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二章
27話 無力感
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時間がない。防壁に空いた穴に向かって敵が走ってきている。
俺達見張りの声で、直ぐ近くで待機していた狩猟衆の女達が続々と防壁の上に集まっているが、もし防壁の内側に侵入を許せば戦いは泥沼化し、多くの被害が出てしまうだろう。
「くそっ!」
俺は悪態をつきながら防壁の上を走り、盗賊の方へ向かって飛び降りた。
盾の隙間から見える盗賊達は、やはり女性。
これから彼女達にすることに嫌悪感を覚えるが、一度飛び出した俺の体は止まることはなく、あっという間に目前にせまった盾を力いっぱい踏みつけた。
バキッという木特有の乾いた音が鳴ると同時、踏みつけた盾と共に盗賊が後ろに倒れ、俺は反動で後ろへ飛ぶ。
俺が着地した位置は盾を構えた盗賊の隊列から数メートル離れた位置、丁度ダグラスがあけた防壁の穴の前だ。
「近づくな! 魔法か弓を使え!」
駄目だ。その前に近付かせてもらう。
俺は弓を捨て、剣を抜きながら前方へ疾走する。
増援がもう到着したのか、走る俺の横を何本もの矢が追い越して一足先に盗賊団の盾へと突き立っていく。
矢を防ぐために盗賊達は完全に盾の後ろへ身を隠した。
俺が攻撃する隙間など一切存在しなくなってしまったが、視界が盾で遮られたはずなので、盾の隙間から突き出されている槍や剣の攻撃を受けづらくなったはずだ。
俺の方から完全に顔が見えない盗賊、つまり完全に視界が塞がれているであろう左手側の盗賊へと方向転換する。
全員が全員、盾で視界が塞がれているわけではないため、俺が狙った盗賊の右隣の盗賊から槍が突き出された。
俺は前へ踏み出していた右足を左足へと繋げず、一瞬踏ん張る。
すると僅かにだがタイミングがずれたことで、槍が俺に届かずに差し出す形となった。俺はそれを袈裟斬りで地面へと叩き落す。
槍は雪へと埋まり、踏ん張ったとはいえ未だ前へ進み続ける体を、左脇へと振り下ろした剣の重さに持っていかれる腕の慣性に逆らわず、体ごと回転しながら地面を蹴った。
槍の上を飛び越え、空中で一瞬敵に背を向けながら剣を両手持ちから右手のみへと持ち替え、大きく右腕を背中側へと引き絞る。
回転しながらジャンプした俺の目に映るのは大きな盾のみ。
いざ目の前にしてみると身の丈ほどある盾が並ぶ様子はまさに壁、防壁の上から見下ろしていた時よりはるかに圧迫感を感じる。
一瞬、弾かれて終わりなんじゃ? という弱音が沸き上がったが、直ぐに理性でその感情を押さえつけて歯を食いしばる。
(ぶち壊す!)
