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3章:温泉ラブラブ大作戦
5話:仲直りの仕方
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部屋についてベッドに寝かされる間に、ランバートの体は完全に反応しきって震えていた。体が熱くてどうしようもなく、切なさと苦しさに涙が溢れてくる。そして気持ちはずっと謝っていた。
「ごめ……ファウスト、ごめ……」
「何を謝っているんだ」
「ごめ……っ」
優しい黒い瞳が見下ろして、髪を撫でて額にキスをくれる。その優しさに胸の奥が締まって苦しく、体はゾクゾクと反応して下肢や腹の中が疼いた。
「んぅ! ふっ、あぁ……」
「辛い、な。少し出した方が楽になるだろ。触れて、いいか?」
自分の事のように辛そうな顔をして問いかけられて、ランバートは頷いた。
触れて欲しい。喧嘩して、苦しくて、でもこの目はもう怒ってはいないから甘えてしまいたい。
「ごめ、ファウスト……ごめんっ」
「……俺も悪かった。変に隠そうとして、不安にさせた。お前が悪いんじゃない」
「ごめんっ」
「落ち着いたらちゃんと、俺の口から話をする。だから今はこの熱を収めてしまおう」
そういうと、ファウストはゆっくりとランバートのズボンを脱がせていく。下着も丁寧に下ろしたそこで、恥ずかしい程に張りつめた昂ぶりがトロトロに先走りを溢していた。
「あっ、みなぃ、んぅ!!」
恥ずかしさがこみ上げて思わず口をつく。だがファウストの指は柔らかく握り、ゆっくりと丁寧に扱いていく。
背に強い快楽が走って突き抜けた。そしてたったこれだけで吐き出してしまった。
「あっ、うそ……いや、んぅぅ」
「強い薬はそのぶん持続性はない。合法でもないが、ヤバイものじゃないだろうから少しだけ我慢してくれ」
「あぁ! ひっ、んぐっ!」
節のある、少しザラつく手で優しすぎる快楽を与えられて腰が蕩ける様に熱い。ガクガクと体が震えて、快楽に頭の中が真っ白になっていく。
それなのにファウストはトロトロの昂ぶりを口に含み、丁寧に舐めとり奥まで入れてしまう。それで二度目を吐き出したランバートは息も絶え絶えな状態だった。
「まだ、辛いか?」
「いっ、気持ち良くて、つら……っ!」
優しくされて切なくて、気持ち良くて溶けていってしまう。後孔がキュッと締まり、触れられていない奥の奥がジクジクする。
それでもファウストは奉仕だけをしてくれた。扱きすぎないように柔らかい動きと力で、唇で。もう出ないくらい薄まったものが吐き出されて、ランバートの体から力が抜けた頃、ようやく彼は離してくれた。
「収まってきたみたいだな」
「力、入んない……っ」
「空になるまで出したからな」
汗で張り付く前髪を柔らかく撫でられ、また額にキスをされる。最初の焼き付くような激しい刺激は遠のいて、疲れ果てていたが考えるだけの力が戻ってきた。
「キス、して」
「勿論だ」
優しく唇が塞がれる。そしてとても甘く、優しく舌が絡まっていく。欲情ではなく愛情をくれるキスに、胸の奥が温まっていくのを感じた。
「ごめん、ファウスト」
素直に謝る事ができたことに、ランバートはいくらか安心した。そこからはこれまでの意地っ張りが嘘のように、言葉が出て来た。
「探られたくない事もあるのに、俺……。ごめん、意地になって」
「俺こそ悪かった。知られるのが嫌で変に隠したから、不安になったんだろ? もう過去なのに、プライドを気にしてお前に辛い思いをさせてしまった」
穏やかに隣りに寝転び、抱き寄せて背中を撫でられている。それがとても安心できた。鼻先を胸にすり合わせ、臭いや体温を感じている。
「ギルバートの怪我が俺のせいだと、言っただろ?」
「うん。その責任を取りたいって、ギルバートの相手したんだって?」
「あぁ、そんな感じだ。ギルバートは騎士団入団からずっと面倒を見てくれていた。特別な感情はなかったが、わりと好きな相手でもあったんだ。気持ちのいい奴だと思っていた。そんな奴が、俺のせいで騎士として十分な力を発揮できなくなった。悔しくて……自分が許せなかった」
それで、教育係なんて事をしているのか。面倒見は良さそうだけれど、それほど深い傷だったんだ。
ファウストは甘やかすようにランバートの体のどこかを撫でている。まだ薬の影響が残る肌がザワザワして落ち着かない。けれど嫌いじゃない。落ち着かないのに、安心するんだ。
「弱い自分じゃいけないと、必死になって鍛えた。敵を侮ればまた誰かを犠牲にするんだと思って、無情になった。俺が前に立っていれば他は傷つかないと思って、最前線に立ち続けた」
「バカ……」
「分かっている。それでも当時はそれしかできなかったんだ。同時にギルバートの要求を呑んだ……つもりでいた。抱きたいと言われて、嫌悪もないし周囲でも多いのを知っていたから応じた。その後も何度か。その度にあいつは、辛そうな顔をしていた」
今ならファウストだって分かるだろう。ギルバートはファウストを抱きたかったんじゃなく、そんな事は必要ないと諦めさせたかったんだと。
