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2章:王の胎動
25話:確かめ合うように
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雪崩れ込むようにベッドへと倒れ、エトワールはゆっくりとユリエルの衣服を脱がす。だがその手が不意に止まった。金色の瞳は、ユリエルの肩を見ていた。
「リューヌ、怪我をしたのか?」
「え? あぁ……」
ジョシュとの戦いで負った傷はまだ癒えていない。痛みもないし、傷は塞がっているが完全ではない。薄い皮膚がようやくできたくらいだ。
「ここであった戦に、巻き込まれてしまって。いても立ってもいられなくなったのです」
「どうしてそんな無茶をしたんだ! 下手をすれば死んでいたかもしれない」
怖いくらいの真剣な瞳がユリエルを見る。その強さに、ユリエルは少し驚いた。けれど、徐々にじわりと胸の奥が温かくなって微笑んだ。心配される事が嬉しかったのだ。
傷のある右の腕を上げ、ユリエルは強張ったままのエトワールに触れた。そして穏やかに微笑んだ。
「母の墓があるのです。壊されはしないかと、不安になってしまって。私には肉親などありませんから、母が唯一でした。その墓が壊されることだけは、どうしても我慢がならなかったのです」
巻かれた包帯が、ゆっくりと解かれてゆく。傷が露わになったそこに、エトワールはそっと口づけた。薄い皮膚は妙に感触を生々しく伝えるのだろうか。背に走った甘い痺れに、ユリエルは喘いだ。
「綺麗な肌を傷つけて。痛かっただろ? 無茶をしないでくれ」
「心配してくれるのですか?」
「当たり前だ。知らない場所でリューヌに何かあったら。そう思うと不安になる。俺はもう、誰も失いたくない」
苦しそうに吐き出す言葉に、ユリエルは表情を沈ませる。そして、慰めるように優しいキスをした。長く絡める交わりは少しずつ深く、確かになっていく。
「んっ」
「もっとか?」
物欲しそうな顔でもしていたのだろうか。それとも、唇が離れる瞬間に寂しそうな顔でもしていただろうか。エトワールはそれに応えるようにもう一度、深いキスをくれる。そして何度も舌を絡ませて、互いを探った。
少し硬い、けれど綺麗な指が体を探るように触れてくる。肌がザワザワと感じて、触れられた所から疼き始める。
「もっと、触ってください」
「分かっている。そんなに物欲しそうにしないでくれ。俺も、我慢ができなくなる」
ユリエルは苦笑し、手を頬へと伸ばした。端正な顔立ちに、少し硬い黒髪。そのまま背へと、手の平で触れていく。
ユリエルは躊躇うことなくエトワールに全てを晒す。エトワールもそれに応えるように触れてくれた。滑らかな胸元を手が行きすぎ、唇が触れる。その触れる一つ一つが甘く悩ましい快楽を呼び起こして、おもわず声が漏れてしまう。
その大きな手がやがて腹を過ぎ、下肢へと伸びていく。触れられるかと思ったけれどその期待は外れ、手は内腿を撫でた。
ヒクンと体が反応して、ユリエルは足を開いた。それはあまりに浅ましく、恥ずかしい行いだった。思わず顔を背けると、上から「くくっ」という笑いが聞こえた。
「これは反射で!」
「分かっている。だが頼むから、俺がいなくなっても簡単に足など開かないでくれ」
意地悪な感じで笑われると、恥ずかしくもあり反発もある。それに、この言いようには多少文句がある。怒って声を上げようとしたユリエルの口から洩れたのは、怒気ではなくて喘ぎだった。
「ふぁ! あぁ」
艶っぽい声が溜まらず漏れる。エトワールが胸の突起を軽く噛み、その後で吸い付いて舌で転がしたのだ。強い刺激に頭の中が一瞬飛ぶ。快楽に押し流されて、怒りなど忘れてしまった。
「激しいのも好きか?」
「嫌いじゃありませんけれど、今のは」
「悪かったよ。ただ」
引き寄せられ、抱きしめられる。それだけが嬉しい。このまま時間が止まってしまえばいいとすら思える。