盗賊の持つ盾へと振り下ろされた剣は、金属で縁を補強した木製の盾に対して斜めに命中。半ばまでバキバキと音を立てながら引き裂いた。
深々と盾に埋まった剣。
だが、まだ深さが足りない。
肉を切った感触が一切ないのだ。
俺の攻撃は盾を保持している手にも届いていない。
引き裂かれた盾の隙間から女と目が合った。
しっかりと目を見開き、俺の次の動きを冷静に観察している。
盾を半ばまで破壊したのに怯みもしていない。
やはりこの程度は出来て当然だと思っているのかもしれない。
「うぉらあ!」
俺は埋まった剣を引き抜くために、盾に食い込んだ剣をそのままに力まかせに振り払う。
人一人を吹き飛ばす気持ちで振り払った剣は、一瞬抵抗を感じたものの、あっさりと、拍子抜けするくらい容易く飛んで行った。
盗賊は盾に固執せずに手を離したようだ。
そのため盗賊は体勢を崩しておらず、盾で隠れた全身が見えた時には、バックステップで俺から距離を取ろうとしていた。
目で確認している暇はないが、両隣に並んでいる盗賊達から攻撃の気配を感じる。
周りは敵だらけ、このままでは囲まれて磨り潰されてしまう。その前に俺は少しでも安全な位置、正面のバックステップをした盗賊の懐へと飛び込んだ。
俺が彼女たちに確実に勝っているといえるのは身体能力のみだ。
まだまだ戦闘技術では、幼い頃より戦いに生きてきた女達に勝つことはできない。
俺がこの場で生き残るためには、力勝負に持ち込んでまともに斬りあわないようにするしかない。
体勢を崩しながらも盗賊は剣を俺に向かって振ってくる。
それを俺は真正面から剣で受け止め、そのまま体ごとぶつけるように押し込んだ。
鍔迫り合いで盗賊を戦列から後方へと運んでいくと、盗賊はただでさえバックステップで不安定になっていた体勢を保つことができず、俺に押し倒された。
仰向けで倒れた盗賊と、覆いかぶさるようにして鍔迫り合いになった俺は、そのまま剣を体重を込めて押し込んでいく。
体重も力も女である盗賊より俺の方が上、盗賊の持った剣は、峰のない両刃の剣のためこのまま押し込めば倒せるはずだ。
助けが来る前に少なくとも戦闘不能にさせておきたいため、一気に剣を盗賊へと押し込むと、力は拮抗することはなく、盗賊の方へと剣は吸い込まれていく。
だが、あと少しで盗賊の肌を刃が切り裂こうとした時、俺は動けなくなった。
俺と盗賊の重なった剣の下にあるのは盗賊の顔。
女。
女の顔だ。
まだ若い。俺とそれほど変わらないように見える。
髪はくすんだ灰色で、目つきは鋭い。
俺を押し返そうと食いしばる歯を縁取る唇も薄くて形がいい。
紛れもなく美少女だ。
俺はこの女の人の顔に傷をつけるのか?
そう思うと剣が止まってしまった。
足をばたつかせたりして圧し掛かった俺をどかそうとしながら、女は突然止まった俺を怪訝な顔で見ている。
ざくざくと雪を踏みしめる音が後ろから聞こえてきた。もう時間はない。
俺はあの初めての盗賊との戦いからずっと考えていた。
俺は人を殺せるのか?
殺す必要があるのか?
いくら考えても答えは出ていない。今、この瞬間も。
いますぐ止めを。後ろから増援が来ている。
鍔迫り合いをしながらちらりと後ろを盗み見る。
俺が攻撃を仕掛けた盗賊の左右の二人だけが俺の方へと向かってきて、他はそのまま防壁の方へと走りだしている。
足止めにもなっていないのか俺は。
防壁の上にはセツ達も到着したようで弓を構えていた。
他にもずらりと防壁の上には狩猟衆の女達がならんでおり、既に戦闘体勢を整えている。
そもそも俺が飛び出す必要もなかったようだ。
ならばこの女に刃を振り下ろすことにどれほどの意味がある?
上手い事気絶だけさせればいいんじゃないか?
いつのまにか横一列の隊列から二列になっていた盗賊達が防壁へと到達した。
防壁へ取りついた盗賊達が盾を頭上に構えると、別の盗賊がそれを踏みつけて防壁の上へと飛び上がる。
あの大きな盾は防御だけではなく、足場の役目も持っていたようだ。
穴の前周りでも攻防が繰り広げられている。
再び目の前に目を向ける。
気絶させる方法なんて知らないし、したところでまたセツに人殺しの役目を肩代わりさせるだけだ。
故郷から追放される事を悲しむ、あの14歳の少女に。
いくら考えても答えは出なかった。
今、この瞬間までは。
ガチン!
