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9章:攻め達の妄想初夢
8話:黒猫さんに恋してる(ハムレット)
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王都近郊の別荘地は、普段人も少なくて静かなものだ。
ここに普段から引きこもっているハムレットには、そうするだけの秘密があるのだ。
机の上の医学論文を読むハムレットは、凝り固まった体を思いきり伸ばす。手元だけを照らすランプの明かりだけだが、彼には問題無い。むしろ夜の方が元気なくらいなのだ。
「あーぁ、お腹空いた」
夕食はしっかりと食べたし、お酒も頂いた。それでも満たされない空腹は、違うものを求めているのだと深く訴えてくる。
「喉、渇いたな」
僅かに感じる飢え。それを満たすのはたった一人の存在だけだ。
「猫くん、まだ起きてるかな」
舌でペロリと唇を舐める。その隙間から見えた犬歯は人のそれよりもずっと大きく鋭いものだった。
音を立てずにチェルルの部屋へと来たハムレットは、コンコンと扉をノックする。流儀で、招きのない者は入ることを許されない。例えそれが自身の屋敷の中だとしても、チェルルの招きなしに彼に宛がった部屋に入る事はできないのだ。
「開いてるよぉ」
眠そうな声が許しを与えてくれて、ハムレットはドアを開けた。部屋の主が許してくれるなら自身でドアを開ける事もできる。
部屋は既に明かりが落とされ、部屋の主は寒いのか丸くなってベッドの上だ。
「猫くん、寒いの?」
「ちょっとだけ。今日は冷えるんだもん」
「そうだね」
生憎ハムレットは寒さをあまり感じていない。これも種族の違い故だろう。
モソモソっと布団の塊が動いて、黒く大きな瞳がこちらを見る。彼も人にしたら夜目がきくほうで、心許ない月明かりでもこちらをしっかり認識できる。
「先生、喉渇いたの?」
「どうして?」
「目、金色になってるよ。それに、歯も隠せてない」
指摘されて、ハムレットはニッと笑って静かにベッドに腰を下ろした。
「疲れちゃった。猫くん、ダメ?」
「いいけど、あまり沢山はダメだよ。明日起きられなくなるし」
「そうしたら僕と一緒に寝ればいいよ」
「俺は先生と違って日中が行動時間なの。寝倒したら一日何も出来なくなっちゃう」
そんな事を言うけれど、チェルルだって昼寝は好きなはずだ。それにハムレットはチェルルの側が一番安心できるのだし。
「じゃ、加減する」
「あまり期待しないけれど、お願いね」
誓いを立てるようにちょんとキスをして、チェルルは布団の中にハムレットを入れてくれた。
チェルルの肌はいつもいい匂いがする。この皮膚の下にある血が、甘い匂いを発しているのだろう。
この匂いだけで頭の芯がクラクラする。早く欲しいと本能が呼びかけてくるのはたまらない。でも、本能に支配されるなんてことはいけない。そうなったら彼が死ぬまでこの血を吸い尽くしてしまいそうだから。
「先生、吸わないの?」
「その前に、猫くんをトロトロにしてあげないとね」
少し潤んだ瞳のチェルルに問われて、ハムレットは苦笑する。
本当は彼の柔らかな肌にすぐにでも牙を突き立てて甘い血を啜りたいのだが、そうなるともう一つの欲望も抑えられない。そうなってからまどろっこしい準備をするのは面倒になってしまう。だから最初にしておかなければ。
白く柔らかな肌を舌で味わい、愛らしい乳首を転がす。小さく可愛らしい声が漏れる息づかいに煽られながらも、ハムレットはしっかりとチェルルの快楽を高めていく。
しっとりと汗をかいた肌がいい匂いを放っている。心臓の音が早くなってきた。そして下肢の昂ぶりが、僅かに反応を始める。
「んっ、先生切ないよ、これ……」
「どうして?」
「だって、俺欲しくなってるもん。もう、癖になってる。先生に血を吸われながらされるの、期待してるんだもん」
「チェルルはエッチだね」
ほんのりと頬を染めるチェルルは切なげにこちらを見ている。おねだりの目はけっこうそそる。性急に欲してしまいそうで危険だ。
「ちゃんと慣らさないと、辛いのは猫くんなんだよ。ここ、切れるの嫌でしょ?」
存在を示すように指の一本を後孔へと伸ばし、押し込んだ。硬いそこは抵抗があるはずだったのに、何故かもの凄く柔らかく受け入れられ、美味しそうにチューチュー吸い始めている。
「……チェルル」
「はぃい!」
「自分でしたね、ここ」
クリクリと指を押し込み浅い部分を押し上げると、チェルルがブルブルっと震えた。明らかに感じている声で恥ずかしそうに喘ぐ。
