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1章 もうこの先不安なのですけど…
無理やり付き合わされるオタ活をしているのですが…ゴールデンウィーク2日目
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昨日の天気予報では雨のことはしばらく忘れそうなほど晴れ続きの予報だった。
ゴールデンウィーク2日目の朝も例外ではなく、雲1つもないスカッとした天気。ただ曇り天気な人も世の中いるものだ。
「はぁ~」
この僕だ。
「よ~く晴れていますな~」
上機嫌にジョギングしている近所のおじいさんを窓越しに見ながらまたため息をつく。
「おやおや。恵一さんはなぜ元気ないんですか~。せっかくのデートなのに。」
「デート言うなデート。」
れみがあくびしながら入ってくる。
「つかなんであんたは朝から人の家にいるんだよ。」
「それは恵一さんに早速進展が訪れたんだと思い調査しに来たのです。」
「調査という名の探偵ごっこだろ。」
調査するならするで一声ぐらいかけてほしいものだ。
「でもこれは神様としては放っておけないことですよ。」
「残念ながられみの思惑通りにはならないって予言するよ。」
「いえいえ。例え友達繋がりな関係でも、ある日ある時恋に落ちるときはありますよ!そんな脈を今感じているのです!」
「普通はそうだな。俺もそんなシチュあったら嬉しいさ。でも今回の相手は美矢だ。」
「美矢さんだからこそいいと思いますが…」
「どうせついて来るんでしょ?なら嫌でもわかるさ。」
「はぁ…ところで時間は大丈夫ですか?」
時計は長い針が11近く、短い針は9に差し掛かっている。つまりもうすぐ9時だ。
「やっばもうこんな時間か!」
ある程度準備してあったのがよかった。カバンを持って家を出るだけだ。
「では私はあとから行きますね。なるべく雰囲気壊さぬように見守りますから。」
「んまぁ勝手にしてくれ。それじゃあ行ってきます~」
「行ってらっしゃい恵一。優しくエスコートするんだよ。」
………なぜ母は女子と出かけることを知っている?あと絶対誤解している。
「頑張ってくださいね。」
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「ちょっと遅いよ恵一!」
「ごめんごめん。」
「23秒遅刻だよ!信じられない~」
地味に許容範囲じゃねぇか。
「そういう美矢はいつ来たんだよ?」
「私は7時半ぐらいだけど。女の子待たせるのはタブーなんだからね!」
「お前の感覚でそれなら、俺は何時に起きればいいんだよ…」
遠足でウキウキして早起きしちゃう小学生ですらもうちょっと抑えてるわ。
ちなみに西湊駅は私鉄のローカル線の終点駅。ピカピカで新しくなった駅舎とは対照に、目の前の商店街は寂しそうにシャッターが閉まっている。
ここから区名屋までは途中乗り換えで行ける。ざっと1時間ぐらいだ。
「じゃあ恵一も来たからきっぷ買おう!」
「まだ買ってなかったのかよ…」
この人1時間半も何してたんだ?
「だって一緒に買ったほうがいいでしょ?」
「俺ICカードだし、1人で買っても2人で買っても一緒だぞ。」
「えぇ~うっそだ~」
「逆になんで本当だと思った?」
「だって友達は1人でも2人でも同じ値段と言ってたよ。」
多分その友達こども料金2人分を買ってる。わざとか間違ってか知らんけど。
「そんな都市伝説ないからさっさと買え。もうすぐ電車が出る。」
「うぅ…わかったよ。」
数は15分に1本。逃したら地味に待たないといけないのが辛いので早く促す。
「ああ~こいつ金吸いこんでくれない~」
「5円玉なんて対応してねーよ。」
「なによこのポンコツ!」
「機械に言っても……」
なんとかきっぷを買って乗る予定だった電車に間に合う。
2両の電車は数人ほどしかいない。
「なぁ。今日はどこの店に行くんだ?」
「それはお楽しみ。」
3
少なかった乗客も駅を出るたびに増え続け、いつの間にか満員だ。
そして主要路線と地下鉄に乗り換えて、お目当てらしいその店に着いた。
「ホントにここかよ…」
「そうよ。なかなかいいお店でしょ!」
「ノーコメントでお願いします。」
「なんでよ?雰囲気とか最高でしょ!」
「だからノーコメントでお願いします!」
確かに少々暗めの照明に、落ち着いた音楽が流れるこのお店は雰囲気はいいかもしれない。
一見大人のなかの大人がくつろぎそうな喫茶店に見える。
看板には『Rose』と書いてあり、ブラックコーヒーを飲みたくなってくるほど雰囲気はいい。
そう雰囲気だけは……
「いらっしゃいませー!」
「姉貴さんと兄貴さんどうぞこちらへ。」
「キャッ先輩かっこいい~」
「フッ。かわいい後輩に好かれてしまったようだ…」キラッ
「さっそく最高のシチュ来たー!」
「………」
簡単にまとめると、男の人と男の人が純粋にイチャイチャしているコンセプトカフェと言えば通じるだろうか?