「この体を、この心をずっと縛りつけておければと思うんだ。自分勝手なのも分かっているし、お前の幸せを願うならば言うべきではないのだが。だが、願うんだ」
切なげな表情は優しく、そして寂しげだった。ユリエルはそれを見上げて、僅かに睨む。まさかこんなにも心を縛っておいて、縛る気もないとは。無責任だ。
「では、私の心が移らぬうちに戻ってきなさい。私の心まで離れてしまわぬように。……私も、貴方の事が好きですよ。だから、貴方を想い続けます」
言葉は心に届くもの。この心はもう互いに届いている。だから疑わず、変らず、しばらくはいられると思う。ルルエとの関係を改善し、今度は姿を偽らずに彼と会いたい。そうして全てを晒して、もう一度。
エトワールが優しく抱きしめていた腕を緩める。そして、噛みついた部分を癒すように柔らかく舐め、撫でて刺激し、ユリエルを深く突き落とす。
ただされるだけはどこか悔しくて、ユリエルは彼の剥き出しの雄に手を伸ばし、緩やかな動きでそれを刺激した。
「前よりも上手いな」
「ならば気持ちの違いでしょうね。貴方を少しでも悦ばせたい」
「困った事を言わないでくれ。性急にはしたくないんだ」
困った顔で苦笑したが、その手は大胆に動いている。体を確かめる様な手の動きが、くすぐったいような疼くような感じがある。
「あぁ、っ……んぅ!」
強く吸われ、肌にも跡が残る。負けないくらい、ユリエルもエトワールの肌に唇を寄せて跡を残した。まるで自分の所有を主張するようだ。
手の中で扱き、先走りが溢れるそれを指に絡める。もう十分に熱く滾っている。溢れたそれを絡めた指を、ユリエルはクスリと笑って唇へと運んだ。
「リューヌ」
「私にもさせてください。嫌だと言っても、ひっくり返しますよ」
悪戯っぽく言いはしたが、気持ちは真剣そのものだ。それが伝わったのか、エトワールは苦笑して場所を譲った。
ユリエルに上を譲ったエトワールは、少し考えて悪い笑顔をユリエルに向けた。それを受けて、何か嫌な予感を感じたのは言うまでもない。
「では、俺の顔に尻を向けるように跨いでくれ」
「それは!」
羞恥心たっぷりの格好だ。考えただけで卒倒しそうなくらい。そもそも、弱い部分を相手に思いきり晒すような事は躊躇いがある。顔から火が出ると言うのなら出ているだろう。
だが、拒む気持ちは薄かった。そもそも弱い部分などとっくに晒しているのだし、今更だ。
ユリエルは言われた通りに彼の顔に尻を向ける様な形で彼の上にまたがる。そうすると自然と、顔の前に彼の雄々しい物がある。手に取って、少し扱いた後、ユリエルは思い切ってそれを唇へと招いた。
「んっ」
切ない色香のある声がエトワールの口から漏れる。気持ちいのだと分かると不思議と興奮する。もっとこの色香のある声を聞いてみたいと貪欲に思ってしまうのだ。
だが同時に尻を撫でられる甘く誘うような感覚がある。このまま、何をされるのか期待してしまう。浅ましいだろうが、血が沸くように全身が熱くなり緊張と興奮に心臓が壊れてしまいそうなほど鳴っている。ユリエルは彼に与えられる刺激を待ち望んでいた。
「あぁ!」
柔らかな感触が柔らかな蕾に触れて、押し込まれる。一度しか許していないそこはまだ硬く、なかなか口を開けはしない。温かく柔らかなそれが何度促しても、とても頑固だ。
「口が留守だぞ、リューヌ」
発せられる、男の色香を纏う言葉は同時に命令にも思える。ユリエルは抗う事もなくそれを受け入れて、エトワールのものを唇へと運び柔らかく上下に扱く。形の一つ一つを覚えるように丁寧に、流す蜜の味も覚えるように。根元を押さえて喉の奥まで。少しくらい苦しくても続けた。この行為に彼が喘ぐのを聞いて、興奮していた。
「さぁ、こっちもそろそろ素直になってくれ」
柔らかなそれに代わって、少し節のある指がツッと押し進んでくる。圧迫感と少しの摩擦にほんの少し辛さを感じる。けれどそこは一度、与えられる快楽を知っている。掻き回されながら出し入れされ、解すようにされると徐々に緩まって苦痛は減った。