「だって、先生今日は遅いからもうないんだと思って、切なくなったんだもん」
「もん! じゃないよぉ」
クチックチュッと後ろを解し、二本目を入れる。それでコリコリした部分を擦ると、ビクビクッと腰が震えてだらしない声でチェルルが喘いだ。
「変態さんだな、チェルル」
「ごめんね。でも、俺も待ってたんだよ」
「んっ、ごめん。論文読んでて遅くなったの」
「仕事だし、養われてる俺が言うのもおかしいと思うけれど、ちゃんと休んでよ。そしてたまには俺に構って」
拗ねた猫みたいな反応が可愛い。ペロペロっと舌でハムレットの唇を舐めるのは、猫が寄せる親愛の挨拶みたいでくすぐったくて、そして嬉しい。
「ごめんね、猫くん。寂しい時は寂しいって言っていいんだよ」
「寂しい、先生。一人の布団は全然、温かくならないんだ」
素直に気持ちを吐露してくれるチェルルは珍しいと同時に、そんなに待たせてしまったんだと反省した。
「いいよ、僕が沢山温めてあげる」
寒いなんて言わないくらい沢山、温めてあげるからね。
事前に弄っていただけあって、後孔は柔らかく解れて僅かに濡れている。そこを更に濡らし、三本の指で弄りながら開いてゆけば、中がおねだりするみたいに蠢いていく。チェルルも欲しそうに可愛く鳴いて、顔をほんのりと赤くしている。
可愛くてたまらない。ベタベタくっついてくるのに甘え下手で、我慢して、時々ちょっと拗ねたりして。面倒と言う人もいるけれど、ハムレットにはどれも可愛い反応だ。
「せん、せい……もっ、欲しい」
「うん、いいよ」
十分柔らかくなっているのを確認して、ハムレットは指を抜いてそこに自身を宛がい、ゆっくりと埋めていく。それと同時にチェルルの首筋に鋭い牙を差し入れた。
「あっ! あっ、あぁ……」
一瞬ビクン! という反応を返す体、瞳が大きく一瞬見開かれた後は、トロンと蕩けていく。一緒に、後孔も緩んで受け入れが楽になった。
吸血鬼の牙からは一種の毒が分泌される。獲物の抵抗を奪い、痛覚を麻痺させる。が、それ以上に気持ち良くなる催淫剤という側面がある。これにハマると普通の快楽では満足できなくなるそうだ。
甘い味が口の中に広がって、急激に渇きが癒えていく。溢れてくる赤い液体を舐め、取り込む度にハムレットも気持ちよくなっていく。これは、ある種の泥酔のようなものだと思う。
「猫くん、気持ちいい?」
「あっ……い、ぃ」
「動くよ」
衝動のままに突き入れると、チェルルは高い声で鳴いて後孔を締める。催淫剤で気持ちよくなっているからか、弄っていない彼の昂ぶりからはトロトロと先走りが溢れてくる。
可愛い。少年と青年の間にあるような愛らしい容姿も、素直な体も。勿論、笑った顔やちょっと拗ねた顔、案外寂しがり屋な部分も好き。彼に巡り会えた事が、きっと一番の幸せ。
チェルルの気持ちいい所は全部知っている。浅い部分を優しく擦られるのはけっこう好き。でもそれじゃ物足りなくなってくると、甘えて抱きついておねだりしてくる。
乳首にほんの少し牙を引っかけるようにされるのも好きで、されるとキュッと入口が締まる。これ、不意打ちでされるとちょっと危なかったりする。
「先生、キスして」
「うん、いいね」
舌を絡めてゆっくりと口腔を味わうと、安心するのかトロトロになっていく。余計な力も抜けて、潤んだ黒い瞳が見上げて笑う。この顔を見るのが、ハムレットの至福の時だったりする。
もう一度首筋に噛みつき、吸い上げながら中を抉る。最奥を突くとキュゥゥッと締まり、欲しそうにうねって包み込まれていく。
「チェルル、好きだよ。本当に、大好き」
「俺、も。先生、大好きだよ」
「名前、呼んでよ」
「ハム、レットっ」
名前を呼ぶのが恥ずかしいのか、それとも言い慣れなくて照れるのか、それだけで追い上げられていくチェルルは何度も甘い声で呼んでくれる。これが愛しくて、ハムレットは追い上げてやがて彼の中に全てを放っていく。
絞り上げるように欲しがる中が蠢いて、同時にチェルルも達してビクビクと震える。荒い息を吐きながらこちらを見る彼のほんのりと赤い顔を見ながら、ハムレットはこみ上げる願望にゾクゾクっと震えた。
いつか彼をこちら側へ。そうしたら、ずっと一緒にいられるから。
◇◆◇
目が覚めたハムレットは、隣りで眠るチェルルをぼんやりと見ている。
当然あれは夢。でも、浮かべる表情とかがとてもリアルだった。
猫くん、とても気持ち良さそうだったな……
少し痛いのも気持ちいいのだろうか。痛覚が快楽に変わる事もあるし、もしかしたらあるのかな?
ちょっと興味があって、ハムレットはチェルルの首筋に顔を埋めて、軽くそこに噛みついてみた。
「! いたぁ!!」
「あー、だよねぇ」
「ぎゃあ! 神父様!」
「え?」
そんな不似合いな職業についた覚えはない。いや、オーウェンが出来ているんだから出来ない訳じゃないとは思う。あいつくらい聖職者が似合わない奴もいない。間違いなく加虐癖がある。
チェルルは寝ぼけていたのか噛まれた首筋を手で押さえながらも、ぱちくりとこちらを見ている。そして盛大に溜息をついた。
「よ……よかったぁ、先生だぁ」
「どうしたの?」
「え! あぁ、うん、何でもない!」
何でもない、なんて顔はしていない。わざとかってくらい目線を逸らしている。
「ふーん」
ハムレットはジトリとチェルルを見る。その視線にビクつきながらも、チェルルは知らん顔をしている。
これは、後で吐かせてみないと。
新年早々、ハムレットは楽しそうな笑みを浮かべた。
ここに普段から引きこもっているハムレットには、そうするだけの秘密があるのだ。
机の上の医学論文を読むハムレットは、凝り固まった体を思いきり伸ばす。手元だけを照らすランプの明かりだけだが、彼には問題無い。むしろ夜の方が元気なくらいなのだ。
「あーぁ、お腹空いた」
夕食はしっかりと食べたし、お酒も頂いた。それでも満たされない空腹は、違うものを求めているのだと深く訴えてくる。
「喉、渇いたな」
僅かに感じる飢え。それを満たすのはたった一人の存在だけだ。
「猫くん、まだ起きてるかな」
舌でペロリと唇を舐める。その隙間から見えた犬歯は人のそれよりもずっと大きく鋭いものだった。
音を立てずにチェルルの部屋へと来たハムレットは、コンコンと扉をノックする。流儀で、招きのない者は入ることを許されない。例えそれが自身の屋敷の中だとしても、チェルルの招きなしに彼に宛がった部屋に入る事はできないのだ。
「開いてるよぉ」
眠そうな声が許しを与えてくれて、ハムレットはドアを開けた。部屋の主が許してくれるなら自身でドアを開ける事もできる。
部屋は既に明かりが落とされ、部屋の主は寒いのか丸くなってベッドの上だ。
「猫くん、寒いの?」
「ちょっとだけ。今日は冷えるんだもん」
「そうだね」
生憎ハムレットは寒さをあまり感じていない。これも種族の違い故だろう。
モソモソっと布団の塊が動いて、黒く大きな瞳がこちらを見る。彼も人にしたら夜目がきくほうで、心許ない月明かりでもこちらをしっかり認識できる。
「先生、喉渇いたの?」
「どうして?」
「目、金色になってるよ。それに、歯も隠せてない」
指摘されて、ハムレットはニッと笑って静かにベッドに腰を下ろした。
「疲れちゃった。猫くん、ダメ?」
「いいけど、あまり沢山はダメだよ。明日起きられなくなるし」
「そうしたら僕と一緒に寝ればいいよ」
「俺は先生と違って日中が行動時間なの。寝倒したら一日何も出来なくなっちゃう」
そんな事を言うけれど、チェルルだって昼寝は好きなはずだ。それにハムレットはチェルルの側が一番安心できるのだし。
「じゃ、加減する」
「あまり期待しないけれど、お願いね」
誓いを立てるようにちょんとキスをして、チェルルは布団の中にハムレットを入れてくれた。
チェルルの肌はいつもいい匂いがする。この皮膚の下にある血が、甘い匂いを発しているのだろう。
この匂いだけで頭の芯がクラクラする。早く欲しいと本能が呼びかけてくるのはたまらない。でも、本能に支配されるなんてことはいけない。そうなったら彼が死ぬまでこの血を吸い尽くしてしまいそうだから。
「先生、吸わないの?」
「その前に、猫くんをトロトロにしてあげないとね」
少し潤んだ瞳のチェルルに問われて、ハムレットは苦笑する。
本当は彼の柔らかな肌にすぐにでも牙を突き立てて甘い血を啜りたいのだが、そうなるともう一つの欲望も抑えられない。そうなってからまどろっこしい準備をするのは面倒になってしまう。だから最初にしておかなければ。
白く柔らかな肌を舌で味わい、愛らしい乳首を転がす。小さく可愛らしい声が漏れる息づかいに煽られながらも、ハムレットはしっかりとチェルルの快楽を高めていく。
しっとりと汗をかいた肌がいい匂いを放っている。心臓の音が早くなってきた。そして下肢の昂ぶりが、僅かに反応を始める。
「んっ、先生切ないよ、これ……」
「どうして?」
「だって、俺欲しくなってるもん。もう、癖になってる。先生に血を吸われながらされるの、期待してるんだもん」
「チェルルはエッチだね」
ほんのりと頬を染めるチェルルは切なげにこちらを見ている。おねだりの目はけっこうそそる。性急に欲してしまいそうで危険だ。
「ちゃんと慣らさないと、辛いのは猫くんなんだよ。ここ、切れるの嫌でしょ?」
存在を示すように指の一本を後孔へと伸ばし、押し込んだ。硬いそこは抵抗があるはずだったのに、何故かもの凄く柔らかく受け入れられ、美味しそうにチューチュー吸い始めている。
「……チェルル」
「はぃい!」
「自分でしたね、ここ」
クリクリと指を押し込み浅い部分を押し上げると、チェルルがブルブルっと震えた。明らかに感じている声で恥ずかしそうに喘ぐ。
「だって、先生今日は遅いからもうないんだと思って、切なくなったんだもん」
「もん! じゃないよぉ」
クチックチュッと後ろを解し、二本目を入れる。それでコリコリした部分を擦ると、ビクビクッと腰が震えてだらしない声でチェルルが喘いだ。
「変態さんだな、チェルル」
「ごめんね。でも、俺も待ってたんだよ」
「んっ、ごめん。論文読んでて遅くなったの」
「仕事だし、養われてる俺が言うのもおかしいと思うけれど、ちゃんと休んでよ。そしてたまには俺に構って」
拗ねた猫みたいな反応が可愛い。ペロペロっと舌でハムレットの唇を舐めるのは、猫が寄せる親愛の挨拶みたいでくすぐったくて、そして嬉しい。
「ごめんね、猫くん。寂しい時は寂しいって言っていいんだよ」
「寂しい、先生。一人の布団は全然、温かくならないんだ」
素直に気持ちを吐露してくれるチェルルは珍しいと同時に、そんなに待たせてしまったんだと反省した。
「いいよ、僕が沢山温めてあげる」
寒いなんて言わないくらい沢山、温めてあげるからね。
事前に弄っていただけあって、後孔は柔らかく解れて僅かに濡れている。そこを更に濡らし、三本の指で弄りながら開いてゆけば、中がおねだりするみたいに蠢いていく。チェルルも欲しそうに可愛く鳴いて、顔をほんのりと赤くしている。
可愛くてたまらない。ベタベタくっついてくるのに甘え下手で、我慢して、時々ちょっと拗ねたりして。面倒と言う人もいるけれど、ハムレットにはどれも可愛い反応だ。
「せん、せい……もっ、欲しい」
「うん、いいよ」
十分柔らかくなっているのを確認して、ハムレットは指を抜いてそこに自身を宛がい、ゆっくりと埋めていく。それと同時にチェルルの首筋に鋭い牙を差し入れた。
「あっ! あっ、あぁ……」
一瞬ビクン! という反応を返す体、瞳が大きく一瞬見開かれた後は、トロンと蕩けていく。一緒に、後孔も緩んで受け入れが楽になった。
