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3章:温泉ラブラブ大作戦
1話:誕生日の祝い方
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十月になり、ランバートは毎日のように悩んでいる。それというのも、ファウストの誕生日が近いからだ。
一年目はどうにか祝った。二年目はなんだかんだで流れてしまってお祝いらしい事はしなかった。だから今年はと思っているのだが……正直ノープランだ。
ジェームダルとの戦後処理は順調で、来年にもラン・カレイユで三国が集まっての公式会談を開くことで話が纏まっているらしい。
隊の立て直しも徐々にだが出来てきた。二年目が育ち、三年目も逞しくなった。これなら何があっても大丈夫だと思える。
問題は王都ではなく、地方なのだが……
「やはり、地方視察に行かなければならないな」
ファウストが難しい顔でそう呟き、報告書を投げた。
これには地方砦の隊員の成績が書き込まれている。それがどうにも芳しくないのだ。中央に精鋭が集まる状態のため、地方は緩い。
それに加えて大きな戦の後という気の緩みもあるのか、問題行動を起こす隊員もいるとのこと。
特に報告があるのが王都から一日半ほど行った先のジェンラ砦だった。
「あそこの責任者はどうも苦手なんだがな」
「そんな事を言ってる場合か? 女遊びと酒で町の住人からも苦情が来てるだろ。これ、放置できないって」
「タガを外しやがって。酔って酒場の女性にセクハラなんて、情けない事を」
「お戯れで済んでるうちに締めに行かないとな」
暗府の監査からの報告を読み直したランバートは、すぐに一週間の出張の予定を組む。幸い書類仕事は日々片付けているから急ぎのものはない。一週間くらい空けても問題はないだろう。
「お前が行くのか?」
「え? あぁ、そのつもりだけど」
「俺も行く」
ふて腐れた子供のような顔をして睨むファウストを見て、ランバートはキョトンとする。そもそもランバートが動く理由が、ファウストがもの凄く嫌そうだからなのだが。
「俺とファウストで行くのか?」
「あいつとお前を二人だけで引き合わせたくない」
「あの、なんで……」
「いけ好かない相手だ。特にお前が俺の恋人と知っていれば、絶対に何かしでかす」
「いや、そんな」
それを知ってあえて手を出す人には、会った事がないんだが……
だがふと思った。実はこの砦にいく途中に、二人で初めて行った温泉地があるのだ。
ランバートの風邪などもあって、二人とも戦後の休みはあってないようなものだった。寂しいという気持ちも多少はある。だからこの機会に短くても旅行というのは、いいかもしれない。
「ファウスト」
「どうした?」
「出張の帰りに、一泊でもいいから温泉行かないか? ほら、初めて二人で桜を見に行った」
休みが取れればの話なんだが。
思ったが、それを聞いたファウストの柳眉がピクリと上がり、ガタンと音がしたと思ったら報告書を引っつかみ「シウスの所に行く」とバタバタ出て行った。
「ははっ、正直だな」
どうやらなんとしても休みをもぎ取る様子のファウストに、ランバートは思わず頬が緩むのを感じた。
その週の安息日、渋るファウストを宿舎に置いて久しぶりに一人で街に出た。誕生日の贈り物を選ぶのに贈られる相手を連れてくるバカはいないだろう。
だが、何がいいのか。これといって装飾品を身につけないから分からない。剣帯の飾りも既にお揃いであるし、ピアスもあげた。お揃いの物も結構あるし、特別感が欲しい。最近服は買ったし。
「困った」
旅行の代金は我を通してランバートが出し、離れをとった。その時に、何か贈りたいと思っているのだ。だから大きな物はダメだ、持ち運べる大きさでなければ。
そんな事を考えながら街を歩いていると、不意にショーウィンドウが目に入った。以前デイジーが見ていた、ぬいぐるみの店だ。
『幸せのぬいぐるみ店』と、若い女性に人気の店だ。カップルや、結婚式のウェルカムベアー、子供が生まれた時の贈り物などに使われている。
確かに愛らしい顔をしている。ふっくらとした頬にクリクリと大きな瞳。愛らしい笑み。一つずつ職人が作っているから、少しずつ顔が違ったりしている。
「でも、男の部屋にこれか?」
ファウストの部屋に、愛らしいぬいぐるみ…………
「くっ、ははっ」
