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12章:お嬢様のお気に召すまま
4話:大切な物(アリア)
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異変に気付いたのは宿に戻って少ししてから。ウルバスと別れてすぐに、大事な人と再会したから気付くのに遅れてしまったのだ。
「アリア!」
「お祖父様!」
部屋に戻ろうと階段へ向かう、その背後から懐かしい声に呼び止められて振り向いて、アリアはパッと表情を輝かせた。
そこにはすっかり髪が白くなった、人好きのする老人が品のいいコート姿で立っている。そしてアリアへと足早に近づいて来て、強く抱きしめてきた。
「大きくなって。マリアにそっくりになったわい」
「お祖父様こそお元気そうで」
「はっはっはぁ! まだまだ元気だから心配せんでよいぞ!」
大昔には領地を守って大活躍だったと自慢する祖父は確かに体格がよく今でも元気だ。肌艶もつやつやしている。
でもちょっと力が強すぎて痛い時があるのは秘密だった。
「ん? コートが濡れておるの? 手も冷たそうだ。何処かへ出かけていたのか?」
「はい。ウルバスさんに王都を案内していただいたのです」
「ウルバス?」
途端、祖父の目がもの凄く鋭くなる。アリアに兄妹以外の人が近づくと、祖父はこんな感じになるのだ。ちなみにランバートの事を教えた時もこうなった。
「どこの虫だ、儂の大事な孫に手を出そうとは。このリーヴァイ・マクファーレン、老いたとは言えまだまだそこらのガキには負けんぞ!」
「お祖父様!」
「いや、負けますよリーヴァイ様」
拳を握り熱くなる祖父にオロオロなアリアと、苦笑するヨシュア。だがヨシュアの言葉にリーヴァイはふと視線を止めた。
「知っておるのか!」
「昨日お嬢様がお世話になって、助けてくれた恩人ですよ。しかもファウスト様の部下で、信頼しているとの事です。挨拶に来て下さいましたが感じのいい人ですよ」
「そうですわ、お祖父様。ウルバスさんはとてもいい方よ。私がしたかったことや、見てみたかったお店に行こうって言ってくれて」
「うむ、ファウストの部下か……ならば、まぁ、悪い奴ではないんだろうが。だがしかし、どこの馬の骨とも知らぬ男が」
アリアもヨシュアも思うのだ。ファウストの過保護はきっと祖父の血だと。
「ちなみに、なんて名だ?」
「ウルバス・チャートンさんです」
「チャートン?」
リーヴァイは何かひっかかったのか、顎をしげしげと撫でる。その後は酷く考え込んでいた。
「もしかして、東の出ではないか?」
「確か、ファウスト様がそんな事を言っていましたが」
「まさか……。いや、だが確かあそこには幼い息子がいたはずだが……だが」
「?」
何かをとても気にしているリーヴァイの目はもうふざけた様子がない。そして真剣にアリアを見るのだ。
「アリア、その男とはあまり親しくなるな」
「え?」
「よいか、知り合いくらいにしておけ。不幸になる」
「そんな! お祖父様どうして!」
「どうしてもじゃ!」
「お祖父様なんて大嫌い!」
ウルバスは確かに知り合いだし、それ以上とは考えていないけれど、それでも知りもしないのに嫌な言い方をされるのは我慢できない。思わず声を大きく言うと、リーヴァイは思いきりショックな顔をしてしまった。
「うぅぅ、孫の幸せの為であって、嫌いだなんて……」
「意味が分かりません」
「……記憶違いでなければ、チャートン家は既にない。あの一族は呪われておるのよ」
「え?」
アリアは驚いた顔でリーヴァイを見る。なんだか信じられない、悪い冗談を言われている気分だ。
「その昔、ヴァンパイアの王を殺したという伝説があるな。だがその時、殺したヴァンパイアの呪いを受けたとか。そのせいかは知らんが、あの家は精神的に不安定で異常な者が多く出ている。確か前の当主は多くの奥方を娶って全部死別。息子一人を残して精神に異常をきたして自殺したとか」
冗談みたいな話だが、リーヴァイに冗談を言っている様子はない。それが嫌な感じで、苦しくなる。少なくともウルバスはそんな様子なかった。
「でも、それは父親の話であってウルバス様の話じゃないですよ。あの人、とても穏やかでいい人そうでしたよ」
「うむ、まぁな」
釈然としないまでも一応は頷くリーヴァイを、アリアは不安な目で見ていた。
「まぁ、それよりもアリアや。儂と夕食を一緒にしないかい? 久しぶりだろ」
「はい、勿論ですお祖父様」
「うむうむ、まずは着替えておいで。体が冷えてはいけないからね」
「分かりました」
にっこりと微笑んで階段を上がり、部屋に行くと老執事が待っていてくれる。帰宅の挨拶をして彼にコートを預けると、濡れたコートと手袋に老執事は驚いていた。
「何をなさったのですか、お嬢様」
「ふふっ、雪だるまを作ったのよ。ほとんどウルバスさんが作ってくださったけれど、楽しかったわ。小さな頃できなかったから、一つ夢が叶ったの」
「左様でございますか。よかったですね」
温かく微笑む老執事がコートを部屋にかける。その胸元を見て、アリアは一瞬で顔色を青くした。
無いのだ、もらったブローチが。
「うそ……どうしよう、私!」
「お嬢様?」
「爺や、ブローチついてなかったかしら。コートに」
「? いいえ」
「うそ……何処かに落としてしまったの? どうしよう」
途端に泣きたくなって、胸元が苦しくなる。居ても立ってもいられない気分で部屋を出て、とりあえず先程リーヴァイと挨拶を交わした場所へと向かってみた。落ちているのではと。
でも、ウルバスから貰ったブローチは落ちていなかった。
どうしよう、貰った、大切なものなのに落としてしまうなんて。どこで落としたのだろう。画材店を出るまでは確かにあった。触ったから間違いない。それなら、そこから公園までの道か、公園で?