吸血鬼の牙からは一種の毒が分泌される。獲物の抵抗を奪い、痛覚を麻痺させる。が、それ以上に気持ち良くなる催淫剤という側面がある。これにハマると普通の快楽では満足できなくなるそうだ。
甘い味が口の中に広がって、急激に渇きが癒えていく。溢れてくる赤い液体を舐め、取り込む度にハムレットも気持ちよくなっていく。これは、ある種の泥酔のようなものだと思う。
「猫くん、気持ちいい?」
「あっ……い、ぃ」
「動くよ」
衝動のままに突き入れると、チェルルは高い声で鳴いて後孔を締める。催淫剤で気持ちよくなっているからか、弄っていない彼の昂ぶりからはトロトロと先走りが溢れてくる。
可愛い。少年と青年の間にあるような愛らしい容姿も、素直な体も。勿論、笑った顔やちょっと拗ねた顔、案外寂しがり屋な部分も好き。彼に巡り会えた事が、きっと一番の幸せ。
チェルルの気持ちいい所は全部知っている。浅い部分を優しく擦られるのはけっこう好き。でもそれじゃ物足りなくなってくると、甘えて抱きついておねだりしてくる。
乳首にほんの少し牙を引っかけるようにされるのも好きで、されるとキュッと入口が締まる。これ、不意打ちでされるとちょっと危なかったりする。
「先生、キスして」
「うん、いいね」
舌を絡めてゆっくりと口腔を味わうと、安心するのかトロトロになっていく。余計な力も抜けて、潤んだ黒い瞳が見上げて笑う。この顔を見るのが、ハムレットの至福の時だったりする。
もう一度首筋に噛みつき、吸い上げながら中を抉る。最奥を突くとキュゥゥッと締まり、欲しそうにうねって包み込まれていく。
「チェルル、好きだよ。本当に、大好き」
「俺、も。先生、大好きだよ」
「名前、呼んでよ」
「ハム、レットっ」
名前を呼ぶのが恥ずかしいのか、それとも言い慣れなくて照れるのか、それだけで追い上げられていくチェルルは何度も甘い声で呼んでくれる。これが愛しくて、ハムレットは追い上げてやがて彼の中に全てを放っていく。
絞り上げるように欲しがる中が蠢いて、同時にチェルルも達してビクビクと震える。荒い息を吐きながらこちらを見る彼のほんのりと赤い顔を見ながら、ハムレットはこみ上げる願望にゾクゾクっと震えた。
いつか彼をこちら側へ。そうしたら、ずっと一緒にいられるから。
◇◆◇
目が覚めたハムレットは、隣りで眠るチェルルをぼんやりと見ている。
当然あれは夢。でも、浮かべる表情とかがとてもリアルだった。
猫くん、とても気持ち良さそうだったな……
少し痛いのも気持ちいいのだろうか。痛覚が快楽に変わる事もあるし、もしかしたらあるのかな?
ちょっと興味があって、ハムレットはチェルルの首筋に顔を埋めて、軽くそこに噛みついてみた。
「! いたぁ!!」
「あー、だよねぇ」
「ぎゃあ! 神父様!」
「え?」
そんな不似合いな職業についた覚えはない。いや、オーウェンが出来ているんだから出来ない訳じゃないとは思う。あいつくらい聖職者が似合わない奴もいない。間違いなく加虐癖がある。
チェルルは寝ぼけていたのか噛まれた首筋を手で押さえながらも、ぱちくりとこちらを見ている。そして盛大に溜息をついた。
「よ……よかったぁ、先生だぁ」
「どうしたの?」
「え! あぁ、うん、何でもない!」
何でもない、なんて顔はしていない。わざとかってくらい目線を逸らしている。
「ふーん」
ハムレットはジトリとチェルルを見る。その視線にビクつきながらも、チェルルは知らん顔をしている。
これは、後で吐かせてみないと。
新年早々、ハムレットは楽しそうな笑みを浮かべた。
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