どんな乙女ゲームに転生したか分からないので探り探り頑張ります!

まりこ

文字の大きさ
3 / 5
1章

第3王子、イナ

しおりを挟む
一週間安静を言い渡され、3日ほど過ぎた頃に来客があった。

「お嬢様、先日の件で第3王子殿下がお見えになっていますが、お通ししてもよろしいでしょうか?」
「ええ、起き上がるくらいなら問題ないから、このまま通してもらって構わないわ」

侍従のマリーは私の返事を聞くと、一礼してから客人を迎えに部屋をあとにする。
少しして、コンコンとノックの音が部屋に響き、私がどうぞ、と言えばその人物は私の前に姿を現した。

「イナ・リーチェ・アンブロウシアだ。養生している所、突然の訪問お詫び申し上げる、レイニア嬢」

そう言って深々と頭を下げる相手、第3王子ことイナは先日のお茶会の主役であり、私の危機に駆けつけてくれた恩人だ。

「いえ、私もこのような格好で申し訳ありません、殿下」
「先日の件だが、こちらの警備体制の不徳の致すところだ。
その件について本日は謝罪に伺った次第だ」

悪いのはラスフィア家の分家であり、3度目の人生の開始を阻止してくれたイナがわざわざ謝罪来るというのはおかしな話だ。
あまり関わったことはないが、余程責任感の強い人なのだろうか。

「いえ、イナ殿下のせいではありません、頭をあげてください」
「しかし」
「いえ、本来ならば身内の醜態を晒し、殿下の茶会に水を差してしまったこちらが謝罪に伺わなければならないところです。
どうかお気になさらないでください」

重ねて謝罪の言葉を口にすると、イナは少し拍子抜けしたかの様な表情で、言葉を詰まらせている。

「私、なにか変なことを申してしまいましたか?」

いや、そうではない、とイナは続ける。

「レイニア嬢はあまり公爵令嬢らしくないのだな」

イナの言葉に今までの言葉遣いやマナーを思い出すも、家名を汚すようなことは決してしていない。
いくら王族相手にベッドの上で寝巻き姿で出迎えようとこちらは怪我人なのだ、無礼には当たらないだろう。
それとも他になにかやらかしたのだろうかと考えを巡らせていると、イナは少し焦ったように続きを話す。

「ああ、もちろん良い意味でだ。少し言葉が足りなかった。
此度の件どれほど責められようと私には返す言葉もない、と覚悟してきたのだが、レイニア嬢は私のことを責めるどころか詫びるので少し拍子抜けしてしまったんだ」

確かにイナの言葉にも一理あって、普通だったらここで責任を取れと婚約でも持ちかけてくる令嬢とて少なくはないはずだ。
第3王子という立場柄、日頃苦労が耐えないであろう。
まあ私に至ってはのんびり暮らすのが2度目の人生の目標なので、王になるかもしれない人など御免だが。

「そうでしたか、本日はわざわざありがとうございます、殿下。
私も久々に外の方とお話出来て嬉しかったです」
「ああ、レイニア嬢とは上手くやっていけそうで安心した。
これからもよろしく頼む」
「ええと、はい、そうですね?」

これから自分と殿下が関わることなどそう多くはないであろうに、不思議な別れの挨拶に首を傾げつつ、イナが退出するのを手を振って見送った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!

たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。 なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!! 幸せすぎる~~~♡ たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!! ※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。 ※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。 短めのお話なので毎日更新 ※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。 ※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。 《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》 ※他サイト様にも公開始めました!

悪役令嬢に転生しましたがモブが好き放題やっていたので私の仕事はありませんでした

蔵崎とら
恋愛
権力と知識を持ったモブは、たちが悪い。そんなお話。

家を乗っ取られて辺境に嫁がされることになったら、三食研究付きの溺愛生活が待っていました

ミズメ
恋愛
ライラ・ハルフォードは伯爵令嬢でありながら、毎日魔法薬の研究に精を出していた。 一つ結びの三つ編み、大きな丸レンズの眼鏡、白衣。""変わり者令嬢""と揶揄されながら、信頼出来る仲間と共に毎日楽しく研究に励む。 「大変です……!」 ライラはある日、とんでもない事実に気が付いた。作成した魔法薬に、なんと"薄毛"の副作用があったのだ。その解消の為に尽力していると、出席させられた夜会で、伯爵家を乗っ取った叔父からふたまわりも歳上の辺境伯の後妻となる婚約が整ったことを告げられる。 手詰まりかと思えたそれは、ライラにとって幸せへと続く道だった。 ◎さくっと終わる短編です(10話程度) ◎薄毛の話題が出てきます。苦手な方(?)はお気をつけて…!

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

処理中です...