俺は止めていた剣に再び体重を乗せ、一気に押し込むとそのまま刃を滑らせながら後ろへと振り抜いた。
俺の黒い剣と女の鈍い銀色の剣から火花が散り、メシャリと嫌な音を立てて女の顔へと剣が喰い込む。
女の顔へ喰いこんで固定された鈍い銀色の剣は動かず、俺の剣に刃が削られていく。
後ろへと振りぬいた剣の先は、すぐそばまで迫っているはずの盗賊の方へと向かう。
手に衝撃が走った。見ると俺へと突き出していた槍にぶつかったようで、槍が宙を回りながら飛んでいた。
後ろを取ることに失敗した二人の盗賊は、俺の間合いの外で足を止め、俺に近づきすぎないように左右に分かれて俺を挟み込んでくる。
「近づくな!」
槍を弾き飛ばされた右側の盗賊がそう叫ぶと、盾の横から手を突き出してこちらへ向けると、伸ばされた手の平からキラキラと光る赤い粒子があふれ出していく。
それは魔法の光、その色は千差万別、一人一人違う色をしている。
体内に取り入れられたマナが、その宿主の色に染まると、体外に出た時になにかしらの現象が起きるようになる。
故に現象、ラノベ的で言うと属性は、一人につき一つしか使う事が出来ないらしい。
同じ火を出す魔法でも微妙に色が人によって違ったりする。
そしてこの盗賊は赤い色のイメージ通り、火の魔法の様だったようだ。
手の平に溢れた粒子がバチバチと音を立てて燃え盛っている。
俺は後ろへと跳んだ。
こうすることで大きく左右に分かれていた二人を、視界内に収めることができるようになった。
動き出した俺に合わせるように炎が発射されると、炎は螺旋を描きながら俺へと向かってくる。
俺が跳んで着地する間もなく着弾する弾速だ。
(なんだあの動きは?!)
真っすぐ飛んでくることを予測していたため、その物理法則を無視した螺旋の動きに混乱してしまった。
俺は予定していた剣で炎を叩き落とすことを諦め、息を止めながら頭上で剣を逆さに構え、顔を剣の平らな部分と、あいた腕で覆い隠した。
肺と目さえ焼かれなければ直ちに戦闘不能にはならないはずだ。
剣に軽い圧力を感じると、頬を撫でていた冬の冷気が一瞬で灼熱と化す。
バチバチと炎が俺に纏わりつき、激しい燃焼音を立てながら俺の全身を焼いていく。
だが、この炎の魔法は本命じゃない。
本命はもう一人の盗賊が持つ槍の一撃のはずだ。
(くそっ! なんで燃え続けんだよ!)
一瞬燃えて終わりではなく、体に纏わりついて燃え続ける炎に、目を開けるわけにはいかず次の攻撃を見ることができない。
失敗した。後ろに跳んだのは悪手だった。
戦闘中に目を瞑るという行為に凄まじいストレスを感じる。
燃え盛る音で足音も聞こえず、完全に敵を見失った俺はやけくそ気味に地面へと体を投げ出し、雪面を転がり回った。
この回避行動で槍の一撃を避けられたかはわからないが、体に穴は開いていない。
また、雪面を転がる事で、炎が雪を蒸発させる音を立てながら勢いを弱めることができたようだ。
「ぶっはぁ!」
(死ぬかと思った)
俺は立ち上がりながら、顔で感じていた熱波が消えたことで止めていた呼吸を再開する。
大した時間息を止めていたわけではないが、戦闘中のため、全身が酸素不足を訴えている。
目を開けた瞬間、槍が目の前に現れた。
息をつく間もなく繰り出された槍は、首をかしげることで頬をかすめながらなんとか避けることに成功する。
だが、当然攻撃はそれで終わりではない。
引き戻された槍が俺が剣を触れ合わせる前に引き戻され、再び襲ってきた。
次はなんとか剣で槍の柄を叩くことができ、横っ腹部分の皮鎧をかすめるだけで済んだ。
次は心臓狙いだ。剣を引き戻す前に襲ってきた槍が胸に命中し、皮鎧を突き破ってきたが、槍に合わせて半身を反らすことで、薄く肉を削がれるだけで済んだ。
俺は必死に次々と襲ってくる槍を紙一重でさばいていく。
駄目だ。この人、強い。
間合いは完全に負けているため距離を詰めようにも、次々と繰り出される槍に隙を見出すことができず防戦一方だ。
身を覆い隠すほどの大盾を持ちながら、俺が着ている皮鎧を貫通するだけの力強さを片手で繰り出してくる。
もし俺が皮鎧無しの生身ならもう動けなくなっているはずだ。
しかもまたあの螺旋を描く炎が飛んできた。
俺は無様にまた地面に体を投げ出し、炎を避けると、すかさず槍が俺を狙ってくる。
剣の腹でそれを受け止め、槍を掴もうと手を延ばすが、すぐに引き戻されて空を切った。
そんな攻防がどれくらい続いただろうか?