「やっぱりお前の付き添いはいやなんだよ…」
「なんか言った?」
「いいえべつにー」
「恵一もオタクなんだから楽しまなきゃ!」
「ベクトルが違うわベクトルが!」
そう。美矢は完璧な腐女子である。
彼女は男よりも女のほうがモテる。それは昔ながらの話で、ある時女の子同士の恋愛があるなら、男同士はどうだろうか?というちょっとした好奇心により、バラの世界に踏み入ったそう。
そして完全に虜になってしまって今に至る。
この人は2次元でも3次元でも、純粋なものからガッツリとしたエロいものまで幅広く対応しているらしい。
しかし女子の憧れである美矢はいくら百合は受け付けないとしても、イメージというものを大事にしたいらしく、自分が腐女子であることを隠している。
そうなると活動範囲が狭まってくる。やっぱり1人だけだと勇気がいるみたい。
そこで同じアニメ好きの俺に自分の好みを打ち明けて、そっち系のお店に行く時は必ず自分を連行……誘っているということ。
いや確かに同じ俺もオタクですよ?
だけど人には好みというものが存在する。自分は日常系アニメが好きなので、この通りベクトルが違ってくる。
もちろん美矢の好きなものを否定するつもりは一切ないが、ただ天国に来た目をしている美矢には申し訳ないが、自分は地獄絵図にしか見えない。
そもそも中学2年生の自己紹介でアニメが好きになりましたと言ったあと、個別に呼び出されて、『実は私もアニメ好きなんだ~』と言われた。
さっそく同士ができたと喜んだのもつかの間、フタを開けてみれば全く違うものを好きになっていると。正直騙された感覚ですよはい。
「兄貴さん。姉貴さん。ご注文はお決まりですか?」
「じゃあ私はアイスティーと季節のケーキセットで!」
「自分はアイスカフェオレでお願いします。」
「かしこまりました。ところで兄貴さん。いい身体してますね~」
「はい?」
「よかったらオフで会いませんか?」
「なんでだよ!」
「公園のトイレとか…」
「お断りします!!」
この店店員同士のイチャイチャじゃなくて客ともありなのかよ!?
そんな演技いらな…あっこれガチだわ。目がハートになっているわこれ……
美矢も「キャ~」といいながらうっとりこのやり取りを見ている。
「せっかく僕フリーなのに…」
「他を当たって下さい。」
人生巻き戻してまでホモになりたくない!れみになんて言われるかもわからないし、そもそもそんなの望みません!
「では気が変わったらメールしてくださいね♡」
「それはそれはご丁寧にどうも!」
店員は厨房へと戻って行く。
「チッ!」
「おいそこ舌打ちすんな!」
「だって新しい発見があったと思ったなのにぃ!」
「知らねぇよ!危うく貞操が奪われるところだったわ!!」
「まぁ連れて行かれなくてちょっと安心したけど…」
「なんやかんや心配してくれるのかよ…」
おおかた付き添いがいなくならなかったことに対する安堵だろうとは思うけど。
しばらくすると頼んだものが届いた。
「ではではカンパ~イ!」
「飲み物に違和感あるけどいいや、乾杯。」
カフェオレは意外に美味しかった。
あ~あ。これ普通の喫茶店だったら今の自分最高にかっこいいって思うのにな~。
「恵一!このケーキ美味しいよ!」
季節のケーキはメロンがたくさん乗ったタルトだ。
「コーヒーとでも合いそうだな。」
なんでメニューはいいのにこんなコンセプトカフェにしちゃったんだろう。普通の喫茶店でも常連さん多く来そうなのに…
「でしょでしょ~恵一も食べてみたい?」
「いや、いいよ俺は。」
「とか言って本当は食べたいでしょ~。どうしよかな~」
イタズラっ子みたいに笑う美矢。確かに美味しそうだけど、そこまで食べたいわけじゃないんだよね。もし食べたいなら自分で注文すればいい話だし。
「よかったら食べさせてあげましょうか?」
「そこまでしなくていい!」
「そんなこと言わずに、はいあーん。」
「んっ!なにすんだよ急に…あっ美味しい!」
フェイントにはビックリしたものの、すぐにケーキの美味しさが上回ってしまった。
とても甘いメロンにカスタードクリームが優しく包んでいる。クッキー生地も最高!