「本当に、俺の中では一番のバカな時間だった。こういうのを黒歴史というのだろうな」
「そう、かもね」
「恋愛感情じゃなかった。でも、何もなかったわけじゃない。だから、隠そうとしたんだろう。お前には知られたくないと、何処かで思っていたんだ」
「ごめん」
「いや、隠した俺が悪い。ちゃんと話しておけば、お前は分かってくれただろうに」
頬を擽るような手の動きに笑う。感覚が正常に戻りつつあるのか、敏感だが快楽ではない、くすぐったいという感覚に小さく声を上げて笑うとファウストも嬉しそうにする。そして改めて、少し強く抱きしめてきた。
「やはり、こういうのがいいな」
「そうだな」
「明後日にはここを出て、休暇にはいる。予定通りで、いいか?」
「勿論。俺こそ、いいのか?」
「当たり前だ。お前がいないなら、旅行なんていらない」
互いに触れて、笑い合ってキスをした。そうしたら気持ちも抜けて、瞼が重くなっていく。体は相当疲れているらしい。
「寝ようか。後の事は明日にしよう」
「でも、ファウスト辛いんじゃ」
「今のお前は抱けない。それは旅行にとっておく」
甘い瞳が優しく細められていく。完全に反応しきっているのに、今日は押し殺すらしい。
正直体も辛いから、そうしてもらえるなら助かる。ランバートは逆らいきれずに眠りに落ちていった。
▼アレクセン
ランバートがファウストに連れられていった後、ギルバートは珍しく落ち込んで執務室へと引きこもってしまった。
あれで本当は責任感もあるのだ。そしてこの一ヶ月少々の事には彼なりの葛藤や悩みがあった結果でもある。
傍目からは職務放棄。だが彼の本心は、もっと違う部分にある。
「ギルバート」
執務室をノックして声をかけたが、反応がない。だがいるのは分かっている。みえみえの居留守だ。
問答無用でドアを開けるとやはり彼はそこにいて、ソファーに深く腰を下ろして項垂れていた。そして憎たらしそうにこちらを睨むのだ。
「いねーよ」
「いるでしょ」
「返事しなかっただろうが」
「見え透いた居留守など使わないでください」
溜息をついてドアを閉め、後手で鍵をかけた。それを見逃すようなギルバートじゃない。眉根がキツく寄った。
「なんで鍵を閉める」
「私は貴方と趣味が違うので」
「なんだ、ヤリたくなってきたのか? 生憎今はそんな気分じゃないぞ」
「ランバートくんを犠牲にしたのが、そんなに許せませんか」
言えばギルバートの目が更に険しくなる。本当に、分かりやすい。
「ご自分の職務怠慢が招いた結果です」
「厳しいねぇ、アレクセン」
「事実です」
そっと近づき、床に膝をついて彼の膝に手を置いた。そして弱っちい青い目を見上げている。
「王都騎士団に、戻りたいですか?」
「!」
図星を突かれた。そんな顔をする。とても分かりやすかった。
騎士団の活躍を聞くと、ギルバートは悔しそうな顔を一瞬する。多分アレクセンにだけわかる揺らぎのようなもの。これを本人に突きつけても、彼は認めたりしない。
元々は現役の騎士として前線に立っていた人だ。その気持ちは今もある。
けれど胸の怪我が、その時の恐怖がこの人を戦場から遠ざけてしまった。傷は胸だけじゃない。足も痛めたし、古傷がたまに痛むらしい。そして、戦場を前にすると体が震えて動けなくなるそうだ。
気持ちがあっても受けた死の恐怖は根が深かったのだ。
「俺が戦場で使い物にならないのは知ってるだろ。腰抜けに何ができる」
「その通りですね。だからこそ、貴方はここにいる。ファウスト様は貴方を決して戦場に出そうとはしない。けれどそれを受け入れられないから、解雇してもらいたいと思っているのでしょ?」
「っ、憎たらしい奴」
全部図星。騎士団の活躍を喜ぶ一方で、そこに自分がいないことを悔しがっている。気持ちはあっても心はついていかない。そういうものに挟まれて、この人は苦しんでいる。
職務怠慢での解雇。それを感じたからこそ、アレクセンはこの人に詰め寄った。なのに取り合わず、更には遊びだしたのが更に気に入らなくて言い合いになり、一ヶ月も拗らせたままだ。
「辞めたいのなら辞表を出せばいいでしょ」
「さっき書いた」
「ではお預け下されば、明日にでも私が出してさしあげます。腐っていく貴方を見ているのなんてまっぴらごめんです。私が好きになった貴方はこんな情けない人じゃない。正直、今の貴方はクズです」
厳しい言葉でなじり、手を差し出す。さっさと出せと要求するように。
けれどギルバートは動けない。分かっている、躊躇っているのは。そもそも簡単に辞表が出せる人なら、とっくに出しているんだ。
「しがみついていたいなら、しがみついて下さい。私は貴方を支えます」
「苦労性」
「誰がこのようにしたのです。いいですか、貴方が辞めるなら私も辞めます。貴方にしがみついている私を巻き込む覚悟をしてから、行動してください」
「な! お前がどうして!」
「貴方が好きだから、放っておいたらただ腐るのを見るだけだからです。貴方が腐ってどこぞの酒場の裏で転がっているのなんて、見たくないのです」
