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10章:受け達の初夢
5話:はむはむしたいのです!(ウェイン)
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僕には自慢の恋人がいる。綺麗な銀色の狐で、背が高くて、とてもかっこいい!
ウェインは今日もウキウキで森の中にあるアシュレーの家を目指していた。人里から少し離れている、こぢんまりとした家を。
「アシュレー!」
バンッとドアを開けるとアシュレーは少し驚いたようにこちらを見て、次にフッと笑う。
この顔! この笑顔がカッコいい!!
「どうした、ウェイン?」
「今日はいい天気だから外行こう!」
温かいから狩りもいい。アシュレーは狩りが上手だ。魚釣りもいい。この間魚が沢山いる場所見つけたんだ。
アシュレーは持っていた竹のザルを置いて近づいて、ウェインの頭をクリクリと撫で回した。オレンジ色の髪と、大きな三角形の耳。全部に触れるように撫でられると悔しいけれど、ちょっと嬉しい。
「もぉ、子供扱いするな!」
「あぁ、悪い。今日も元気だな、ウェイン」
「うん! なぁ、魚獲りに行こうぜ!」
「あぁ、いいぞ」
やった! 今日は釣りだ!
アシュレーの家に置きっぱなしの釣り竿とバケツを持って、ウェインは元気に川へと向かった。
川は流れが穏やかで魚が沢山いる。そこに針を垂らしているけれど、なかなか魚はかからない。
かたやアシュレーのバケツにはもう三匹の魚が入っている。
「もぉ、どうして僕は釣れないんだよぉ」
「お前が動くからだ。魚だってバカじゃないんだぞ」
「分かってる! 動いてないもん」
と、思っているんだけれど。
少し離れて釣り糸を垂らしているアシュレーを盗み見る。本当に落ち着いて、大人だ。こんな格好よくて、綺麗で大人な銀狐が僕の事が好きだなんて未だに信じられない。
ほんの少し、劣等感もある。ウェインはアシュレーとあまり年が変わらない。なのにウェインは小さくて、子供っぽい。お○ん○んも小さいし、毛も生えそろっていない。腹筋とか柔らかいし。
オスなのに、出来損ないな気がする。側に完璧な見本みたいなアシュレーがいるから、余計に悔しい気分になる。
「ウェイン?」
「ふぁ!」
物思いに耽っていたから、近づかれたのに気付かなかった。アシュレーは後ろにいて、そっと抱き寄せていた。
「どうした? 何を考えていたんだ?」
「なっ、なんでもない!」
「嘘だな。耳が垂れていたし、尻尾がしょんぼりしていたぞ」
「違うって言ってんじゃん!」
悩みを見透かされたら恥ずかしい。それを誤魔化すみたいに振り払うように立ち上がった、その足元がツルンと滑った。
「うっ、わぁぁ!」
「ウェイン!」
ザバンッと大きな水音を立ててウェインは川に落ちた。とは言っても膝下の浅い、流れも緩やかな川だから平気……なんだけれど。
「アシュレー!」
「っ!」
ウェインを庇うみたいに下になったアシュレーが、痛そうな顔をする。見ると右足と右腕がざっくりと切れている。尖った石があったから、それで切ったのかもしれない。
「大変だ! ごめん! 僕……僕!」
「大丈夫だ、このくらい舐めておけば直る」
「ダメだよそんなの! 傷洗って……今日はもう帰ろう!」
川の水で血は流れていくのに、まだ止まらない。ウェインは着ていた上着を破いて、傷に当てて縛った。
二人分の荷物を持って帰る道は、行きのウキウキした気分が嘘みたいに萎れていた。
アシュレーの家に戻って、彼はすぐに傷の手当てを始めた。傷を丁寧に洗い流しているのをウェインはしょんぼりと見ている。