「確かにこのケーキ美味いな!」
「気に入っていただいてよかったです兄貴さん!」
「あんただったんかい!」
神出鬼没とはこのことか。美矢の小悪魔的なからかいだと思ったけど、さっきの店員からの猛烈なアプローチだった。
もう周りの客からも黄色い歓声が上がっているよ。辛いです…
「ったく余計なことしやがって…」
ほらみろ美矢ですら顔を真っ赤にしているぞ。尋常じゃないぐらいに。
「おい大丈夫か?そんなに興奮することだったか?」
「ち、ちが……フォ、フォーク!」
「フォーク?」
プルプル震える手で指したのは、ケーキの皿の上にある1本のフォーク。
「このフォークがどうしたの……あっ(察し)」
このフォーク1本しかない。つまりこれ関節キスになる。
「新しいフォーク持って来てもらおうか?」
「当たり前でしょ!?」
「その…俺は気にしてないから大丈夫だよ…」
「私が気にしてんのよ!!」
この後フォークを落としてしまったからという建前をつけて新しいものと交換してもらった。
美矢は会計まで一切口を聞いてくれず、ギクシャクしたままコンセプトカフェを後にした。
ちなみにアタックしてきた店員さんが渡した連絡先は、こっそりケーキの皿に添えた(置いていった)のはここだけの話である。
4
昼食はみんな知ってるハンバーガー店で取ることにした。
美矢も徐々に口を聞いてくれ始めた。どうやらあの件は怒っていたわけではなく、恥ずかしかっただけらしい。正直助かった。
「午後はどうするんだ?」
「レモンブックスに行きたい!」
「相変わらずブレないな。」
レモンブックスはある程度オタクがよく行く本屋さん。コミック、ラノベや同人誌がなんでも置いている優れた場所だ。
美矢のお目当てのジャンル(BL)も例外ではなく、美矢のオタ活ツアーの後半は大抵レモンブックスか、違うアニメショップに行くことが決まっている。
レモンブックスやアニメショップになると、自分好みのグッズや本もあるので、実質ここで開放されたような気分。
「また新刊出たのか?」
「春休みに東京でやってたマーケットがあったでしょ?その委託がやっと入ったのよ。」
「あのイベントの新刊か。俺も探してみよっかな?」
さすがに美矢の両親は東京に行くことを許可していないのか。それとも単純に旅費の問題なのか。どっちとも解決したら恐らく同行者の1人に俺は含まれるかもしれない。
「でも今日は人ものすごいと思うよ。」
「そうだよね~お目当てのサークルさん見つけれたらそれでいいわ。」
「りょーかい!」
「私も人混みはあんまり好きじゃないからね~」
そんなんでマーケットに行けるのか?まだ本人の口から行きたいとは聞いていないが、それも時間の問題なんだろう。
レモンブックスは案の定アニメ好きでいっぱい溢れてた。最近ブレイクしているバトル漫画の新刊が出たらしい。
「あんな流行りで踊らされる人ってみじめだよね。」
「気持ちはわかるけどこんなところで堂々と言うなよ…」
好きになるのはいいことだが、自分の意思で好まない限り熱が冷めるのは早いだろう。
きっと新刊を買いに来た人の半分はそうだろう。
通路もいっぱい……とはならず、混んでいるのは入り口付近だけだった。
「ほらやっぱりね。所詮あの人たちはエセオタクなのよ。まぁこの店で買うだけまだマシかな?」
「流れに便乗したサークルさんの涙が目に浮かぶよ……」
同人誌の新刊コーナーには、さっきのバトル漫画の二次創作があった。
しかしそれを手に取る人どころか、気にしようとする素振りをする人すらいない。