ギリギリと噛みつきそうな悲痛な顔。分かっている、この人は誰かを巻き込めない。自分一人ならいくらでも腐るけれど、誰かがそこに寄り添えばできない。そういう、生っちょろくて優しい人だ。
だからこそ背負わせる。「お前が腐ったら私も腐るんだ」と、分からせるように。
「私は貴方と一緒に自滅する覚悟です。いいですか、ギルバート。貴方が腐るなら私も一緒です。貴方が死ぬなら、貴方を殺して後を追います」
「どうしてそこまでする! 俺はお前を大事になんてしてないだろ!」
「そうですね、蔑ろです。若い子に手を出すし、それを隠しもしない。正直腸煮えくりかえりますし、何度か貴方を殺して死のうかとも思いました」
「怖すぎるだろ!!」
「そういう相手に好かれたんです。それに、貴方だって分かっていて私を恋人にしたのでしょ?」
惚れたのはアレクセンだった。でも、大切にしてくれたのはこの人だった。
「貴方が私をここまでつれて来てくれた。弱い私を鍛えて、挫けそうな時は側にいて。貴方がいたから、私はほんの少しでも輝けた。怪我をして戻って来て、自信をなくしていた私を励ましてくれた。そして、補佐としての才能を見つけてくれた。貴方がいなければ私はとっくの昔に、弱いままに終わっていました」
帰る場所もなく、だからといって強いわけでもなく。そんな半端なアレクセンはここに送られて、ギルバートに出会った。
厳しく鍛えてもらい、折れそうな時には側にいて悩みを聞いてもらった。辛い時は抱きしめてくれて、励ましてくれた。そんな人の誉れになりたくて頑張って、一瞬でも騎士として輝けた。
けれど怪我をして、ここに戻って来たときギルバートは「おかえり」と言ってくれたのだ。
「あぁ、帰ってこられたんだ」という安堵と、「この人に鍛えてもらったのに」という悔しさがこみ上げた。怪我をした時の夢を見て叫ぶ夜は側にいてくれて、自分の事を教えてくれた。
そして、内務の仕事を手伝うようになった。
正直、適任だった。剣を握るよりもこっちの方が余程肌に合ったんだ。
親密になっていって、話す事が多くなって、眠れない夜は側にいるのが普通になって、やがて体を重ねていった。
幸せだった。少し怖かったけれど、ギルバートは優しく手ほどきするように体を開いていって、上手く出来れば褒めてくれた。
けれど恋人になりたいと言って迫って、受け入れられてから少し変わってしまった。辛そうな顔をすることが増えて、浮気が始まった。突き放すような感じがあって、喧嘩が絶えなくなった。それがとても苦しくて、いっそ別れようと何度も思って……でも、できなかった。
この人は、去る者を追わないから。
「私が嫌いなら言ってください。辞表はいつでも出します」
「お前はここに必要だ!」
「貴方だって必要です! 私にも、ここにも」
「こんなポンコツ……」
「ギルバート、それは違います。貴方が育てた兵が、自信を持って巣立っていく。ここは隊にとって必要な場所です。そして貴方は、必要とされています」
手を伸ばして頬に触れ、伸び上がってキスをする。どうしようもない部分はあるけれど、この瞬間にやはり欲しているのも分かってしまう。憎たらしくて、愛しい。
「愛しています、ギル」
「お前も懲りない奴だな。散々突き放してるってのによ」
「他は遊びだと分かりますから。でもいい加減、目に余ります。自重してください」
「自重でいいのか?」
「厳禁が守れるお行儀のいい人ではありませんから、貴方は」
「出来た恋人だ」
仕掛けられるキスはスルリと舌が入り込んで、分かっているように快楽を掘り当てる。途端にうずき出して、痺れてくるのを感じてしまう。巧みで、駆け引きが上手い。
至近距離の瞳が濡れている。青い瞳を見つめて、今度はアレクセンから仕掛けてみた。全てこの人から教えてもらった。快楽も、テクも。
「上手くなったな」
「貴方の指導がいいのでしょうね」
「調教師に転職でもするか」
「私が嫉妬で狂います。やめてください」
冗談みたいに言った人に冷静に返せば、途端に口をつぐむ。こちらは冗談じゃないのを理解している。
「恋人のままで、いいのですよね?」
「酔狂な奴だな、まったく。お前がいいなら俺は拒まん」
「浮気はいい加減やめてください」
「……だな。これ以上は迷惑かけらんねーよ。ファウストにも、解雇はしないと言われちまったからな」
「辞表書いても、破り捨てます」
「お前巻き込んでまで出奔はしねーよ」
「……体が、熱いのですが」
「正直だな」
困ったように笑われて、丁寧にキスをされる。受け入れるアレクセンもまた、満たされるようなそれに酔いしれた。
そのうちに手が服越しに胸を摘まみ、巧みにこね始める。ビクビクっと背が震えて、アレクセンはドサリと彼の胸に身を預けた。
「弱いねぇ、アレク。胸、気持ちいいんだろ」
「誰が開発したんですか」
「俺だな。胸だけでイケるようにしたんだしな」
ニヤリと笑ったギルバートが腰を抱き込んで引き寄せる。ソファーに押し倒すような格好になり、多少の気恥ずかしさはあった。でも、手首を掴まれそこを舐められて、駆け上がるような快楽には勝てなかった。