「そんなにしょげるな、ウェイン。派手に血は出たが、そんなに深くない」
「だって……」
「俺の魚もやるから」
「いらないもん!」
ただ、自分が情けないだけ。空回って、迷惑かけて……悲しいだけ。
ふわっと手が頭に触れる。見上げると、とても穏やかに笑うアシュレーがいた。
「ほら、血も止まった。少し押さえていれば大丈夫だ」
こんな、優しい顔をしないでよ。いつも迷惑かけてるのに、どうして嫌だって言わないんだよ。
「ウェイン? あっ、おい!」
飛び出して、抱きついて、顔を上げられない。その頭をアシュレーはずっと優しく撫でてくれる。
「僕、大人なのにかっこ悪い……ごめん、アシュレー」
「お前は十分かっこいいよ」
「どこが!」
「体は小さくても正義感は人一倍だ。それにお前は、俺に会いにきてくれる。暗い森の中でも怖がらずに、俺の所にきてくれる」
「そんなの当たり前じゃん! 僕はアシュレーの事大好きなんだからな!」
好きな人に会いにいく道が怖いわけがない。こんな優しい人が怖いわけがない。多少見てくれが怖いとか、銀色だとか関係ない。
アシュレーは嬉しそうに笑って、ちょんと額にキスをしてくれる。たったそれだけが、嬉しかったりするんだ。
「怪我、どうしたら早く治る?」
「寝てれば平気だ」
「じゃあ、もう寝よう」
アシュレーを引っ張って、ウェインは寝室のドアを開けてベッドに入り込む。そして自分の隣をパフパフと叩いた。
溜息をつきながら嬉しそうに笑って、アシュレーが隣りに寝転がる。いつもは腕枕だけど今日は我慢。そのかわり、怪我をした腕をペロペロと沢山舐めた。
「こら、ウェイン!」
「舐めたら直るんでしょ?」
「……そうかもしれないな」
「ふふんっ」
早く怪我が治ればいいな。
そんな願いを込めて腕の傷を舐めていると、ちょっとトロンと気持ちがフワフワしてくる。気持ちいいなって、思ってしまう。
「あーむぅ」
「ウェイン!」
「はむはむ……」
アシュレーの耳に手を伸ばして、先っぽの方をはむはむと甘噛みする。これがとっても気持ちよくてたまらない。まさに至福の時だ。
「……まったく、人の気も知らずに」
困り果てた溜息が一つ。それも、幸せいっぱいのウェインにはあまり聞こえていなかった。
◇◆◇
なぜ腕をこんなにも甘噛みされているのか?
気持ちよく眠っているウェインはよほど幸せな夢を見ているのだろう。さっきから寝たままアシュレーの腕をはむはむと甘噛みしている。
ちゅっ、ちゅぱ、はむ……ふみゅぅ……
……拷問か。
可愛い恋人があまりに可愛い事をしているのに、ここで手を出すのは流石に人間としてどうなんだと悩みまくる、鬼畜になれないアシュレーであった。
ウェインは今日もウキウキで森の中にあるアシュレーの家を目指していた。人里から少し離れている、こぢんまりとした家を。
「アシュレー!」
バンッとドアを開けるとアシュレーは少し驚いたようにこちらを見て、次にフッと笑う。
この顔! この笑顔がカッコいい!!
「どうした、ウェイン?」
「今日はいい天気だから外行こう!」
温かいから狩りもいい。アシュレーは狩りが上手だ。魚釣りもいい。この間魚が沢山いる場所見つけたんだ。
アシュレーは持っていた竹のザルを置いて近づいて、ウェインの頭をクリクリと撫で回した。オレンジ色の髪と、大きな三角形の耳。全部に触れるように撫でられると悔しいけれど、ちょっと嬉しい。
「もぉ、子供扱いするな!」
「あぁ、悪い。今日も元気だな、ウェイン」
「うん! なぁ、魚獲りに行こうぜ!」
「あぁ、いいぞ」
やった! 今日は釣りだ!