ハッハッハッという短く苦しい呼吸だけが俺がまだ生きていることを保証している。
溶けた雪と土で泥だらけ、それだけではなく皮鎧のあちこちから血がにじみ出ている。
耳に手を当てれば、耳全体はまだ無事だが、耳たぶだけが頭から切り離されている。
(クソッ……なにも出来ねぇ……)
一方的にいたぶられ、打開策がないかと頭を回そうとする。
だが、考える余裕など与えてくれるはずもなく、次の攻撃が始まり、攻撃をしのぐので一杯一杯になってしまう。
正真正銘の八方塞がりだ。
「諦めるかああああ!」
だが、俺の心は折れることはない。
男が死ぬ時は女が死ぬ時というボロの言葉が俺を奮い立たせる。
どうしようもない精神論だが、俺は心を切らさず必死に耐え続けた。
そして紙一重で耐え続けたことで、俺に奇跡のような勝機が巡ってくる。
俺へ槍を突き出そうとした盗賊の足元に、俺が鍔迫り合いで顔面を破壊した盗賊がいたのだ。
俺は必死で攻撃をさばいていたため、地面に横たわる彼女の事を気にせず踏みしめて後退していた。
対して、目の前の盗賊は、仲間を踏むことに躊躇し踏み込むことをやめた。
しかも後ろの螺旋の炎を放つ盗賊も、まだ次の炎を生み出している最中だ。
俺は行き先を失った槍を、顔面を破壊した盗賊の槍と同じように、剣を振り下ろして槍を切断する。
盗賊は槍を手放し、素早く剣を引き抜くが、その時には既に、俺は盗賊を間合いに捉えていた。
盗賊は焦ったように剣を振り下ろし、俺の鎖骨にズシンという衝撃が重く響くが、皮鎧が刃までは通さなかったため致命傷ではない。
猩々との死闘以来、俺の筋力は跳ね上がっていたが、あの死闘で出ていた筋力を出せていない気がしていた。
その理由がようやくわかった。
魔法や大地の加護なんて曖昧なものがある世界なんだ。
殺すことにおびえていた俺の心に従って力を抑えていたのだろう。
俺は肩で剣を受けながら自分の剣を大きく引き絞ると、盗賊の体を覆い隠す盾へ叩き込んだ。
その結果は盾は真っ二つに破壊され、中指と薬指の間が引き裂かれた盗賊の腕が現れた。
俺は苦悶の声を上げる裂けた女の腕を左手で掴み取り、右手に持った剣をもう一度上段に構えると、俺と同じく皮鎧で全身を守っている盗賊の肩へ剣を叩き込んだ。
「うごっ! あっ……あ゛あ゛あ゛あ゛」
俺の剣は皮鎧に弾かれることなく人体を破壊していた。
一刀両断とまではいかないが、鎖骨も胸骨も切り裂いて胸まで到達している。
もうこの女は助からないだろう。
「レイコォォォ!」
炎を出していた盗賊が叫び声をあげた。
どうやらこの人はレイコというらしい。
レイコは心臓を破壊されながらも、震える手にもった剣は落とさず、俺を攻撃しようとしている。
俺は剣を引き抜き、レイコを蹴り飛ばして、炎を操る盗賊の方へと走った。
俺は剣を引き抜くときに拾っていた真っ二つになった盾を突き出し、向かってきていた炎を受け止める。
真っ二つになったとはいえ、元々は人一人覆い隠すほどの大盾だ。半分になっても十分な防御能力はある。
俺の足はあっという間に泣きながら炎を出す盗賊へと接近し、その腕と、首を、斬り落とした。
俺は守り切れなかった防壁を見た。
防壁の上には既に人はおらず、戦場は村の中に切り替わっているようだ。
俺は村の方へと走り出した。
俺達見張りの声で、直ぐ近くで待機していた狩猟衆の女達が続々と防壁の上に集まっているが、もし防壁の内側に侵入を許せば戦いは泥沼化し、多くの被害が出てしまうだろう。
「くそっ!」
俺は悪態をつきながら防壁の上を走り、盗賊の方へ向かって飛び降りた。
盾の隙間から見える盗賊達は、やはり女性。
これから彼女達にすることに嫌悪感を覚えるが、一度飛び出した俺の体は止まることはなく、あっという間に目前にせまった盾を力いっぱい踏みつけた。
バキッという木特有の乾いた音が鳴ると同時、踏みつけた盾と共に盗賊が後ろに倒れ、俺は反動で後ろへ飛ぶ。
俺が着地した位置は盾を構えた盗賊の隊列から数メートル離れた位置、丁度ダグラスがあけた防壁の穴の前だ。
「近づくな! 魔法か弓を使え!」
駄目だ。その前に近付かせてもらう。
俺は弓を捨て、剣を抜きながら前方へ疾走する。
増援がもう到着したのか、走る俺の横を何本もの矢が追い越して一足先に盗賊団の盾へと突き立っていく。
矢を防ぐために盗賊達は完全に盾の後ろへ身を隠した。
俺が攻撃する隙間など一切存在しなくなってしまったが、視界が盾で遮られたはずなので、盾の隙間から突き出されている槍や剣の攻撃を受けづらくなったはずだ。
俺の方から完全に顔が見えない盗賊、つまり完全に視界が塞がれているであろう左手側の盗賊へと方向転換する。
全員が全員、盾で視界が塞がれているわけではないため、俺が狙った盗賊の右隣の盗賊から槍が突き出された。
俺は前へ踏み出していた右足を左足へと繋げず、一瞬踏ん張る。
すると僅かにだがタイミングがずれたことで、槍が俺に届かずに差し出す形となった。俺はそれを袈裟斬りで地面へと叩き落す。
槍は雪へと埋まり、踏ん張ったとはいえ未だ前へ進み続ける体を、左脇へと振り下ろした剣の重さに持っていかれる腕の慣性に逆らわず、体ごと回転しながら地面を蹴った。
槍の上を飛び越え、空中で一瞬敵に背を向けながら剣を両手持ちから右手のみへと持ち替え、大きく右腕を背中側へと引き絞る。
回転しながらジャンプした俺の目に映るのは大きな盾のみ。
いざ目の前にしてみると身の丈ほどある盾が並ぶ様子はまさに壁、防壁の上から見下ろしていた時よりはるかに圧迫感を感じる。
一瞬、弾かれて終わりなんじゃ? という弱音が沸き上がったが、直ぐに理性でその感情を押さえつけて歯を食いしばる。
(ぶち壊す!)
盗賊の持つ盾へと振り下ろされた剣は、金属で縁を補強した木製の盾に対して斜めに命中。半ばまでバキバキと音を立てながら引き裂いた。
深々と盾に埋まった剣。
だが、まだ深さが足りない。
肉を切った感触が一切ないのだ。
俺の攻撃は盾を保持している手にも届いていない。
引き裂かれた盾の隙間から女と目が合った。
しっかりと目を見開き、俺の次の動きを冷静に観察している。
盾を半ばまで破壊したのに怯みもしていない。
やはりこの程度は出来て当然だと思っているのかもしれない。
「うぉらあ!」
俺は埋まった剣を引き抜くために、盾に食い込んだ剣をそのままに力まかせに振り払う。
人一人を吹き飛ばす気持ちで振り払った剣は、一瞬抵抗を感じたものの、あっさりと、拍子抜けするくらい容易く飛んで行った。
盗賊は盾に固執せずに手を離したようだ。
そのため盗賊は体勢を崩しておらず、盾で隠れた全身が見えた時には、バックステップで俺から距離を取ろうとしていた。
目で確認している暇はないが、両隣に並んでいる盗賊達から攻撃の気配を感じる。
周りは敵だらけ、このままでは囲まれて磨り潰されてしまう。その前に俺は少しでも安全な位置、正面のバックステップをした盗賊の懐へと飛び込んだ。
俺が彼女たちに確実に勝っているといえるのは身体能力のみだ。
まだまだ戦闘技術では、幼い頃より戦いに生きてきた女達に勝つことはできない。
俺がこの場で生き残るためには、力勝負に持ち込んでまともに斬りあわないようにするしかない。
体勢を崩しながらも盗賊は剣を俺に向かって振ってくる。
それを俺は真正面から剣で受け止め、そのまま体ごとぶつけるように押し込んだ。
鍔迫り合いで盗賊を戦列から後方へと運んでいくと、盗賊はただでさえバックステップで不安定になっていた体勢を保つことができず、俺に押し倒された。
仰向けで倒れた盗賊と、覆いかぶさるようにして鍔迫り合いになった俺は、そのまま剣を体重を込めて押し込んでいく。
体重も力も女である盗賊より俺の方が上、盗賊の持った剣は、峰のない両刃の剣のためこのまま押し込めば倒せるはずだ。
助けが来る前に少なくとも戦闘不能にさせておきたいため、一気に剣を盗賊へと押し込むと、力は拮抗することはなく、盗賊の方へと剣は吸い込まれていく。
だが、あと少しで盗賊の肌を刃が切り裂こうとした時、俺は動けなくなった。
俺と盗賊の重なった剣の下にあるのは盗賊の顔。
女。
女の顔だ。
まだ若い。俺とそれほど変わらないように見える。
髪はくすんだ灰色で、目つきは鋭い。
俺を押し返そうと食いしばる歯を縁取る唇も薄くて形がいい。
紛れもなく美少女だ。
俺はこの女の人の顔に傷をつけるのか?
そう思うと剣が止まってしまった。
足をばたつかせたりして圧し掛かった俺をどかそうとしながら、女は突然止まった俺を怪訝な顔で見ている。
ざくざくと雪を踏みしめる音が後ろから聞こえてきた。もう時間はない。
俺はあの初めての盗賊との戦いからずっと考えていた。
俺は人を殺せるのか?
殺す必要があるのか?
いくら考えても答えは出ていない。今、この瞬間も。
いますぐ止めを。後ろから増援が来ている。
鍔迫り合いをしながらちらりと後ろを盗み見る。
俺が攻撃を仕掛けた盗賊の左右の二人だけが俺の方へと向かってきて、他はそのまま防壁の方へと走りだしている。
足止めにもなっていないのか俺は。
防壁の上にはセツ達も到着したようで弓を構えていた。
他にもずらりと防壁の上には狩猟衆の女達がならんでおり、既に戦闘体勢を整えている。
そもそも俺が飛び出す必要もなかったようだ。
ならばこの女に刃を振り下ろすことにどれほどの意味がある?
上手い事気絶だけさせればいいんじゃないか?
いつのまにか横一列の隊列から二列になっていた盗賊達が防壁へと到達した。
防壁へ取りついた盗賊達が盾を頭上に構えると、別の盗賊がそれを踏みつけて防壁の上へと飛び上がる。
あの大きな盾は防御だけではなく、足場の役目も持っていたようだ。
穴の前周りでも攻防が繰り広げられている。
再び目の前に目を向ける。
気絶させる方法なんて知らないし、したところでまたセツに人殺しの役目を肩代わりさせるだけだ。
故郷から追放される事を悲しむ、あの14歳の少女に。
いくら考えても答えは出なかった。
今、この瞬間までは。
ガチン!