手がゆっくりと前を開けていく。晒された肌が少し冷たい感じがした。けれど確かめるように大きくてゴツい手が薄っぺらい胸を撫でるから、それだけで快楽を知る体は反応してしまう。
「相変わらず色っぽいねぇ、アレク。そういう色気、ガキじゃ出ないんだよな」
「恋人と致しているのに、他の奴を出すのはやめてくださいっ」
「嫉妬か?」
「悪いですか?」
「そういう目、好きなんだよな。ゾクゾクする」
睨み付ける目尻を舐められ、ギュッと目を瞑る。すると今度は敏感な胸元を撫でられて、先端を摘ままれて。どうしたってこの人好みに開発されているのだから、逆らいようがない。
「んぅ、ふっ、んっ」
「可愛い声、もっと聞かせろよ」
「嫌ですっ」
ニヤリと笑う人を睨み付けるけれど、知ったように体を触られるとどうにも甘えたような声が出る。鼓動は加速し、熱はたまっていく。
「下脱いで、膝乗れよ」
「それ、好きですね」
「お前の顔を見ながらできるし、今はベッドがないしな。それに」
既に半分乗り上げるようになっている体を抱き上げられ、ギルバートの膝の上に乗る。そのまま硬くなりだした乳首を歯で摘ままれ舌で転がされただけで、ビリビリと背が痺れた。
「ふぅぅ!」
「こういうのが、興奮する」
本当に、クソおやじ。
思うがこれは照れ隠しで、逆にこの人を喜ばせているのも分かる。
そして言うほど自分も拒んでいないのだ。
言われるままズボンも下着も脱いだが、上は着たまま。こういう半端な感じが好きらしい。
ギルバートも下だけを脱いで手招きしている。大人しく彼の膝の上に正面を向いて跨がり、改めてとキスからだ。
「んぅ……っ」
「色っぽい顔するようになったな、アレクセン。気持ちいいか?」
「それ、聞かなきゃ分かりませんか?」
「いんや。お前の体はとても正直だからな」
「っっ!」
遊ぶように昂ぶりの先端を指先で撫でられ、思わずブルリと震えた。本当に、隠せなくて困る。先端は先走りを溢してヌルリと照り光っている。
思わずギュと股を閉じようとしたが、膝の上では上手くいかない。楽しげな笑いがあるばかりだ。
「今更だろ? 欲しそうな目をして、何を隠すってんだ」
「それでも隠したいんですよ」
「色っぽくて食いたくなるって言ってんだ。褒め言葉だぜ」
「恥ずかしいですよ」
キッと睨み付けて、でもキスをされながら背中を撫でられるとたまらない。もの凄く気持ちがいい。
「もしかして、俺と喧嘩してからしてないのか?」
ヌルヌルと先走りが溢れ出るのを見て、ギルバートが問いかけてくる。アレクセンはギクリと肩を震わせたが、否定しては見せた。全部お見通しだったが。
「自分で抜いてもいないのか?」
「悪いですか。貴方と違い、私は多忙で身持ちが堅いんです」
忙しかったのはその通りなのだが、それ以上に自分で抜くのは気恥ずかしかった。それに、虚しく思えてしなかった。今頃ギルバートは他の誰かとお楽しみかと思うと、憎らしくてできなかったのだ。
驚いたギルバートの目に徐々に、雄の光が宿っていく。スイッチが入ったみたいに噛みつくキスをされたまま膝を開かれ、後孔が引っ張られてスースーと風が当たる。
「んぅ」
指を二本口に突っ込まれ、唾液でたっぷりと濡らすように動く。バラバラと遊ばれるとそれでも感じてしまう。
その指が割り開かれた後孔へとあてがわれ、クプリと潜り込んできた。
「んぅぅ!」
「相変わらず狭いな、お前の中。でも、柔らかくなったじゃねーか」
「あぅ、やぁ、あっ」
グニグニと中を押し上げられ、捻りながら抜き差しをされ、時に深く埋められたまま広げられていく。知っている動きに体は従順に従い力を抜いていく。受け入れる体勢が出来ている事に悔しさがあった。
「たまんないな。ココは俺だけしか知らないのか」
「どっかの誰かと違います」
「嬉しいねぇ。俺の形だけ、ちゃぁんと覚えてるってわけだ」
「はぁん!!」
知り尽くされている快楽のツボを押し上げられ、暫く感じていなかった強烈な快楽が突き抜けていく。それと同時に、アレクセンは射精してしまっていた。至近距離にある互いの腹が汚れる。
それでもギルバートは中を犯す事をやめない。何度も何度もグチャグチャに指で解され、唇が乳首を摘まみ吸い上げて、指が抜ける頃には何度達したか分けが分からなくなっていた。
「ははっ、トロトロの顔してるな」
「ギル……」
「欲しいか?」
「ほ、しい。ギルバート」
真っ当な思考など残っていない。頭の中は蕩けきってふにゃふにゃで、腹の奥が疼いてたまらない。早くここに欲しいと訴えてくる。
「自分で……は、腰が立たないか」
呟きと共に体が持ち上がる。ギルバートがアレクセンの腰を持ち上げ、いきり立つ彼の剛直の上へとゆっくり落とし込んでいった。
「んあぁ! あっ、んぅぅ!」
「アレク、息吐け。流石に締めすぎだ」
「はぁ、あ、つい」
「お前の中もだぜ」
ニッと笑い、繋がっている部分を指が撫でる。薄くなった部分に受ける刺激は強烈で、途端に腰が砕けて力が抜け、結果根元まで咥え込んでしまう。予感なく最奥まで突き上げられたアレクセンの目から涙がこぼれて、大きく嬌声が溢れた。
「大丈夫か?」
「いっ」