自分の中に異物が入るというのは苦痛がある。だが、そこが徐々に熱く蕩けていくのを感じるとそれが幸福に変わっていく。四つん這いのまま受け入れていくと、そこが熱く溶けてしまいそうになるのを感じた。
「エトワール」
「もう、欲しくなったんだろ? ここが欲しそうにしている」
「んぅ!」
内側から強く刺激された途端、たまらずに嬌声が上がった。こんなの、我慢できる奴などいないだろう。だが、恥じらうユリエルを見てエトワールは嬉しそうに金の瞳を細める。
「ここが、いいんだろ?」
「やぁっ、あっ……もぅ!」
「降参か? それとも、もっとか?」
「あぁ!」
弱い部分を何度も緩く擦られ、ユリエルは体に力が入らなくてガクンと体が崩れた。陥落してしまえば楽なのだが、それは意地でも嫌だ。どうしても彼と一緒がいい。震える体を押し堪え、浅く息を吐いてユリエルは自身を握り締めていた。強く、痛みが鋭く背を伝って頭に響いてもそうしていた。
「すまない。少し、苛めすぎたな」
必死に我慢していたユリエルはゆっくりと、ベッドに仰向けにされる。抱きしめられて、そうすると自然と許せるから驚く。こんなに酷くされても、ユリエルの中にエトワールを責める気持ちは少しも浮かんでこない。
ゆっくりと足を割り開かれ、ユリエルは一瞬身を硬くする。ヒクンと震える秘部に、硬く熱いものが当たった。
「んぅ!」
指とは比べ物にならない苦しさと圧迫感、そして痛み。なにせユリエルのそこはまだ、男を受け入れるようにはなっていない。狭く柔らかで、頑なだ。
見上げる先で、エトワールも辛そうな顔をしている。端正な顔に男の色気が浮かび、欲に濡れ、それでも大事そうに労わってくれる彼を見ていると自然と痛みが薄らいだ。
「すまない、痛むだろう?」
「大丈夫……っ」
きっと苦痛が浮かんでいるだろう。肌がしっとりと濡れているのも分かる。エトワールは気遣うように秘部へと視線を向け、一瞬身を引いた。
離れてしまうのだろうか?
その方が苦しくて、ユリエルはエトワールの手を強く引いて、倒れてきた彼の首に抱きついて首を横に振った。
「このまま」
「だが!」
「痛みも、覚えておく。忘れないから」
受け入れていきたい。むしろこの痛みが、彼を覚えていてくれるだろう。こんな事、他の誰にも許しはしない。この想いは彼が全部持っていく。私心は全て彼にあげて、公人となるから。
グッと貫くような強さで中へと入り込む。悲鳴は出ない、涙も出ない。痛くないように、エトワールは何度も慣らしてくれた。そうして全てが身の内に収まったころには、体は汗でぐっしょりと濡れて体力という体力は殆ど持っていかれていた。
「少し、このままでいよう」
「はい」
互いに互いの体を感じている。抱き合って、一つになっている間は一体感を感じて安堵が胸を満たしている。抱き合っている体が、この人が唯一自分の愛しい人だと確信があった。この時間が全てだと思えた。離れないといえた。このまま一つになってしまえればと願った。
ゆっくりと動き出す律動が、痛みではないものを与えてくれる。一突きごとに嬌声が口をついて溢れる。快楽のツボを押し上げる動きが狂いそうなほどの快楽を呼び起こす。しがみついて、ぴったりと肌を合わせる。
濡れた音が僅かにする。それを遥かに上回る艶やかな嬌声が、ユリエルの口から漏れた。
「も、少し……っ」
深く押し上げるような動きに合わせるように、ユリエルは腰を動かす。より深く受け入れようと息を吐いて、襲ってくる快楽を出来るだけ先延ばしにしようとする。
でも、そう長く続けられるものではない。断続的に襲ってくる、頭を白くさせるような強烈な快楽と痙攣をやり過ごせなくなる。しがみつくようにしている腕に力が入る。
「リューヌ」
「エトワール……っ!」
「くっ!」
最後の声を飲みこんだユリエルは、弓なりに体をしならせて果てた。痙攣を止められない。息は止まりそうだった。体の内を、熱いものが満たしているのが分かる。
