直ぐな情熱を帯びている。
「……峻厳なる選別。あの場にいたら、私も動けなかっただろうな。私は、あの光景を忘れぬ。
あの静かなる審判の中でも、選ばれず、ここに留まることを許された者たちがいる。
我々がここにいる意味は、守護者として彼らを救い、支え、再び未来へと繋ぐことにある。
たとえそれが、かつて我々魔族を死に追いやった人間だとしてもだ。」
3人の間に一瞬、決意の空気が満ちた。
薄明かりがまだ空を覆うころ、ヤゴリ、ナコビ、メザカモの3人率いる3種族は、静寂に包まれた集落の外れに立っていた。ハイランド王国は山岳地帯で万年厳しい冬の寒さに包まれている。その下には深い絶望が横たわっていた。
そこには、残された生存者たちの小さな集落があった。そこは、まるで生活の跡をそのまま残した街並みが広がっていた。だが、人の気配は希薄だった。
窓も戸口も開け放たれたまま、食器や衣がそのまま残る家々。消えた人々の営みが、あまりにも生々しく、痛々しかった。
折れた柱の影に身を寄せ合う老人、震える手で子供を抱きしめる母親、そして凍えながらも必死に生にしがみつく者たち。薄暗い空の下、彼らの命の灯火はかろうじて消えそうになりながらも、まだ確かに燃えていた。
メザカモが命令を出す。
「魔王オべリス様の命より、生き残っているものを保護せよ。牙を剥く者は殺せ、とのことだ!
そして我々の仲間も探すのだ!各地に身を潜めているはずだ!城も探せ!」
3種族が散り散りになっていった。
ヤゴリが目を細め、家屋の向こうを見つめた。
「まさか、あんな光景を目の当たりにするなんて……。なあ、ナコビ、メザカモ……あれをどう思う?」
ナコビは気品ある佇まいのまま、少し唇を噛み締めた。
「光景は凄惨だけれど、それでも、生命が繋がっていることがわかるわ。
見捨てられたわけじゃない。そう、うらはそう信じたい。」
メザカモはまっすぐに二人を見据え、静かに頷いた。
「守るべき生命がある。それを忘れてはならぬ。
たとえどんなに世界が壊れても、我々の責務はここにある。」
村の中心には、残された者たちが床に恐怖していた。
木陰には小さな焚き火がいくつも灯り、生命の灯火が消えぬよう必死の祈りが込められていた。
その中に、一人の少年がいた。細く痩せた体に擦り切れた衣服を纏い、顔には深い悲しみと戸惑いが浮かんでいる。彼は涙を堪えきれず、震える声で呟いた。
「神様は……僕たちの中から、誰かを選んだ。ここに残されたのは、その証なんだ……。
でも、どうして僕だけ……なんで僕なんだよ……。」
少年の言葉は、村の廃墟に溶け込み、空気を切り裂くようだった。
彼の目には涙が溢れ、か細い肩が何度も震えていた。
ナコビは静かに彼の元へ歩み寄り、優雅に扇を広げて温かい風を送った。
彼女の声は穏やかだが、芯の強さを帯びていた。
「泣いてもいいのよ。あなたが生きていること、それ自体が奇跡なの。
神が選んだ生命は重いけれど、だからこそ大切にして。」
メザカモは少年の肩に手を置き、静かに語りかけた。
「悲しみは深い。だが、我々はここにいる。君は決して一人ではない。皆で支え合い、前へ進むのだ。」
ヤゴリは少し距離を置き、ぶつぶつとつぶやきながらも、その視線は優しく少年に注がれていた。
「どんなに傷ついても、わいたちは生きる。生きることに意味がある。それが、今のお前の居場所だ。」
少年の目が少しずつ晴れ、涙が乾き始める。そこに小さな希望の光が差し込むように感じられた。
しかし、そんな静かな希望の裏には、まだ暗い影が潜んでいた。
遥か遠く、森の奥深くで、逃げ延びた王国の兵士たちが密かに集まっていた。
冷たい風が木々を揺らす中、兵士たちは焚き火の前に腰を下ろした。
赤い炎が、その険しい表情を静かに照らし出す。
「くそっ……奴らのやり方は到底許せねえ。俺たちは真っ当に生きてる。
敗北で終わるわけにはいかねえんだ。」
リーダー格の兵士は錆びた剣を握り締め、その目には激しい怒りと執念が宿っていた。
「我らは王国の誇りを背負っている。必ずや反撃を果たす。奴らを叩きのめしてやる。」
その言葉に応えるように、仲間たちが静かに頷き、刃を研ぎながら静かな戦意を燃やしていた。
凍てつく森の闇が、その決意をより深く刻み込むようだった。
その夜、二つの世界が揺れ動く。
一つは、傷つきながらもわずかに希望を見出そうとする光。
もう一つは、復讐に燃え、さらなる破壊を求める暗い影。
どちらの道も、人間の運命を左右する。
「なあ、あれ全部、ヤマ様がやったのか? あの光、あの音、糸のような手が幾つも……。
わい、夢でも見てるのかと思ったよ。」
ナコビは扇子をそっと閉じ、気品高い微笑をわずかに滲ませる。
だがその瞳は揺るぎなく、どこか凛とした強さを宿していた。
「うらも夢ならもっと雅なものを見るわ。あれは人間の終わりだった。