とにかく探さなければ。思って宿の外に出ようとドアを開けた所で、入ってくる人とぶつかった。
「きゃ!」
「すまない! アリア?」
「ファウスト兄様! ルカ兄様!」
「どうしたの、アリア?」
見ると二人の兄がそこに立っている。二人の顔を見た途端、張りつめた気持ちがどこか緩んでアリアは目にたっぷりの涙が浮かんだ。
「おい、どうしたんだ!」
「アリア落ち着いて? ね?」
「お……お兄様、私……私! 大切な物をなくしてしまったんです! 早く探さないと」
「落ち着け! 外はもう暗いし寒い。こんな中出て行ったら負担がかかる」
「でも!」
でも、大事なんだ。ウルバスがくれた、もの以上に思い出のものなんだ。
無くしてしまったなんて……思い出まで落としてしまったみたいで悲しくてたまらない。もう、ウルバスにどんな顔をして会えばいいか分からない。
泣いてしまうアリアを抱きとめてとりあえずロビーのソファーに座らせたファウストは、ルカと二人でどういうことなのか話を聞き出した。
「……ウルバスに貰ったブローチを、画材店から公園までの何処かで落としたんだな?」
「はい」
「分かった。西の管轄だからそこに落とし物が届いていないか聞いてくる。ルカ、側にいてやってくれ」
「私が……」
「ダメだ。気持ちは分かるが無理をすればお前の体に響く。それは、ウルバスも望まない」
立ち上がったファウストが出て行くのを見送って、アリアは俯いた顔を上げられなかった。
楽しかった時間が壊れてしまうような不安と悲しみにたまらない苦しさがあって何度か咳をして、それでも俯けた顔を上げられないままだった。
▼ウルバス
アリアと別れたあと、ウルバスはまだ西地区にいた。たまには街で夕飯を食べる気になったのだ。
今回は少し連れ回してしまったけれど、次もしも王都に来ることがあればアリアを誘ってみたい。その時に使える店を少し見繕ってみようと思ったのだ。
不思議と心地よく、そして楽しい気持ちでいられる。表情が豊かで感情が素直で、色々してあげたいと思える子だ。今度は馬に乗せてみたい。きっと驚くだろう。季節と天気が良ければ船もいい。ほんの少しだけ、走らせなくても船に乗るのは初めてだろう。
そんな事をぼんやり考え、来るかどうかも分からない未来を想像して行動するなんて少し変な気もしてくる。少なくとも今まで、こんな事はしなかった。
ここの店は落ち着いて食事ができそうだ。なんて事を思って店を出ると、なんだか忙しそうなチェスターが目の前を通った。珍しくこちらに気付いていないみたいだ。
「おーい、チェスター」
「あっ、ウルバス様! 今晩は」
「今晩は。どうしたの? 何かあったかい?」
この様子では事件だろうか。今から中央関所にむかうのだろうか?