荒い息をついて、エトワールの体が落ちてくる。ユリエルの腕の中で、彼もまた熱い体を震わせていた。
そして、興奮や高ぶりが覚めぬ間にどちらともなく唇を合わせた。そして見つめ合い、互いの体を確かめ合った。
「リューヌ、怪我をしたのか?」
「え? あぁ……」
ジョシュとの戦いで負った傷はまだ癒えていない。痛みもないし、傷は塞がっているが完全ではない。薄い皮膚がようやくできたくらいだ。
「ここであった戦に、巻き込まれてしまって。いても立ってもいられなくなったのです」
「どうしてそんな無茶をしたんだ! 下手をすれば死んでいたかもしれない」
怖いくらいの真剣な瞳がユリエルを見る。その強さに、ユリエルは少し驚いた。けれど、徐々にじわりと胸の奥が温かくなって微笑んだ。心配される事が嬉しかったのだ。
傷のある右の腕を上げ、ユリエルは強張ったままのエトワールに触れた。そして穏やかに微笑んだ。
「母の墓があるのです。壊されはしないかと、不安になってしまって。私には肉親などありませんから、母が唯一でした。その墓が壊されることだけは、どうしても我慢がならなかったのです」
巻かれた包帯が、ゆっくりと解かれてゆく。傷が露わになったそこに、エトワールはそっと口づけた。薄い皮膚は妙に感触を生々しく伝えるのだろうか。背に走った甘い痺れに、ユリエルは喘いだ。
「綺麗な肌を傷つけて。痛かっただろ? 無茶をしないでくれ」
「心配してくれるのですか?」
「当たり前だ。知らない場所でリューヌに何かあったら。そう思うと不安になる。俺はもう、誰も失いたくない」
苦しそうに吐き出す言葉に、ユリエルは表情を沈ませる。そして、慰めるように優しいキスをした。長く絡める交わりは少しずつ深く、確かになっていく。
「んっ」
「もっとか?」
物欲しそうな顔でもしていたのだろうか。それとも、唇が離れる瞬間に寂しそうな顔でもしていただろうか。エトワールはそれに応えるようにもう一度、深いキスをくれる。そして何度も舌を絡ませて、互いを探った。
少し硬い、けれど綺麗な指が体を探るように触れてくる。肌がザワザワと感じて、触れられた所から疼き始める。
「もっと、触ってください」
「分かっている。そんなに物欲しそうにしないでくれ。俺も、我慢ができなくなる」
ユリエルは苦笑し、手を頬へと伸ばした。端正な顔立ちに、少し硬い黒髪。そのまま背へと、手の平で触れていく。
ユリエルは躊躇うことなくエトワールに全てを晒す。エトワールもそれに応えるように触れてくれた。滑らかな胸元を手が行きすぎ、唇が触れる。その触れる一つ一つが甘く悩ましい快楽を呼び起こして、おもわず声が漏れてしまう。
その大きな手がやがて腹を過ぎ、下肢へと伸びていく。触れられるかと思ったけれどその期待は外れ、手は内腿を撫でた。
ヒクンと体が反応して、ユリエルは足を開いた。それはあまりに浅ましく、恥ずかしい行いだった。思わず顔を背けると、上から「くくっ」という笑いが聞こえた。
「これは反射で!」
「分かっている。だが頼むから、俺がいなくなっても簡単に足など開かないでくれ」
意地悪な感じで笑われると、恥ずかしくもあり反発もある。それに、この言いようには多少文句がある。怒って声を上げようとしたユリエルの口から洩れたのは、怒気ではなくて喘ぎだった。
「ふぁ! あぁ」
艶っぽい声が溜まらず漏れる。エトワールが胸の突起を軽く噛み、その後で吸い付いて舌で転がしたのだ。強い刺激に頭の中が一瞬飛ぶ。快楽に押し流されて、怒りなど忘れてしまった。
「激しいのも好きか?」
「嫌いじゃありませんけれど、今のは」
「悪かったよ。ただ」
引き寄せられ、抱きしめられる。それだけが嬉しい。このまま時間が止まってしまえばいいとすら思える。
「この体を、この心をずっと縛りつけておければと思うんだ。自分勝手なのも分かっているし、お前の幸せを願うならば言うべきではないのだが。だが、願うんだ」