「とりあえずは平気か。ゆっくりでいいぜ、慣らせ」
「ギル……」
肩に手を置いて、キスを強請った。繋がる時、いつも欲しいと強請ってしまう。上も下も繋がったまま、ただ求めていたくなるから。
「甘ったれ」と嬉しそうに笑ったギルバートの手が髪を梳いて求めに応じてくれる。そのうちに中も緩まって、動けるだけの余裕ができた。
「動くぞっ」
腰を持ち上げられ、下から突き上げられてアレクセンは甘く鳴いた。一突きごとに痺れて、軽く飛んでいる。動き自体は激しくないのに、少し浮き上がった後は自重でより深く入り込んでいく。
やっぱり、この人が好きだ。この人じゃないと満たされない。他なんて、想像する事もできない。
「アレク?」
「す、き……ギル……っ」
「こういう時にそれを言うかよ、ったく」
「ギル!」
「俺もお前が可愛くて仕方ないよ。こんなろくでなしに本気で惚れるバカを、簡単に捨てやしねぇ」
「愛してる」とか「好き」とか、そんな甘ったるい事を言ってくれない人のこれが精一杯の愛情表現。それが分かるから、アレクセンは嬉しく笑って受け入れられる。
グチャグチャに混じりあうような夜。意識も消えるような中で、アレクセンは素直に全てを委ねて逞しい胸で眠る事ができた。
「ごめ……ファウスト、ごめ……」
「何を謝っているんだ」
「ごめ……っ」
優しい黒い瞳が見下ろして、髪を撫でて額にキスをくれる。その優しさに胸の奥が締まって苦しく、体はゾクゾクと反応して下肢や腹の中が疼いた。
「んぅ! ふっ、あぁ……」
「辛い、な。少し出した方が楽になるだろ。触れて、いいか?」
自分の事のように辛そうな顔をして問いかけられて、ランバートは頷いた。
触れて欲しい。喧嘩して、苦しくて、でもこの目はもう怒ってはいないから甘えてしまいたい。
「ごめ、ファウスト……ごめんっ」
「……俺も悪かった。変に隠そうとして、不安にさせた。お前が悪いんじゃない」
「ごめんっ」
「落ち着いたらちゃんと、俺の口から話をする。だから今はこの熱を収めてしまおう」
そういうと、ファウストはゆっくりとランバートのズボンを脱がせていく。下着も丁寧に下ろしたそこで、恥ずかしい程に張りつめた昂ぶりがトロトロに先走りを溢していた。
「あっ、みなぃ、んぅ!!」
恥ずかしさがこみ上げて思わず口をつく。だがファウストの指は柔らかく握り、ゆっくりと丁寧に扱いていく。
背に強い快楽が走って突き抜けた。そしてたったこれだけで吐き出してしまった。
「あっ、うそ……いや、んぅぅ」
「強い薬はそのぶん持続性はない。合法でもないが、ヤバイものじゃないだろうから少しだけ我慢してくれ」
「あぁ! ひっ、んぐっ!」
節のある、少しザラつく手で優しすぎる快楽を与えられて腰が蕩ける様に熱い。ガクガクと体が震えて、快楽に頭の中が真っ白になっていく。
それなのにファウストはトロトロの昂ぶりを口に含み、丁寧に舐めとり奥まで入れてしまう。それで二度目を吐き出したランバートは息も絶え絶えな状態だった。
「まだ、辛いか?」
「いっ、気持ち良くて、つら……っ!」
優しくされて切なくて、気持ち良くて溶けていってしまう。後孔がキュッと締まり、触れられていない奥の奥がジクジクする。
それでもファウストは奉仕だけをしてくれた。扱きすぎないように柔らかい動きと力で、唇で。もう出ないくらい薄まったものが吐き出されて、ランバートの体から力が抜けた頃、ようやく彼は離してくれた。
「収まってきたみたいだな」
「力、入んない……っ」
「空になるまで出したからな」
汗で張り付く前髪を柔らかく撫でられ、また額にキスをされる。最初の焼き付くような激しい刺激は遠のいて、疲れ果てていたが考えるだけの力が戻ってきた。
「キス、して」
「勿論だ」
優しく唇が塞がれる。そしてとても甘く、優しく舌が絡まっていく。欲情ではなく愛情をくれるキスに、胸の奥が温まっていくのを感じた。
「ごめん、ファウスト」
素直に謝る事ができたことに、ランバートはいくらか安心した。そこからはこれまでの意地っ張りが嘘のように、言葉が出て来た。
「探られたくない事もあるのに、俺……。ごめん、意地になって」
「俺こそ悪かった。知られるのが嫌で変に隠したから、不安になったんだろ? もう過去なのに、プライドを気にしてお前に辛い思いをさせてしまった」
穏やかに隣りに寝転び、抱き寄せて背中を撫でられている。それがとても安心できた。鼻先を胸にすり合わせ、臭いや体温を感じている。
「ギルバートの怪我が俺のせいだと、言っただろ?」
「うん。その責任を取りたいって、ギルバートの相手したんだって?」
「あぁ、そんな感じだ。ギルバートは騎士団入団からずっと面倒を見てくれていた。特別な感情はなかったが、わりと好きな相手でもあったんだ。気持ちのいい奴だと思っていた。そんな奴が、俺のせいで騎士として十分な力を発揮できなくなった。悔しくて……自分が許せなかった」
それで、教育係なんて事をしているのか。面倒見は良さそうだけれど、それほど深い傷だったんだ。