けれども、裁きのあとの慈しみがあった。まるで、火に包まれてなお、消えぬ灯のよう……。」
彼女の言葉に応えるように、メザカモが静かに口を開いた。
彼の声は低く、誠実さと真っ直ぐな情熱を帯びている。
「……峻厳なる選別。あの場にいたら、私も動けなかっただろうな。私は、あの光景を忘れぬ。
あの静かなる審判の中でも、選ばれず、ここに留まることを許された者たちがいる。
我々がここにいる意味は、守護者として彼らを救い、支え、再び未来へと繋ぐことにある。
たとえそれが、かつて我々魔族を死に追いやった人間だとしてもだ。」
3人の間に一瞬、決意の空気が満ちた。
薄明かりがまだ空を覆うころ、ヤゴリ、ナコビ、メザカモの3人率いる3種族は、静寂に包まれた集落の外れに立っていた。ハイランド王国は山岳地帯で万年厳しい冬の寒さに包まれている。その下には深い絶望が横たわっていた。
そこには、残された生存者たちの小さな集落があった。そこは、まるで生活の跡をそのまま残した街並みが広がっていた。だが、人の気配は希薄だった。
窓も戸口も開け放たれたまま、食器や衣がそのまま残る家々。消えた人々の営みが、あまりにも生々しく、痛々しかった。
折れた柱の影に身を寄せ合う老人、震える手で子供を抱きしめる母親、そして凍えながらも必死に生にしがみつく者たち。薄暗い空の下、彼らの命の灯火はかろうじて消えそうになりながらも、まだ確かに燃えていた。
メザカモが命令を出す。
「魔王オべリス様の命より、生き残っているものを保護せよ。牙を剥く者は殺せ、とのことだ!
そして我々の仲間も探すのだ!各地に身を潜めているはずだ!城も探せ!」
3種族が散り散りになっていった。
ヤゴリが目を細め、家屋の向こうを見つめた。
「まさか、あんな光景を目の当たりにするなんて……。なあ、ナコビ、メザカモ……あれをどう思う?」
ナコビは気品ある佇まいのまま、少し唇を噛み締めた。
「光景は凄惨だけれど、それでも、生命が繋がっていることがわかるわ。
見捨てられたわけじゃない。そう、うらはそう信じたい。」
メザカモはまっすぐに二人を見据え、静かに頷いた。
「守るべき生命がある。それを忘れてはならぬ。
たとえどんなに世界が壊れても、我々の責務はここにある。」
村の中心には、残された者たちが床に恐怖していた。
木陰には小さな焚き火がいくつも灯り、生命の灯火が消えぬよう必死の祈りが込められていた。
その中に、一人の少年がいた。細く痩せた体に擦り切れた衣服を纏い、顔には深い悲しみと戸惑いが浮かんでいる。彼は涙を堪えきれず、震える声で呟いた。
「神様は……僕たちの中から、誰かを選んだ。ここに残されたのは、その証なんだ……。
でも、どうして僕だけ……なんで僕なんだよ……。」
少年の言葉は、村の廃墟に溶け込み、空気を切り裂くようだった。
彼の目には涙が溢れ、か細い肩が何度も震えていた。
ナコビは静かに彼の元へ歩み寄り、優雅に扇を広げて温かい風を送った。
彼女の声は穏やかだが、芯の強さを帯びていた。
「泣いてもいいのよ。あなたが生きていること、それ自体が奇跡なの。
神が選んだ生命は重いけれど、だからこそ大切にして。」
メザカモは少年の肩に手を置き、静かに語りかけた。
「悲しみは深い。だが、我々はここにいる。君は決して一人ではない。皆で支え合い、前へ進むのだ。」
ヤゴリは少し距離を置き、ぶつぶつとつぶやきながらも、その視線は優しく少年に注がれていた。
「どんなに傷ついても、わいたちは生きる。生きることに意味がある。それが、今のお前の居場所だ。」
少年の目が少しずつ晴れ、涙が乾き始める。そこに小さな希望の光が差し込むように感じられた。
しかし、そんな静かな希望の裏には、まだ暗い影が潜んでいた。
遥か遠く、森の奥深くで、逃げ延びた王国の兵士たちが密かに集まっていた。
冷たい風が木々を揺らす中、兵士たちは焚き火の前に腰を下ろした。
赤い炎が、その険しい表情を静かに照らし出す。
「くそっ……奴らのやり方は到底許せねえ。俺たちは真っ当に生きてる。
敗北で終わるわけにはいかねえんだ。」
リーダー格の兵士は錆びた剣を握り締め、その目には激しい怒りと執念が宿っていた。
「我らは王国の誇りを背負っている。必ずや反撃を果たす。奴らを叩きのめしてやる。」
その言葉に応えるように、仲間たちが静かに頷き、刃を研ぎながら静かな戦意を燃やしていた。
凍てつく森の闇が、その決意をより深く刻み込むようだった。
その夜、二つの世界が揺れ動く。
一つは、傷つきながらもわずかに希望を見出そうとする光。
もう一つは、復讐に燃え、さらなる破壊を求める暗い影。
どちらの道も、人間の運命を左右する。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる