中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo

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美青年騎士は愛しい中年冒険者を囲い込む

 きめ細やかなペールオレンジの肌はしっとりと吸い付くような肌触りで、艶やかな黒髪はしなやかで、澄んだ栗色の瞳も涙に濡れて美しい。

「……カイト」

「っ……ん、はぁ……」

 薄い腹から細い腰を撫で、両手で腰を掴むように抱えるとカイトは小さく震え、腹に納まっている私の性器をキュッと締上げた。それと同時に私の腰から背中、頭へと快楽が駆け上がる。

「うっ……ん、ルーファス……もう」

「だめ、もう一回」

 カイトの腰を引き寄せ、一度最も深く入り込んでから律動を始めた。繋がりが浅くなり深くなり、そのリズムに合わせてカイトが甘い声をあげ、結合部からは水音があがり、ベッドが軋む。

「うっ……く……ひっあ、あ、ああっ!」

 快楽から逃げようとするカイトを抑え込んで律動を続ければ、カイトは小さく悲鳴をあげて達した。

 カイトの性器は殆ど反応がないし、射精することはない。男としての性的機能は失われており、治療は続けているものの回復は難しいというのが医者の診断だ。

 けれど、特に問題はない。カイトの男性機能は失われたが、私の伴侶としての性的機能は失っていないのだから。

 私を腹に受け入れ、腹の奥で私を感じて達することができるようになっているのだ。問題などあろうはずがない。

 ただ、本人は自分が腹奥にまで私を受け入れて、達することができることを覚えていない。

 男同士の性交で使われる浄化剤には種類があり、腹内の浄化と同時に媚薬が含まれるものもある。男同士の性交は受け入れる側に負担が大きく、快楽を得られるようになるまで経験が必要になる。そのため媚薬入りの浄化剤を使うことで、早く快楽を感じられるようにするのだ。

 カイトを抱くとき、私はその媚薬入りの浄化剤を使う。

 性交といえば暴力と苦痛という学習をしてしまっているカイトに対してはその間違った学習を上書きする必要があったから。私と体を重ねることは、気持ちがよいことで暴力とも苦痛とも無縁であると。

 そのお陰でカイトは腹奥で達することができるようになったのだが、性行為中の記憶が飛んでいることが多い。全く覚えていないわけではなさそうではある、時々なにかを思い出したように顔を赤らめたり、慌てたりしているから。

「……でも、近いうち、しっかり記憶できるようになりますからね」

 私に抱かれて、快楽に溺れたことをあまり覚えていないことは残念ではある。こんなに愛し合って、抱き合うことの心地よさを共有してるのだから是非覚えていて欲しい。

「ルーファス……?」

「いえ、まだ終わりじゃないですよ?」

「えっ……あっあっ……ひっ」

「可愛いカイト、今度は一緒にイきましょうね」

 しっかりとカイトの体を押さえつけて律動を再開する。

 甘い喘ぎ声、蕩けた顔、弱弱しくすがる手、しっかりと私の性器を咥えて離さない腹奥。私は改めて愛おしい伴侶の体に溺れ、充実した夜を過ごした。




 キングサイズのベッドではカイトがまだ眠っている。

 昨晩はカイトの可愛らしさに我慢ができず、しつこくしてしまった。そのせいか、眠っているというのに顔にはまだ疲労の色が浮かんでいる。

 申し訳ないと思いながらも、嬉しくも思ってしまう。

 初めて会ったときのカイトは、はっきりいって疲れた中年の冒険者だった。黒髪はパサついて艶がなく、白髪が混じっている状態。栗色の瞳は澄んでいて美しかったが、左目は白く濁っていて見えていないようだった。肌は乾燥して荒れており、体のあちこちに大小の傷痕が見え、特に左腕に見える傷は大きかったし、左足は引き摺っている。

 私の目には、愛おしい番が傷ついているようにしか見えなくて……このままにしておくことはできず、反射的に連れ去ってしまった。

 その後、カイトの過去を嘘偽りなく知ったのだが……ショックを受けなかったといえば嘘になる。異世界からやってきた異邦人で、番がわからない、ここまではいい。けれど、愛おしい番が騙されて奴隷に落ち、その後に受けた暴力や性搾取などは許せない。

 ノーフォーク王国にカイトを連れ帰り、両親と兄夫夫と顔を合わせ、正式にカイトと婚約を結び国籍を移した。その後、すぐに直轄領の代官として赴任して前任者から仕事の引継ぎが終わって業務が落ち着いたころから、私は行動を始めたのだ。