思って声をかけると意外とチェスターは立ち止まっている。急ぎではないのだろうか。
「失せ物が届いていないか、ちょっと探していました」
「失せ物? そんなに急いで?」
「ファウスト様から問われて。何でも妹さんが落としてしまったみたいなんです。もしも届いたら教えて欲しいと言われて、店舗に届いていないか夜の見回りついでに聞いて回ってるんです」
アリアが落とした? 手袋はしていた。そうなると……
「チェスター、それってブローチ?」
「え? はい」
「ふーん。分かった、俺も手伝うからキアラン捕まえて俺の外泊届許可取ってもらっていい?」
「げぇ!!」
途端にドン引き。キアランは取っ付きづらい所があるし、基本怒るから苦手な人も多いと思う。
けれど最近、ここに最速の攻略法が出来たのだ。
「トレヴァー探して、彼を一緒につれて行くといいよ。事情は後で話すから、ウルバスが宜しくって」
「うっ、ずるいっすよ!」
「あはは、お願いね」
文句を言いながらも行ってくれるチェスターはいい子だと思う。
ウルバスはそのままの足で一人、日中にいた公園へと向かっていった。
落としたのならここしかない。多分、雪だるまを作っている時だろう。絵を描いている時はまだついていたのを知っている。楽しそうに、真剣に絵を描いているアリアの横顔を見ていたのだから。
辺りは大分暗いが、幸い今日は月明かりがある。公園は開けているから明かりがちゃんと地面まで届いている。
けれどどこか、冷たく張りつめたような空気が感じられる。きっと冷えるし、夕方の空は翌日の天気が思わしくないと教えてくれた。雪が降れば余計に見つけるのが困難になるだろう。
目印はファウスト顔のイケ雪だるま。アリアはこの周辺を中心にしていたから、広範囲には行っていない。多分すぐに見つけられる。
そう考えて雪だるまの周辺を捜索すること三十分、地面にはないことをあらかた確認して、ウルバスは雪だるまの隣りに腰を下ろした。
「うーん、この辺だと思うんだけどな。誰かが見つけて持って行ったのかな?」
宝石とかはついていない、高価ではないブローチだ。見つけたとしても持ち逃げされるリスクは低い。ただ子供なんかが見つけて気に入って自分の物にしてしまっていたら困る。流石に返してとは言えないし。
でも、あのブローチじゃなきゃ意味がないのだろう。そうでなければアリアが探す理由はない。似ている違うブローチを渡す事はいくらでも出来るが、今日という日を一緒にしたものはあれだけなのだから。
「もう少し粘るか」
立ち上がり、パンパンと服についた雪を払って雪だるまを見下ろす。するとふと、頭の雪の中に僅かな布地が見えて、ウルバスはちょんちょんとその周辺を指で掘り返してみた。
するとごく浅い所からポロッと、ブローチが手の中に転がり落ちてきたのだ。
「あっはは、流石お兄さんだな。妹の大事な宝物守ってたんだ」
少し歪になってしまった頭に、ウルバスは元のように雪を詰め込み丸く形を整える。
そうして立ち上がり、自分の手の中にあるブローチを見た。
本当に、気まぐれなものだった。けれど思えば誰かに何かをあげようと思ったのは、初めてだった。そして思いつきのまま、贈り物をしたのも初めてだった。
仕方がないだろう。知っている母は最初から少しおかしくなっていたし、父は明らかにおかしかった。そして、たったの七年しか一緒にはいなかった。
祖父は厳格過ぎて距離が遠くて、何かをしてあげたいと思う事もなく一緒にいたのは一年くらい。
唯一養父には何かをしてあげたかったけれど、子供過ぎて何も持たず、与えられるばかりだった。
十七で養父に手間をかけさせたくないと騎士の道を選んでからはずっと、仲間全員で何かを贈る事はあっても個人ではなかった。
本当に、単なる気まぐれだったと思う。なのに、大事に思ってくれて……嬉しいけれど、煩わせてしまってもいる気がした。彼女を振り回してしまっている気がする。
これを、自分が届けたと知ったら彼女はどんな顔をするのだろう。きっと申し訳ない顔をするに違いない。楽しかった時間の最後が悲しい顔なのは、少し悲しく思える。
「……うん、そうだね」
素敵な一日の終わりは、やっぱり笑顔がいいと思う。
ウルバスは少し足早にアリアの宿へと向かっていった。
▼アリア