俺は止めていた剣に再び体重を乗せ、一気に押し込むとそのまま刃を滑らせながら後ろへと振り抜いた。
俺の黒い剣と女の鈍い銀色の剣から火花が散り、メシャリと嫌な音を立てて女の顔へと剣が喰い込む。
女の顔へ喰いこんで固定された鈍い銀色の剣は動かず、俺の剣に刃が削られていく。
後ろへと振りぬいた剣の先は、すぐそばまで迫っているはずの盗賊の方へと向かう。
手に衝撃が走った。見ると俺へと突き出していた槍にぶつかったようで、槍が宙を回りながら飛んでいた。
後ろを取ることに失敗した二人の盗賊は、俺の間合いの外で足を止め、俺に近づきすぎないように左右に分かれて俺を挟み込んでくる。
「近づくな!」
槍を弾き飛ばされた右側の盗賊がそう叫ぶと、盾の横から手を突き出してこちらへ向けると、伸ばされた手の平からキラキラと光る赤い粒子があふれ出していく。
それは魔法の光、その色は千差万別、一人一人違う色をしている。
体内に取り入れられたマナが、その宿主の色に染まると、体外に出た時になにかしらの現象が起きるようになる。
故に現象、ラノベ的で言うと属性は、一人につき一つしか使う事が出来ないらしい。
同じ火を出す魔法でも微妙に色が人によって違ったりする。
そしてこの盗賊は赤い色のイメージ通り、火の魔法の様だったようだ。
手の平に溢れた粒子がバチバチと音を立てて燃え盛っている。
俺は後ろへと跳んだ。
こうすることで大きく左右に分かれていた二人を、視界内に収めることができるようになった。
動き出した俺に合わせるように炎が発射されると、炎は螺旋を描きながら俺へと向かってくる。
俺が跳んで着地する間もなく着弾する弾速だ。
(なんだあの動きは?!)
真っすぐ飛んでくることを予測していたため、その物理法則を無視した螺旋の動きに混乱してしまった。
俺は予定していた剣で炎を叩き落とすことを諦め、息を止めながら頭上で剣を逆さに構え、顔を剣の平らな部分と、あいた腕で覆い隠した。
肺と目さえ焼かれなければ直ちに戦闘不能にはならないはずだ。
剣に軽い圧力を感じると、頬を撫でていた冬の冷気が一瞬で灼熱と化す。
バチバチと炎が俺に纏わりつき、激しい燃焼音を立てながら俺の全身を焼いていく。
だが、この炎の魔法は本命じゃない。
本命はもう一人の盗賊が持つ槍の一撃のはずだ。
(くそっ! なんで燃え続けんだよ!)
一瞬燃えて終わりではなく、体に纏わりついて燃え続ける炎に、目を開けるわけにはいかず次の攻撃を見ることができない。
失敗した。後ろに跳んだのは悪手だった。
戦闘中に目を瞑るという行為に凄まじいストレスを感じる。
燃え盛る音で足音も聞こえず、完全に敵を見失った俺はやけくそ気味に地面へと体を投げ出し、雪面を転がり回った。
この回避行動で槍の一撃を避けられたかはわからないが、体に穴は開いていない。
また、雪面を転がる事で、炎が雪を蒸発させる音を立てながら勢いを弱めることができたようだ。
「ぶっはぁ!」
(死ぬかと思った)
俺は立ち上がりながら、顔で感じていた熱波が消えたことで止めていた呼吸を再開する。
大した時間息を止めていたわけではないが、戦闘中のため、全身が酸素不足を訴えている。
目を開けた瞬間、槍が目の前に現れた。
息をつく間もなく繰り出された槍は、首をかしげることで頬をかすめながらなんとか避けることに成功する。
だが、当然攻撃はそれで終わりではない。
引き戻された槍が俺が剣を触れ合わせる前に引き戻され、再び襲ってきた。
次はなんとか剣で槍の柄を叩くことができ、横っ腹部分の皮鎧をかすめるだけで済んだ。
次は心臓狙いだ。剣を引き戻す前に襲ってきた槍が胸に命中し、皮鎧を突き破ってきたが、槍に合わせて半身を反らすことで、薄く肉を削がれるだけで済んだ。
俺は必死に次々と襲ってくる槍を紙一重でさばいていく。
駄目だ。この人、強い。
間合いは完全に負けているため距離を詰めようにも、次々と繰り出される槍に隙を見出すことができず防戦一方だ。
身を覆い隠すほどの大盾を持ちながら、俺が着ている皮鎧を貫通するだけの力強さを片手で繰り出してくる。
もし俺が皮鎧無しの生身ならもう動けなくなっているはずだ。
しかもまたあの螺旋を描く炎が飛んできた。
俺は無様にまた地面に体を投げ出し、炎を避けると、すかさず槍が俺を狙ってくる。
剣の腹でそれを受け止め、槍を掴もうと手を延ばすが、すぐに引き戻されて空を切った。
そんな攻防がどれくらい続いただろうか?
