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1章
第3王子、イナ
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一週間安静を言い渡され、3日ほど過ぎた頃に来客があった。
「お嬢様、先日の件で第3王子殿下がお見えになっていますが、お通ししてもよろしいでしょうか?」
「ええ、起き上がるくらいなら問題ないから、このまま通してもらって構わないわ」
侍従のマリーは私の返事を聞くと、一礼してから客人を迎えに部屋をあとにする。
少しして、コンコンとノックの音が部屋に響き、私がどうぞ、と言えばその人物は私の前に姿を現した。
「イナ・リーチェ・アンブロウシアだ。養生している所、突然の訪問お詫び申し上げる、レイニア嬢」
そう言って深々と頭を下げる相手、第3王子ことイナは先日のお茶会の主役であり、私の危機に駆けつけてくれた恩人だ。
「いえ、私もこのような格好で申し訳ありません、殿下」
「先日の件だが、こちらの警備体制の不徳の致すところだ。
その件について本日は謝罪に伺った次第だ」
悪いのはラスフィア家の分家であり、3度目の人生の開始を阻止してくれたイナがわざわざ謝罪来るというのはおかしな話だ。
あまり関わったことはないが、余程責任感の強い人なのだろうか。
「いえ、イナ殿下のせいではありません、頭をあげてください」
「しかし」
「いえ、本来ならば身内の醜態を晒し、殿下の茶会に水を差してしまったこちらが謝罪に伺わなければならないところです。
どうかお気になさらないでください」
重ねて謝罪の言葉を口にすると、イナは少し拍子抜けしたかの様な表情で、言葉を詰まらせている。
「私、なにか変なことを申してしまいましたか?」
いや、そうではない、とイナは続ける。
「レイニア嬢はあまり公爵令嬢らしくないのだな」
イナの言葉に今までの言葉遣いやマナーを思い出すも、家名を汚すようなことは決してしていない。
いくら王族相手にベッドの上で寝巻き姿で出迎えようとこちらは怪我人なのだ、無礼には当たらないだろう。
それとも他になにかやらかしたのだろうかと考えを巡らせていると、イナは少し焦ったように続きを話す。
「ああ、もちろん良い意味でだ。少し言葉が足りなかった。
此度の件どれほど責められようと私には返す言葉もない、と覚悟してきたのだが、レイニア嬢は私のことを責めるどころか詫びるので少し拍子抜けしてしまったんだ」
確かにイナの言葉にも一理あって、普通だったらここで責任を取れと婚約でも持ちかけてくる令嬢とて少なくはないはずだ。
第3王子という立場柄、日頃苦労が耐えないであろう。
まあ私に至ってはのんびり暮らすのが2度目の人生の目標なので、王になるかもしれない人など御免だが。
「そうでしたか、本日はわざわざありがとうございます、殿下。
私も久々に外の方とお話出来て嬉しかったです」
「ああ、レイニア嬢とは上手くやっていけそうで安心した。
これからもよろしく頼む」
「ええと、はい、そうですね?」
これから自分と殿下が関わることなどそう多くはないであろうに、不思議な別れの挨拶に首を傾げつつ、イナが退出するのを手を振って見送った。
「お嬢様、先日の件で第3王子殿下がお見えになっていますが、お通ししてもよろしいでしょうか?」
「ええ、起き上がるくらいなら問題ないから、このまま通してもらって構わないわ」
侍従のマリーは私の返事を聞くと、一礼してから客人を迎えに部屋をあとにする。
少しして、コンコンとノックの音が部屋に響き、私がどうぞ、と言えばその人物は私の前に姿を現した。
「イナ・リーチェ・アンブロウシアだ。養生している所、突然の訪問お詫び申し上げる、レイニア嬢」
そう言って深々と頭を下げる相手、第3王子ことイナは先日のお茶会の主役であり、私の危機に駆けつけてくれた恩人だ。
「いえ、私もこのような格好で申し訳ありません、殿下」
「先日の件だが、こちらの警備体制の不徳の致すところだ。
その件について本日は謝罪に伺った次第だ」
悪いのはラスフィア家の分家であり、3度目の人生の開始を阻止してくれたイナがわざわざ謝罪来るというのはおかしな話だ。
あまり関わったことはないが、余程責任感の強い人なのだろうか。
「いえ、イナ殿下のせいではありません、頭をあげてください」
「しかし」
「いえ、本来ならば身内の醜態を晒し、殿下の茶会に水を差してしまったこちらが謝罪に伺わなければならないところです。
どうかお気になさらないでください」
重ねて謝罪の言葉を口にすると、イナは少し拍子抜けしたかの様な表情で、言葉を詰まらせている。
「私、なにか変なことを申してしまいましたか?」
いや、そうではない、とイナは続ける。
「レイニア嬢はあまり公爵令嬢らしくないのだな」
イナの言葉に今までの言葉遣いやマナーを思い出すも、家名を汚すようなことは決してしていない。
いくら王族相手にベッドの上で寝巻き姿で出迎えようとこちらは怪我人なのだ、無礼には当たらないだろう。
それとも他になにかやらかしたのだろうかと考えを巡らせていると、イナは少し焦ったように続きを話す。
「ああ、もちろん良い意味でだ。少し言葉が足りなかった。
此度の件どれほど責められようと私には返す言葉もない、と覚悟してきたのだが、レイニア嬢は私のことを責めるどころか詫びるので少し拍子抜けしてしまったんだ」
確かにイナの言葉にも一理あって、普通だったらここで責任を取れと婚約でも持ちかけてくる令嬢とて少なくはないはずだ。
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「そうでしたか、本日はわざわざありがとうございます、殿下。
私も久々に外の方とお話出来て嬉しかったです」
「ああ、レイニア嬢とは上手くやっていけそうで安心した。
これからもよろしく頼む」
「ええと、はい、そうですね?」
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