祖父や兄達との食事は楽しいはずなのに、心からは笑えなくて申し訳ない気がしている。
ずっと落としたブローチの事が頭に引っかかって、申し訳なさや「どうしよう」という焦りに気持ちはどんよりと沈んでしまいそうだ。
「アリア、顔を上げて。ね?」
「落とし物で届いていないか、調べて貰っている」
「兄様達……有り難う」
心配そうなルカとファウストが声をかけてくれて、アリアは表面だけでも笑みを見せる。けれどそんなのは二人には通用しないものだ。やっぱり、心配顔をさせてしまう。
「そんなに気に入っていたのか? なら明日、儂と二人で似たのを……」
「ううん、いいのお祖父様。代わりはいらないわ」
それでは意味がないのだから。
食事もそろそろ終わる頃、宿併設のレストランのウエーターが可愛らしいケーキを一つ、アリアの前に置いた。
「え? あの、私頼んでいませんが」
「お客様へ、贈り物と一緒に頼まれていった方がいるのです。こちらも一緒に渡してほしいと」
そう言ってウエーターが出したのは、小さく可愛らしい箱にちょこんとリボンがついたもの。それを恐る恐る開けてみると、中からはなくしたはずのブローチが、まだほんの少し濡れたままで入っていた。
「あの、これを持って来た方って!」
「既に帰られましたが」
「そんな……」
雪の中にあったに違いない。金属の部分は冷たくて、布の部分は濡れている。愛らしいクマが、アリアへむかって花を差し出している。
「ファウスト兄様」
「どうした?」
「明日、お時間のある時でいいの。ほんの少し、私の買い物についてきてくれないかしら」
このまま顔も見せないでさようならはしたくない。
アリアのお願いに、ファウストは穏やかに微笑んで頷いた。
▼ウルバス
流石に少し自由が過ぎて、キアランを怒らせてしまった。
昨日、予想よりも早く失せ物を見つけて宿舎に帰ってくると、この寒い中彼は仁王立ち状態だった。どうやらトレヴァーをいいように使ったのも気にくわなかったみたいだ。
久しぶりに三十分も説教をされ、残る三十分は愚痴を聞かされ、追加で三十分惚気られた。彼も随分忙しく充実した人になったみたいで、微笑ましく思う。
今日は制服に袖を通してお仕事をして、平和に一日が過ぎていった。
ほんの少し物足りない、つまらないと感じるのは、その前の二日間が充実していたからなのだろう。
夕食も終わって、入浴も済ませたけれどラウンジの気分ではなく、だからといって部屋で読書の気分でもない。今はぼんやりと修練場を見下ろしている。
「ウルバス様!」
「ん? あぁ、トレヴァー。昨日はごめん、キアランと喧嘩とかにならなかった?」
足早に近づいてきたトレヴァーにのほほんと返しながら、ウルバスはそちらを向く。昨日無理を通すのにトレヴァーを使ったから、キアランが怒っていないか少し心配だった。この二人の仲を悪くするつもりはないのだ。
まぁ、どうしたってキアランの方が惚れている。キツい事をその時は言っても、後で泣きそうな顔で仲直りしてくれると思っている。
「喧嘩にはなりませんでしたが、怒ってましたよ」
「ははっ、ごめん。それで、どうしたの?」
「はい、お客様が見えてます。ファウスト様付きで」
「……えっ、何それ怖い」
その名が出て来てウルバスに客となれば、相手は一人しかいない。けれどこんな時間に、どうしてだろう?
思いながらも待たせるのは申し訳無い。軽く制服のジャケットを肩に引っかけたまま、ウルバスは案内されるまま宿舎の入り口へと向かった。
宿舎の入り口には仕立てのいい馬車が一台停まっていて、そこの前にファウストを伴ったアリアが立っていた。コートには、昨日のブローチがちゃんとついている。
「ウルバスさん!」
「どうしたの、こんな時間に? 冷えるよ?」
「今、食事会が終わって。それでどうしても今日、お会いしたくて」
少し早口になりながら近づいてきたアリアが、ウルバスにグッと何かを押すように渡す。黒い小さな紙袋の中に、小さな箱が入っていた。
「ブローチ、探してくれて有り難うございます。そして、落としてしまってすみません」
「いいよ、それだけ楽しくて夢中だったんだし。見つかってよかったね」
「はい。これは、私の大事な思い出です」
手で包むようにブローチに触れるアリアを見られただけで、どこかほっとする。
そして手元のこれは、なんだろう?
「これは、私からのお礼です」
「そんな、気にしなくていいのに」
「ダメです! ちゃんと、貰ってください。そうじゃないと私、怒りますからね」
ちょっと怒ってぷぅっと頬を膨らませて見せるアリアは、それでも随分愛らしい。微笑ましくて、次には二人して破顔した。
「私、ルカ兄様の結婚式にも出席できそうなんです」
「よかったね、おめでとう」
「はい! 夏頃になると思います。その時にはまた、私に会ってくれますか?」
「勿論だよ。体調、整えてきてね」
「はい!」
嬉しそうに大きく笑って、次の約束をして別れる。アリアを乗せた馬車が宿へと向かっていくのを見送ると、降りていたファウストが近づいてきた。
「随分好かれたな」
「ははっ、妹が出来た気分です」
「妹か?」
軽く片眉を上げるファウストは面白そうに見ている。その視線の意味を、ウルバスは量りかねていた。
「お前に義兄と呼ばれる日がくるかもな」
「え! いや、無いですよそんな!」
「そうか? 少なくともアリアはお前が大好きそうだぞ」
「や……もぉ、無いですよ。俺、恋人も結婚もいりませんから」
そう言いながらも手の中に残る彼女からの贈り物が嬉しいのは、紛れもない事実だった。
「アリア!」
「お祖父様!」
部屋に戻ろうと階段へ向かう、その背後から懐かしい声に呼び止められて振り向いて、アリアはパッと表情を輝かせた。
そこにはすっかり髪が白くなった、人好きのする老人が品のいいコート姿で立っている。そしてアリアへと足早に近づいて来て、強く抱きしめてきた。
「大きくなって。マリアにそっくりになったわい」
「お祖父様こそお元気そうで」
「はっはっはぁ! まだまだ元気だから心配せんでよいぞ!」
大昔には領地を守って大活躍だったと自慢する祖父は確かに体格がよく今でも元気だ。肌艶もつやつやしている。
でもちょっと力が強すぎて痛い時があるのは秘密だった。
「ん? コートが濡れておるの? 手も冷たそうだ。何処かへ出かけていたのか?」
「はい。ウルバスさんに王都を案内していただいたのです」
「ウルバス?」
途端、祖父の目がもの凄く鋭くなる。アリアに兄妹以外の人が近づくと、祖父はこんな感じになるのだ。ちなみにランバートの事を教えた時もこうなった。
「どこの虫だ、儂の大事な孫に手を出そうとは。このリーヴァイ・マクファーレン、老いたとは言えまだまだそこらのガキには負けんぞ!」
「お祖父様!」
「いや、負けますよリーヴァイ様」
拳を握り熱くなる祖父にオロオロなアリアと、苦笑するヨシュア。だがヨシュアの言葉にリーヴァイはふと視線を止めた。
「知っておるのか!」
「昨日お嬢様がお世話になって、助けてくれた恩人ですよ。しかもファウスト様の部下で、信頼しているとの事です。挨拶に来て下さいましたが感じのいい人ですよ」
「そうですわ、お祖父様。ウルバスさんはとてもいい方よ。私がしたかったことや、見てみたかったお店に行こうって言ってくれて」
「うむ、ファウストの部下か……ならば、まぁ、悪い奴ではないんだろうが。だがしかし、どこの馬の骨とも知らぬ男が」
アリアもヨシュアも思うのだ。ファウストの過保護はきっと祖父の血だと。
「ちなみに、なんて名だ?」
「ウルバス・チャートンさんです」
「チャートン?」
リーヴァイは何かひっかかったのか、顎をしげしげと撫でる。その後は酷く考え込んでいた。
「もしかして、東の出ではないか?」
「確か、ファウスト様がそんな事を言っていましたが」
「まさか……。いや、だが確かあそこには幼い息子がいたはずだが……だが」
「?」
何かをとても気にしているリーヴァイの目はもうふざけた様子がない。そして真剣にアリアを見るのだ。
「アリア、その男とはあまり親しくなるな」
「え?」
「よいか、知り合いくらいにしておけ。不幸になる」
「そんな! お祖父様どうして!」
「どうしてもじゃ!」
「お祖父様なんて大嫌い!」
ウルバスは確かに知り合いだし、それ以上とは考えていないけれど、それでも知りもしないのに嫌な言い方をされるのは我慢できない。思わず声を大きく言うと、リーヴァイは思いきりショックな顔をしてしまった。
「うぅぅ、孫の幸せの為であって、嫌いだなんて……」
「意味が分かりません」
「……記憶違いでなければ、チャートン家は既にない。あの一族は呪われておるのよ」
「え?」
アリアは驚いた顔でリーヴァイを見る。なんだか信じられない、悪い冗談を言われている気分だ。
「その昔、ヴァンパイアの王を殺したという伝説があるな。だがその時、殺したヴァンパイアの呪いを受けたとか。そのせいかは知らんが、あの家は精神的に不安定で異常な者が多く出ている。確か前の当主は多くの奥方を娶って全部死別。息子一人を残して精神に異常をきたして自殺したとか」
冗談みたいな話だが、リーヴァイに冗談を言っている様子はない。それが嫌な感じで、苦しくなる。少なくともウルバスはそんな様子なかった。
「でも、それは父親の話であってウルバス様の話じゃないですよ。あの人、とても穏やかでいい人そうでしたよ」
「うむ、まぁな」
釈然としないまでも一応は頷くリーヴァイを、アリアは不安な目で見ていた。
「まぁ、それよりもアリアや。儂と夕食を一緒にしないかい? 久しぶりだろ」
「はい、勿論ですお祖父様」
「うむうむ、まずは着替えておいで。体が冷えてはいけないからね」
「分かりました」
にっこりと微笑んで階段を上がり、部屋に行くと老執事が待っていてくれる。帰宅の挨拶をして彼にコートを預けると、濡れたコートと手袋に老執事は驚いていた。
「何をなさったのですか、お嬢様」
「ふふっ、雪だるまを作ったのよ。ほとんどウルバスさんが作ってくださったけれど、楽しかったわ。小さな頃できなかったから、一つ夢が叶ったの」
「左様でございますか。よかったですね」
温かく微笑む老執事がコートを部屋にかける。その胸元を見て、アリアは一瞬で顔色を青くした。
無いのだ、もらったブローチが。
「うそ……どうしよう、私!」
「お嬢様?」
「爺や、ブローチついてなかったかしら。コートに」
「? いいえ」
「うそ……何処かに落としてしまったの? どうしよう」
途端に泣きたくなって、胸元が苦しくなる。居ても立ってもいられない気分で部屋を出て、とりあえず先程リーヴァイと挨拶を交わした場所へと向かってみた。落ちているのではと。
でも、ウルバスから貰ったブローチは落ちていなかった。
どうしよう、貰った、大切なものなのに落としてしまうなんて。どこで落としたのだろう。画材店を出るまでは確かにあった。触ったから間違いない。それなら、そこから公園までの道か、公園で?
とにかく探さなければ。思って宿の外に出ようとドアを開けた所で、入ってくる人とぶつかった。
「きゃ!」
「すまない! アリア?」
「ファウスト兄様! ルカ兄様!」
「どうしたの、アリア?」
見ると二人の兄がそこに立っている。二人の顔を見た途端、張りつめた気持ちがどこか緩んでアリアは目にたっぷりの涙が浮かんだ。
「おい、どうしたんだ!」
「アリア落ち着いて? ね?」
「お……お兄様、私……私! 大切な物をなくしてしまったんです! 早く探さないと」
「落ち着け! 外はもう暗いし寒い。こんな中出て行ったら負担がかかる」
「でも!」
でも、大事なんだ。ウルバスがくれた、もの以上に思い出のものなんだ。
無くしてしまったなんて……思い出まで落としてしまったみたいで悲しくてたまらない。もう、ウルバスにどんな顔をして会えばいいか分からない。
泣いてしまうアリアを抱きとめてとりあえずロビーのソファーに座らせたファウストは、ルカと二人でどういうことなのか話を聞き出した。
「……ウルバスに貰ったブローチを、画材店から公園までの何処かで落としたんだな?」
「はい」
「分かった。西の管轄だからそこに落とし物が届いていないか聞いてくる。ルカ、側にいてやってくれ」
「私が……」
「ダメだ。気持ちは分かるが無理をすればお前の体に響く。それは、ウルバスも望まない」
立ち上がったファウストが出て行くのを見送って、アリアは俯いた顔を上げられなかった。
楽しかった時間が壊れてしまうような不安と悲しみにたまらない苦しさがあって何度か咳をして、それでも俯けた顔を上げられないままだった。
▼ウルバス
アリアと別れたあと、ウルバスはまだ西地区にいた。たまには街で夕飯を食べる気になったのだ。
今回は少し連れ回してしまったけれど、次もしも王都に来ることがあればアリアを誘ってみたい。その時に使える店を少し見繕ってみようと思ったのだ。
不思議と心地よく、そして楽しい気持ちでいられる。表情が豊かで感情が素直で、色々してあげたいと思える子だ。今度は馬に乗せてみたい。きっと驚くだろう。季節と天気が良ければ船もいい。ほんの少しだけ、走らせなくても船に乗るのは初めてだろう。
そんな事をぼんやり考え、来るかどうかも分からない未来を想像して行動するなんて少し変な気もしてくる。少なくとも今まで、こんな事はしなかった。
ここの店は落ち着いて食事ができそうだ。なんて事を思って店を出ると、なんだか忙しそうなチェスターが目の前を通った。珍しくこちらに気付いていないみたいだ。
「おーい、チェスター」
「あっ、ウルバス様! 今晩は」
「今晩は。どうしたの? 何かあったかい?」
この様子では事件だろうか。今から中央関所にむかうのだろうか?
思って声をかけると意外とチェスターは立ち止まっている。急ぎではないのだろうか。
「失せ物が届いていないか、ちょっと探していました」
「失せ物? そんなに急いで?」
「ファウスト様から問われて。何でも妹さんが落としてしまったみたいなんです。もしも届いたら教えて欲しいと言われて、店舗に届いていないか夜の見回りついでに聞いて回ってるんです」
アリアが落とした? 手袋はしていた。そうなると……
「チェスター、それってブローチ?」
「え? はい」
「ふーん。分かった、俺も手伝うからキアラン捕まえて俺の外泊届許可取ってもらっていい?」
「げぇ!!」
途端にドン引き。キアランは取っ付きづらい所があるし、基本怒るから苦手な人も多いと思う。
けれど最近、ここに最速の攻略法が出来たのだ。
「トレヴァー探して、彼を一緒につれて行くといいよ。事情は後で話すから、ウルバスが宜しくって」
「うっ、ずるいっすよ!」
「あはは、お願いね」
文句を言いながらも行ってくれるチェスターはいい子だと思う。
ウルバスはそのままの足で一人、日中にいた公園へと向かっていった。
落としたのならここしかない。多分、雪だるまを作っている時だろう。絵を描いている時はまだついていたのを知っている。楽しそうに、真剣に絵を描いているアリアの横顔を見ていたのだから。
辺りは大分暗いが、幸い今日は月明かりがある。公園は開けているから明かりがちゃんと地面まで届いている。
けれどどこか、冷たく張りつめたような空気が感じられる。きっと冷えるし、夕方の空は翌日の天気が思わしくないと教えてくれた。雪が降れば余計に見つけるのが困難になるだろう。
目印はファウスト顔のイケ雪だるま。アリアはこの周辺を中心にしていたから、広範囲には行っていない。多分すぐに見つけられる。
そう考えて雪だるまの周辺を捜索すること三十分、地面にはないことをあらかた確認して、ウルバスは雪だるまの隣りに腰を下ろした。
「うーん、この辺だと思うんだけどな。誰かが見つけて持って行ったのかな?」
宝石とかはついていない、高価ではないブローチだ。見つけたとしても持ち逃げされるリスクは低い。ただ子供なんかが見つけて気に入って自分の物にしてしまっていたら困る。流石に返してとは言えないし。
でも、あのブローチじゃなきゃ意味がないのだろう。そうでなければアリアが探す理由はない。似ている違うブローチを渡す事はいくらでも出来るが、今日という日を一緒にしたものはあれだけなのだから。
「もう少し粘るか」
立ち上がり、パンパンと服についた雪を払って雪だるまを見下ろす。するとふと、頭の雪の中に僅かな布地が見えて、ウルバスはちょんちょんとその周辺を指で掘り返してみた。
するとごく浅い所からポロッと、ブローチが手の中に転がり落ちてきたのだ。
「あっはは、流石お兄さんだな。妹の大事な宝物守ってたんだ」
少し歪になってしまった頭に、ウルバスは元のように雪を詰め込み丸く形を整える。
そうして立ち上がり、自分の手の中にあるブローチを見た。
本当に、気まぐれなものだった。けれど思えば誰かに何かをあげようと思ったのは、初めてだった。そして思いつきのまま、贈り物をしたのも初めてだった。
仕方がないだろう。知っている母は最初から少しおかしくなっていたし、父は明らかにおかしかった。そして、たったの七年しか一緒にはいなかった。
祖父は厳格過ぎて距離が遠くて、何かをしてあげたいと思う事もなく一緒にいたのは一年くらい。
唯一養父には何かをしてあげたかったけれど、子供過ぎて何も持たず、与えられるばかりだった。
十七で養父に手間をかけさせたくないと騎士の道を選んでからはずっと、仲間全員で何かを贈る事はあっても個人ではなかった。
本当に、単なる気まぐれだったと思う。なのに、大事に思ってくれて……嬉しいけれど、煩わせてしまってもいる気がした。彼女を振り回してしまっている気がする。
これを、自分が届けたと知ったら彼女はどんな顔をするのだろう。きっと申し訳ない顔をするに違いない。楽しかった時間の最後が悲しい顔なのは、少し悲しく思える。
「……うん、そうだね」
素敵な一日の終わりは、やっぱり笑顔がいいと思う。
ウルバスは少し足早にアリアの宿へと向かっていった。
▼アリア
祖父や兄達との食事は楽しいはずなのに、心からは笑えなくて申し訳ない気がしている。
ずっと落としたブローチの事が頭に引っかかって、申し訳なさや「どうしよう」という焦りに気持ちはどんよりと沈んでしまいそうだ。
「アリア、顔を上げて。ね?」
「落とし物で届いていないか、調べて貰っている」
「兄様達……有り難う」
心配そうなルカとファウストが声をかけてくれて、アリアは表面だけでも笑みを見せる。けれどそんなのは二人には通用しないものだ。やっぱり、心配顔をさせてしまう。
「そんなに気に入っていたのか? なら明日、儂と二人で似たのを……」
「ううん、いいのお祖父様。代わりはいらないわ」
