恋愛騎士物語4~孤独な騎士のヴァージンロード~

凪瀬夜霧

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1章:ラブ・シンドローム?

7話:甘やかさないで!(ウェイン)

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 ジェームダルとの戦争が終わって帝国に戻り、何だかんだで二週間。第二師団は日常を取りもどしている。

「よーし、今日はこれでお終い! ストレッチしてから上がれよー」

 怪我が原因で戦場を途中離脱したウェインも、今はすっかり元通りの生活を送っている。

 厳密に言えば、多少の違和感はある。だがそれは本当に少しだ。怪我の大きさから考えると奇跡的とも言える。
 生死の境を彷徨い、何度か危ない事もあったけれど、目が覚めてからは回復していった。最初は痛みがあって夜に眠れず薬に頼る事もあったが、一ヶ月もするとそれもなくなった。リハビリを開始してからは順調だ。
 今残っている違和感は痛みではなく、ほんの少し肺活量が落ちたという数値面の事だ。当のウェインはまったくそんな事はない。ダメージが大きかったから、多少数値が落ちるのは仕方がないそうだ。

 その為現在は普通に訓練をしている。怪我をしたからといつまでも過保護にしていては落ちた機能が回復しないそうだ。夏ということもあって潜水でのリハビリなどもして、そのおかげが機能回復は早かった。

 ただ、問題がまったくない。というわけではないのだ。

「ウェイン」

 背後から声がかかり、足音が近づいてくる。ビクリと肩を震わせると、その背に温かな体が包み込む様に触れてきた。

「またこんな薄着で。今は風邪も流行っているんだぞ、少し考えろ」
「アシュレー!」

 まとわりつくように抱き込まれて狼狽えるのはウェインだ。なんせまだ隊員の前なんだ。

「相変わらずラブラブっすね」
「ウェイン様、結婚式は呼んでくださいよー」
「お前等!!」

 もの凄く恥ずかしい。けれどこの背後霊を振り払うと、とても悲しそうな顔をする。睨むとか、不服そうとかではなく、とても弱い目をするんだ。

 怪我をしてから、アシュレーの態度が変わった。とにかくべったりで、側を離れようとしない。今はこれでもまともになったほうだ。
 分かっている、とても心配させた事は。目が覚めた時も、その後も、アシュレーは泣いて抱きしめ離そうとはしなかった。

 いつもアシュレーはちょっと勝手で、でも他人の前で弱さを見せない奴だった。可愛くなくて。なのにあの時は、とても弱っていた。

 愛されている事を感じた。愛している事を再確認した。そして二度と、彼にこんな顔をさせないと誓った。

 けれど、今もこの過保護が継続中なのは困る! 部下はニヤニヤしてるし、アシュレーは元気ないし、もの凄く過保護だし!

「もぉ、離れてよ! 体動かすと汗かくからこのくらいでいいんだってば!」
「かいた汗が冷える。行くぞ」
「うわぁ!!」

 ふわりと体が浮いてまさかのお姫様抱っこ! もの凄く恥ずかしいけれど、体格的にも筋力的にもアシュレーには敵わない。出来る事はポカスカ叩く事だけだ。

 お風呂に入れられ、一人で出来るって言っているのに「お前は雑だ」と頭を洗われ、その後丁寧に髪を拭かれて。ここまでやってようやく安心するのか、アシュレーの手が離れる。
 食事をして、それでも隣を離れないアシュレーをオリヴァーが「おやおや」と目を丸くして笑い、ウルバスが微笑ましく笑っている。もの凄く恥ずかしい。


「ねぇ、いい加減に離れてよ。僕、恥ずかしいったら」

 当然のように安息日前日はアシュレーの部屋。温かいパジャマを着て不満たっぷりに言えば、アシュレーは困った顔をした。

「俺も少し考えているんだが……これに慣れるとお前がいないのが不安だ」
「だからって!」
「これでも訓練の間は忘れるように努力しているんだ」

 そうは言われても、この状態は本当にしんどい。以前みたいにウェインを誘うような隊員はいなくなったけれど、からかう仲間は増えてしまった。

「……ねぇ、しないの?」

 少し離れている背中に問いかけると、アシュレーはどこか沈んだ顔をする。それが、苦しい。

 あの一件から何ヶ月も経っているのに、アシュレーはウェインを抱こうとしない。もうリハビリもしていない、通常生活に戻っているから平気なのに。

「僕、寂しいんだけど」

 呟くと、ビクリと背中が揺れた。立ち上がり、その背中にピッタリと寄り添う。温かな体と心臓の音が聞こえる。

「いつまで僕は怪我人なの? もう、リハビリも終えてるよ?」
「ウェイン」
「寂しいよ。過保護にされるんじゃなくて、触れて欲しい。隣にいていいんだよね? 僕、背中に庇われるなんて嫌なんだけど」