切なげな表情は優しく、そして寂しげだった。ユリエルはそれを見上げて、僅かに睨む。まさかこんなにも心を縛っておいて、縛る気もないとは。無責任だ。
「では、私の心が移らぬうちに戻ってきなさい。私の心まで離れてしまわぬように。……私も、貴方の事が好きですよ。だから、貴方を想い続けます」
言葉は心に届くもの。この心はもう互いに届いている。だから疑わず、変らず、しばらくはいられると思う。ルルエとの関係を改善し、今度は姿を偽らずに彼と会いたい。そうして全てを晒して、もう一度。
エトワールが優しく抱きしめていた腕を緩める。そして、噛みついた部分を癒すように柔らかく舐め、撫でて刺激し、ユリエルを深く突き落とす。
ただされるだけはどこか悔しくて、ユリエルは彼の剥き出しの雄に手を伸ばし、緩やかな動きでそれを刺激した。
「前よりも上手いな」
「ならば気持ちの違いでしょうね。貴方を少しでも悦ばせたい」
「困った事を言わないでくれ。性急にはしたくないんだ」
困った顔で苦笑したが、その手は大胆に動いている。体を確かめる様な手の動きが、くすぐったいような疼くような感じがある。
「あぁ、っ……んぅ!」
強く吸われ、肌にも跡が残る。負けないくらい、ユリエルもエトワールの肌に唇を寄せて跡を残した。まるで自分の所有を主張するようだ。
手の中で扱き、先走りが溢れるそれを指に絡める。もう十分に熱く滾っている。溢れたそれを絡めた指を、ユリエルはクスリと笑って唇へと運んだ。
「リューヌ」
「私にもさせてください。嫌だと言っても、ひっくり返しますよ」
悪戯っぽく言いはしたが、気持ちは真剣そのものだ。それが伝わったのか、エトワールは苦笑して場所を譲った。
ユリエルに上を譲ったエトワールは、少し考えて悪い笑顔をユリエルに向けた。それを受けて、何か嫌な予感を感じたのは言うまでもない。
「では、俺の顔に尻を向けるように跨いでくれ」
「それは!」
羞恥心たっぷりの格好だ。考えただけで卒倒しそうなくらい。そもそも、弱い部分を相手に思いきり晒すような事は躊躇いがある。顔から火が出ると言うのなら出ているだろう。
だが、拒む気持ちは薄かった。そもそも弱い部分などとっくに晒しているのだし、今更だ。
ユリエルは言われた通りに彼の顔に尻を向ける様な形で彼の上にまたがる。そうすると自然と、顔の前に彼の雄々しい物がある。手に取って、少し扱いた後、ユリエルは思い切ってそれを唇へと招いた。
「んっ」
切ない色香のある声がエトワールの口から漏れる。気持ちいのだと分かると不思議と興奮する。もっとこの色香のある声を聞いてみたいと貪欲に思ってしまうのだ。
だが同時に尻を撫でられる甘く誘うような感覚がある。このまま、何をされるのか期待してしまう。浅ましいだろうが、血が沸くように全身が熱くなり緊張と興奮に心臓が壊れてしまいそうなほど鳴っている。ユリエルは彼に与えられる刺激を待ち望んでいた。
「あぁ!」
柔らかな感触が柔らかな蕾に触れて、押し込まれる。一度しか許していないそこはまだ硬く、なかなか口を開けはしない。温かく柔らかなそれが何度促しても、とても頑固だ。
「口が留守だぞ、リューヌ」
発せられる、男の色香を纏う言葉は同時に命令にも思える。ユリエルは抗う事もなくそれを受け入れて、エトワールのものを唇へと運び柔らかく上下に扱く。形の一つ一つを覚えるように丁寧に、流す蜜の味も覚えるように。根元を押さえて喉の奥まで。少しくらい苦しくても続けた。この行為に彼が喘ぐのを聞いて、興奮していた。
「さぁ、こっちもそろそろ素直になってくれ」
柔らかなそれに代わって、少し節のある指がツッと押し進んでくる。圧迫感と少しの摩擦にほんの少し辛さを感じる。けれどそこは一度、与えられる快楽を知っている。掻き回されながら出し入れされ、解すようにされると徐々に緩まって苦痛は減った。
自分の中に異物が入るというのは苦痛がある。だが、そこが徐々に熱く蕩けていくのを感じるとそれが幸福に変わっていく。四つん這いのまま受け入れていくと、そこが熱く溶けてしまいそうになるのを感じた。