ファウストは甘やかすようにランバートの体のどこかを撫でている。まだ薬の影響が残る肌がザワザワして落ち着かない。けれど嫌いじゃない。落ち着かないのに、安心するんだ。
「弱い自分じゃいけないと、必死になって鍛えた。敵を侮ればまた誰かを犠牲にするんだと思って、無情になった。俺が前に立っていれば他は傷つかないと思って、最前線に立ち続けた」
「バカ……」
「分かっている。それでも当時はそれしかできなかったんだ。同時にギルバートの要求を呑んだ……つもりでいた。抱きたいと言われて、嫌悪もないし周囲でも多いのを知っていたから応じた。その後も何度か。その度にあいつは、辛そうな顔をしていた」
今ならファウストだって分かるだろう。ギルバートはファウストを抱きたかったんじゃなく、そんな事は必要ないと諦めさせたかったんだと。
「本当に、俺の中では一番のバカな時間だった。こういうのを黒歴史というのだろうな」
「そう、かもね」
「恋愛感情じゃなかった。でも、何もなかったわけじゃない。だから、隠そうとしたんだろう。お前には知られたくないと、何処かで思っていたんだ」
「ごめん」
「いや、隠した俺が悪い。ちゃんと話しておけば、お前は分かってくれただろうに」
頬を擽るような手の動きに笑う。感覚が正常に戻りつつあるのか、敏感だが快楽ではない、くすぐったいという感覚に小さく声を上げて笑うとファウストも嬉しそうにする。そして改めて、少し強く抱きしめてきた。
「やはり、こういうのがいいな」
「そうだな」
「明後日にはここを出て、休暇にはいる。予定通りで、いいか?」
「勿論。俺こそ、いいのか?」
「当たり前だ。お前がいないなら、旅行なんていらない」
互いに触れて、笑い合ってキスをした。そうしたら気持ちも抜けて、瞼が重くなっていく。体は相当疲れているらしい。
「寝ようか。後の事は明日にしよう」
「でも、ファウスト辛いんじゃ」
「今のお前は抱けない。それは旅行にとっておく」
甘い瞳が優しく細められていく。完全に反応しきっているのに、今日は押し殺すらしい。
正直体も辛いから、そうしてもらえるなら助かる。ランバートは逆らいきれずに眠りに落ちていった。
▼アレクセン
ランバートがファウストに連れられていった後、ギルバートは珍しく落ち込んで執務室へと引きこもってしまった。
あれで本当は責任感もあるのだ。そしてこの一ヶ月少々の事には彼なりの葛藤や悩みがあった結果でもある。
傍目からは職務放棄。だが彼の本心は、もっと違う部分にある。
「ギルバート」
執務室をノックして声をかけたが、反応がない。だがいるのは分かっている。みえみえの居留守だ。
問答無用でドアを開けるとやはり彼はそこにいて、ソファーに深く腰を下ろして項垂れていた。そして憎たらしそうにこちらを睨むのだ。
「いねーよ」
「いるでしょ」
「返事しなかっただろうが」
「見え透いた居留守など使わないでください」
溜息をついてドアを閉め、後手で鍵をかけた。それを見逃すようなギルバートじゃない。眉根がキツく寄った。
「なんで鍵を閉める」
「私は貴方と趣味が違うので」
「なんだ、ヤリたくなってきたのか? 生憎今はそんな気分じゃないぞ」
「ランバートくんを犠牲にしたのが、そんなに許せませんか」
言えばギルバートの目が更に険しくなる。本当に、分かりやすい。
「ご自分の職務怠慢が招いた結果です」
「厳しいねぇ、アレクセン」
「事実です」
そっと近づき、床に膝をついて彼の膝に手を置いた。そして弱っちい青い目を見上げている。
「王都騎士団に、戻りたいですか?」
「!」
図星を突かれた。そんな顔をする。とても分かりやすかった。
騎士団の活躍を聞くと、ギルバートは悔しそうな顔を一瞬する。多分アレクセンにだけわかる揺らぎのようなもの。これを本人に突きつけても、彼は認めたりしない。
元々は現役の騎士として前線に立っていた人だ。その気持ちは今もある。
けれど胸の怪我が、その時の恐怖がこの人を戦場から遠ざけてしまった。傷は胸だけじゃない。足も痛めたし、古傷がたまに痛むらしい。そして、戦場を前にすると体が震えて動けなくなるそうだ。
気持ちがあっても受けた死の恐怖は根が深かったのだ。
「俺が戦場で使い物にならないのは知ってるだろ。腰抜けに何ができる」
「その通りですね。だからこそ、貴方はここにいる。ファウスト様は貴方を決して戦場に出そうとはしない。けれどそれを受け入れられないから、解雇してもらいたいと思っているのでしょ?」
「っ、憎たらしい奴」
全部図星。騎士団の活躍を喜ぶ一方で、そこに自分がいないことを悔しがっている。気持ちはあっても心はついていかない。そういうものに挟まれて、この人は苦しんでいる。
職務怠慢での解雇。それを感じたからこそ、アレクセンはこの人に詰め寄った。なのに取り合わず、更には遊びだしたのが更に気に入らなくて言い合いになり、一ヶ月も拗らせたままだ。
「辞めたいのなら辞表を出せばいいでしょ」
「さっき書いた」
「ではお預け下されば、明日にでも私が出してさしあげます。腐っていく貴方を見ているのなんてまっぴらごめんです。私が好きになった貴方はこんな情けない人じゃない。正直、今の貴方はクズです」
