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1章
再転生、回避
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目が覚めると、そこはいつもの自分のベッドだった。
「あ……生きてる、良かった」
どうやら3度目の人生は回避出来たようである。
どのくらい寝ていたのだろうかと思いつつ、首に触れるとそこには湿布のようなものが貼られていた。
そりゃあんだけ締められたら跡にもなるはずだ。
前世でもよく腰を痛めて貼ってたっけ。
気を失う前にあったことを思い出してみる。
ショック療法じみた方法で半ば強引に引き出された私の前世の記憶。
それは『案外普通』その一言に尽きた。
よく食べ、よく遊び、よく眠り、そこそこ充実していた私の18年間は心臓発作で幕を下ろした。
最期は大目に見るとして、その人生に悔いはない。
そして驚け、喜べ前世の自分。
今生の私は前世とはかけ離れた世界でなんとお貴族様だ。階級制度などない日本の前世の私からすれば新鮮だ。
レイニア・ラグス・ラスフィア
前世に比べると長くなったが、これが今の私の名前だ。
以前と変わらぬ二の腕くらいまである黒髪に、お母様譲りの青い瞳。
容姿に関しては前世より格段に良いものになっている。欲を言えばお父様のような金色の髪だったら良かったのに、と思わなくもないがそこまで言っては欲張りだ。
ここまで美しく産んでくれたお母様に大感謝である。
こんな私はラスフィア公爵家の一人娘として生まれ、一人前の淑女にと、少し厳しく、愛を多めに育てられた。少なくとも前世で友人がハマっていた転生もの小説の悪役令嬢なんかにはならないくらい立派なレディをしてきたつもりだ。
前世と比べたら少し窮屈な気もするが、今だからこその世界も十分好きだ。
これからも前世と変わらずのんびり暮らしていきたいと切に願う。
そして前世を思い出してしまった今、このふかふかのベッドも、レース付きのネグリジェもなんだか急に自分には似合わないような気がしてならない。
なんてったって2度目の人生はまだ12年目、前世にはまだ少し及ばないのだから無理もない。
昨日までなんとも思わなかったのになあ、なんて思いながら上半身を起こし、近くに置いてある使用人を呼ぶためのベルを鳴らす。
すると、扉の外が騒がしくなり、少しすると扉が壊れるくらいの勢いで父と母が駆け込んできた。
「大丈夫かい、ニア!」
「お具合はどうなの、レイニアちゃん!」
そう言ってお父様は私の状態を確認すると少し落ち着きを取り戻し、母の方にも大丈夫という意味を込めてニコリと微笑めば、ホッと胸を撫で下ろしている。
「ご心配をおかけしました、お父様、お母様」
そのまま父に昨日の事を詳しく聞けば、私は分家の雇った人間に襲われたのだという。
ラスフィア家のある分家が私を殺すことで自身の家から本家に養子を出し、自分の子に本家を継がせようというなんともお粗末な企みだったという。
その分家は今審議にかけられているというものの、直に取り潰されるとのことだ。
「もう一人ぼっちになっちゃだめよ、分かった?」
涙目のお母様がそう言うので、私は素直に首を縦に振る。
「はい、もう一人にはなりません」
いい子ね、そう言ってお母様に抱きしめられると、今までの不安な気持ちがどっと押し寄せ、涙となってぼろぼろと目からこぼれ落ちてくる。
その後私は一週間安静を言い渡され、そのまま一週間大人しくすることを余儀なくされた。
「あ……生きてる、良かった」
どうやら3度目の人生は回避出来たようである。
どのくらい寝ていたのだろうかと思いつつ、首に触れるとそこには湿布のようなものが貼られていた。
そりゃあんだけ締められたら跡にもなるはずだ。
前世でもよく腰を痛めて貼ってたっけ。
気を失う前にあったことを思い出してみる。
ショック療法じみた方法で半ば強引に引き出された私の前世の記憶。
それは『案外普通』その一言に尽きた。
よく食べ、よく遊び、よく眠り、そこそこ充実していた私の18年間は心臓発作で幕を下ろした。
最期は大目に見るとして、その人生に悔いはない。
そして驚け、喜べ前世の自分。
今生の私は前世とはかけ離れた世界でなんとお貴族様だ。階級制度などない日本の前世の私からすれば新鮮だ。
レイニア・ラグス・ラスフィア
前世に比べると長くなったが、これが今の私の名前だ。
以前と変わらぬ二の腕くらいまである黒髪に、お母様譲りの青い瞳。
容姿に関しては前世より格段に良いものになっている。欲を言えばお父様のような金色の髪だったら良かったのに、と思わなくもないがそこまで言っては欲張りだ。
ここまで美しく産んでくれたお母様に大感謝である。
こんな私はラスフィア公爵家の一人娘として生まれ、一人前の淑女にと、少し厳しく、愛を多めに育てられた。少なくとも前世で友人がハマっていた転生もの小説の悪役令嬢なんかにはならないくらい立派なレディをしてきたつもりだ。
前世と比べたら少し窮屈な気もするが、今だからこその世界も十分好きだ。
これからも前世と変わらずのんびり暮らしていきたいと切に願う。
そして前世を思い出してしまった今、このふかふかのベッドも、レース付きのネグリジェもなんだか急に自分には似合わないような気がしてならない。
なんてったって2度目の人生はまだ12年目、前世にはまだ少し及ばないのだから無理もない。
昨日までなんとも思わなかったのになあ、なんて思いながら上半身を起こし、近くに置いてある使用人を呼ぶためのベルを鳴らす。
すると、扉の外が騒がしくなり、少しすると扉が壊れるくらいの勢いで父と母が駆け込んできた。
「大丈夫かい、ニア!」
「お具合はどうなの、レイニアちゃん!」
そう言ってお父様は私の状態を確認すると少し落ち着きを取り戻し、母の方にも大丈夫という意味を込めてニコリと微笑めば、ホッと胸を撫で下ろしている。
「ご心配をおかけしました、お父様、お母様」
そのまま父に昨日の事を詳しく聞けば、私は分家の雇った人間に襲われたのだという。
ラスフィア家のある分家が私を殺すことで自身の家から本家に養子を出し、自分の子に本家を継がせようというなんともお粗末な企みだったという。
その分家は今審議にかけられているというものの、直に取り潰されるとのことだ。
「もう一人ぼっちになっちゃだめよ、分かった?」
涙目のお母様がそう言うので、私は素直に首を縦に振る。
「はい、もう一人にはなりません」
いい子ね、そう言ってお母様に抱きしめられると、今までの不安な気持ちがどっと押し寄せ、涙となってぼろぼろと目からこぼれ落ちてくる。
その後私は一週間安静を言い渡され、そのまま一週間大人しくすることを余儀なくされた。
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