「エトワール」
「もう、欲しくなったんだろ? ここが欲しそうにしている」
「んぅ!」
内側から強く刺激された途端、たまらずに嬌声が上がった。こんなの、我慢できる奴などいないだろう。だが、恥じらうユリエルを見てエトワールは嬉しそうに金の瞳を細める。
「ここが、いいんだろ?」
「やぁっ、あっ……もぅ!」
「降参か? それとも、もっとか?」
「あぁ!」
弱い部分を何度も緩く擦られ、ユリエルは体に力が入らなくてガクンと体が崩れた。陥落してしまえば楽なのだが、それは意地でも嫌だ。どうしても彼と一緒がいい。震える体を押し堪え、浅く息を吐いてユリエルは自身を握り締めていた。強く、痛みが鋭く背を伝って頭に響いてもそうしていた。
「すまない。少し、苛めすぎたな」
必死に我慢していたユリエルはゆっくりと、ベッドに仰向けにされる。抱きしめられて、そうすると自然と許せるから驚く。こんなに酷くされても、ユリエルの中にエトワールを責める気持ちは少しも浮かんでこない。
ゆっくりと足を割り開かれ、ユリエルは一瞬身を硬くする。ヒクンと震える秘部に、硬く熱いものが当たった。
「んぅ!」
指とは比べ物にならない苦しさと圧迫感、そして痛み。なにせユリエルのそこはまだ、男を受け入れるようにはなっていない。狭く柔らかで、頑なだ。
見上げる先で、エトワールも辛そうな顔をしている。端正な顔に男の色気が浮かび、欲に濡れ、それでも大事そうに労わってくれる彼を見ていると自然と痛みが薄らいだ。
「すまない、痛むだろう?」
「大丈夫……っ」
きっと苦痛が浮かんでいるだろう。肌がしっとりと濡れているのも分かる。エトワールは気遣うように秘部へと視線を向け、一瞬身を引いた。
離れてしまうのだろうか?
その方が苦しくて、ユリエルはエトワールの手を強く引いて、倒れてきた彼の首に抱きついて首を横に振った。
「このまま」
「だが!」
「痛みも、覚えておく。忘れないから」
受け入れていきたい。むしろこの痛みが、彼を覚えていてくれるだろう。こんな事、他の誰にも許しはしない。この想いは彼が全部持っていく。私心は全て彼にあげて、公人となるから。
グッと貫くような強さで中へと入り込む。悲鳴は出ない、涙も出ない。痛くないように、エトワールは何度も慣らしてくれた。そうして全てが身の内に収まったころには、体は汗でぐっしょりと濡れて体力という体力は殆ど持っていかれていた。
「少し、このままでいよう」
「はい」
互いに互いの体を感じている。抱き合って、一つになっている間は一体感を感じて安堵が胸を満たしている。抱き合っている体が、この人が唯一自分の愛しい人だと確信があった。この時間が全てだと思えた。離れないといえた。このまま一つになってしまえればと願った。
ゆっくりと動き出す律動が、痛みではないものを与えてくれる。一突きごとに嬌声が口をついて溢れる。快楽のツボを押し上げる動きが狂いそうなほどの快楽を呼び起こす。しがみついて、ぴったりと肌を合わせる。
濡れた音が僅かにする。それを遥かに上回る艶やかな嬌声が、ユリエルの口から漏れた。
「も、少し……っ」
深く押し上げるような動きに合わせるように、ユリエルは腰を動かす。より深く受け入れようと息を吐いて、襲ってくる快楽を出来るだけ先延ばしにしようとする。
でも、そう長く続けられるものではない。断続的に襲ってくる、頭を白くさせるような強烈な快楽と痙攣をやり過ごせなくなる。しがみつくようにしている腕に力が入る。
「リューヌ」
「エトワール……っ!」
「くっ!」
最後の声を飲みこんだユリエルは、弓なりに体をしならせて果てた。痙攣を止められない。息は止まりそうだった。体の内を、熱いものが満たしているのが分かる。
荒い息をついて、エトワールの体が落ちてくる。ユリエルの腕の中で、彼もまた熱い体を震わせていた。
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