ハッハッハッという短く苦しい呼吸だけが俺がまだ生きていることを保証している。
溶けた雪と土で泥だらけ、それだけではなく皮鎧のあちこちから血がにじみ出ている。
耳に手を当てれば、耳全体はまだ無事だが、耳たぶだけが頭から切り離されている。
(クソッ……なにも出来ねぇ……)
一方的にいたぶられ、打開策がないかと頭を回そうとする。
だが、考える余裕など与えてくれるはずもなく、次の攻撃が始まり、攻撃をしのぐので一杯一杯になってしまう。
正真正銘の八方塞がりだ。
「諦めるかああああ!」
だが、俺の心は折れることはない。
男が死ぬ時は女が死ぬ時というボロの言葉が俺を奮い立たせる。
どうしようもない精神論だが、俺は心を切らさず必死に耐え続けた。
そして紙一重で耐え続けたことで、俺に奇跡のような勝機が巡ってくる。
俺へ槍を突き出そうとした盗賊の足元に、俺が鍔迫り合いで顔面を破壊した盗賊がいたのだ。
俺は必死で攻撃をさばいていたため、地面に横たわる彼女の事を気にせず踏みしめて後退していた。
対して、目の前の盗賊は、仲間を踏むことに躊躇し踏み込むことをやめた。
しかも後ろの螺旋の炎を放つ盗賊も、まだ次の炎を生み出している最中だ。
俺は行き先を失った槍を、顔面を破壊した盗賊の槍と同じように、剣を振り下ろして槍を切断する。
盗賊は槍を手放し、素早く剣を引き抜くが、その時には既に、俺は盗賊を間合いに捉えていた。
盗賊は焦ったように剣を振り下ろし、俺の鎖骨にズシンという衝撃が重く響くが、皮鎧が刃までは通さなかったため致命傷ではない。
猩々との死闘以来、俺の筋力は跳ね上がっていたが、あの死闘で出ていた筋力を出せていない気がしていた。
その理由がようやくわかった。
魔法や大地の加護なんて曖昧なものがある世界なんだ。
殺すことにおびえていた俺の心に従って力を抑えていたのだろう。
俺は肩で剣を受けながら自分の剣を大きく引き絞ると、盗賊の体を覆い隠す盾へ叩き込んだ。
その結果は盾は真っ二つに破壊され、中指と薬指の間が引き裂かれた盗賊の腕が現れた。
俺は苦悶の声を上げる裂けた女の腕を左手で掴み取り、右手に持った剣をもう一度上段に構えると、俺と同じく皮鎧で全身を守っている盗賊の肩へ剣を叩き込んだ。
「うごっ! あっ……あ゛あ゛あ゛あ゛」
俺の剣は皮鎧に弾かれることなく人体を破壊していた。
一刀両断とまではいかないが、鎖骨も胸骨も切り裂いて胸まで到達している。
もうこの女は助からないだろう。
「レイコォォォ!」
炎を出していた盗賊が叫び声をあげた。
どうやらこの人はレイコというらしい。
レイコは心臓を破壊されながらも、震える手にもった剣は落とさず、俺を攻撃しようとしている。
俺は剣を引き抜き、レイコを蹴り飛ばして、炎を操る盗賊の方へと走った。
俺は剣を引き抜くときに拾っていた真っ二つになった盾を突き出し、向かってきていた炎を受け止める。
真っ二つになったとはいえ、元々は人一人覆い隠すほどの大盾だ。半分になっても十分な防御能力はある。
俺の足はあっという間に泣きながら炎を出す盗賊へと接近し、その腕と、首を、斬り落とした。
俺は守り切れなかった防壁を見た。
防壁の上には既に人はおらず、戦場は村の中に切り替わっているようだ。
俺は村の方へと走り出した。
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