 カイトを傷つけた者を許してなど、おけなかったから。

 ベッドサイドチェストの引き出しから、報告書をまとめて入れている封筒を取り出した。ここ半年で調査・行動したことは大体この封筒に入れられている。


 文字の読み書きに明るくないカイトを騙し、奴隷に落とした冒険者とギルド支部長のことは絶対に許せなかった。三人いた冒険者のうち、生き残っていたのは二人。盾持ち剣士と魔法使い。

 二人とも冒険者は廃業しており、剣士は牧場の従業員に、魔法使いは魔法学校の教師になっていた。しかし、牧場従業員は牧場に隣接している森を流れる川で足を滑らせて転落し亡くなり、魔法学校の教師は魔法薬の実験中の事故で亡くなっている。

 川の近くは滑りやすいから、事故が起きても不思議ではない。魔法薬は扱いが難しい品で、それを専門ではない教師が扱った場合に不幸な事故もあり得るだろう。

 カイトが所属していた冒険者ギルド・ジェント支部の支部長であった男は、護衛であった冒険者たち共々魔獣に襲われて帰らぬ人になった。

 彼らが襲われたのは魔獣除けの設置された街道沿いだったというが、ダンジョンから滅多に出てこないというネームド魔獣に襲われたのだというのだから……運がなかったのだろう。

 旅の行商人は今でも行商を続けているらしい。一人の奴隷を連れて、大陸中を回っている。ただ、彼が取り戻したいと思っていたウィルクス商会は破産して今はもうない。先代店主の妻と先代店主の弟が無理心中事件を起こしたため、ウィルクス商会は名前すら残っていない。

 商売人は縁起を担ぐというから、店舗は取り壊されて更地になり、ウィルクスの名を持った商会はこの先数十年は出てこないだろう。

 ベレス王国の王妃はしばらく前、王都から離れ東部地域にある離宮に入ったらしい。王妃と共に離宮に入ったのは末の王女だけで、王子たちは王都に残っている。その際、長年側にいた側仕えたちは一人も連れて行かなかった。

 その後すぐ、国王夫妻の側近の殆どが職を辞している……これは私の関係したことではない(さすがに他国の王族に手出しはできない)が、恐らくカイトがヴォルジーの文官に渡した『異邦人・タナハシカイトの遺品』が関係していると思われる。

 王妃の手元に『遺品』が渡り、そのときカイトの真実が耳に入ったのかもしれない。その結果が王を王都に残したまま、王妃の離宮入りだ。

 ベレス王国の王妃は美しい容姿と深い教養を持ち、理想の王妃と呼ばれている。しかし、カイトから聞くに実際の王妃は、美しい容姿から見える儚さとは無縁の、強く逞しく曲がったことが嫌いな方のようだ。

 王や辞めた側近たちがどう思っているのかはわからないが、恐らくカイトに対して行ったことへの罰なのだろう。最愛の番である王妃に別居された王は打ちひしがれている(私が伴侶となったカイトから別居を言い出されたら、泣き叫んで縋る自信がある。なんと恐ろしいことか、狂うかもしれない。もし実際に言われたら、カイトの足を奪おう)だろう。

 長年仕えた国王夫妻から切り捨てられた側近たちも、地獄を見ていると思われる。国王夫妻の周りには誰もが侍りたいと願い、妬ましいという気持ちが渦巻いて、隙があれば足を引く世界。側近を外された者が社交界で何と言われ扱われるか……かなり悲惨なことになっているだろう。


「……うん、ん。ルーファス?」

「起こしてしまいましたか、すみません」

 封筒に報告書や資料を戻して引き出しに片付けると、寝返りを打ったカイトを抱き寄せる。甘酸っぱい番の香りをいっぱい吸い込み、頬を寄せるとカイトもそれに答えるように体を寄せてくれた。

「もう、朝?」

「いえまだ起きるのは早いです」

「じゃあ、もう少し一緒に寝よう」

 カイトの腕が私の背中にまわり、抱きしめられる。すぐにカイトの穏やかな寝息が聞こえ、心臓の鼓動が感じられた。

 ああ、私の愛おしい番はちゃんとここにいる。私の腕の中にいるのだ。

 安心したら眠気がやって来た。一度目が覚めれば眠気などこず、二度寝なんてしたことがないというのに……目が覚めるのはいつもより数時間遅くなりそうだ。

 けれどきっと、皆許してくれるだろう。

 なかなか番に出会えなかった私が、愛おしい相手と出会って国に連れ帰り、赴任地であるこの地でようやく共に過ごせるようになったのだ。

 カイトには「番を理由にしてまた甘えて」と叱られるかもしれない。

 それでも、この安心感と眠気には逆らえない。

 穏やかに眠るカイトを抱いて、私は目を閉じ……幸せに浸った。

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