それでは意味がないのだから。
食事もそろそろ終わる頃、宿併設のレストランのウエーターが可愛らしいケーキを一つ、アリアの前に置いた。
「え? あの、私頼んでいませんが」
「お客様へ、贈り物と一緒に頼まれていった方がいるのです。こちらも一緒に渡してほしいと」
そう言ってウエーターが出したのは、小さく可愛らしい箱にちょこんとリボンがついたもの。それを恐る恐る開けてみると、中からはなくしたはずのブローチが、まだほんの少し濡れたままで入っていた。
「あの、これを持って来た方って!」
「既に帰られましたが」
「そんな……」
雪の中にあったに違いない。金属の部分は冷たくて、布の部分は濡れている。愛らしいクマが、アリアへむかって花を差し出している。
「ファウスト兄様」
「どうした?」
「明日、お時間のある時でいいの。ほんの少し、私の買い物についてきてくれないかしら」
このまま顔も見せないでさようならはしたくない。
アリアのお願いに、ファウストは穏やかに微笑んで頷いた。
▼ウルバス
流石に少し自由が過ぎて、キアランを怒らせてしまった。
昨日、予想よりも早く失せ物を見つけて宿舎に帰ってくると、この寒い中彼は仁王立ち状態だった。どうやらトレヴァーをいいように使ったのも気にくわなかったみたいだ。
久しぶりに三十分も説教をされ、残る三十分は愚痴を聞かされ、追加で三十分惚気られた。彼も随分忙しく充実した人になったみたいで、微笑ましく思う。
今日は制服に袖を通してお仕事をして、平和に一日が過ぎていった。
ほんの少し物足りない、つまらないと感じるのは、その前の二日間が充実していたからなのだろう。
夕食も終わって、入浴も済ませたけれどラウンジの気分ではなく、だからといって部屋で読書の気分でもない。今はぼんやりと修練場を見下ろしている。
「ウルバス様!」
「ん? あぁ、トレヴァー。昨日はごめん、キアランと喧嘩とかにならなかった?」
足早に近づいてきたトレヴァーにのほほんと返しながら、ウルバスはそちらを向く。昨日無理を通すのにトレヴァーを使ったから、キアランが怒っていないか少し心配だった。この二人の仲を悪くするつもりはないのだ。
まぁ、どうしたってキアランの方が惚れている。キツい事をその時は言っても、後で泣きそうな顔で仲直りしてくれると思っている。
「喧嘩にはなりませんでしたが、怒ってましたよ」
「ははっ、ごめん。それで、どうしたの?」
「はい、お客様が見えてます。ファウスト様付きで」
「……えっ、何それ怖い」
その名が出て来てウルバスに客となれば、相手は一人しかいない。けれどこんな時間に、どうしてだろう?
思いながらも待たせるのは申し訳無い。軽く制服のジャケットを肩に引っかけたまま、ウルバスは案内されるまま宿舎の入り口へと向かった。
宿舎の入り口には仕立てのいい馬車が一台停まっていて、そこの前にファウストを伴ったアリアが立っていた。コートには、昨日のブローチがちゃんとついている。
「ウルバスさん!」
「どうしたの、こんな時間に? 冷えるよ?」
「今、食事会が終わって。それでどうしても今日、お会いしたくて」
少し早口になりながら近づいてきたアリアが、ウルバスにグッと何かを押すように渡す。黒い小さな紙袋の中に、小さな箱が入っていた。
「ブローチ、探してくれて有り難うございます。そして、落としてしまってすみません」
「いいよ、それだけ楽しくて夢中だったんだし。見つかってよかったね」
「はい。これは、私の大事な思い出です」
手で包むようにブローチに触れるアリアを見られただけで、どこかほっとする。
そして手元のこれは、なんだろう?
「これは、私からのお礼です」
「そんな、気にしなくていいのに」
「ダメです! ちゃんと、貰ってください。そうじゃないと私、怒りますからね」
ちょっと怒ってぷぅっと頬を膨らませて見せるアリアは、それでも随分愛らしい。微笑ましくて、次には二人して破顔した。
「私、ルカ兄様の結婚式にも出席できそうなんです」
「よかったね、おめでとう」
「はい! 夏頃になると思います。その時にはまた、私に会ってくれますか?」
「勿論だよ。体調、整えてきてね」
「はい!」
嬉しそうに大きく笑って、次の約束をして別れる。アリアを乗せた馬車が宿へと向かっていくのを見送ると、降りていたファウストが近づいてきた。
「随分好かれたな」
「ははっ、妹が出来た気分です」
「妹か?」
軽く片眉を上げるファウストは面白そうに見ている。その視線の意味を、ウルバスは量りかねていた。
「お前に義兄と呼ばれる日がくるかもな」
「え! いや、無いですよそんな!」
「そうか? 少なくともアリアはお前が大好きそうだぞ」
「や……もぉ、無いですよ。俺、恋人も結婚もいりませんから」
そう言いながらも手の中に残る彼女からの贈り物が嬉しいのは、紛れもない事実だった。
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