オタクを極めつつある美矢が愚痴ひとつこぼすのも無理はない。
「じゃあ私あっちで探してくる。」
「俺も適当に見とるわ。」
お目当てのものが見つかれば早い。と思ったが、同人誌コーナーは人が少ないのできっと物色し始めるであろう。
「日常系アニメは…ここか。」
有名な弾幕ゲームやシュミレーションゲーム。アイドルアニメに並んでひっそりとお目当てのコーナーはあった。
「好きなやつは……今回もないか…」
自分の好きなアニメは結構マイナーなほうで、放送終了から経つに連れて数が少なくなってくる。
マーケットに行けば多少あるが、描いているサークルさんは委託する余裕があまりないそうだ。
「こっから先はもしかしたらあるかもしれないのにな~」
のれんがかかっている先を見る。あっちはピンクの意味で大人な世界。ここで入ってもいいのだが、店員にバレて出禁にされるのはゴメンだ。ならあと数年我慢するしかない。
えっちなやつなら、有名なコンテンツだと少々際どい本も時々ある。高校生はそれで充分だ。
「さて美矢のところに行くか。」
ところで1つBLに申したいことがある。
(BLって過激な内容でも全年齢で売られていることあるよね。)
こっちは我慢しているのに……と言いたいが、あまりにもくだらないことだと自覚しているので声にはしない。
「ほらやっぱり物色している…」
物色するならするで一言言ってるかくれればいいのに…
「………あの人、なにしてんだろう?」
美矢の後ろに立っている男がいる。ネックレスやピアスなど全身から「自分チャラいです」と言っているような雰囲気を出している。
こんなやつがレモンブックスにいるなんて、個人的には場違い感が半端ない。
それに同人誌を手に取らず、ずっと美矢を見ている。まるでなにかタイミングを見計らっているかのように…
(まさか腐女子狩り!?)
ネットの噂で聞いたことある。腐女子の女の子を狙ったナンパだと。とんでもない理論で誘えると勘違いしている輩がおるらしい。
これはオタク男子よりも、知識が乏しい人が多い。オタクはアタックしても無駄だと知っているからだ。
(それならそれでまずいな。早く美矢のところに行かないと。)
できるだけナチュラルに。付き添いの人もいたとなれば、あっちも自然に去って行く。美矢に怖い思いをせずに事が終わる。
しかしそれと同時に男の手が美矢に伸ばしていた。高さは胸元。
(クソっ痴漢目的だ!)
ここからまあまあの距離がある。周りがうるさいため、叫んだところで美矢が気づくかどうか…
「この絵師さんオリジナル出てたんだ~!!このシチュ最高!」
ダメだあの人興奮し過ぎて男に気づいていない!
(こうなったらせめて逃走しないように捕まえるしかない!)
もう遅い!と思った瞬間……
「あの本も気になるのに高いな…よいしょっと!」
「痛い!!」
「え!なに!?」
一瞬自分もなにが起きたかわからなかった。
状況を推測するには、高いところにある同人誌を取ろうとした美矢は少し背伸びした。そのくせなのか、片足が浮いていた。
かかとが少し高い靴をくつを履いていた美矢は、浮いた片足で男のスネをキックしたようになっていたのだ。しかもその部分はくつの細いところ。
男もそれに予期はしてなかったのか、思わず声をあげてしまったのだと思う。
(よかった痴漢されなくて…)
しかしそれで怯むほどチャラ男は弱くなかった。
「なにしてくれるんだこのメスガキ!!」
「え、私!?」
男は逆キレし始めた。
(これはマズイ!)