厳しい言葉でなじり、手を差し出す。さっさと出せと要求するように。
けれどギルバートは動けない。分かっている、躊躇っているのは。そもそも簡単に辞表が出せる人なら、とっくに出しているんだ。
「しがみついていたいなら、しがみついて下さい。私は貴方を支えます」
「苦労性」
「誰がこのようにしたのです。いいですか、貴方が辞めるなら私も辞めます。貴方にしがみついている私を巻き込む覚悟をしてから、行動してください」
「な! お前がどうして!」
「貴方が好きだから、放っておいたらただ腐るのを見るだけだからです。貴方が腐ってどこぞの酒場の裏で転がっているのなんて、見たくないのです」
ギリギリと噛みつきそうな悲痛な顔。分かっている、この人は誰かを巻き込めない。自分一人ならいくらでも腐るけれど、誰かがそこに寄り添えばできない。そういう、生っちょろくて優しい人だ。
だからこそ背負わせる。「お前が腐ったら私も腐るんだ」と、分からせるように。
「私は貴方と一緒に自滅する覚悟です。いいですか、ギルバート。貴方が腐るなら私も一緒です。貴方が死ぬなら、貴方を殺して後を追います」
「どうしてそこまでする! 俺はお前を大事になんてしてないだろ!」
「そうですね、蔑ろです。若い子に手を出すし、それを隠しもしない。正直腸煮えくりかえりますし、何度か貴方を殺して死のうかとも思いました」
「怖すぎるだろ!!」
「そういう相手に好かれたんです。それに、貴方だって分かっていて私を恋人にしたのでしょ?」
惚れたのはアレクセンだった。でも、大切にしてくれたのはこの人だった。
「貴方が私をここまでつれて来てくれた。弱い私を鍛えて、挫けそうな時は側にいて。貴方がいたから、私はほんの少しでも輝けた。怪我をして戻って来て、自信をなくしていた私を励ましてくれた。そして、補佐としての才能を見つけてくれた。貴方がいなければ私はとっくの昔に、弱いままに終わっていました」
帰る場所もなく、だからといって強いわけでもなく。そんな半端なアレクセンはここに送られて、ギルバートに出会った。
厳しく鍛えてもらい、折れそうな時には側にいて悩みを聞いてもらった。辛い時は抱きしめてくれて、励ましてくれた。そんな人の誉れになりたくて頑張って、一瞬でも騎士として輝けた。
けれど怪我をして、ここに戻って来たときギルバートは「おかえり」と言ってくれたのだ。
「あぁ、帰ってこられたんだ」という安堵と、「この人に鍛えてもらったのに」という悔しさがこみ上げた。怪我をした時の夢を見て叫ぶ夜は側にいてくれて、自分の事を教えてくれた。
そして、内務の仕事を手伝うようになった。
正直、適任だった。剣を握るよりもこっちの方が余程肌に合ったんだ。
親密になっていって、話す事が多くなって、眠れない夜は側にいるのが普通になって、やがて体を重ねていった。
幸せだった。少し怖かったけれど、ギルバートは優しく手ほどきするように体を開いていって、上手く出来れば褒めてくれた。
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「私が嫌いなら言ってください。辞表はいつでも出します」
「お前はここに必要だ!」
「貴方だって必要です! 私にも、ここにも」
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「ギルバート、それは違います。貴方が育てた兵が、自信を持って巣立っていく。ここは隊にとって必要な場所です。そして貴方は、必要とされています」
手を伸ばして頬に触れ、伸び上がってキスをする。どうしようもない部分はあるけれど、この瞬間にやはり欲しているのも分かってしまう。憎たらしくて、愛しい。
「愛しています、ギル」
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「恋人と致しているのに、他の奴を出すのはやめてくださいっ」
「嫉妬か?」
「悪いですか?」
「そういう目、好きなんだよな。ゾクゾクする」
睨み付ける目尻を舐められ、ギュッと目を瞑る。すると今度は敏感な胸元を撫でられて、先端を摘ままれて。どうしたってこの人好みに開発されているのだから、逆らいようがない。
「んぅ、ふっ、んっ」
「可愛い声、もっと聞かせろよ」
「嫌ですっ」
ニヤリと笑う人を睨み付けるけれど、知ったように体を触られるとどうにも甘えたような声が出る。鼓動は加速し、熱はたまっていく。
「下脱いで、膝乗れよ」
「それ、好きですね」
「お前の顔を見ながらできるし、今はベッドがないしな。それに」
既に半分乗り上げるようになっている体を抱き上げられ、ギルバートの膝の上に乗る。そのまま硬くなりだした乳首を歯で摘ままれ舌で転がされただけで、ビリビリと背が痺れた。
「ふぅぅ!」
「こういうのが、興奮する」
本当に、クソおやじ。
思うがこれは照れ隠しで、逆にこの人を喜ばせているのも分かる。
そして言うほど自分も拒んでいないのだ。
言われるままズボンも下着も脱いだが、上は着たまま。こういう半端な感じが好きらしい。