似合わない。似合わないからこそ見てみたい気がする。これを貰った時のファウストの顔を想像してみてランバートは笑う。そして「よし」と気合を入れて、店へと入っていった。
一年目はどうにか祝った。二年目はなんだかんだで流れてしまってお祝いらしい事はしなかった。だから今年はと思っているのだが……正直ノープランだ。
ジェームダルとの戦後処理は順調で、来年にもラン・カレイユで三国が集まっての公式会談を開くことで話が纏まっているらしい。
隊の立て直しも徐々にだが出来てきた。二年目が育ち、三年目も逞しくなった。これなら何があっても大丈夫だと思える。
問題は王都ではなく、地方なのだが……
「やはり、地方視察に行かなければならないな」
ファウストが難しい顔でそう呟き、報告書を投げた。
これには地方砦の隊員の成績が書き込まれている。それがどうにも芳しくないのだ。中央に精鋭が集まる状態のため、地方は緩い。
それに加えて大きな戦の後という気の緩みもあるのか、問題行動を起こす隊員もいるとのこと。
特に報告があるのが王都から一日半ほど行った先のジェンラ砦だった。
「あそこの責任者はどうも苦手なんだがな」
「そんな事を言ってる場合か? 女遊びと酒で町の住人からも苦情が来てるだろ。これ、放置できないって」
「タガを外しやがって。酔って酒場の女性にセクハラなんて、情けない事を」
「お戯れで済んでるうちに締めに行かないとな」
暗府の監査からの報告を読み直したランバートは、すぐに一週間の出張の予定を組む。幸い書類仕事は日々片付けているから急ぎのものはない。一週間くらい空けても問題はないだろう。
「お前が行くのか?」
「え? あぁ、そのつもりだけど」
「俺も行く」
ふて腐れた子供のような顔をして睨むファウストを見て、ランバートはキョトンとする。そもそもランバートが動く理由が、ファウストがもの凄く嫌そうだからなのだが。
「俺とファウストで行くのか?」
「あいつとお前を二人だけで引き合わせたくない」
「あの、なんで……」
「いけ好かない相手だ。特にお前が俺の恋人と知っていれば、絶対に何かしでかす」
「いや、そんな」
それを知ってあえて手を出す人には、会った事がないんだが……
だがふと思った。実はこの砦にいく途中に、二人で初めて行った温泉地があるのだ。
ランバートの風邪などもあって、二人とも戦後の休みはあってないようなものだった。寂しいという気持ちも多少はある。だからこの機会に短くても旅行というのは、いいかもしれない。
「ファウスト」
「どうした?」
「出張の帰りに、一泊でもいいから温泉行かないか? ほら、初めて二人で桜を見に行った」
休みが取れればの話なんだが。
思ったが、それを聞いたファウストの柳眉がピクリと上がり、ガタンと音がしたと思ったら報告書を引っつかみ「シウスの所に行く」とバタバタ出て行った。
「ははっ、正直だな」
どうやらなんとしても休みをもぎ取る様子のファウストに、ランバートは思わず頬が緩むのを感じた。
その週の安息日、渋るファウストを宿舎に置いて久しぶりに一人で街に出た。誕生日の贈り物を選ぶのに贈られる相手を連れてくるバカはいないだろう。
だが、何がいいのか。これといって装飾品を身につけないから分からない。剣帯の飾りも既にお揃いであるし、ピアスもあげた。お揃いの物も結構あるし、特別感が欲しい。最近服は買ったし。
「困った」
旅行の代金は我を通してランバートが出し、離れをとった。その時に、何か贈りたいと思っているのだ。だから大きな物はダメだ、持ち運べる大きさでなければ。
そんな事を考えながら街を歩いていると、不意にショーウィンドウが目に入った。以前デイジーが見ていた、ぬいぐるみの店だ。
『幸せのぬいぐるみ店』と、若い女性に人気の店だ。カップルや、結婚式のウェルカムベアー、子供が生まれた時の贈り物などに使われている。
確かに愛らしい顔をしている。ふっくらとした頬にクリクリと大きな瞳。愛らしい笑み。一つずつ職人が作っているから、少しずつ顔が違ったりしている。
「でも、男の部屋にこれか?」
ファウストの部屋に、愛らしいぬいぐるみ…………
「くっ、ははっ」
似合わない。似合わないからこそ見てみたい気がする。これを貰った時のファウストの顔を想像してみてランバートは笑う。そして「よし」と気合を入れて、店へと入っていった。
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