 それとなく希望を伝えると、ビクリと震えたのを感じた。
 怖がっているのは分かっている。体を心配してくれているのも。優しいのだって知っている。
 でも、側にいるのに触れてくれないのは見捨てられたみたいで怖い。体を重ねる事が愛情の全てじゃないとは思うけれど、一つの愛情表現なのも確かだから、そこが抜け落ちてしまうのは不安がある。

「抱いてよ、アシュレー。不安なら、優しくして? アシュレーだって安心したいでしょ? もう僕が大丈夫なんだって、感じてよ」
「ウェイン、でも……」
「傷物は嫌い? 確かに傷跡残ってるけど、もう痛くないよ。それとも、嫌いになったの?」
「違う! ……怖いだけだ」

 否定の言葉は強い。見つめる瞳に熱がないわけじゃない。怖さは、消えてくれない。

 振り向いたアシュレーを見上げて、首に腕を絡ませて、キスをした。唇を割って、絡ませると少し辛そうな顔をする。それでも離せないから、もっともっと、深くまで。

「アシュレー、欲しい。僕の事愛してるなら、ちゃんと体も愛してよ。気持ちだけじゃもう足りない。アシュレーの事、体が忘れる前にちょうだい」

 甘えて、誘って、どうしてもって気持ちで見上げてみると奪うように唇を塞がれる。余裕のないキスは、そのままアシュレーの気持ちだと思う。求められる事が心地よい。

「辛かったら、言えよ」
「うん」

 多分、言わないけれどね。


 くちゅ、くちゅっと濡れた音が耳を犯すのは恥ずかしいと同時に理性もそぎ落としていく。
 逞しいアシュレーの腹の上に跨がったまま、腰に片手を添えられて、敏感な乳首を食まれて、舐められて。それだけで背が震えて甘い声で泣いてしまう。

「ひぅう! ひゃん! もっ、そこばっかりやらぁ」

 沢山されて、ぷっくりと赤く腫れた乳首がジンジンしている。プルプルでコリコリで、そこを舌で転がされるとゾクゾクする。
 トロトロっと、昂ぶりからは先走りが溢れてアシュレーの腹を汚している。薄い下の毛ではこれだけの蜜を受け止められなくて、そのまま垂れ流しだ。

 甘く、アシュレーはとても優しく行為を進めている。片手は腰骨の辺りを撫で、唇で胸元を愛撫し、指の一本がもうずっと後孔を犯している。
 浅い部分を攻められて朦朧としてしまうほど気持ちがいい。ゆっくり優しく入口ばかりを攻められるから、腰は蕩けて力が入らなくなっている。

「おねが……もっ、お尻ちゃんとして」

 生殺しもいいところだ。トロトロに蕩けているのは入口ばかりじゃない。もっと深い奥の部分が切なくなっている。

「まだだ」
「こんなの苦しいよぉ。アシュレーのが欲しいよぉ」

 さっきから息が切れている。興奮で呼吸が浅くなっている。ゾクゾクっと駆け上がってくる刺激にブルブル震えながら懇願するウェインを、アシュレーは丁寧にベッドへと押し倒した。

 ゆっくりとギリギリまで引き抜かれ、次に犯される時には圧迫感が二倍になって戻ってきた。でもこのくらい、散々に慣らされた後だと苦痛がない。柔らかく受け入れて、しっかりと中を擦り上げられて、もどかしさと気持ちよさにすすり泣いてしまう。

「ひぅ……は、ぁぁ……きもひぃいよぉ」

 ゆっくりと出入りされて、擦られるだけでブルブル震える。はふはふ言いながら、ウェインは腕を伸ばして抱きついた。ポロポロと涙もこぼれて、子供みたいだ。

「平気か?」
「うぅ、きもちくて……やぁぁ!」

 低く柔らかく、そして甘い声が耳元で囁いてくる。それだけで脳を冒されるみたいで痺れる。ゆるゆる腰を振りながらおねだりをしてしまう。

「可愛いな、お前は」
「かわいぃ、いう、にゃぁ!」

 優しく撫でられていた気持ちのいい部分が突然グリッと強く押し込まれる。途端、背に走ったのは強すぎる快楽で、ウェインはそれに勝てなかった。
 ビュクッと白濁が溢れて濡れていく。直接すぎる快楽は自慰ばかりの体には深すぎた。これが欲しかったんだと言わんばかりに中が収縮して、アシュレーの指を締め付けた。