アシュレーの家に置きっぱなしの釣り竿とバケツを持って、ウェインは元気に川へと向かった。
川は流れが穏やかで魚が沢山いる。そこに針を垂らしているけれど、なかなか魚はかからない。
かたやアシュレーのバケツにはもう三匹の魚が入っている。
「もぉ、どうして僕は釣れないんだよぉ」
「お前が動くからだ。魚だってバカじゃないんだぞ」
「分かってる! 動いてないもん」
と、思っているんだけれど。
少し離れて釣り糸を垂らしているアシュレーを盗み見る。本当に落ち着いて、大人だ。こんな格好よくて、綺麗で大人な銀狐が僕の事が好きだなんて未だに信じられない。
ほんの少し、劣等感もある。ウェインはアシュレーとあまり年が変わらない。なのにウェインは小さくて、子供っぽい。お○ん○んも小さいし、毛も生えそろっていない。腹筋とか柔らかいし。
オスなのに、出来損ないな気がする。側に完璧な見本みたいなアシュレーがいるから、余計に悔しい気分になる。
「ウェイン?」
「ふぁ!」
物思いに耽っていたから、近づかれたのに気付かなかった。アシュレーは後ろにいて、そっと抱き寄せていた。
「どうした? 何を考えていたんだ?」
「なっ、なんでもない!」
「嘘だな。耳が垂れていたし、尻尾がしょんぼりしていたぞ」
「違うって言ってんじゃん!」
悩みを見透かされたら恥ずかしい。それを誤魔化すみたいに振り払うように立ち上がった、その足元がツルンと滑った。
「うっ、わぁぁ!」
「ウェイン!」
ザバンッと大きな水音を立ててウェインは川に落ちた。とは言っても膝下の浅い、流れも緩やかな川だから平気……なんだけれど。
「アシュレー!」
「っ!」
ウェインを庇うみたいに下になったアシュレーが、痛そうな顔をする。見ると右足と右腕がざっくりと切れている。尖った石があったから、それで切ったのかもしれない。
「大変だ! ごめん! 僕……僕!」
「大丈夫だ、このくらい舐めておけば直る」
「ダメだよそんなの! 傷洗って……今日はもう帰ろう!」
川の水で血は流れていくのに、まだ止まらない。ウェインは着ていた上着を破いて、傷に当てて縛った。
二人分の荷物を持って帰る道は、行きのウキウキした気分が嘘みたいに萎れていた。
アシュレーの家に戻って、彼はすぐに傷の手当てを始めた。傷を丁寧に洗い流しているのをウェインはしょんぼりと見ている。
「そんなにしょげるな、ウェイン。派手に血は出たが、そんなに深くない」
「だって……」
「俺の魚もやるから」
「いらないもん!」
ただ、自分が情けないだけ。空回って、迷惑かけて……悲しいだけ。
ふわっと手が頭に触れる。見上げると、とても穏やかに笑うアシュレーがいた。
「ほら、血も止まった。少し押さえていれば大丈夫だ」
こんな、優しい顔をしないでよ。いつも迷惑かけてるのに、どうして嫌だって言わないんだよ。
「ウェイン? あっ、おい!」
飛び出して、抱きついて、顔を上げられない。その頭をアシュレーはずっと優しく撫でてくれる。
「僕、大人なのにかっこ悪い……ごめん、アシュレー」
「お前は十分かっこいいよ」
「どこが!」
「体は小さくても正義感は人一倍だ。それにお前は、俺に会いにきてくれる。暗い森の中でも怖がらずに、俺の所にきてくれる」
「そんなの当たり前じゃん! 僕はアシュレーの事大好きなんだからな!」
好きな人に会いにいく道が怖いわけがない。こんな優しい人が怖いわけがない。多少見てくれが怖いとか、銀色だとか関係ない。
アシュレーは嬉しそうに笑って、ちょんと額にキスをしてくれる。たったそれだけが、嬉しかったりするんだ。
「怪我、どうしたら早く治る?」
「寝てれば平気だ」
「じゃあ、もう寝よう」
アシュレーを引っ張って、ウェインは寝室のドアを開けてベッドに入り込む。そして自分の隣をパフパフと叩いた。
溜息をつきながら嬉しそうに笑って、アシュレーが隣りに寝転がる。いつもは腕枕だけど今日は我慢。そのかわり、怪我をした腕をペロペロと沢山舐めた。
「こら、ウェイン!」
「舐めたら直るんでしょ?」
「……そうかもしれないな」
「ふふんっ」
早く怪我が治ればいいな。
そんな願いを込めて腕の傷を舐めていると、ちょっとトロンと気持ちがフワフワしてくる。気持ちいいなって、思ってしまう。
「あーむぅ」
「ウェイン!」
「はむはむ……」
アシュレーの耳に手を伸ばして、先っぽの方をはむはむと甘噛みする。これがとっても気持ちよくてたまらない。まさに至福の時だ。
「……まったく、人の気も知らずに」
困り果てた溜息が一つ。それも、幸せいっぱいのウェインにはあまり聞こえていなかった。
◇◆◇
なぜ腕をこんなにも甘噛みされているのか?
気持ちよく眠っているウェインはよほど幸せな夢を見ているのだろう。さっきから寝たままアシュレーの腕をはむはむと甘噛みしている。
ちゅっ、ちゅぱ、はむ……ふみゅぅ……
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