ギルバートも下だけを脱いで手招きしている。大人しく彼の膝の上に正面を向いて跨がり、改めてとキスからだ。
「んぅ……っ」
「色っぽい顔するようになったな、アレクセン。気持ちいいか?」
「それ、聞かなきゃ分かりませんか?」
「いんや。お前の体はとても正直だからな」
「っっ!」
遊ぶように昂ぶりの先端を指先で撫でられ、思わずブルリと震えた。本当に、隠せなくて困る。先端は先走りを溢してヌルリと照り光っている。
思わずギュと股を閉じようとしたが、膝の上では上手くいかない。楽しげな笑いがあるばかりだ。
「今更だろ? 欲しそうな目をして、何を隠すってんだ」
「それでも隠したいんですよ」
「色っぽくて食いたくなるって言ってんだ。褒め言葉だぜ」
「恥ずかしいですよ」
キッと睨み付けて、でもキスをされながら背中を撫でられるとたまらない。もの凄く気持ちがいい。
「もしかして、俺と喧嘩してからしてないのか?」
ヌルヌルと先走りが溢れ出るのを見て、ギルバートが問いかけてくる。アレクセンはギクリと肩を震わせたが、否定しては見せた。全部お見通しだったが。
「自分で抜いてもいないのか?」
「悪いですか。貴方と違い、私は多忙で身持ちが堅いんです」
忙しかったのはその通りなのだが、それ以上に自分で抜くのは気恥ずかしかった。それに、虚しく思えてしなかった。今頃ギルバートは他の誰かとお楽しみかと思うと、憎らしくてできなかったのだ。
驚いたギルバートの目に徐々に、雄の光が宿っていく。スイッチが入ったみたいに噛みつくキスをされたまま膝を開かれ、後孔が引っ張られてスースーと風が当たる。
「んぅ」
指を二本口に突っ込まれ、唾液でたっぷりと濡らすように動く。バラバラと遊ばれるとそれでも感じてしまう。
その指が割り開かれた後孔へとあてがわれ、クプリと潜り込んできた。
「んぅぅ!」
「相変わらず狭いな、お前の中。でも、柔らかくなったじゃねーか」
「あぅ、やぁ、あっ」
グニグニと中を押し上げられ、捻りながら抜き差しをされ、時に深く埋められたまま広げられていく。知っている動きに体は従順に従い力を抜いていく。受け入れる体勢が出来ている事に悔しさがあった。
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「どっかの誰かと違います」
「嬉しいねぇ。俺の形だけ、ちゃぁんと覚えてるってわけだ」
「はぁん!!」
知り尽くされている快楽のツボを押し上げられ、暫く感じていなかった強烈な快楽が突き抜けていく。それと同時に、アレクセンは射精してしまっていた。至近距離にある互いの腹が汚れる。
それでもギルバートは中を犯す事をやめない。何度も何度もグチャグチャに指で解され、唇が乳首を摘まみ吸い上げて、指が抜ける頃には何度達したか分けが分からなくなっていた。
「ははっ、トロトロの顔してるな」
「ギル……」
「欲しいか?」
「ほ、しい。ギルバート」
真っ当な思考など残っていない。頭の中は蕩けきってふにゃふにゃで、腹の奥が疼いてたまらない。早くここに欲しいと訴えてくる。
「自分で……は、腰が立たないか」
呟きと共に体が持ち上がる。ギルバートがアレクセンの腰を持ち上げ、いきり立つ彼の剛直の上へとゆっくり落とし込んでいった。
「んあぁ! あっ、んぅぅ!」
「アレク、息吐け。流石に締めすぎだ」
「はぁ、あ、つい」
「お前の中もだぜ」
ニッと笑い、繋がっている部分を指が撫でる。薄くなった部分に受ける刺激は強烈で、途端に腰が砕けて力が抜け、結果根元まで咥え込んでしまう。予感なく最奥まで突き上げられたアレクセンの目から涙がこぼれて、大きく嬌声が溢れた。
「大丈夫か?」
「いっ」
「とりあえずは平気か。ゆっくりでいいぜ、慣らせ」
「ギル……」
肩に手を置いて、キスを強請った。繋がる時、いつも欲しいと強請ってしまう。上も下も繋がったまま、ただ求めていたくなるから。
「甘ったれ」と嬉しそうに笑ったギルバートの手が髪を梳いて求めに応じてくれる。そのうちに中も緩まって、動けるだけの余裕ができた。
「動くぞっ」
腰を持ち上げられ、下から突き上げられてアレクセンは甘く鳴いた。一突きごとに痺れて、軽く飛んでいる。動き自体は激しくないのに、少し浮き上がった後は自重でより深く入り込んでいく。
やっぱり、この人が好きだ。この人じゃないと満たされない。他なんて、想像する事もできない。
「アレク?」
「す、き……ギル……っ」
「こういう時にそれを言うかよ、ったく」
「ギル!」
「俺もお前が可愛くて仕方ないよ。こんなろくでなしに本気で惚れるバカを、簡単に捨てやしねぇ」
「愛してる」とか「好き」とか、そんな甘ったるい事を言ってくれない人のこれが精一杯の愛情表現。それが分かるから、アレクセンは嬉しく笑って受け入れられる。
グチャグチャに混じりあうような夜。意識も消えるような中で、アレクセンは素直に全てを委ねて逞しい胸で眠る事ができた。
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