「はぅ、はぁ、あっ、アュ……ぅ」

 艶めいたアシュレーの目を見つめて、たまらず唇を奪った。ほぼ無意識だったと思う。あまりに色っぽくて、なのに我慢もしていて切なそうで。我慢なんてしてほしくなくて、たっぷりと絡めるようにキスをした。

「ウェイン……」
「ほしぃの……アシュレーので、満たして欲しいよ」

 指だけなんかじゃ満たされない。中途半端じゃ満足できない。この人の全部を求めるのは強欲なんだろうか。

 指が抜けて、熱い切っ先が押し当てられる。とても熱くなっているのが敏感になった部分で分かる。それに、我慢していたのがよく分かる。知っている大きさよりも大きい気がする。

「痛かったら、言えよ」
「んっ」

 多分、言わない。切れても、痛くても、欲しいんだから。

 ゆっくりと押し入ってくる熱い楔に貫かれて、駆け上がるような刺激と痛みに悲鳴をあげた。ヒュッと喉が鳴って、震えて涙がこぼれた。

「悪い、ウェイン! やっぱり」
「嫌だ! 抜くなぁ!!」

 しがみついて抵抗したウェインに、アシュレーは溜息をつく。そしてゆるゆると、萎えかけている前を扱いた。

「はぅぅ、んっ、ふぅぅ」

 気持ちよさに意識が逸れている間に、またゆっくりと押し入ってくる楔。力も入らなくて、ゆっくり時間をかけて受け入れていけた。ピッタリと下生えが尻に当たって、とても苦しくてふにゃりと笑った。

「まったく、切れたじゃないか」

 恨みがましく言われたけれど、そんなの聞くつもりはない。

「恋人を何ヶ月も放置したからだよ」
「……怖かったんだ、仕方がないだろ」

 睨まれて、でもされるのは優しいキスだ。甘やかしてくれる、温かな瞳だ。

 ほんの少し腰を引かれ、またゆっくりと押し入られる。香油を追加されて、徐々に馴染むようにゆっくり。中を擦られる時間だけ、ゾクゾクして凄い。けれどゆっくりだから達するような刺激ではない。長く気持ちいいが続いて、頭の中は茹だりそうだ。

「もっ、強いのぉ」
「ダメだ」
「バカ過保護!」
「何とでも言え」

 「鉄面皮、強情者、弱虫」と悪態を並び立てながら腰を振ってもまったく早めてもらえない。けれど最後に「根性無し」と言った時にはちょっとショックな顔をしていた。

「バカうさぎ、俺が大事にしたいと思ってるのに散々に言うな!」
「ひゅぅ! あっ、んぅぅ!」

 ズンっと押し込まれた先端が、気持ちのイイ部分を抉って最奥を突く。苦しいのに気持ち良くて、一瞬飛んだみたいになった。

「かふっ、あっ、にゅうぅぅぅ!」

 抱きついて、一緒に中も締まっている気がする。アシュレーの熱を強く感じた。
 耳元で、彼の興奮した息づかいを感じる。見るともう、理性は切れているんだと分かった。深く口づけられて、グチャグチャに舌を絡めながら激しく求められて……真っ白に飛びながら嬉しくてしがみついておねだりをしている。
 どれだけイッたのか分からない。でも、まだ欲しくてたまらない。アシュレーも止まらないのをいい事に、ドロドロになるまで抱き合った。終わった頃には息が苦しくて、ちょっと後悔もした。

 ヌルリと抜けた後で、たっぷりと注がれたものが溢れ出てくる。口が閉まらなくて、なんだか沢山だ。

「平気か、ウェイン……って、無理か」
「あははっ、腰たちまひぇん」

 鳴きすぎて掠れた声で笑った。正直体は辛すぎるけれど、気持ちは大満足。何ヶ月も満たされなかった部分が一杯で、お腹いっぱいで幸せ。
 アシュレーはシュンとしていたけれど、擦り寄ってキスをしたら苦笑して、水をくれた。

「我慢は、良くないな」
「わかった?」
「懲りた。余計に抑制がきかない」
「獣アシュレーは凄かったよ」

 からかうみたいに言ったらちょっと睨まれて、次には耳をカプリと噛まれた。

「ふにゃぁ!」
「からかうと骨まで食われるぞ、ウェイン」
「オオカミ!」
「今更だな」

 言い合って、笑って、抱き合いながら眠る。少し寒くなりだした季節、二人の間はほかほかな陽だまりみたいだった。
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