「俺に攻撃するとはいい度胸だなぁ!」
「いや知らないですけど…」
「後悔するといい。ちょっとこっち来い!!」
「ちょ、ちょっとやめてください!」
男が美矢を連れて裏口から出ようとする。
「ま、待て!!」
俺はすぐに男の背後に行き、運動音痴らしい蹴りで男の急所を狙う。
「アグっ!」
見事ヒット。男は股間を抑えながら倒れこむ。
「あ、危なかった~」
ち~んと効果音がなりそうな男の顔にさっきの威勢はもうなかった。
「お客様どうしました~ってまたあなたですか!?」
店員さんが騒ぎを聞きつけて来てくれた。
「またあなたとは?」
「この男以前にもセクハラまがいのことをしようとしたんですよ。出禁にしたはずなのに、裏からこっそり入ったんですね。」
「そうだったんですね…」
「私が責任持って警察に引渡します。お客様お怪我は?」
「俺は大丈夫です。美矢は?」
「私も…」
「では失礼します。あんたは事務所に来てもらいますよ!」
「………はい。」
蚊が鳴くような声でチャラ男は退場して行った。
「えーっと私誘拐されかけたの?」
「まぁ半分正解で半分違う。」
美矢に痴漢されかけたことを説明する。
「そうなんだ。それでたまたま私のくつが男のスネに当たって、それで怒っていたんだ。」
「そういうこと。」
なにかされそうだったというのに、美矢はケロンとしている。
「怖くなかったのか?」
「うーんあんまり。だって知らなかったもん。」
「それもそうなのか?」
「しかしこんな私の胸を狙うとは見る目ないね。」
「自分で言うな自分で。」
ふぅっと息を入って美矢は俺を見る。
「でも連れていかれそうになった時はちょっと怖かったな~」
まぁ状況を理解できてないまま連れていかれそうになるのは誰だって怖い。
「もし恵一がいなかったら私どうなっていたのか…ありがとね。」
「い、いいよ別にそんなの…」
照れ隠しのために話題を変える。
「ところで欲しいものはあったの?」
「うん!こんだけ!」
「こんだけとは…」
美矢の両手には10冊ぐらいの同人誌があった。
やっぱり漁ってたんだ…
5
帰りの西湊行きの電車は混む。予め始発駅から並んでいたので座れたものの、もう身動きが取れないほど車内は混んでいる。
「やべぇ眠くなってきた。」
「疲れたの?」
「うんめっちゃ疲れた。」
おもに突っ込み疲れです。
「俺寝ているから着いたら起こして。」
「それじゃあ私の肩にもたれていいよ。」
美矢はトントンと自分の肩を叩いて誘っている。どうせ断るだろうと思ってニヤけてるいるし。
普通の俺だったら断っているが、眠気のせいで正しい判断ができない。
「じゃあお言葉に甘え。」
「え…ホントにもたれるの?」
「じゃあおやすみ。」
「ちょ、ちょっと~?」という小さな悲鳴が聞こえた気がするが、構わず目を瞑る。
意識が夢に変わるにはそんな時間はかからなかった。
「カップルさん~そこのカップルさん~」
誰かカップルが呼んでいる。
誰だろう。少なくとも俺たちではなさそうだ。
「お客様ですよ!終点に着きましたよ~」
声が大きくなる。
うっすらと目を開けると、混んでいたはずの車内はガラガラになっていて、目の前に駅員さんがいた。
「終点西湊に着きましたよ。」
「そうですか…ありがとうございます。」
「いえいえ。それにしても仲が良いことで。」
駅員さんは他の車両に行ってしまった。
横を見ると、美矢も俺にもたれるように寝ている。なるほど、確かにはたから見たらカップルに見える。
「美矢。着いたよ起きて。」
「ん、ん~?」
うっすらと目を開けた彼女は今の状況を見る。理解したのか、また顔がみるみる赤くなっていた。そして猫が威嚇するように、ある程度距離をとるようにして言う。
「か、勘違いしないでよね!」
「何をだよ。」
「私たちがカップルっていうことよ!」
どうやら駅員さんの声や、俺たちのやり取りは耳に入っていたらしい。
「どうやったら俺たち付き合っていると勘違いするんだよ。」
「そ、そうだけど…いやち、違うけど…」
「?」
「と、とりあえず。次学校で!」
「あぁちょっと!」
美矢はダッシュで電車から降り、そのまま改札を通って帰ってしまった。
「そんなに嫌だったのか?」
「お疲れ様でした恵一さん。」
「れみもいたのか。」
「はい。ずっと一緒でしたよ?」
「メンヘラみたいに言うなよ。」
そろそろ乗ってた電車が折り返し発車するので、急いで駅から降りる。
「それでどうだった?俺と美矢は。」
「最初はどうなるかと心配しました。恵一さんが言ってた意味がわかりました。」
「だろ?」
「でも序盤の動きのわりにはよかったと思いますよ。」
「よかったのか?最後も逃げられるように行っちゃったし…」
「それに気づかないなんて鈍感さんですね~」
「俺鈍感か?」
「まぁ美矢さんとは厳しいことは私も学べましたね。」
あ、そうだと思い出すように手をたたくれみ。
「私意外にいいなと思いました。」
「何がいいなと?」
「男の人同士のイチャイチャです!」
「待て!早まるなれみ!まだ戻って来れる!!」
「一番はやっぱり恵一さんと店員さんのやり取りですね~キュンとしました!」
「やめてくれ!それはもう忘れろー!!」
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